ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

村山早紀「桜風堂ものがたり」/渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」

どうもこんばんは。東京は今日も暑かったです。梅雨はどこ行っちゃったのかなぁ。
九州の方は大変なことになっているのに・・・。
余談ですが、以前某記事で欲しいと言っていたストウブ鍋を、先日ついに入手しました!
ずっしり重みがあって、蓋がぴっちり閉まるので、無水調理が可能らしい。
憧れの無水鍋~。ネット検索して、ストウブ鍋を買ったら、とりあえず蒸し鶏
作ってみなさいというストウブヘビーユーザーの方のブログを参考に、早速
作ってみたら・・・むむ!う、うまい~!蒸し鶏は今まで何度もレンジや普通の鍋で
作ったことがあったのですが、仕上がりのふっくら感が全然違う~~。胸肉なのに
柔らかくてジューシー。昨日はキャベツ半玉使ったトマト煮込み風のロールキャベツ
(包まず、キャベツの中身をくり抜いて具を入れる)を作ったのですが、それもめっちゃ
美味でした。使う調味料や具材は一緒なのに、味がここまで違うとは。
いきなり料理上手になったようだ。恐るべし、ストウブ鍋。
高いだけあるわ~(と言っても、ヤフオクで定価のほぼ半額で手に入れましたw)。
いろいろ活躍してくれそう。買って良かったぁ。


読了本は二冊です。


村山早紀「桜風堂ものがたり」(PHP研究所
巷で大絶賛されており、本屋大賞にもノミネートされた話題作です。村山さんの作品は、
確かものすごい昔に児童書みたいなやつを読んだ覚えがあるのですが(多分)、ほぼ初めまして
といってもいいような作家さんです。コンビニうんちゃらシリーズが評判良いようなので、
気にはなっていたのですけどね。文庫なので、結局読み逃して今に至るって感じです。
でもって、本書ですが。
・・・うん。確かに、本屋大賞にノミネートするような作品だと思います。何せ、新刊書店が
舞台ですし、登場人物に悪い人がほとんど出て来ない(冒頭の、万引き少年すら悪い子
ではない。強いて言えば、彼に万引きを強要した友人たちは悪い奴でしょうが)。
人情味溢れる、心温まる作品なのは、間違いのないところ。本屋に纏わるお話は私も大好き
なので、基本的には楽しめたのですが・・・。
うーん。でも、何だろうなー、何か、ハマりきらなかったというか、巷の大絶賛に乗っかる
ところまではいかなかったのですよね。
何が引っ掛かったのかっていうと、やたらにご都合主義的な展開が多いんですよ。
そんな偶然ある!?って要素が、とにかく要所要所で出て来る。リアリティをどうこう言う
つもりはないのだけど、そこまで都合良く行くかなぁ?っていうひねくれた考えがついつい
頭をもたげてしまい。ちょっと引いて読んでしまったところがありました。
あと、登場人物それぞれの掘り下げも、もうちょっと踏み込んで書いて欲しかった気がします。
二つの書店(一整が最初にいた銀河堂書店、その後で任される桜風堂書店)それぞれに
登場人物が出て来る為、話の筋が分散されてしまって、どのキャラも動かし切れずに終わって
しまっているような印象がありました。もっと焦点を絞って書いた方が良かったんじゃないの
かなぁ。せっかくタイトルが『桜風堂ものがたり』なのだから、もっと桜風堂よりの話にする
べきだったのでは。どちらかというと、二つの書店で強いエピソードがあるのって圧倒的に
銀河堂の方って感じだし。地方の書店独特の、のんびりとした温かい桜風堂の雰囲気がとても好き
だったので、そちらがメインのお話だったら、もっと個人的にハマっていたと思う。桜風堂側の
登場人物の方がずっと好感持てましたし(老齢の桜風堂店主、孫の透くん、猫のアリス、
町長の福本さんなど)。
もちろん、銀河堂書店もとても良い本屋だとは思うのですけれど。ただ、女性店員の苑絵や
渚沙のキャラはちょっと苦手だった。特に、苑絵の、何かっていうとすぐ泣く性格には
かなりイラっとさせられました。良い子なのだろうけど、そんなに簡単に職場で泣くなよ、
と言いたくなってしまった。基本的に、この作品、ほとんどの登場人物が、すぐ泣く。私が
一番嫌だったのは、実はそこかもしれないです。泣くのが悪いっていってるんじゃないのだけど、
人間、人前でそうそう涙を流せるものじゃないと思うのだけどなぁ。特に職場ではね。
どうやら一整と苑絵はお互いに想いを寄せているようですが・・・私は一整の相手は、苑絵
よりは渚沙の方がいいなぁ。本の趣味とか、ばっちり合う訳だし。一整が、渚沙の例の正体を
知ったら、どう思うのかなー。

 

何か、悪いことばっかり書いてるみたいだけど、もちろん気に入った部分もたくさん
ありますよ。特に、一整とオウムの関係はとても好きだった。キバタン、可愛い!
あと、一整と透君の関係も良かったですね。透君、なんて健気な良い子!料理も出来て、
賢いし、優しいし、こんな子供が欲しい~!って思っちゃいます。祖父に引き取られた
事情には腹が立って仕方がなかったです。あのまま、元の家に引き取られたらと思うと・・・
一整が桜風堂を引き受けてくれて本当に良かったと思いました。
桜風堂店主のことも、てっきりもうダメかと思っていたので、ほっとしました。透君に
とっても、良かったですね。
あと、私もブログをやっているので、一整のブログでの仲間とのやり取りなんかは、
共感出来るものがありましたね。実際は寡黙だけれど、ブログでは誰とでも陽気にやり取り
出来るっていうのも、わかる気がするな。
まぁ、いろいろ文句も書きましたけども、概ねは楽しめたのですよ。作者は続編も構想に
入っているようなので、回収されていない伏線のことも気になるし、続きが出たら
追いかけて行きたいと思います。


渡辺優「自由なサメと人間たちの夢」(集英社
新聞の書評で絶賛されていたので、気になって借りてみました。本書で二作目の、新人
さんのようです。もちろん、初めましての作家さん。
これはまた、なかなかに個性的な雰囲気を持った作品でしたねぇ。でも、絶賛されるのは
頷けるものがあります。私も、光るものを感じました。
短編集なのですが、どのお話の主人公も大抵が病んでます。冒頭のお話の主人公なんか、
のっけから『さて、私は死にたい』ですからね・・・^^;いきなり、自殺願望から
始まるのだから、面食らわされました。病院の精神科に入院している主人公の言動は、
はっきり云って嫌悪感しか覚えません。次から次へと他人の迷惑になるような行動を
繰り返して、周りを辟易とさせる。その上、自分は『偽物』の患者だと嘯く。一体、
彼女の精神は病んでいるのか、それを偽っているだけなのか。終盤、次第に彼女の環境が
明らかにされて行って、最後にあのオチ。おっと、そう来るか!と思いましたねー。
最悪の結末を想像していたので、意表をつかれました。
続く『ロボット・アーム』は、最強の義肢を手に入れることに取りつかれて行く男の
話、その後の『夏の眠り』は、夢日記をつけることで現実と夢の境が曖昧になって
行く青年の話、次の『彼女の中の絵』は、美術館で出会った女性の想像の中の絵を実際に
描くことに夢中になっていく中年の話、その後の『虫の眠り』は、虫とあだ名をつけられた
女子高生が、クラスの同級生をいきなりボールペンで刺す話。そして、最後の二作は、
サメに夢中になるキャバ嬢の話と、キャバ嬢に夢中になられたサメの話。
それぞれにみんな問題を抱えているのだけど、最後は少し光を感じられるところが、
良かったですね。特に、ラスト二作のサメのお話は好きだった。主人公の凉香は勤務
態度もひどいし、陰でクスリに手をつけるようなどうしようもない人間なのだけど、
サメに対する愛情だけは本物で、サメが言うことを素直に信じてしまう純粋なところも
持っている。言葉をしゃべるサメというファンタジックな設定も、クスリをやっている
という伏線があるので、割りとすんなり受け入れられました。ただ、クスリのせいで
幻覚が見えているのかと思ったら、終盤で意外な事実を知ることになるのですけれど。
更に、最後の作品で、またそれが覆されたりして。結局、サメの正体は○○だったって
ことなのだろうなぁ。サメの○○が出て来た話は、いまだかつてないのじゃないだろうか。
そういえば、このお話読んで、私も小さい頃に映画のジョーズを観て、サメがトラウマ
になっていたことを思い出しました。あの頃はまだ純粋だったから、特撮とかで撮っている
とかわからなかったから、サメに食われた人間の映像は、実際に撮っているのだと
信じて疑っておらず、観た後怖くて仕方なかったっけ。だってリアルだったんだよ・・・。
本書のサメに関しては、言葉を話す博識のサメのキャラクターがとても良かったですね。
凉香との関係が良かったです。ラストはちょっと切なかったですけど。サメのおかげで、
凉香も少し成長出来たようなので、良かったです。
言葉の選び方とか、設定の奇抜さとか、かなり独特のセンスをお持ちの方だと
思いました。あと、書き出しが巧い。『虫の眠り』の、『榎本美結は虫に刺された』
なんか、ほんと巧い。その後の文章読んで、ああ、そういう意味か!とわかるっていう。
これは、今後人気出そうな気がするぞ。評判の良いらしいデビュー作も
是非、読んでみたいと思いました。今後もチェックして行きたい作家さんですね。