ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

秋川滝美「居酒屋ぼったくり7」/東川篤哉「さらば愛しき魔法使い」

こんばんはー。今日は久しぶりに爽やかな晴れの一日でした。お布団も干せて
からからになって良かった~。しかし、こんな気持ちのいい気候もあと僅か
でしょうか。暑い夏もイヤだけど、じめじめした梅雨の天気もイヤだなぁ。
まぁ、それが日本の四季なんでしょうが・・・。

 

読了本は今回も二冊です。

 

秋川滝美「居酒屋ぼったくり7」(アルファポリス
シリーズ第七弾。ペース早い~。前作で美音さんと要さんがムフフ~な
仲になって、この後どうなるのかな~と思ってましたけど、基本的に
作品の雰囲気は変わりませんね。いつも通り、常連客たちがやって来て
わいわいがやがややって帰った後、ひっそりと要さんがやって来て、
常連客たちとのやり取りの顛末を反芻する、みたいな。常連客たちとの
間では解決出来なかった問題も、要さんに話すと解決の糸口が見えて来る
から、要さんってやっぱり頭のいい人なんだろうなーと思いますね。
今回は、居酒屋ぼったくり最大の危機が描かれます。美音さんと要さんが
結ばれことで、快く思わない要さん側の親族たちが、美音さんに揺さぶりを
かける。でも、別れろと言われて簡単にはい、別れます、と答える美音
さんではありません。毅然とした態度で応じる彼女が、とてもかっこ良かった。
基本美音さんは馬鹿がつくくらいのお人好しだけど、ちゃんと芯はしっかり
した強い女性なんだなぁと思わされました。それにしても、要さんの祖父と
兄のやり方は汚かったですね。ネット上に、居酒屋ぼったくりの悪評を
拡散させるなんて。飲食店にとって、今の時代、一番怖ろしいやり方ですよね。
ただ、それが完全な風評被害って訳じゃないところが相手の狡猾なところで。
美音さん自身も、冷凍してあったとはいえ、賞味期限切れの食品を使って
しまったことで自戒の念を覚えてしまう。でも、ぼったくりの常連たちは、
そんなことで離れたりしなかった。彼らの、ぼったくりに対する愛情が
嬉しかったです。
要さんのストライキを、美音さんが一喝で止めさせたのが可笑しかったです。
せっかく美音さんの為にやってたのに^^;でも、そういう所が、美音さんの
良い所ですよね。
最終的には、要さんの祖父も兄も、そういう美音さんを認めて引き下がった
ので、溜飲が下がりました。なんだかんだで、二人とも要さんを心配して
反対していただけだったのだしね。ただ、だからといって二人がすんなり
結婚まで出来るかというと、そこはまた別の問題かもしれないですけどね。
唯一救いなのは、要さんの母親が美音さんの味方でいてくれることですかね。
普通は、こういう家柄だと一番反対するのが母親だと思うんですけど。
料理は今回も美味しそうなものがたくさん出て来ました。コロッケ風
スコッチエッグは食べてみたいですね~。ちなみに、私の実家では、シチュー
にご飯、普通に食べてました(作中で、シチューはおかずか否か論争が
出て来るんです)。ただ、さすがにご飯にかけて、とかはなかったかなぁ。
別々で出て来ましたね。汁物扱いだったのかも?(お椀に盛られて出て来てた)

 

東川篤哉「さらば愛しき魔法使い」(文藝春秋
シリーズ第三弾。もう三冊も出たのか^^;今回もゆるい作風は変わりませんが、
ちょっと目先の変わったミステリ部分は面白かったです。マリィは魔法少女
ですが、ミステリでわかるのは容疑者が犯人かどうかというところまで。
マリィの同居人で刑事の聡介は、マリィの判断から、犯人がどうやって
犯行を行ったのか、を推理します。聡介って、美熟女好きだしM体質だし、
抜けてる性格かと思いきや、意外と鋭い頭を持っているんですよね。
第一話は、顔がそっくりの異母兄を使ったアリバイトリック崩し。
ポルシェに造形が深い人なら、犯人が犯したミスに気がつくのかな~。
私には全然知識がないからわからなかったです。
第二話は、被害者が読んでいた本から犯罪の痕跡を炙り出すところが
面白かった。本に挟んであった栞に書かれていた名前から、ああいう推理が
飛び出すとは思いませんでした。うーん、上手い。
第三話は、ダイイングメッセージもの。血文字の偽装からああいう事実が
隠されていたとは。アの後にああいうものが書かれていたとは!現場に
残されたアイロンと、あの小道具が効いてましたね。私も愛用していますけど、
なるほど、こういうミステリトリックに使えるんだなーと感心しました(いや、
人を殺す予定はないですけどw)。あの道具がああいうものにも使えるとは
知りませんでした(使う予定はないですけど!ww)。指示代名詞ばかりで
すみません・・・。
第四話は、犯人が握りしめていたタバコの吸い殻をヒントに、犯人が導き出される
というもの。空き缶の使い方には納得。やる人多いですね、確かに。被害者の
生活習慣にも鍵が。窓から手を降っていた理由にも唸らされました。よく考えて
あるなぁ。ある点で引っかかりを覚えそうなところに、加害者が風邪を引いていた、
という伏線もちゃんと張られていたし。
アホみたいな作風でも(←失礼)、ほんと、ミステリとしてはちゃんと成立して
いるところがさすが。トリックも、ありそうでなかった目線のものが出て来るし。
イデアがすごいです。やっぱり好きだなー、東川ミステリ。
タイトルでイヤな予感がしていたのだけど、まさかのラスト。唐突過ぎて
びっくりした。ムーだかマーだかの記者が出て来た時点でもしや・・・という
危惧は覚えていたのだけど・・・こんな唐突に終わっちゃうのはイヤだなぁ。
また何食わぬ顔で聡介の前に姿を見せて欲しいです。これでシリーズ終りは
寂しい。次巻が出ることを祈ります。