ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

有川浩「倒れる時は前のめり」/大倉崇裕「GEEKSTER 秋葉原署捜査一係 九重祐子」

どうもどうも。まだまだ寒いですね。
巷はインフルエンザが大流行だとか。身近に罹っている人がいないので、あまり
ピンと来ないのですが・・・^^;
いまだに、インフルエンザに罹ったことがないワタクシ。予防接種も一度も受けたことが
ないんですよねぇ。まぁ、経験したことないに越したことはないですけどもね(苦笑)。


読了本は今回も二冊です。
ではでは、感想を~。


有川浩「倒れる時は前のめり」(角川書店
有川さんのエッセイ集。初エッセイ集だそうで。意外ですよね。デビュー当時に
書かれたものから、最近書かれたものまで幅広く収録されています。
掲載元も様々のようです。
東日本大震災の直後に書かれた多くのエッセイの中では、有川さんはひたすら
被災地以外の人たちの自粛回避を訴えています。自粛をしても被災地の人の為には
全くならない、経済活動をすることが被災地を支えるのだと。あの当時は、日本中が
自粛ムード一色になって、本や映画を始め、バラエティ番組やお笑い番組など、
エンタメ色の強いものは揃って自粛される傾向にありましたから。有川さんが、
阪神淡路大震災を経験されているからこそ、実感を込めた有川さんの言葉には
説得力がありました。ただ、毎回同じような表現を使って同じ言葉を繰り返すのは
どうかな、とは思ったのですが・・・連載エッセイだったようで、掲載される度に
同じことが書かれているので、さすがにちょっとくどいかなーと思ってしまった。
強く伝えたい思いなのはわかるのだけど、毎回同じことを書かれると、読者からすると
「またそれ?」って思っちゃうと思うんだけど・・・。特に、こうして1冊にまとまると、
畳み掛けるように同じことを繰り返し読む羽目になるので、余計にそう思ってしまった
のかも。この震災のこと以外にも、有川さんのエッセイって結構同じことを繰り返し
書かれることが多いのがちょっと気になりました。エッセイひとつだってお金を
もらって書いているのだから、その都度書くネタは変えた方がいいと思うんだけどな。
それに、せっかくエッセイって、小説とは違う素の作家さんの顔が垣間見える場所なので、
もう少しくだけた感じで書かれてもいいのになぁと思いました。まぁ、掲載場所が
ほとんど新聞紙上なので、お硬い感じになっちゃうのは仕方がないのかもしれませんが。
基本的には、有川さんってとても真面目な方なんでしょうね。自分の伝えたいことを
ストレートに伝えようとする姿勢はすごく伝わって来ました。いろんなことに憤りを
感じて、理不尽に思っていることも。それ故に、アンチからの攻撃が結構あるのかな、
と思える節も。ネットでの批判意見についての言葉とか。有川さんの、公共の場では
なるべく嫌いなものではなく好きなものを公言する、という姿勢には身につまされる
思いがしました。確かに、マイナスの意見って、あまり聞いていて気持ちのよいものでは
ないですよね。ただ、読む側のことばかり考えて、自分の本音を語らない、というのは
私はちょっと違うような気がするんですけど。素直な自分の思いを語るのであれば、
嫌いなものでも好きなものでも、受け取る側はそれほど嫌な気持ちになったりはしないような
気もするのだけど。書き方にもよるかもしれないですけどね。やみくもに攻撃的な
批判の言葉は、確かに他人を傷つけるものだと思うので、私も控えたいと思っています
けれどね。
一番読んでいて面白かったのは、好きな本についてのエッセイ。私が好きな作品も
いくつか入っていて嬉しかったです。万城目さんのしゅららぼんに関しては、全く
同感でしたね(笑)。あと、気になりつつもジャニーズということでなんとなく
スルーしてしまっていた加藤シゲアキ氏の作品は、やっぱり読まないとなーと思わされました。
あとは、やっぱり児玉清さんについてのエッセイは心に響きました。本当に、読書業界は
大きな存在を失ったのですね・・・。
巻末に掌編小説が二編収録されています。一作目の『彼の本棚』、めっちゃ続きが
気になるところで終わってるんですけど!続き書いて欲しい~。ちなみに、私、
他人に『読書が趣味』って話して、『すごい』なんて反応、返って来たことないんですけどー・・・。
二作目の『ゆず、香る』は、入浴剤と小説がセットになって発売された、変わった経歴の
作品。発売当時、ブログ仲間さんに貸していただいて既読。改めて読んでも、にやにや
しちゃう展開でした(笑)。

有川さんの人となりがよくわかるエッセイ集ではありましたね。旦那さんが入院しちゃった
時のエピソードが好きだったな。旦那さんが、有川さんの一番の読者だということが
よくわかりました。素敵なご夫婦でいいなぁ、と思いました。


大倉崇裕「GEEKSTER 秋葉原署捜査一係 九重祐子」(角川書店
大倉さん最新作。またしてもオタク系・・・と思ったんですが、どちらかというと
ハードボイルドとかアクション小説のジャンルに近いかも。秋葉原が舞台で、女刑事が
主人公。秋葉原署ということで、問題を起こしたり、警察に相談に来るのはみんな
いろんなジャンルのおたくばかり、という、実際の秋葉原ではどうなんだ、と思う
設定ではありました。いくら何でも、警察に来るのがおたくばっかりってことは
ないと思うけどねぇ。
ハラハラさせる展開でぐいぐい読まされたことは間違いないのだけど、出て来るのが
おたくばっかりってのが何とも。怪獣フィギュアとか、いかにも大倉さんらしいネタが
いっぱい出て来るんですけどね。食玩フィギュアの世界とか、私にはさっぱりついて
行けなかったです^^;;
ギークスター稲陰のキャラは、なかなかかっこよくて良かったです。それだけに、
あのラストはショックだったなぁ・・・。主人公の祐子が、ああいう道を選ぶとは
思いませんでした。16年も人生を費やすとは、執念というか、何というか。
ファイヤー・レイザーの正体は全く予想外でしたが、エンプティ・ハンドの正体は
何となくあの人かな、と思っていた人物で当たってました。何か出て来た時怪しかった
ですからねぇ。伏線ぽい描写もありましたしね。
初子のキャラが一番意外性があったかな。最初は何て嫌な人間なんだろう、と思ったけれど、
終盤の変貌には驚かされました。祐子とああいう関係になるとは。途中のいがみ合い
からは想像もつかなかったですね^^;あのいがみ合いを読んでいて、女同士って
怖い・・・と思いましたからね^^;;
まぁ、『BLOOD ARM』よりは面白く読めたかな。途中ちょっとエグい
暴力シーンなんかもあるので、その手の描写が苦手な人は、ちょっと注意が必要かも。