ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー」/講談社タイガ文庫刊

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「謎の館へようこそ 白 新本格30周年記念アンソロジー」。

 

東川篤哉『陽奇館(仮)の密室』
山の中で突然の雷雨に見舞われ、偶然見つけた花巻氏のお屋敷に助けを求めた私と
探偵の四畳半一馬。快く迎え入れてもらえたが、翌日、お屋敷のすぐ近くに建っている
建築途中の『陽奇館』で花巻氏が殺害されていた。現場は密室状態だった。犯人の手口
とは?
似たようなトリックを読んだことはあるので、さほど目新しさはないのですが、
この方法で『○(漢字一字)をかける』というところは新鮮でした。そして、もっと
意外だったのは、謎解きが終わったその後の探偵と助手のその後。東川さんが、こういう
結末をもってくるとは。このアンソロジーの為の作品だったことがよくわかりますね。

 

一肇『銀とクスノキ青髭館殺人事件~』
何人もの人が行方不明になっていると噂がある奇妙な廃屋敷『青髭館』で、私は
クラスメイトの七雲恋を殺した。しかし、翌日再び館を訪れると、七雲の死体は
消えていた。屋敷を調べていると、同じ高校の罪善葦告と出会う。罪善は自らを
『名探偵』だというのだが――。
罪善って、すごい名前だなぁと思ってましたが・・・そういうことでしたか。
死体消失の謎も含めて、こういうオチの作品はさほど好みではないかなぁ。
罪善君のキャラが良かっただけに、ちょっと残念かな。

 

古野まほろ『文化会館の殺人―Dのディスパリシオン』
東京吉祥寺の井の頭文化会館で行われた高校生たちによる吹奏楽コンテストで、
優勝候補と目された吉祥寺南女子高のホルン四重奏は、散々な結果に終わった。
一番奏者の御殿山絵未が、出だしのDの音を吹き間違えたことで、その後の演奏も
ボロボロになってしまったのだ。そして、演奏が終わった直後、御殿山はその場を
走り去り、その後学校の校舎の四階から転落して死んだ。自殺かと思われたが、
真相は――。
御嬢様と友崎警視の関係性がよくわかりませんでしたが、いかにも名門女子高って
感じの語り口がまほろらしい作品だなーと思いました。犯人に関しては全く意外性
とかはなかったですね^^;

 

青崎有吾『噤ケ森の硝子屋敷』
すべてが硝子で出来た美しい硝子屋敷で女実業家が殺された。現場となった部屋は
窓が全て施錠されており、唯一開いていたドアは、カメラ映像が記録している限り、
被害者以外誰も出入りしていなかった。犯人はどうやって密室から出入り出来たのか――。
これはロジックも端正だし、非情にわかりやすくて個人的にはかなり好みの作品でした。
ただまぁ、こういう盲点をつくトリックは好きなのだけれど、さすがにアレがなかったらあんな
状況だって誰かが気付くんじゃないのかなぁ・・・とはツッコミたくなりましたね(苦笑)。

 

周木律『煙突館の実験的殺人』
目が覚めたら、突然見知らぬ部屋にいた。部屋の外に出てみると、他にも同じように
閉じ込められていたと思しき人々が。すると、不可解な声で、不可解なアナウンスが
あり、自分たちがある実験の為この建物(煙突館というらしい)に閉じ込められたことが
判明する。ここから出る為には、これから起こる事件の犯人を推理して、その人物を指摘
しなければならないというのだが――。
これはなかなかに目の付け所が面白い作品。ただまぁ、好きかと聞かれると、こういう
タイプの作品はそんなに好みではないけれど。いろいろと設定にツッコミ所はあるものの、
ミステリ的にはよく出来ているのではないかと思いました。ただ、ラストは救いがなさすぎ
ゲンナリ

 

澤村伊智『わたしのミステリーパレス』
わたしは付き合って間もない彼とデートの約束をした。しかし、時間になっても彼は
なぜか現れない。心配する私の前に、彼の中学時代からの友人だという男が走って現れ、
彼が事故に遭って病院に運ばれたから一緒に来て欲しいと言う。車に乗り込んだ私だったが、
なぜか意識が遠のき、次に目覚めた時には、見知らぬ部屋にいた。私は拉致監禁
されたのだろうか――。
これはミステリーというよりはホラーよりの作品ですかね。ただ、ホラーというほど
怖くもないし、ちょっと微妙な読み心地。読書メーターでは高い評価の方が多かった
けれど、個人的にはそんなにいいと思わなかった。『館』がテーマなので、できれば
本格要素を取り入れて欲しかったなぁ。ま、ホラーを書く作家さんにそこまで
求めるのが間違っているのかもしれないけれど。気になっていた作家さんなので、
長編も読んでみたいと思うのですけどね。


初めましての作家さんも多く、『新本格』と銘打たれた作品集には相応しい、割合
実験的な作品が多かったのではないかな。これを機に、長編も読んでみたいと思える
作家さんもいたので、今後チェックしていきたいと思います。