ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

内村光良「金メダル男」/辻村深月「クローバーナイト」

どうもこんばんは。1月ももう終わりですね。あっという間だなぁ。
そういえば、昨日は東川篤哉さん原作の『探偵少女アリサの事件簿』やって
ましたね。本田望結ちゃん好きなので、放送を楽しみにしていました。
しかし、アリサのキャラ設定以外はほとんどオリジナルでしたねぇ。
良太がちゃんと出て来てほっとしましたけど(最初、キャラ自体削られたかと・・・)。
トリックを使わないと東川さん原作の良さが出ないと思うんだけどなぁ。
ミステリの出来自体はイマイチだったしな。原作に出て来た絵画トリックが冒頭に
出て来たのだけが救いだったかも。
望結ちゃん可愛かったし、連ドラ化してくれないかなー。


読了本は二冊です。


内村光良「金メダル男」(中公文庫)
映画化された同タイトルの小説版。映画は観てないんですが、ウッチャンが書いた
小説を読んでみたかったので借りてみました。
サクサクサクッと読めました。ツッコミどころしかないような話ではあるのだけど、
面白かったです。文章は読みやすいです。文芸的にはどうとも言えませんけど^^;
小学生の時に『神童』と呼ばれ、どんな分野でも金メダルを獲ることを目指すように
なった男、秋田泉一の一生を描いた作品。
とはいえ、神童と呼ばれるに相応しい活躍が出来たのは小学生の時のみ。その後は、
いろんな分野にチャレンジするも、その度に失敗し、挫折を繰り返す。それでも、
めげずに違う分野にチャレンジして行く姿は、傍から見るとアホにしか思えませんが、
なんとなく憎めなくて応援してあげたくなりました。よくもまぁ、これだけアホな
ことに入れ込めるものだ、と思うこともしばしば。高校時代に一人で立ち上げた
『表現部』でのバカバカしい行動の数々が最高でしたねー。そういえば、映画公開前
の番宣なんかの時、ちらっと土屋太鳳ちゃんと主役の子(確かジャニーズ)が白鳥の
着ぐるみ来て無表情でダンスしてるシーンが映っていたよなーと思い出しました。
あれがこのシーンかー、と思いました。しかし、その後、太鳳ちゃん(の役の子)と
あんな結末になるとは・・・アホなやつめ。更に未来の太鳳ちゃんがあんな結末を
迎えるなんて・・・と驚かされました。ただアホな話ってだけではなく、ちゃんと
人間の人生のシビアな面も描いているところはさすがだな、と思いました。
泉一の少年時代から現在までが時系列を追って語られて行く形ですが、現在に
近くなる終盤では、なかなかに感動的な逸話も挟まれていて、ちょっとホロリと
させられました。何といっても、途中から飽くなきアホな挑戦を続ける泉一を
陰から支える妻の頼子の存在が良かったですね。こんな男が、よくもまぁ、結婚
出来たものだ、とその奇跡にまずビックリでしたが(苦笑)。
彼女と、二人の子供の究一の存在が、ブレブレだった泉一の人生を大分軌道修正
してくれたかな、という感じがしました。でも、その後でまたブレ始めるんですけどね^^;
無人島生活のくだりには、さすがに「無理があるだろー!」とツッコミたくなりましたよ。
完全にお笑いの舞台のノリでしたね、そこは。
映画っていうよりは、舞台の方が合っているような感じもましたね。非現実感の
塊みたいな話ですし。変な(読めばわかります)ジャッキーチェン並のアクション
なんかも入ってますしね。
でも、バカみたいなエピソードの中にも、人に対する優しさが入っていますし、
前向きに頑張ろうという気持ちになれるお話だと思います。
映画の出来がどうだったのかはわかりませんけど、テレビで放映することがあったら
観てみたいかも。
ウッチャンの普段の芸風と人柄がそのまま現れているような作品でした。


辻村深月「クローバーナイト」(光文社)
辻村さん最新作。公認会計士の主人公と起業家の妻、保育園に通う二人の子供を持つ
四人家族の周りで起きる様々な出来事を描いた連作短編集。ママ友の不倫、保活、
小学校お受験、壮大な誕生日パーティ。子育てあるある満載の作品・・・では
あると思うのですが。
すいません、正直、私にはあんまりリアリティがなかったです。それもその筈、
この作品に出て来るエピソードの数々が、ほとんどセレブの世界の子育てあるある
なんですよ。いや、普通レベルの家庭でもあるのかもしれないけど、少なくとも、
私が知っている保育園・幼稚園あるあるにはほとんど当てはまらない・・・から、
なんか絵空事にしか思えなくって。子供いる人にはもうちょっと身近に感じられる
のかもしれないけど、それにしても、子供の誕生日会で数百万単位でお金使う家庭が
そんなにいるとは思えないのですが。保活とかお受験ネタなんかは、ネットやテレビでも
問題になっているから、まぁ、わからなくはないのだけど。それにしても、ちょっと
極端過ぎるエピソードが多すぎて。主人公の鶴峯夫妻が、そこそこの生活レベルの
家庭だから、それに合わせているから仕方ないのかもしれないですけど。なんか、
付き合っているママ友たちのレベルも結構なハイレベルだし。庶民とは違うなーって
雰囲気が出過ぎてて、ちょっと引いてしまった。うん、完全に妬みから来ているのかも
しれないですけどね(苦笑)。名門学校に入るためのお受験なんて、都心部の人にしか
理解出来ないのじゃないかなぁ。少なくとも、私が住んでいる市には、そこまで
ハイレベルの幼稚園とか保育園とかないし(都内ではありますが)。待機児童は多い市
だから、入るのが大変って意味では現実的なんだけども。設定都市は、品川・世田谷・
目黒辺りなのかなぁ。その辺りの主婦なら、すごく共感出来るお話なのかも。田園調布
とか成城とかさ。
なんか、こんなハイスペックな設定にしなくてもいいのになぁと思っていたら、
この作品が雑誌『VERY』で連載されていたと知って、なるほどーと思いました。
ターゲットが主婦層の年齢のファッション雑誌ですよね。たぶん(ほとんど中身
見たことないから、間違っていたらすみません)。
設定読者がそこならば、仕方がないかな、と。ああいうお洒落系の雑誌をその年まで
買う女性って、やっぱりある程度収入がある人じゃないのかなーと。主婦になっても、
身だしなみに気を使って、生活レベルを下げないように意識する人とか多そうだもの。
主人公の裕が、ごくごく一般的な常識を持っているところが救いではありました。
子育てあるあるネタは興味深く読んだのですけどね。子供を育てるのって、ほんとに
大変なんだなぁとしみじみ思わされました。ママ友付き合いとか、すんごい面倒
くさそう。週替りで交代で自宅でパーティとかさ。まぁ、その様子をインスタとか
フェイスブックとかに上げて楽しむのが今風なんでしょうけど。私には無理だー・・・。
百万単位のお誕生日会のお話は、実際セレブ幼稚園とかだとほんとにあるものなんでしょうか?
みんな旦那さんの仕事社長とかなの?あり得ない~・・・。裕が行ったママ友家で
行われた誕生日会レベルなら普通にありそうですけど、それにしても、その日の為に
壁紙まで変えて、バルーン業者でバルーンも頼んで・・・って、それだけでも結構
豪勢だと思うのだけど。普通の家庭でも今はこれレベルでやるのかしらん?お金が
いくらあっても足りないよなぁ、そりゃ。お誕生日会なんて、私にしてみれば
家族で内々でやればいいじゃない、って感じだけどね。もちろん、私が子供の頃にも
誰々さんちで誕生日会、ってイベントはありましたけどね。その頃とはレベルが
違うんだなぁ、と愕然としました。
軽めに読めるかと思いきや、それぞれの作品で出て来る問題は結構重い。ちゃんと
ミステリ的な仕掛けも入っているところはさすがに読ませるな、と思いました。
一番リアリティを感じたのは、ラスト一編。義母と志保による、息子の言語発達に
ついてのバトル。こういう、良かれと思って余計なこと言って、人を傷つける人って
いますよね~・・・。こんな、デリケートなことにズカズカと入り込んで来る志保の
母親の無神経さにムカムカしました。心配になるのはわかるのだけど・・・娘が
あれだけやめて、と訴えているのに。親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないの
かしらね。毒親まではいかないのでしょうけど、余計なお世話もいいところだと
苦々しく思いました。でも、最後に裕が義母に突きつけた言葉にスカっとしました。
やっぱり、裕は鶴峯家のクローバーナイトなんだなぁとほっこり。志保と裕はいい
夫婦ですね。やっぱり、家族はお互いに対する思いやりがないとダメですよね。
子育て経験のある人は、共感出来る部分が多いのではないかな。
ただ、辻村さん、結婚・出産されて、ちょっと作風が主婦目線にシフトして
来てしまった感じが個人的には残念。やっぱり、辻村さんの真骨頂は学生を主人公
にした青春小説って感じがするから。また、痛々しい青春ものを書いて頂きたいなぁと
思う今日このごろなのでした。