ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵「明治・金色キタン」/中田永一「私は存在が空気」

どうもこんばんは。
今年も早一週間が過ぎ去ってしまいましたね。うちも7日は七草粥を食べました。
昨日は今年初のお雑煮。おもちを食べると、お正月って感じがしますねー。
実家からおもちをいっぱいもらったので、どんどん消化しなければ。
でも、おもち料理ってそんなに思いつかないなぁ。
ちなみに、我が家のお隣さんは、明日お友達をたくさん呼んでもちつき大会を
するらしいです。今日仕事帰りに隣家の前を通ったら、臼と杵が外に置いてありました。
いまどき珍しいですよね~(持っているのにも驚くが^^;)。お子さんが三人いらっしゃる
お家なので、子どもたちも楽しめていいですね。ほのぼの。つきたておもちのおすそ分けとか
来ないかな(来るか)。


読了本は二冊。休みが多くなった割に読めてません。まずい・・・。


では、1冊づつ感想を。


畠中恵「明治・金色キタン」(朝日新聞出版)
またしても、やっちまいました。読み終えてネット検索してたら気づいた衝撃の事実
(個人的にです)。

・・・続編だったーーーー!!!

アホですねー^^;
なんだか、読んでいて設定がよくわからなかったんですよね。人物関係とかも。
時々、妖っぽい人物が出て来るのだけれど、それも本当にそうなのかよく
わからない書き方だし。なんでこんなに読者に不親切な書き方するんだろう、と
思いながら読んでたんですが、続編だと知って納得。ただ、前作読んでいたからと
言って、面白く読めたのかというと、多分そうでもない・・・。
話の筋がわかりにくくって、話に全然入って行けなかったのです。
明治の銀座が舞台。廃仏毀釈で廃寺になった寺の仏たちが消えて、行方不明になっている。
どうやら、姿を変えて人々に紛れているらしい・・・。
銀座街の巡査二人が日々持ち込まれる厄介事を解決しつつ、消えた仏たちの謎を追う、
というもの。筋を書くとそんなに混乱するような内容じゃないのですが、
読んでみると中身はもっと複雑なんですよ。連作短編形式になっていて、
一話づつ単独でも読めるけれど、全体通して消えた仏たちの真相が明らかにされて行く
畠中さんお得意の形なので、どのお話も二つの要素が同時に進行していくような感じ。
一作目読んでないから、キャラ造形がつかめないまま読んでいたのもよくなかったのかも。
巡査二人の関係とかは良かったんですけど・・・それぞれのキャラも、もうちょっと
掘り下げて欲しかったような気がするな。特に原田巡査の方。滝さんの方は、
アイスクリン強し』の園山とかなりキャラが被っている感じはしたものの、
割合はっきりした性格だからわかりやすかったのだけど。そういえば、もともと
このお話も最初、『アイスクリン~』の続編なのかな、と思ったんですよね。
あれも明治が舞台だったから。読み始めて全然違うことがわかったのですが。
なんか、畠中ワールドのいろんな要素を詰め込んだ、みたいなお話だったな。
まだ続きがあるみたいなんだけど・・・もう読まないかも^^;
またも黒べるよりの記事になってしまった。年末のアノ記事のせいで、黒べる
体質になってきたのかしら・・・イヤだーーー(><)。


中田永一「私は存在が空気」(祥伝社
待望の中田さん新刊。早めに予約したので、一番手で回って来て嬉しかったです。
不思議な能力を持った人々を主役にした短編集。掌編一作を含めた6作が収録されて
います。設定は変わっているのですが、短編集の出来としては前二作程の完成度は
なかったかなぁ。どのお話も楽しめたことは間違いないのですが、オチにひねりが
ないものが多かったというか。
あっと言わされたのは、表題作くらいだったかな。これは、かなり意表を
つかれるラストでした。途中の展開で、完全にミスリードされてましたねぇ。
ミステリ的な面白さも備わった、このお話が一番私的には好きだったかな。
他にもキャラが気に入ったとか、展開が気に入ったとか、それぞれに良かった
お話はあったのだけどね。


では、各短編の感想を。

『少年ジャンパー』
ある日、瞬間移動(ジャンプ)の能力を身につけてしまったひきこもり少年のお話。
行ったことがある場所であれば、距離に関係なく瞬間に移動出来てしまうとは、何とも羨ましい
能力です。どこでもドアを持っているような感じですね。私は、常々ドラえもんの道具を
ひとつ手に入れることが出来るとしたら、絶対にどこでもドアを選ぶと思って来た人間なんで。
ただ、どこでもドアと違うところは、本人が一度でも行ったことがある場所でないと
ジャンプ出来ないというところ。引きこもりなのに、好きな瀬名先輩のために、
グランドキャニオンに行くべく何度もジャンプを繰り返す健気な主人公の姿にぐっと来ました。
そして、先輩にグランドキャニオンを見せようとした本当の理由にも。切なかったです。でも、
その経験が彼を一回り成長させたのだから、結果的には良かったのだと思いたい。

『私は存在が空気』
すごいタイトルですよね(笑)。でも、文字通り、他人からは空気のように
目に見えない存在として扱われる少女のお話。この能力は、彼女の育った環境の中で、
彼女の努力によって培われたもの。こんな能力、普通は欲しくないと思うのだけど、
彼女はこういう能力を身につけることで自らを守って来たのです。家族にさえも
空気として扱われるのは、本人が納得しているとはいえ、切ないものがありました。
そんな彼女が恋をしたことで、物語は意外な展開に。彼女が、イケメンの上条先輩を
追いかけて、部屋に上がって家探しするくだりは、完全にやってはいけないストーカー
犯罪だと思ったのですが・・・全く、予想外の結末でした。彼女の恋が実ることは
ないような気もするけれど、彼女のことを心から認めてくれる存在と出会えただけでも、
彼女は幸せなんだろうな、と思いました。

『恋する交差点』
彼とは、お互いに好き合っているカップルなのに、なぜかその交差点で手を繋いで
歩いていると、いつの間にかお互いが違う人と手を繋いでいる。この交差点を、
絶対二人手を繋いで渡るんだ・・・。
とても短い掌編ですが、健気な二人が微笑ましかったです。可愛らしいお話。

『スモールライト・アドベンチャー
なぜか宅配便で家に送られて来たスモールライトで小さくなってしまった少年の
冒険譚。小さくなってやりたいことが、クラスの美少女転校生・春風栞のスカートの
中を覗くことっていうのがね。男ってバカだなぁっていう典型って感じですが(笑)。
結局、なぜスモールライトが彼の家に送られて来たのか、はたまた、なぜ翌日に宅配業者が
回収に来たのか、謎はいくつも残されたまま。栞ちゃんとは、その後仲良くなったのかなぁ。

ファイアスターター湯川さん』
大学生の傍ら、叔父の所有するアパートの管理人を任されている俺。ある日、空いている
一室に、火を発生させることが出来るパイロキネシスの能力を持った女性、湯川さんが
引っ越して来た。世間知らずな彼女には、とんでもない裏の顔があった・・・。
キャラクター的には、この作品が一番良かったな。湯川さんと主人公の関係が好きでした。
湯川さんの正体はとんでもない人物でしたけど、あまり嫌悪感はなかったですね。まぁ、
やってることはえげつないですけど・・・そして、その光景を想像するとぞーっとしますけど・・・。
湯川さんとアパートの住人たちの関係も良かったな。パイロキネシス(発火能力)というと、
宮部さんの『クロスファイア』を思い出してしまうのだけど。あのヒロインよりはずっと
穏やかな性格の女の子でしたね。能力は凄まじいけどね^^;

『サイキック人生』
生まれつき透明な腕を持っていて、遠くの物体を動かしたり出来る能力を持つ少女のお話。
彼女の母方の一族みんなが持つ能力ですが、この能力を一族以外の人物に知られてしまうと、
その人物を殺さないといけないという、なんとも恐ろしい罰則がある為、少女はこの能力を
誰にも話すことが出来ません。その割に、自分に霊感があると嘘をついて、クラスのみんなの
前で能力を使って幽霊がいるように思わせたり、能力を使ってこっくりさんでコインを動かして
みたりと、やりたい放題。でも、終盤で、蓮見君の母親の為に能力を使ったところは、見直し
ちゃいました。こういう優しい嘘は、ついてもいい嘘だと思うな。
しかし、蓮見君とは今後どうなるんでしょうか。上手くいかなかった時が怖いです・・・。
ヤンキー襲撃の真相ははっきりしないまま。悪人は藤川君なのか、友人Aなのか。友人Aが
ほんとにコインを狙ってやったのだとしたら、黒いなぁ。