ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貴志祐介「ミステリークロック」/阿藤玲「お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険」

どうもこんばんはー。12月ももう10日ですよ。今年も残り21日ですね。
やり残したことがいっぱいあるような・・・。
なんか、某東大出のミステリ作家さんがツイッターで炎上してるみたいですね。
私、その作家さんの作品、昔めっちゃこき下ろしたことあるんで、もしその記事
見られてたら・・・と思うとぞっとします。しかし、作家さんが読者の感想に直で
反論するって、ちょっと違うと思うんだけどなぁ。どんな批判的な感想だとしても、読者が
素直に感じたことに対して作家がとやかく言うべきではないと思うのだけど。いや、
そうであってくれないと、こんな読書感想ブログとかやれないし^^;それ(批評)も含めて
受け入れられないのならば、商業作家でいる資格なんてないような。
よっぽど腹に据えかねたんでしょうけども・・・まぁ、今回のことで、間違いなく
作家としての格は下げてしまったのではないかなぁ。東大出ってそんなに偉いのかしら?
何はともあれ、道尾さんや綾辻さんを巻き込むのだけはやめてあげて欲しいなぁ・・・。


読了本は二冊です。

 

貴志祐介「ミステリークロック」(角川書店
分厚さに結構びびったんですが、防犯探偵シリーズだと知って読むのを楽しみにして
いました。このシリーズは密室殺人ばかりを扱うのが特徴ですが、今回も収録作四作
すべてが密室殺人もの。最初の二作は、何かどっかで読んだような覚えがあるトリック
だなぁと思っていたのだけど、読書メーターの感想見てて、ドラマ化された作品だったと知り、
納得。防犯探偵の榎本は、なんかもう、大野くんのイメージで読んじゃいますね。最初、
全然イメージ違うじゃん!!って思ったんだけどなぁ(苦笑)。
四作、全く違うシチュエーションで、密室のバリエーションもいろいろあるなぁと
感心したのですけど、いかんせん、他の方の感想でも多くの方が指摘されていたのですが、
特殊環境過ぎて、トリックがわかりづらいのが残念ではありましたね。説明も専門用語
連発でされるものだから、何が何やら。映像の方がこういう作品はわかりやすいでしょうね。
最初の『ゆるやかな自殺』は一番わかりやすかった。こういう、シンプルな作品の方が
私は好きだなぁ。トリックは子供だましみたいな感じだけど(苦笑)。でも、意外と
こういう方が騙される人多いんじゃないのかしらん。
続く『鏡の国の殺人』は、映像で観ていた筈なのだけど、防犯カメラ云々の説明とか、
正直全然理解出来なかったです^^;図も挿入されているのに私の理解力のなさよ(嘆)。
萵苣根功(ちしゃねこう=チェシャ猫をイメージしているのでしょうね)の名前には
苦笑しましたけど(笑)。そんな名前あるかい(笑)。
表題作の『ミステリークロック』は、ページ数も圧倒的に多い力作。時計のトリックは
よく考えてあって面白かったのだけど、やっぱりちょっとわかりにくかったかなぁ。
鮎川哲也氏の『五つの時計』は私も大好きな作品だったので、作中にタイトルが出て
来たのは嬉しかったですね。内容はすっかり忘れているけどね^^;
気になったのは、結局最後まで明かされなかった五つの時計の値段当てクイズの正解。
どういう順だったのかなぁ。
ラストの『コロッサスの鉤爪』は、一番専門的な作品でしょうか。舞台は海の上という、
ちょっと変化球のクローズドミステリ。容疑者は明らかだけれど、事件が起きた時、
水深300メートルの深海にいて、絶対のアリバイがある。アリバイ崩しが主眼となった作品。
船上減圧室にいる容疑者と榎本たちとの会話文にちょっと脱力。容疑者の言葉の後ろに
毎回ついているハートマークは必要だったんでしょうか・・・。女子高生との会話文なら
いいのですけどねぇ。なんか、浮いているというか。ハズしてるっていうか・・・。
トリックは、一番イメージしずらかったです。飽和潜水とか1気圧と31気圧の差とか。
説明されてもなかなかピンと来なくて?マークの連続でした^^;;青砥純子先生よりも
はるかに理解力はないかも・・・。
純子と榎本の会話は軽妙を通り越して、もはや漫才コンビみたいになって来ましたね。
純子が毎度の如くピントのずれた推理をするところも、もうこのシリーズのお約束事項
となってますね。若干それが白けたムードになっちゃうところも・・・。個人的には、
作者の遊び心みたいなものが感じられる二人の会話文は好きなのだけれど、他の方の感想
読んでると、そこが不要だと考える人が結構いるみたいですね。そこだけじゃなくて、
全体的にアマゾンの評価みたらかなり辛口の人が多かったのでちょっと驚いたのですけど。
私はこのシリーズ大好きなんで、結構楽しんで読んだんですけどね。ま、確かにトリックは
今回いつもに増してわかりにくかった感じはしましたけどね。

 

阿藤玲「お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険」(創元推理文庫
創元推理文庫から出た学園ものの日常の謎系連作短編集と言うことで、特に予備知識もなく
手に取ってみました。
御出学園帰宅部に入部した一年生の佐々木幸弘。御出学園では、帰宅部は正式なクラブ活動
として認められている。授業が終われば速やかに帰宅し、平均以上の成績を取り、かつ
通学地域内において、何らかのボランティア活動に奉仕しなければならないという決まりが
あり、成績が悪いと校内のトイレ掃除という罰則もついている。帰宅部B班に入った幸弘は、
幼馴染の立花美緒や、美形の従兄妹コンビ、仁藤晶と仁藤聖などのお人好しメンバーたちと
共に、様々な厄介事に巻き込まれることに――。
帰宅部が正式な部活というのは面白い着眼点だなーと思いました。ただ、帰宅部って
いうより、社会奉仕活動部、とかの方が相応しい活動内容なような。商店街の文化祭の
手伝いしたりとか。帰宅部って銘打つのはなんかちょっと違和感がある感じがしました。
作風的には好みではあるんですが、新人さんだけに、文章の書き方とかまだこなれて
ない感じ。学園ものだから仕方がないのかもしれないですけど、主要な登場人物も多くて、
誰が誰だか混乱しました。もっと絞って、個性的なキャラだけで動かした方がわかりやす
かったんじゃないかな。あと、時系列を変えた場面の書き方が非情にわかりづらい。
前に遡る場面なら、初めにそう断る描写を入れないと、読者は混乱するだけだと思います。
ミステリ的にはどうということもなく。日常の謎系だから、これくらいライトでいいのかな。
ただ、その割には説明がまだるっこしいというか、わかりにくいから、意外とよみにくさ
があって、読み終わるのに時間がかかってしまった。頭に入って来ない文章っていうのかなぁ。
学園ものだったら、もう少し読みやすさが必要じゃないかな。何らかの新人賞を受賞した訳
ではなく、編集部への直接持ち込みからのデビューだそうなので、書き慣れて来るとまた違って
来るかもしれないですね。解説の方も絶賛してましたし、世間的にも三話目の『左利きの夏』
が評価されてるようですが、私はそんなにいいと思わなかった。それより、可愛らしい
幼稚園児の苦悩が描かれる『たたかうにんじん』の方が好きだったな。一番わかりやすいしね。
ミステリとも言えないような内容だけど^^;つばさくんが、大好きなにんじんを食べなくなった
理由にはほっこり。しかし、こんな可愛らしい息子を、身内とはいえ他人に預けて第二の人生を
歩むべく外国に逃亡した彼の母親には、呆れを通り越して怒りしか覚えませんでした。無責任すぎ。
今でいうネグレクトじゃないのか、これって。兄の旭さんと姉の水穂さんお人好し過ぎ。妹の
無責任さに言及する文章がなかったのはちょっとおかしいと思いましたね。つばさくんの
寂しさとか、心細さみたいなものももっと描かれていたら、もっと深みのある話になった
と思うので、そこはちょっと残念。二人の伯父と伯母がいるから寂しくないって設定なのかも
しれないですが。でも、幼稚園児が母親と離れて暮らして寂しい訳がないと思うんだけど。
天真爛漫で達観した少年ってキャラでもないしね。
御出町のあちこちに設定してある小出君人形の設定の必要性があんまりよくわからなかったなぁ。
一話目では重要な要素として登場するんだけど。その後もちょこちょこ登場して来るけど、
わざわざ登場させる必要性がない場面で出て来るから、ちょっと不自然な感じがしました。
しかし、こんなのが街のあちこちに置いてあったら、夜歩くときちょっとしたホラーだよなぁ・・・。
デビュー作ということで、まだ試行錯誤な感じなのかな。作風的には好みではあるので、
二作目の出来次第で今後も読み続けて行くか判断したいと思います。
なんか、読み返すと意外と黒べるよりの感想になってるな・・・あれれ。すみません^^;