ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

読了本三冊。

どうもこんばんは。
芥川賞直木賞発表になりましたね。芥川賞は毎度のことながら全く知らない
作家さんですが、直木賞の方はついに、ついに恩田さんがやりましたね。
いや、今回は絶対イケると思ってましたけどもね。世間の評判みても、これで
獲れなきゃ何で獲るってな感じでしたし。惜しむらくは、いつもなら絶対に読めて
いる筈の当該作を、いまだに読めていないってところです。まだまだ回って来そうに
ないんだよなぁ。けど、タイムリーなことに、今回の記事では別の恩田作品を
紹介できるので良かった。
とにもかくにも、賞を獲ったお二方、おめでとうございます。


でもって、今回は三冊読了です。ちょっと体調不良気味なので、さくっと
行きますねー。


相沢沙呼小説の神様」(講談社タイガ
随分前に出ていた相沢さんの文庫作品。書店で見かけて読みたいなぁと思いつつ、
文庫なんで、なかなか図書館に入らず読み逃していました。今回、目出度く入荷
してくれまして、無事読むことが出来ました。
主人公は中学生で作家デビューを果たした高校二年の千谷一也。華々しくデビュー
したものの、その後は思うように作品が売れず、作家としての方向性に悩んでいた。
そんな一也のクラスに、同じく学生作家として人気絶頂の小余綾詩凪が転校
してくる。作家として悩む一也を見ていた担当編集者の河野は、一也に詩凪との
共作の話を持ちかける。始めは反発し合っていた二人だったが、共作活動を続ける
うちに、次第に二人で物語を紡ぐ楽しさを感じ初めて行く。しかし、詩凪には
ある秘密があって――。
ちょっと思っていた物語とは違ってましたが、小説を書くことに躓いた少年と
少女が新たな物語を作ろうともがき、あがきながら成長して行く青春小説としては、
なかなか良かったと思います。
ただ、いかんせん、主人公の性格がひくつ過ぎるきらいがあり。途中、何度も何度も
イライラさせられました。ただまぁ、作家としてデビューしながらも、作品を出す度に
売上が下がって行き、構想していたシリーズものの続きも出せないと言われ、何度も
挫折を味わわされると、人間こういう風になってもおかしくはないかな、とは思います。
一般的な作家の苦悩を赤裸々に描いているとも云えるのかもしれません。そういう意味
ではリアルなのかもしれませんが、なんといっても、主人公は高校生。もうちょっと、
爽やかさは欲しかったかなぁ。売れっ子作家の小余綾さんに対する態度も酷いですし。
小余綾さん自身の性格にも問題があるとは思うけれど。キャラ造形としては、
『マツリカ・マジョリカ』のマツリカさんっぽいかしら。自虐的で卑屈な男子学生と
クールな美少女という組み合わせがお好きなのかしらね。
妹の為に作家として家計を支えなければならない一也は、とにかく売れる小説を
書かなければいけないという固定観念に囚われていて、物語を紡ぐ楽しさというものを
忘れてしまっている。私にしてみれば、中学生で小説家デビューして、その後も作品が
出続けているだけで、もう立派に勝ち組だと思うし、その小説が売れないという
だけで、あそこまで卑屈になる必要はないと思うのだけど。遊んでるだけの普通の
高校生よりよっぽどすごいと思うけれど。身近に、小余綾さんみたいな売れてる学生
作家がいたら、やっぱり比較しちゃうから仕方ないのかもしれないですけどね。
小余綾さんの秘密に関しては、驚かされました。作家として、致命的ですよね・・・。
人気作家なだけに、ショックも大きかったでしょうね。小余綾さんの秘密を知って、
一也との共作を受け入れた理由に納得が行きました。お互いに、お互いの存在が必要
だったということだったのでしょうね。
気になったのは、一也のペンネーム。覆面作家としてデビューしたかったら、
もっと本名とはかけ離れたペンネームにすれば良かったのに・・・。千谷もちょっと
変わった名字だし。隠す気ゼロのペンネームだよね(苦笑)。
書く苦しみと楽しみを味わった二人の共作、どんな作品になったのかとても
気になります。一也の妹のヒナちゃんの病気のことも気になるけれど。
続きを書いて頂きたいですね。


恩田陸「七月に流れる花」/「八月は冷たい城」(講談社
本当に久しぶりに出た講談社ミステリーランド作品。二冊同時刊行だったのかな?多分。
恩田さんのミステリーランド作品は、以前予告していた通り、『みどりおとこ』が
出て来る二作品。『みどりおとこ』の正体は、全く予想していなかったもの
だったので、かなり面食らわされました。さすが、恩田さん。
『七月~』の方は、親の都合で6月という変な時期に夏琉(かなし)に転校してきた
ミチルが主人公。中途半端な時期の転校だった為、なかなか友達が出来ず、孤独な
日々を過ごしていたミチルに、夏休み直前の終業式の日、夏琉城で行われる林間学校
への招待状が届いた。そこに招かれた子供は必ず参加しなければならないという。
ミチルは、夏休みの間、5人の少女たちと共同生活をすることになり――。
希代のストーリーテラー恩田さんらしい、かなり奇抜な設定の物語になっています。
うーむ、こうきたか、という感じ。5人の女の子たちのひと夏の共同生活を描いた
作品ではありますが、この林間学校の裏には、かなり重い事実が隠されています。
正直、腑に落ちない部分もあります。ネタバレになるんで、詳しくは書けないのだけど。
でも、こういう設定を思いつくこと自体、さすがだな、と思ってしまった。かなりの
変化球で来たなぁ。水路に赤と白の花が流れて来る理由、鐘が三回鳴ったらお地蔵様に
お祈りしなければならない理由。そもそも、彼女たちがお城に招かれた理由。最後まで
読んで、そうだったのか、と驚かされました。
こういう年齢で、こういう体験したら、今後のトラウマになったりしないのかな、とお、
思ったりして。
かえって、強くなれて成長したとも云えるのかもしれないけれども。
気になったのは、夏休みの間に鐘が三回鳴る事態にならなかった場合はどうなるのか
というところ。だって、誰もいつそうなるかわからない訳で。その期間以外で
そうなる場合だってあると思うんだけど。その辺りがちょっと腑に落ちないところ
だったんですよねぇ。新学期始まっても、ずっと全員が帰れなくなってしまうの
だろうか。っていうか、夏以外の季節にそうなる場合もありますよねぇ?
まぁ、気になる部分はあるものの、そこ以外はミステリ的な仕掛けもきちんと
入っていますし、十分楽しめました。
『八月~』の方は、同じ時期に夏琉城に招かれた少年たちのひと夏を描いた作品。
対になっています。ただ、『七月~』のネタバレが思いっきり冒頭から出て
来ちゃうので、必ず『七月~』から先に読んだ方が良いです。そこは何かしらの形で
冒頭に注意書きした方が良いのではないかと思いましたね。図書館で借りてる人
なんかは、必ずしも順番に回って来る訳じゃないと思いますしね(上下巻なら
ともかく)。
こちらの方がミステリ度は上かな。きちんと伏線も回収されるし、いろんな意味で
意外性の連続でした。みどりおとこの真実も明らかになるし。ちょっとホラー要素
もあって、ぞくりとする場面なんかもありますし。特に、みどりおとこが血まみれ
で出て来るシーンは、子供が読んだら、これこそトラウマになるかも^^;怖~っ
と思いました。その理由にもぞっとしましたけど・・・その場面を想像すると、
ほんとに身の毛もよだつとは、このことって感じです。恩田さん、子供向け作品に、
よくこんな設定を出して来たよな~・・・^^;
二冊セットで是非読んで欲しい作品ですね。ミステリーランド最後の作品に
相応しい二作だと思います。
そう、この『八月~』がミステリーランド30作目にあたり、これで完結なのだそう。
執筆者に京極さんの名前も挙がっていた筈なのになぁ。残念・・・。京極さんは、
本当に講談社と決別してしまったのだろうか・・・と勘ぐりたくなってしまうわ^^;
まぁ、キリがいいから、これでおしまいにしましょうってことになったのかも
しれないですけど。立ち上げた宇山さんが亡くなって、宙ぶらりんになったまま
放りっぱなしだった感じですし。どなたかが、復活させましょう、と立ち上がって
くれたんだろうな。
多分私は30作全部読んでいると思うのだけど・・・もう、ほとんど忘れちゃった
なぁ^^;そういえば、本楽大学の課題で、ミステリーランドランキング
なんかもやったっけ。懐かしい・・・。30作で新たにランクづけしても
面白いかもしれないな。ま、それには軽くでも全部読み直さないとダメだろうけど
(できるかー)。