ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏「101教室」/住野よる「よるのばけもの」

どうもこんばんは。みなさま、もういつも通りの日常に戻りましたでしょうか。
今日は成人の日ですね。成人のみなさま、おめでとうございます。
ちなみに、我が甥っ子も目出度く成人式を迎えました。おめでとう。あんなに泣き虫だった
あの子が・・・(感無量)。自分も年取る訳よね。はぁ。


読了本は二冊。今日読み終えたのもあるけど、それはまた後日。


似鳥鶏「101教室」(河出書房新社
ユーモアを一切排除した、シリアス一辺倒の似鳥作品。もうね、読むのが嫌で嫌で
仕方ないお話だった。何度、読むのを辞めようと思ったことか。でも、先が気になって
止められなかったのも事実。不快なのに、読んでしまう。
全寮制の一貫校、恭心学園に入った従兄の英人が突然亡くなったと知らせを受けた
藤本拓也。告別式で、なぜか英人のお棺は顔の部分が終始閉じられたままで、献花の
時間もなく、最後まで顔を見ることは叶わなかった。不審に思った拓也は、同じように
英人の死に疑問を覚えている従姉妹の沙雪と共に、拓也の死の真相を探り始める。
すると、拓也が通っていた恭心学園に関する不穏な噂が耳に入って来た。世間的には
評判のいい進学校で一体何が行われているのだろうか――。
教師による体罰問題は、一時期世間でもすごく話題になりましたよね。まさに、
それをそのまま文章化したような作品です。入学した生徒は、卒業する時には
どんな問題児でも優良な生徒に変貌している。生徒の親からは、全国から感謝の
言葉が寄せられる。どんなにいい教育をしているのかと思いきや・・・その実態は、
怖ろしいとしか言いようのない、とんでもないものでした。自分の子供がこんな
教育を受けていたら、私だったらとてもじゃないけど、耐えられないです。
許せないです。なぜ、卒業した生徒が誰ひとりとして訴え出なかったのか、そこが
謎でしかたなかったですが。もう、完全に洗脳されているからかもしれないし、
報復が怖かったからかもしれませんが・・・。
体罰教師による行き過ぎた指導は、まさに軍隊のそれのようでした。いじめ描写も
酷かったですし、とにかく読むのが辛かったです。自殺した息子のことを学校に
訴えた親が学校や父兄たちにされた仕打ちには心底怖気が走りました。こんな理不尽が
まかり通るなんて。息子を亡くしたばかりの人間に、よくあんな言葉が投げかけられると、
唖然としました。ただただ、怖いとしか言いようがなかった。
終盤、生徒の一人が学園から逃亡してからは、ただただ、彼が無事逃げのびること
だけを祈って読みました。そこからはもう、私自身も生きた心地がしなかったな・・・。
手に汗握る、とはこのことだと思いました。
特に、金尾先生の身の上が心配でならなかったです。彼女のような人間が、なぜこの
学園に採用されたのか謎ではありましたけど。彼女がいてくれて本当に良かった。
特進クラスの娯楽室の実態には若干肩透かしでしたが。101教室に関しても、
タイトルになるくらいだからもうちょっと掘り下げて欲しかった感じはしました。
とはいえ、あんまり掘り下げてもらったら、それはそれで辛い読書になるだけでしょう
けども・・・(><)。
こんなに人を不快にさせる作品が書けるというのは、ある意味すごいことだと思う。
全国で繰り返される体罰による抑制の実態を、見事に描ききっているのではないかと
思いました。こんな学校があったら本当に嫌だけど。
最後、ほっと一息ついたと思ったら、愕然とする結末が明らかになります。最後まで、
救いがあるとは言い難い終わり方です。負の連鎖は、このまま終わらないのか。
暗澹たる気持ちになりました。
気になったのは、拓也の○○相手。あの人かあの人のどちらかなのかなー?
とにかく、読み応えはありましたけど、疲れました。読んでる間、ずっと眉間に皺が寄って
いたような気がします・・・。とても好きな話とは言えないですが、力作だったのは
間違いないと思います。『迫りくる自分』を読んだ時も思ったけど、似鳥さん、こういう
話も書けるんだなぁ、と驚かされます。でも、やっぱり氏には、ユーモア溢れる軽妙な
作品を書いて欲しいな。なんだか心が重く沈んでしまった。




住野よる「よるのばけもの」(双葉社
住野さんの三作目。ちょっと変わった学園ファンタジーまじりの青春小説。
・・・うーーーーーーん。これは、ちょっと評価出来なかった。今までの作品は、
瑕疵がありつつも、作者の文章センスとか独特の世界観とか気にいる部分もたくさん
あったのですが。今回はいろいろとダメだった。
とにかく、いろんな設定が投げっぱなしで終わってしまうところがミステリ読み
にとっては耐え難かった。たくさんの意味深に出て来る伏線が、全く回収されてない
のだもの。え、あれはどうなったの?あれは?あれも?みたいな。え、何も解決せず、
これで終わり?って感じで、愕然としました。こんな、いい加減な小説読んだの
久しぶりだよ。
そもそも、主人公が夜になると気味の悪い化け物に変身するって設定も、え、
なんで?とは思ったのですけどね。百歩譲って、そこはファンタジーと割り切って、
受け入れられたのだけども。
矢野さんの喋り方が、すごく読みづらかった。変な部分で区切られると、こんなに
言葉って伝わりにくいのか、と、そこはある意味作者の意図が成功しているのかも
しれないけれど・・・。
結局、矢野さんがなぜ夜の学校に『夜休み』に来ているのか、学校の窓を割ったのは
誰なのか、矢野さんが緑川さんの本を窓の外に投げ捨てたのはなぜだったのか、
笠井はなぜ『悪い子』なのか(これはまぁ、なんとなく推測は出来るけれども)、
ばけものの実物を見て学校に来なくなった元田はどうなったのか・・・その他もろもろ。
すべてが投げっぱなしで終わっている。読書メーターの他の方の感想読んでいたら、
そこに言及している人があまりいなかったので、こんなに不満に思っているのは
私くらいみたいなんですが・・・。
大抵の人は、いじめ問題に不器用に立ち向かう女の子と、いじめは悪いことだと
認識しながらも、周りに流されてそれに加担してしまい、どうするべきなのか悩む
主人公の少年を真摯に描いたみずみずしい作品、みたいな好意的な評価みたいですが。
でも、私にしてみれば、いじめ問題だって、何ひとつ解決してないと思うんですけど。
主人公が最後に矢野さんに一歩歩みよっただけで、だからといっていじめはもっと
酷くなるだけのような気がするし。それによって、主人公もいじめられるのは
目に見えてる訳で、いじめはもっと深刻化していくんじゃないだろうか。
終わり方も尻すぼみだし、だから何?と言いたくなりました。一体作者は、何を
狙って書いたのだろう。何が書きたかったのか、私にはよくわからなかったです。
いろんな部分で、消化不良でした。私の読み取り不足もあるでしょうが、もう少し
意味深に広げた風呂敷は畳んでもらいたかったというのが正直なところです。
これが一巻で、二巻以降に続く、というのなら溜飲が下がるところなのですけれどね。
続編が出る予定はあるのでしょうか。
ちょっと、残念な読書となりました(年明け早々に黒べる発動とは・・・がくり)。