ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「走る?」/<アミの会(仮)>「アンソロジー 迷ーまようー」

急に真冬の寒さになりましたね(><)。今日の朝はほんとに寒かった~~~!
気温の変化についていけず、若干風邪気味のワタクシです^^;
我が家のメダカさんたちも水温が下がって来て動きがのんびりになってきました。
二日ほど前まで毎日卵を産んでいたメスのミツも、さすがに産卵しなくなりました。
そして、第二弾で生まれた11匹のベビちゃんたちも、ついに昨日二匹目の犠牲者が・・・(涙)。
結局、今現在生きているのは、最初に生れた6匹のうち2匹と、第二弾で生まれた11匹の
うち9匹の合計11匹。ネット等見ても、稚魚の生存率って半分くらいらしい。やっぱり、
成魚まで育てるのは難しいのですね。だから、あんなに毎日卵を産むんだろうなぁ。
これからもっと寒くなって行くから、あと何匹生き残れるかな・・・全員元気に育ってほしい(ToT)。


読了はアンソロジー二冊です。


「走る?」(文春文庫)
文字通り、『走る』をテーマにした14編からなるアンソロジー。『Number Do』という
雑誌に掲載された作品だそうです。あのNumerの陸上版みたいな雑誌なのかな?(違ってたら
ごめんなさい^^;)
空前の市民マラソンブームということで、こういう題材だと身近に感じられる人も
多そうです。走ることの気持ち良さを教えてくれるような作品もあれば、ちょっと
変わった切り口の作品もありました。
正直、お目当ての中田さんの『パン、買ってこい』以外はさほど心に残る作品はなかった
かなぁ・・・。逆に、冒頭の中田さんが良すぎたというか。短いのだけれど、やっぱり巧いなぁ。
不良にパンを買いに行けと言われた気弱な主人公が、毎日走ってパンを買いに行くうちに、
走ることにハマって行くお話。不良好みのパンを独自でリサーチするくだりも微笑ましかった。
傍から見ると完全にいじめにしか思えないのだけれど、本人は全くそう思ってはおらず、
不良好みのパンを買いに行くことに喜びすら覚えているように感じられるところが
面白かったです。最後、焼き立てパンをめぐる不良くんと主人公のやり取りも良かったです。
あとは、初めましての作家さんでしたが、遠藤徹さんの『桜並木の満開の下』も好き
だったな。学校のマドンナと一緒に朝走ることになった主人公が、毎朝のランニングで
走ることに目覚めて行くお話。マドンナとのやり取りが好きでした。最後はちょっと
切ないけれど、東京で再会出来るかもしれないという未来への希望が仄見えたところが
良かったですね。
あとは、こちらも初めましての、服部文祥さんの『小さな帝国』も印象に残りました。
高校時代に、好きな女子を巡って1500メートルを競い合った男子二人が、大人になって
再びマスターズ陸上で対決する話。最後のオチにくすり。女子が選ぶのは、結局
足の速さなんて関係なく、こういうイケメンだってことなんですかね(苦笑)。
他は全体的に可もなく不可もなくって感じかなぁ。ちょっと合わない感じの作品も
ありましたし。
気に入った作品を振り返ると、走ることで青春を感じられるような作品が好みだった
みたいですね(笑)。
前はジムでたまにマシーンで走ったりしてたのだけど、今はプールだけのコースに
変えてしまったので、最近は全然走るって行為をしていないんですよね。たまには走って
みるのもいいのかな~と思いました(まぁ、走らないと思うけど!w)。


<アミの会(仮)>「アンソロジー 迷 -まよう-」
少し前に読んだ「惑-まどう-」と対になって出たアミの会(仮)によるアンソロジー
寄稿作家さんが毎度ながら豪華。今回、惑の方と一緒で、男性作家も二人ゲスト寄稿
しています。乙一さんと大沢在昌さん。こちらも豪華!
どの作品もひとひねりあって、読み応えありました。さすがのクオリティ。これの前に読んだ
『走る?』の方がちょっと食い足りない感じだったので、余計にそう思ってしまったのかも^^;
では、一作づつ感想を。

 

近藤史恵『未事故物件』
東京の出版社に就職が決まった初美は、憧れのひとり暮らしを始める。始めは戸惑うことも
多いひとり暮らしだったが、次第に慣れて行った。しかし、ある日初美は、物音がして朝の
四時に目が覚めた。どうやら、上の階の住人がこの時間に洗濯機を回しているようだ。一日
だけなら我慢出来たが、次の日もまた次の日も同じ時間に洗濯機で起こされた。これは、
苦情を言うべきなのか――。
朝の四時に洗濯機回されるのはイヤですねぇ。私もアパートに住んでいた時、上の階の
住人が早朝とか夜中とか変な時間に洗濯機回してて、すごい迷惑だったことあるんで、
初美の気持ちはよくわかりました。しかし、まさか最後ああいう展開が待ち受けているとは。
ぞぞーっとしました・・・。

 

福田和代『迷い家
塩尻は、飲みすぎて自宅に帰り着き、朝起きたらポケットの中にハンカチでくるんだ
陶器のぐい飲みが入っていた。見に覚えのないものに戸惑うが、ある時突然あの日の
記憶が舞い戻って来た。泥酔したあの日の夜、塩尻は自宅そっくりの門扉の家に間違って
迷い込んでしまったのだ。そこでは玄関ドアが開けっ放しになっていて、居間のテーブル
には、一人用の鍋がセッティングしてあり、白菜や鶏肉がぐつぐつと煮えていた。腹が減って
いた塩尻は、思わずその鍋を食べてしまう。その時マヨヒガの言い伝えを思い出し、その場に
置いてあったぐい飲みを持ち帰って来てしまったのだった。自分のしたことを思い出した
塩尻は、すぐにでも住人に事情を話して謝罪し、ぐい飲みを返すべきだと思い始めるのだが――。
マヨイガを扱った短編はこれまでにもいろいろ読んで来ましたが、こういうラストは予想
してなかったですねぇ。とても良くできたミステリーになっていると思います。後輩の正体
にはちょっとショックでしたけれど。最初は美宅の方が怪しいと思っていたのだけれどね。

 

乙一『沈みかけの船より、愛をごめて』
父と母が離婚するという。私と弟は、どちらについて行くのか決めなければならない。
私は、弟が幸せに暮らして行けるのはどちらかを見極める為、父と母を査定することに
した――。
さすが乙一さん、って感じの短編です。離婚する両親のどちらに着いて行くのかを
査定する中学生ってのは、一見かなりドライな設定のような感じがしますが、本人は至って
真剣で、自分よりは弟が幸せになるようにという気持ちが強いし、父母どちらも悲しませたく
ないという気持ちも抱えながら査定しているので、とても良い子だなぁという印象でした。
さすがだなぁと思ったところは、やっぱり意外な着地点を見せるミステリー部分。母親が
クリーニングに出したコートについていた白い粉がああいう風にラストでつながるとは!
それを知った娘の言動にも驚かされました。こんな風に思える子って、なかなかいないんじゃ
ないかな。私だったら無理。母親の肩を持ってしまうと思う。でも、彼女は人として、とても
正しい選択をしたと思います。弟共々幸せになって欲しいな。

 

松村比呂美『置き去り』
夫の反対を押し切って海外旅行にやって来た私は、ジャングルトレッキングに行く
アーバスに乗っていたが、トイレ休憩からバス乗り場に戻ると、バスは次の目的地に
向けて出発してしまっていた。置き去りにされたのだ。途方にくれる私だったが、
通りがかった軽トラに手を振って止め事情を説明すると、運転手は車に乗せてくれた。
しかし、お礼としてお金を払おうと財布を出すと、相手の表情が変わった。慌てて
引っ込めると、今度は激高してポシェットごと取り上げ、車から放り出されてしまった。
知らない街でなぜこんな目に遭わねばならないのか――。
これは実際経験したくない出来事ですねぇ。私も海外は何度も行ってますが、ここまで
心細くなる経験はないです。しかし、その後に出て来た遥香の言動には辟易。トイレ休憩で
行くなと言われた土産物屋に行った上に集合時間に10分も遅刻しておいて、あの言い草。確かに
置き去りにしたツアーガイドに一番落ち度があるとは思うけど、自分のしたことが周りに
迷惑をかけたという意識が全くないところに呆れ果てました。こういう人間は絶対、この手の
ツアーに参加してほしくないですね。
しかし、ジャングルツアー置き去りの経験から、ああいう道に進むとは。人生何がきっかけで
道が拓けるかわからないものですね。

 

篠田真由美『迷い鏡』
サークルの先輩三人の卒業旅行に同行した奈央は、西洋風の六角形の生け垣迷路が残るという
律子先輩の本家の洞島家のお屋敷を訪れた。生け垣迷路は大分荒廃していた。迷路の中心には
壊れた人型の彫刻が据えられており、かつてはその両腕に水盤をもっていたという。そこでは、
昔何度も不審な事件が起きていた。そうした出来事を先輩たちと語っていると、黒い服で長身の老婦人が
現れた。手には銀製の古鏡を持っていた。それを見た律子先輩は目の色を変え、それを取り返した。
老婦人はその手鏡に関する意味深な言葉を残してその場を去って行ったのだが――。
この<アミの会(仮)>のアンソロジーではお馴染みの、骨董店の老婦人が出て来るシリーズです。
篠田さんらしいゴシックな雰囲気が良いですね。先輩に対する奈央の態度に違和感を覚えてはいたの
ですけど、ああいう理由があったとは。そして、奈央の最後の告白は衝撃でした。

 

新津きよみ『女の一生
わたしは、親から人様の迷惑になるような生き方はするなと教わって育って来た。その教えに
従って生きてきたつもりだ。けれども、どこで人生を誤ってしまったのだろう。わたしは、
電車のホームに立って、過去を振り返っていた――。
なかなかのイヤミスですね、これは。主人公の夫の言動にも辟易しましたが、子供の事故を
引き起こした事故の間接的な原因である子犬の飼い主の態度にも腹が立って仕方なかったです。
離婚して実家に帰った後、同居の兄嫁の心ない言葉にもムカつきましたし。それにしても、
実家を離れてひとり暮らしを始めたアパートに、ホームレスを住まわせた理由には唖然。
そんな復讐の仕方があるとは・・・(絶句)。ラストの皮肉さも含めて、読み応えのある一作
だと思います。人様に迷惑かけないように必至で生きて来た女性がこんな結末なんて・・・
ミステリとしては巧いけれど、救いのない作品ではありましたね。

 

柴田よしき『迷蝶』
妻を亡くし、定年まで後二年というところで、リストラに近い退職勧告を受けた孝太郎。独り身
なのでなんとかなるだろうと退職して、何か趣味を始めようと思い立って始めたのが、蝶の写真を
撮ることだった。インターネットで同好の士を見つけ、ブログも始めて、次はどこに蝶の写真を
撮りに行こうと考えるのが唯一の楽しみとなった。ある日、インターネットで、台風の後、迷蝶の
カバマダラが関東地方で現れたという情報を得た。孝太郎は、知人から出現場所を教えてもらい、
写真を撮りに日参していた。すると、一人の男が現れ、同じようにカバマダラの写真を撮りたい
蝶愛好家だと分かった。二人は一緒にカバマダラを捜し始めるのだが――。
これまた、なかなかひねりのあるミステリ作品で、よく出来てます。二人の蝶愛好家の思惑が
交錯する終盤は、驚きの連続でした。孝太郎の方は予想がついたのですが、更にその先があった
とは。そこまでは考えが及ばなかったなぁ。でも、お互いにあと一歩の線を踏み越えないで
良かったです。残りの人生は、心穏やかに過ごしてもらいたいな。

 

大沢在昌覆面作家
ある文学賞の授賞式に参加した私は、二次会の席で草持という編集者に覆面作家
柏木潤のことを聞かれた。担当編集者によると、女性で、夫はさる著名人なのだそうだ。
その柏木が、私のファンだという。小説のジャンルは風俗小説で、彼女自身がもともと
夜の世界にいたひとなのだそうだ。それを聞いて私は、ある人物との出来事を思い出して
いた――。
ミステリ的にはどうということもないし、結末はやりきれないのだけれど、切なくて
良いお話だと思います。長く会わなくても、お互いに相手を認めてファンで居続ける
関係って、いいですね。彼が最後に書いた小説はどうなるんでしょうか・・・多分、
お蔵入りのままなんでしょうね。原作へのオマージュ作品として出すって手もある気も
しますけど・・・ないだろうな。


こうして改めて一作づつ振り返ると、一作ごとのクオリティの高さに驚かされます。なかなか、
ここまで粒揃いのアンソロジーって作れないんじゃないかなぁ。<アミの会(仮)>恐るべし。
しかし、結局今回のあとがきでも<アミの会(仮)>の名前の理由は明かされず。一体
誰が明かしてくれるんだーー^^;気になるなぁ。ってか、ここまでコンスタントに本が
出ているなら、(仮)は無くしても良いのでは・・・。記事にする時面倒なんで(苦笑)。