ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

碧野圭「菜の花食堂のささやかな事件簿」/山白朝子「私のサイクロプス」

どうもこんばんは。
先日ご報告した薔薇のその後なのですが。
・・・実は、新苗ちゃんのうち1つが、病気に罹ってお亡くなりになって
しまいました・・・(涙)。気がついた時には根本の部分まで枝が茶色く枯れて
しまっていて。もっと早くに手を打てば間に合ったかもしれないのに(ToT)。
ネットで調べたところ、枝が枯れる病気だと判明。しばらく様子を見ていたのですが、
根っこの部分を掘り返してみたところ、手の施しようのない状態なのがわかりました・・・。
一番花が咲くのを楽しみにしていた株だったのでショックです。薔薇は本当に
育てるのが難しいことを痛感しました。しかし、この失敗を踏まえて、他の子たちは
頑張って育てるつもりで奮起しております。そして、朗報もふたつ。新苗のひとつに
花の蕾がつきました!日に日に膨らんで来ているので、花が咲くのもそう遠くないはず。
もうひとつは、性懲りもなく、またふたつ新苗株を買い足しちゃいました(笑)。
地元の園芸に強いホームセンターでかなりお安く売っていたのでつい・・・。
・・・枯らさないよう、がんばります・・・。


どーでもいい前置きが長くてすみません^^;;そのうち、薔薇書庫を新たに作ろうかと
思ってますので、どうかしばらくご勘弁を~^^;


あ、読了本は二冊です。


碧野圭「菜の花食堂のささやかな事件簿」(だいわ文庫)
書店ガールの碧野圭さんの新作。図書館の新刊情報でタイトルに惹かれて借りてみました。
内容は、以前に読んだ藤野恵美さんの『初恋料理教室』に、謎解き要素をプラスしたような
感じ。謎解き要素といっても、タイトルが示しているように、本当にささやかな日常の謎
ばかりなのですが。
謎を解くのは、菜の花食堂のオーナーにして、そこで月二回開催される料理教室講師の
下河辺靖子先生。
主人公は、現在は派遣社員として不動産会社に勤める傍ら、月二回靖子先生の料理教室の助手を
している館林優希。
前の仕事を辞めたばかりの頃の優希は、毎日だらだら怠惰な日常を過ごし、お金もないため
ろくな食べ物も食べずにいた。そんなある日、食べ物が底をついてしまい、何か買いに行こうと
外出したところ、体調不良で倒れ込んでしまう。そこを通りがかったのが菜の花食堂の靖子先生。
彼女は、優希を自宅に連れて行き、料理を振るまう。お金のない優希の事情を察した靖子先生は、
優希に、料理教室の助手をやってくれたらタダで料理を教えてあげると申し出る。靖子先生の
料理を習ううちに、優希の食への考えが変わり、生活も変わって行くことに――。
おいしいものは人を幸せにするし、おいしいものを作ると自分も幸せになる、という靖子先生の
考え方には、非常に共感出来ました。
食べ物って、本当に大事。若いころは、私も人並みにダイエットなんかしたりして、食生活が
めちゃくちゃな時代がありました。でも、そういうことをすると、やっぱり身体的にどっかで
無理が来るんですよね。食べることで、その人の身体が作られる、というのは、最近本当に
実感します。バランス良く食べると、本当に風邪とか引かなくなりますもん。まぁ、とはいえ、
一人だとなんだかんだで適当なもので済ませちゃったりするんですけどね^^;
でも、自分の料理が美味しく出来ると、やっぱり嬉しいし幸せな気持ちになるものですよね。
それを食べてくれる人がいると、もっと嬉しくなるし。美味しいって言ってもらえたら、
更に嬉しい。食ってほんとに人を幸せにするものだと思います。
靖子先生のように、どんな食材でも美味しく料理出来る腕があると、料理が本当に楽しいだろうなぁ。
私も嫌いではないし下手でもない(多分)とは思うけど、味付けとかはやっぱり失敗も数多い。
しかも、ちゃんとした手順とかもわからず適当に作っている為、かなりやり方は自己流だし。
靖子先生のように、基本的な料理の知識を教えてくれる料理教室なら通ってみたいなぁ。あんまり、
凝った料理とかの高度な技術とかは必要ないんで。
ちなみに、最近自分で作って一番ヒットだったのは、手作り肉まんですね。皮から手作りすると、
こんなに美味しいのか!と目からウロコが落ちました。意外と簡単だし。時間もそれほど
かからないので、はまって何回も作ってます(笑)。

まぁ、とにかく、靖子先生のお料理はどれも本当に美味しそうだったし、お料理の傍らで
悩んだり困ったりした人の心までほぐしてくれる靖子先生の謎解きにはほっこりしました。
優希の前職の苦手な同僚をさっくりと追い返したところには、すかっとしました。
靖子先生は、どちらが正しいかをちゃんとわかっている人ですね。だから、いつでも
正しい判断が下せる。でも、そんな靖子先生の意外な一面が垣間見られるのが最終話。
靖子先生も、娘のことになると冷静ではいられなくなるんだなぁ、と新鮮でした。ラスト、
靖子先生の優希への提案が実現するといいなぁ。ぜひ、それが実現された続編を書いて
頂きたいです。
優しい読み心地で、爽やかに読める良作でした。


山白朝子「私のサイクロプス」(角川書店
待望の山白さんの新刊。出たという情報を知らずにいたので、図書館の新刊案内みてびっくり
しました。しかも、読み始めて『エムブリヲ奇譚』の続編だと気づいて二重に驚きました^^;
しかし、前作の内容を驚く程忘れていたのでしたが・・・。蝋庵先生と耳彦という名前を
なんとなく覚えていたので、アレ?と気づいたという。二人の関係とか性格とかはすっかり
忘れていたなぁ。そして、輪のことは、その存在すら記憶になかった・・・(しーん)。
でもでも、前作を覚えていなくても、十分楽しめました。まぁ、かなり、グロテスクな
シーンが出て来てシュール極まりないお話が多かったですが・・・個人的には、これが
なんともツボなんですよね。いや、気持ち悪いんだけど!ほんと、吐きそうになる話ばっかり
だったんだけど!それでも、この奇抜な設定がめっちゃツボ。さすが山白朝子、という
世界観。素晴らしかったです。
蝋庵先生の迷い癖のせいで、毎度三人は旅の目的地に行く筈が道に迷い、結果大抵耳彦が
酷い目に遭って終わる、という黄金パターンが繰り返されるのが面白い。耳彦と輪の
悪態合戦も楽しかったです。それにしても、耳彦のクソっぷりがいっそ清々しいくらいだったな。
よくぞここまで、しょーもない人間に育ったもんだ(笑)。まぁ、それがあるから面白い
のだけどもね。

九編収録されております。軽く感想を。

『私のサイクロプス
これだけ輪視点。蝋庵先生と耳彦の二人とはぐれた輪が、一つ目の巨人、サイクロプス
出会い、心を通わせる話。大太郎を村人に会わせようと輪が思った時点で、嫌な予感しか
しなかったです。案の定。大太郎が可哀想すぎる・・・。

『ハユタラスの翡翠
旅籠の主人の忠告を無視して、砂浜で見つけた翡翠の指輪をはめてしまった耳彦。すると
指輪が抜けなくなり、何もしなくても海の方へ引っ張っられてしまう体質に――。
蝋庵先生の指輪を抜く方法が意外と実用的だったのが意外でした。翡翠が取れる海岸って
実在しますよね。落ちてても拾わない方がいいのか・・・。

『四角い頭蓋骨と子どもたち』
旅を続ける三人は山の中の廃村に迷い込む。すると、四角い頭蓋骨が――。
見世物小屋の見世物にする為に、村人たちが妊婦にした仕打ちがあまりにも酷い。人体実験
と同じじゃないですか。四角い頭蓋骨の理由にも。こんな村イヤだー(><)。

『鼻削ぎ寺』
またしても蝋庵先生と輪とはぐれた耳彦。無一文の為、歩きまわって辿り着いた古寺で、
坊主に助けを乞う。しかし、その男は近隣の町や村で悪さをした極悪非道な罪人だった。
殺した人間の鼻を削いで集めるという、殺人鬼のおぞましさにぞーっとしました。
そして、男に閉じ込められた後の耳彦の状況のおぞましさにもおぇぇ・・・。ほんと、これは
読むのがキツかった(><)。そして、ラストで蝋庵先生が手に入れる、殺人鬼が壺に
入れて集めたアレ・・・ひー(><)。

『河童の里』
三人は、河童が出るという里に辿り着く。河童を信じる耳彦は、信じない輪にバカにされ、
河童を見つける為単独行動に。
河童の正体がこれまた身の毛もよだつほどおぞましかった。しかし、耳彦ってほんと、
自分から厄介事に突っ込んで行くのが好きですね。懲りないやつだなー(呆)。

『死の山』
宿の主人から、目隠し山を通る時は、そこで起きる怪異をすべて素通りしなくてはならない、と
教えられた三人。実際に様々な怪異に出会うことになるのだが。
途中で語り手が変わったことに全然気づきませんでした。私だったら、いくら近道でもこんな
怖い目に遭う山は通りたくないなぁ・・・。

『呵々の夜』
旅の仲間とはぐれた耳彦は、民家を見つけ、一晩の宿を願い出る。そこは、夫婦と息子の
三人暮らしだった。亭主は、耳彦に、これから家族三人が一つづつ怖い話を話すから、
どの話が一番怖かったか判断して欲しいという。承知した耳彦は、三人の話を聞くのだが――。
三人の話に出て来る『あの方』の正体に驚かされました。あの方からもらった指を嬉しそうに
しゃぶる息子が一番気持ちわるかった。おえ。

『水汲み木箱の行方』
道未迷った三人が村はずれの家に行き着き、一晩の宿を申し出ると、承諾してもらえた。
そこは、母親と子ども二人だけで住んでいて、父親は落石の事故で頭がつぶれて亡くなったという。
その家には、不思議な木箱があり、そこから管が繋がって水が桶に組めるようになっていた。
その木箱には、恐るべき秘密が隠されていた。
死後も妻と子どものことを心配する夫の愛情に胸を打たれました。宿の女将は自業自得
でしょうね。

『星と熊の悲劇』
いつものごとくに道に迷って山に迷い込んだ三人。その山は、上りの道しか存在しない、
一度迷ったら抜け出せない恐るべき山だった。そこで、同じように迷った迷い人たちが
集まる集落に辿り着いた三人だったが、そこで生活しているうちに熊に襲われる悲劇に遭い――。
蝋庵先生の意外な出自が判明するお話。蝋庵先生の父親が○○だったかもしれないとは。
浮世離れしている理由がわかった気がします。迷い癖の理由もね。
耳彦が美しい湧水に恋をする姿が何とも滑稽。身の程を知らない自信に呆れ果てたのだけれど。
でも、あんな結末にならなければ、もしかしたら意外と上手く行っていたのかもしれないと
思われる描写もあり。ちょっと気の毒でした。


あー、堪能しました。こういう幻想怪奇な世界観は大好き。年末ベスト入り確実だな。
装丁がまた素晴らしいですね。山本タカトさんの絵が素敵すぎる・・・。うっとり。
髪の毛みたいな糸スピンは今回も健在。でも、使うたびに細すぎて切れちゃわないか心配に
なりました^^;かっこいいけど、実用的ではないな^^;
これからも三人の旅は続くでしょうから、まだまだシリーズも続けて頂きたいです。