ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

千早茜「ガーデン」/松尾由美「ニャン氏の事件簿」

こんばんは。今日は梅雨の中休みって感じで暑い一日でしたね。
今日は小林麻央さんのニュースにショックを受けました。
いつかこんな日が来るのかな、とは思ったけれど、こんなに早いとは・・・(絶句)。
あんなにお若くて美しくて、イケメン夫と可愛い子供に恵まれて、みんなに愛されていて
完璧に見える人が・・・神様は意地悪です。最期に海老蔵さんに遺した言葉がせつなすぎました。
そんな風に愛する人に看取られて、最期は幸せに逝ったのかな、と思いました。
ご冥福をお祈り致します。


今回も二冊読了。

 

千早茜「ガーデン」(文藝春秋
千早さん最新作。今回の主人公は、ザ・草食系!って感じの青年。幼いころに父親の都合で
発展途上国で暮らした帰国子女。植物が生い茂った家で過ごした影響で帰国後も植物を偏愛し、
現在は一人暮らしの部屋で植物に囲まれて暮らしています。仕事は、ミドルエイジ向けの
生活デザイン雑誌の編集者。仕事でモデルの女の子たちと接する機会も多く、アプローチも
されるけれど、人間の女の子には気持ちが行かず、植物と接する方を好む、真の草食男子、羽野。
生活デザイン雑誌なんていうオシャレな雑誌の編集者っていうのが非情にしっくり来る
タイプの青年なのだけど・・・うーん。私は、あんまり好感持てなかったです。何か
どんな物事に対しても一歩引いて部外者然としているっていうか。もちろん、それは
人に対してもそうで。幼い頃の海外生活が彼のそういう性格の基盤を作った訳なのです
けれど。性格は穏やかで優しいのだけど・・・何かロボットのような、無機質な印象で、
人間味がないというか。基本的に飄々とした雰囲気の人は好きなタイプなのだけど、彼は
ちょっと違うんですよね。女性に興味ないわりに、誘われたら二人で会ったりして思わせぶりな
態度を取ったり。気がないなら、無視すればいいのに。それすら、面倒だから、流されて
会っちゃうっていう。『帰国子女』というレッテルを張られて、嫌な思いをしてきたから
そういう性格になってしまったというのは理解出来るのですけどね。帰国子女に対する
周りの反応あるあるには頷けるところが多かったし、考えさせられましたけれど。
確かに、帰国子女って聞くだけで、ちょっと他と違う反応しても「ああ、帰国子女だからね」
みたいな感じになっちゃうと思うから。それって、レッテル貼ってるのと一緒なんですよね。
私の身近な同級生には帰国子女とかいなかったから、そういう状況になったことはないの
ですけども。
ただ、そんな羽野の心を少しだけ揺さぶったのが、彼が取材している建築デザイナーの愛人、理沙子。
彼女に愛情を抱いたとか、そういうのではないとは思うのだけど・・・羽野が彼女の言動に
翻弄されるところは、ちょっと小気味良かった。まぁ、理沙子の言動自体は、私にはさっぱり
理解出来ないことばかりでしたけど。彼女自身に好感を持てたかというと、ほとんど持て
なかったですし。でも、あの人間無機物みたいな羽野の心を動かしたという意味では、
大した人物だと思いましたね。彼女の愛人で、建築デザイナーの曾我野は、最低の男でしたが。
彼女のことを、自由に出来る愛玩物としか思っていないところに、ほとほと嫌気がさしました。
終盤、理沙子の言動に手を焼いて、彼女を羽野に丸投げするところとか、もう。そこで逃げるか!
と腹が立ちました。
でも、理沙子の出現で羽野の世界が大きく変わったということはなく、物語は淡々とあっけなく
閉じてしまうので、最後はちょっと食い足りなさはありました。ただ、羽野の決意には、
ちょっと意表をつかれたかも。そこまで、誰かに執着したのって初めてじゃないのかな。
ただ、この後で羽野が理沙子さんとどうにかなるってのは、あまり想像出来ないんだよなぁ。
結局、羽野はこのまま一人で植物と暮らして行くような気もする。誰かと一緒にいる姿が
想像出来ないというか・・・。とはいえ、未来を感じさせる終わり方なのは良かったです。
ちょっと、その後の彼が気になりますね。
羽野に関して唯一共感出来るところは、植物に対する愛情の部分かな。私も育ててる植物が
病気になったらおろおろしちゃうし、すくすく育つと嬉しいし。愛情をかけた分、綺麗に
花が咲いたり実が生ったりしてくれると、幸せな気持ちになるし。植物って、かけた愛情に
きちんと応えてくれるところが愛おしいんですよね。水あげ忘れたりすると、すぐに
萎れちゃうしね。お世話することの楽しさを味わわせてくれる存在ですね。羽野が、植物に
囲まれて暮らしたいって気持ちはなんか、理解できました。



松尾由美「ニャン氏の事件簿」(創元推理文庫
松尾さんの文庫新刊。かなりぶっとんだ設定で、面食らわされました。だって、ネコの
実業家が、その秘書を従えて、話を聞いただけで不可解な出来事を解決しちゃうのだから。
かといって、ネコがしゃべれるって訳ではなく、その推理は、いつも従えている丸山という
秘書の通訳を通して語られます。状況を頭に思い浮かべると、かなりシュール。実業家って
ところも、どこまで真実なのかいまいちわからず仕舞い。ただまぁ、そういう設定だと
受け入れた上で読めば楽しめるかな、と。
ひとつひとつのミステリの真相は、なかなか本格っぽくて面白かったです。若干、どこかで
読んだようなタイプのものが多かった印象もありますけれど。割合、オーソドックスな
本格の真相というかね。そういうのは大好物なんで、私は楽しめましたけど。一番感心した
トリックは三話目の『山荘の魔術師』かなぁ。一部、トリックで腑に落ちないところも
ありましたけど。なかなか大胆なトリックというか。続く『ネコと和解せよ』の真相も
意表をつかれましたね。逆転の発想というか。あ、そっちか、みたいな?
ちょっと面白かったのは、大学を休学してバイトに明け暮れるモラトリアム中の主人公が、
なぜか行く先々でその実業家ネコとその秘書に会ってしまうというところ。何度も回数を重ねて
来ると、出会いの偶然が過ぎて、何かからくりがあるのでは?と思えて来ましたけれど。実は、
私は、てっきり主人公の佐多の祖父が仕向けているのかと思ってたんですが・・・真相は
ちょっと違ってました。祖父も最後に物語に絡んでは来るのですけども。
最後に主人公は、ふたつの就職先で迷うことになります。できれば私は、ニャン氏(ネコ)の
方の申し出を選んで欲しかったなぁ。そうすれば、続編だって書けたと思うのだけど。
佐多君がああいう決断をするとは思いませんでした。決められたレールの上を歩くのは
嫌なのかと思いましたが・・・。まぁ、将来のことを考えると、賢い選択ではあるのかな。
でも、ニャン氏と行動を共にする人生の方が、きっと面白いことにたくさん出会えそうだと
思うけどね。
ちょっと新しいタイプの安楽椅子探偵ものでした。ネコ好きなら楽しめるのではないかな。