ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東川篤哉「ライオンは仔猫に夢中~平塚おんな探偵の事件簿3~」/宮下奈都「つぼみ」

どもども。今日は真冬の寒さでしたね~。我が家では早々とこたつを出しました。
ここ連日、私がこたつこたつと騒いでいたので、相方がついに折れて出してくれました
(我が家では毎年10月~11月にかけて、こたつを出す出さない戦争が勃発します)。
これで今年の冬も乗り切れそうだ。


読了本は今回も二冊です。


東川篤哉「ライオンは仔猫に夢中~平塚おんな探偵の事件簿3~」(祥伝社
シリーズ第三弾。意外とコンスタントに出てますね。この古臭い感じが人気あるの
かしら・・・(←何気に酷)。
今回は、大倉崇裕さんのいきもの係シリーズに触発されたって訳じゃないのでしょうが、
おんな探偵たちが関わる事件は動物絡みのものが多かったですね。って、よく考えたら、
前の話でもカメが出て来てたんでしたっけね。

 

では、一作づつ感想を。

 

第一話『失われた靴を求めて』
中堅企業の社長の娘がビルの屋上から落下して死体となって発見された。警察は自殺
との判断を下したが、父親は納得が行かず、エルザたちに娘の死を調べて欲しいと
依頼にやって来た。娘の部屋を調べた探偵たちは、父親が送ったという赤い靴が彼女の
部屋から消えていることに気付く。何者かが持ち去ったらしいが――。
娘を殺した犯人に関しては予想通り。何かあるな、と思ってた人物だったので。
でも、靴がなくなっていた真相には意表をつかれました。赤い靴が捨てられた理由にも。
さすがに、巧いですね。

 

第二話『密室から逃げて来た男』
大学生の松崎は、目が覚めるとサークルのマドンナの部屋にいた。しかも、同じ部屋
には彼女の死体が!昨夜のことを全く覚えていない松崎は必至に記憶を探るが、身に覚えがない。
ドアや窓は全て施錠されていた。部屋の中にいたのは、松崎と彼女の死体と白い仔猫のみ――。
そうこうしているうちに、外からサークルの仲間が彼女を呼ぶ声が聞こえて来た。焦った松崎は、
ドア付近にいたサークル仲間を突き飛ばし、強行突破で逃げ出した。松崎は、エルザたちが行きつけの
スナックのママの遠縁だった。ママに頼まれたエルザたちは、松崎の無実証明するべく、調査を
始めるのだが――。
死体のダイイングメッセージにはちょっと脱力。その事実を伝える為に、ピースサイン
するっていうのはないわ~。今時の大学生って、子供の頃そんな遊びしてるのかなぁ?密室の
作り方は面白かったけど。実現出来るかどうかは疑問ですが・・・。

 

第三話『おしゃべり鸚鵡を追いかけて』
おんな探偵たちの元に、女性の依頼人がやって来た。依頼内容は、先日亡くなった叔父の家から
逃げ出した白い鸚鵡を捜して欲しい、というもの。彼女の叔父は、一人暮らしの自宅の階段から
足を滑らせて亡くなったらしい。死体は、叔父の一人娘がたまたま家を訪れ発見したそうだ。
娘が自宅のドアを明けた際、鸚鵡が入れ違いに出て行ってしまったのだという。エルザたちは
鸚鵡捜しに乗り出す。しかし、見つけた鸚鵡を捕獲しようとしたエルザが何者かにクロスボウの矢
を打たれて負傷してしまう――。
犯人が鸚鵡を捕まえようとしていた理由はちょっと拍子抜け。美伽が考えた通りだとは思わなかった
けどさ。オーちゃんもミーコみたいに探偵事務所で飼えば面白かったのになー。鸚鵡が長生き
なのは知っていたけど、80年生きる個体もいるとは驚きでした。

 

第四話『あの夏の面影』
エルザたちの元に、お嬢様風の女の子が依頼にやって来た。彼女は平塚市民銀行頭取の娘だそうで、
本物のお嬢様だった。依頼は、付き合っている彼氏の浮気調査をして欲しいという。最近、彼氏の
様子が心ここにあらずなことが多く、自分以外の女性のことを考えているふしがあるという。
探偵たちは彼氏のことを調べ始めるのだが――。
これは後半の展開にあっと言わされましたね~。最初に出て来た伏線のことなんて、すっかり
忘れてました。浮気調査の結果にほのぼのした気持ちでいたら・・・まさかの結末。冷水を浴びせ
られたような気持ちになりました。これは素直に気持ちよく騙されましたね。巧い!


キャラクター等はいまいち気に入らないのだけど、やっぱりミステリとしては面白い。個人的には、
地味に登場回数の多い宮前刑事が結構お気に入り。バレンタインでエルザと美伽から明らかな
義理チョコをもらってハイテンションになってる辺り、可愛いやつだなーと思いました(笑)。


宮下奈都「つぼみ」(光文社)
宮下さん新刊。『スコーレNo.4』という作品の続編?スピンオフ?だと聞いていたので、
できれば『スコーレ~』の方から読んでおきたかったのだけど、結局読めずに借りる羽目に
なってしまった^^;そちらも以前から評判が良さそうなので読みたいと思っていた作品
ではあったのですけどね。
読んでみたら、前半三つは微妙にリンクがあるものの、基本的にはそれぞれ単独で読んでも
差し支えない短編集でした。結局、どれがその『スコーレ~』の続編なのかは未だにわからず。
まぁ、内容的に繋がっている訳じゃなさそうなんで、そのうち読んで確認すればいいか。
前半三つは、華道をやっている女性たちがそれぞれに主人公。私も大学時代華道やってたので、
わかる部分もありましたけど、三話目の主人公紗英のお花の感覚に関しては、あんまりよく
わからなかったですね。なんか、面倒なタイプの子だなぁと思いました^^;大切に温室の中で
育てられると、こういう子になるのかなーって感じ。華道部顧問の先生に対する態度とか、
ちょっとイラっとしましたね。基本的には良い子なのでしょうけど。好きは好き、嫌いは嫌いと
はっきり言えるタイプ。理性よりも、感覚で生きているっていうのかな。こういう子って、
ちょっと苦手だったり。それぞれの時代で、必ず彼女に敵意を向ける人間がいるっていうのが
ちょっとわかる気がする。自分ではそういうつもりがなくても、微妙に人にイラっとさせる
何かがある性格なんじゃないのかな。朝倉君には好感持てましたけどね。
一作目の『手を挙げて』は、主人公和歌子に対する彼氏の母親の遠回しな嫌味にムカムカ
しました。母親が言った嫌味をそのまま彼女に告げてしまう無神経な彼氏にも。この親にして
この子あり、なんだろうなぁと呆れました。結婚したら、嫁姑関係はこじれそうだけど、
大丈夫かな・・・^^;
後半三つは単独の作品。その中では、5作目の『なつかしいひと』が好きだったかな。
ベタな作品だけど、優しくて、切ない。これだけちょっとファンタジックな設定で、宮下
さんにはちょっとめずらしいのかも?
最後の『ヒロミの旦那のやさおとこ』は、ちょっと変わった作品。でも、学生時代から
大人になっても変わらない女友達三人の関係がいいな、と思いました。ヒロミのキャラが
いいですね。最後になるまで本人が出て来ないから、回想シーンに出て来るヒロミと
大人になったヒロミの性格が変わっていたらイヤだなぁと思っていたのだけど、ヒロミは
ヒロミのままでほっとしました。結婚したり妊娠して子供が出来たりすると女友達の
関係性って変わって来ることがほとんどだと思うのだけど、この三人はきっとずっと
この先もこのまんまなんだろうな、と思えて羨ましかったです。
どのお話も、特別に大きな事件が起きたりする訳ではないのだけど、日常のちょっとした瞬間を
みずみずしく切り取ったお話ばかりで、人間ってこうだよねって思える。やっぱり宮下さんの
感性好きだな、と思いました。