ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

沢村浩輔/「週末探偵」/文藝春秋刊

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沢村浩輔さんの「週末探偵」。


探偵稼業、始めました。ただし、週末限定
瀧川一紀は、大学時代の友人・湯野原海に誘われて、
男ふたりで探偵事務所を開業することに。
「あれって、なんだったんだろう?」と不思議に思いつつも、
そのままになってしまうような「ささやかな謎」の真相を解き明かしていく。
「最初の事件」、「桜水の謎」、「月と帽子とひったくり」、
「探偵たちの雪遊び」、「夏の蝉」、「ちょっと変わった依頼人」の6つの事件簿。

 

10万部突破『夜の床屋』の著者による最新長編!(紹介文抜粋)。


『夜の床屋』で一躍人気作家に躍り出た沢村さんの最新作。二作目は題材が好みで
なさそうだったんで食指が動かずスルーしちゃったんですが、こちらは軽く読め
そうだったんで借りてみました。
タイトル通り、週末だけの探偵業を始めた同級生二人組による、日常の謎
巡る連作短編集。とはいえ、中には結果的に殺人事件に繋がったものもあるし、
ラスト二編はかなり悪意に満ちた内容になっており、『ささやかな日常の謎』に
終始しているとは言い難い。もうちょっとライトに徹しても良かったような気も
しましたが。最後だけ急に作風が変わったかのように不穏な話になるので・・・。
ミステリとしては、確かにライト。週末だけ趣味の一貫のような形で探偵事務所を
始めた二人の元に持ち込まれるくらいの謎だから、そこはまぁ、推して知るべし。
二人のキャラは被ってはいないのだけど、イマイチ読んでいてどっちがどっち
わからなくなることもしばしばでした。二人で同じように推理するし。推理方法
とか閃き方法とかも、もう少しそれぞれの特色があれば良かったかな。
鉄道車両を改造した探偵事務所の雰囲気は素敵でしたね。男の子が憧れる秘密基地
そのままって感じ。月一万円でこんな場所が借りれるんだったら、私だって借りたい
くらいだ。こういう場所があるって羨ましいなーと思いました。
空き地に置かれた鉄道車両の謎、桜の木がないのに川に流れる桜の花びらの謎、
お洒落な帽子を被ったひったくり犯の謎、探偵たちが足跡をつけずに道路に雪だるまを
作った謎、郵便受けに毎日蝉の死骸が入っていた謎、誰もいない筈の家で、いきなり
午後の四時に目覚まし時計が鳴った謎。
ちょっと首を傾げる解決のものもありましたけど、なるほど、と思えるものも
ありました。七話目のラストは、内容が重かっただけにちょっと拍子抜けでしたけど。
六話目と七話目は繋がっていて、前後編みたいな体裁になっています。
個人的には、探偵たちが雪だるまを作るお話がほのぼのしてて好きだったかな。
少年とのやり取りも良かったですし。謎解きらしい謎解きはないので、箸休め的な
お話ではあるのですが。探偵たちと知り合ったおかげで、少年の辛い境遇がその後
少し改善されたのが嬉しかったです。
あと、蝉の死骸の真相が一番意外でした。死骸を入れた犯人にも驚かされましたし。
動機にはちょっと首を傾げましたけれど・・・。
探偵二人に関わる脇役キャラも良かったですね。特に、何かとおせっかいを焼いて
くれる町内会長の長谷川氏と、二人の行きつけのカフェ<JULY>のマスター須藤氏
はお気に入りでした。
ちなみに、主人公の探偵二人(湯野原・滝川)は平日はどちらもサラリーマン。
週末だけとはいえ、副業になるのでは?と思わせますが、探偵業では依頼人から
一切お金を受け取らないので、そこはセーフなんですね。ただ、魅力的な
謎でなければ依頼を受けない選り好み主義ですし、週末だけしか活動出来ない
ので、緊急の用件でないこと、警察絡みの事件でないこと、など、結構依頼の
条件が多い。結果、一見さんの依頼がほとんど来ないという。誰かの紹介とか、
二人の知り合いとか。本人たちは真剣に探偵になったつもりなんですが、傍から
見ると、趣味の一貫としか思えない状態ですね^^;まぁ、依頼が来なくても、
当人たちが楽しそうだからいいのかな。
今後もこのゆるい感じで週末探偵として活動していくようなので、続編が
期待できそうです。
読みやすかったですし、気軽に読めて楽しめました。