ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森晶麿/「黒猫の回帰あるいは千夜航路」/早川書房刊

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森晶麿さんの「黒猫の回帰あるいは千夜航路」。

パリで大規模な交通事故が発生。
深夜、そのニュースを目にした付き人は、相変わらず連絡のない黒猫の安否が気になっていた。
一年前、イタリアで二人の距離が縮まったと感じたのは、勘違いだったのか……。
互いに研究で多忙な日々を送るなか、いつしか声を聞かない時間ばかり増えていた。
そんな時、大学院の後輩・戸影からペルシャ美学の教授が失踪したと連絡を受ける。
黒猫のことが気になりつつ、付き人は謎を追いかけてゆくが――。待望のシリーズ第6弾!
(紹介文抜粋)



黒猫シリーズ第六弾です。相変わらず執筆ペースが早いですね。これの後にももう
1冊出ているようですし(予約中)。これだけハイペースで新刊を出す作家も珍しい
のでは。初期の赤川次郎氏のようだ(笑)。

さてさて、本書についてですが。
以降、オチについて言及しますので、未読の方はくれぐれもご注意下さい。
特に、このシリーズを追いかけているファンの方!!読んでから是非ともこの思いを
分かち合いましょうっ!!同志よ!最後まで読めば、間違いなく、同じ思いを共有できるはず!
















という訳で。読み終えた後、うおおーーーーーー!と心の中で絶叫しましたとも!
なんですか、なんですか、あの破壊力抜群のラストはーーーっっ。
ついに、ついに黒猫があの決断を!いやー、第二話『独裁とイリュージョン』のラスト、
鍵のくだりを読んで、これはもしや!と期待したんですよ。でも、次の第三話でまた
普段通りに物語が始まったので、なーんだ、とガッカリ。んで、第五話のラストでも
また思わせぶりなラストの会話に、胸が高鳴り期待マックス。迎えた最終話で、また
普段通りの展開。なんだよー、意味深に終わらせるなよーと、思っていたところに、
あのエピローグ。やってくれるじゃないか、森さんたら!んもう、どれだけ乙女たちの
胸きゅんポイントを心得ていらっしゃるのか。森さんって、絶対少女マンガとか好きじゃ
ないかしら。というかそもそも、森さんって、女性なのかな?作風を考えると女性のような
気がしてきたけど・・・ウィキペディアを検索してもどちらとも書かれていないのだけれど・・・。
この、恋愛感情の細かい機微を描けるのは、女性ならではって気がするんですけどね。
男性だったらびっくりだ。でも、経歴に、かつて映画監督目指してたとか書いてあったから、
男性なんだろうか。謎だ。
いや、話がそれた。
とにかく、あのラストは反則だ。ちがう意味で。悶絶死するかと思ったじゃないか。
甘くて!っていうか、そんな前から線を超えちゃっていたのかい!!ってツッコミたく
なりました(笑)。黒猫も、さすがにもう我慢出来なかったんだろうなー。付き人ちゃんが、
どんどん大人の女性になって綺麗になって行くものだから。むふふ。
とにかく、パリから無事戻って来てくれて良かったです。

ミステリとしては、今回さほど捻りがなく、だいたいのお話でオチが想像出来ちゃいました。
全部を当てられた訳ではないのだけれど、なんとなく、こういう真相なんだろうなーと
予想したのがまぁまぁ当たっていたというか。
一話目の絨毯のやつはちょっと予想出来なかったけれど。小柴教授と夏海さんの関係は、
ちょっと理解出来なかったな。踊りを踊って○○を思いとどまらせるっていうのが。
まぁ、何はともあれ、黒猫おかえり!って感じでした(笑)。
二話目はミナモさんが再登場。って、あんまり覚えてなかったけど、なんか嫌らしい女
だなって思ったのは覚えてました。そして、やっぱり嫌らしい女でした。新しい恋が
見つかったなら、黒猫を巻き込むなー!っていうか、黒猫、なんでそのあと口を拭わない
のだー!ってツッコミたくなりました(笑)。
三話目は、劇作家鞍坂氏の遺作にホロリ。彼女はこれから大女優になって行くのだろうな。
四話目は、黒猫の姉・冷花さんの中学時代の初恋のお話。小学四年の黒猫が小憎らしくも
可愛らしい。萌え。冷花さんの過去の過ちについては、ほとんど推理出来ました。
五話目は、とにかくお料理が美味しそうだった。子羊のワイン煮オイスタークリームソースがけ、
めっちゃ食べてみたい~。じゅる。ミステリ的にはあまりひねりがなかったですね。
六話目も、ミステリのオチはほぼ予想がつきました。まぁ、伏線がかなりわかりやすかった
ですからね。いつか、人工知能(AI)が、本物の作曲家以上の素晴らしい音楽を作ることが
出来るようになるのでしょうか。それはそれで、味気ない世の中になりそうだ。

以上を受けてのあのエピローグ。はぁ。シリーズを追いかけて来て、やっとここに
辿り着いた、という感じでした。すべてが報われるようなラストですね。
これで終わりじゃないよね?これからの二人がまだまだ読んでみたいです。

ところで、この作品を記念して、著者のブログで出されたクイズに答えて正解すると、
特別に書き下ろした短編が読めたらしい。すでに応募は締め切られたようで、残念です・・・。
黒猫と付き人の、ものすごーーーい、甘々な物語が読めたらしく。ああ、読みたかった(><)。