ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

似鳥鶏「破壊者の翼 戦力外捜査官」/村山早紀「百貨の魔法」

こんばんは。
昨日は成人の日でしたね。街中歩いてないから、晴れ着のお嬢さんに出会えなくて
残念。それにしても、成人式当日にトンズラしたあの着付けの業者は酷いですね。
大事な着物を預けていた方もいたらしいし。絶対捕まえて、返してあげて欲しいです(怒)。


読了本は今回も二冊です。


似鳥鶏「破壊者の翼 戦力外捜査官」(河出書房新社
戦力外捜査官シリーズ第五弾。もう5冊も出てるんですね、このシリーズ。
個人的には、こっちよりも『理由あって冬に出る』の葉村君シリーズの方の続きを
書いて頂きたいのだけれど。
今回もまぁ、風呂敷を広げられるだけ大きく広げた、スケールのどでかい話になっております。
このシリーズは、一作ごとにスケールを大きくして行く方針なんですかね。そして、
相変わらず設楽刑事は最後には満身創痍に・・・。よく、これだけ毎回大きな怪我してて
死なないですよね、彼。ある意味、不死身というか。運がいいのか悪いのか・・・。
まぁ、ボーガンの矢が刺さったくらいで済んだので、いつもよりはましなのかな?(おい)
今回は、ドローンを使った大規模テロ事件。これだけ東京中に被害が拡大しているのに、
なぜか死者が出ないのが不思議でしたが・・・。いや、中には亡くなった人もいたのかな?
はっきり、死者が出た、という情報は作中で報じられていなかったように思うのですが。
しかしね、うーん。この犯人の使ったテロの手法がね、どうも、リアリティがないように
思えてしまって。ドローンと雨雲を使ってアレを散布するって。よしんばそれが出来ると
したって、一部の建物だけならともかく、東京中にまんべんなく散布出来るものか?
専門家がもっともらしく説明してはいたけどさ。なんか、全然納得できなかったです。
しかも、それを受けた東京中のアレを使った建物に影響が出るとか。いくら何でも、
リアリティなさすぎて、かなり引いてしまった。犯人の動機は、完全に逆恨みみたいな
ものだし。標的にするの、東京の人だけってのもおかしな話だとも思うし。
いろいろ、ツッコミ所が満載過ぎて、読んでいて疲れちゃった。海月警部の、設楽刑事に
対する終盤の行動にも引いたし。彼女は彼女で、設楽刑事を引き止めようと必至だったの
かもしれないですけど・・・。海月警部、ほんわかした外見に反して、かなり裏がありそうな
性格ですよね。設楽刑事、いいように振り回されて、ちょっと毎回気の毒です。
こんなに風呂敷広げちゃって、最後どうやって収拾つけるんだろう、と思ったのですが、
なんとも拍子抜けな結末で。まぁ、そういう性質でも持ってないと、とてもじゃないけど
収拾つかなかったとは思うんですけどね。そのままだったら、東京壊滅になりかねなかった
わけですし。でもなんか、都合良すぎじゃね?と思わなくもなかったです・・・。
で、結局黒幕の存在はわからず仕舞い。次回以降、明らかになるのかな?次は更に
スケールが大きなお話になるんだろうか・・・なんか、こういうパニック映画みたいな
展開は好きじゃないんだけどな。似鳥さんって、パンデミックとかのお話が大好きなんで
しょうね。刑事もので、そういうのやらなくてもいいのになぁ・・・。
読み応えはあったけど、なんだか読んでいて疲れるお話でした。


村山早紀「百貨の魔法」(ポプラ社
『桜風堂ものがたり』の姉妹編だそうなので、手にとってみました。あの作品の中に登場する
人気書店『桜風堂』が入っている百貨店が舞台になっています。連作形式で、百貨店の中で
働く様々な人々が各作品で主役を勤めます。一話目はエレベーターガールのいさな。二話目は
靴屋の咲子。三話目は時計と宝飾品、贈答品売り場のフロアマネージャー、健吾。四話目は
風早郷土資料室の一花。幕間でコンシェルジュの結子の祖父。で、最終話がその結子。
百貨店だけあって、いろんな仕事の人々が出て来て、それぞれの仕事内容は興味深かった
です。百貨店にコンシェルジュがいるっていうのも面白いなーと思いました。まぁ、結子の
為に作られたポストではあるんですけど。
『桜風堂~』同様、とても美しくて優しい物語だと思います。でも、あちらの作品でも
思ったのだけど、とにかく偶然が重なり過ぎ。さすがに、ご都合主義的すぎないか?と
思ってしまうことがしばしばあって。それを全部『奇跡』で済ましているところが、
なんか、どうもね。引いてしまうというか。出て来る登場人物も、本当にいい人ばかりで、
心が綺麗な人しかいなくて、リアリティがない。いい人が出て来るお話はとても好きだし、
人間性善説が悪いとも思わないのだけれど・・・さすがに出て来る全員が全員、そいういう
人物っていうのはね。風早の街自体が、いい人しかいない街って設定ってことも、さすがに
ないとは思うのだけど。
まだ、『桜風堂~』の時の方が、悪意のある人物がいた分、リアリティあったのかな。
別にね、こういうファンタジックな要素の入っているお話にリアリティなんかなくったって
いいとは思うんですけどね。多分、私がひねくれてるからこういう読み方になっちゃうんだと
思うんですよ。多分、読んだほとんどの人が、素敵なお話だった!感動した!って感想に
なると思います。確かに、素敵なお話ではあったんですけどね・・・なんだろう、なんか、
読んでいると、妙な居心地の悪さがあるんですよね・・・綺麗過ぎて、心に入って来ないって
いうのかなぁ。合わないのかなぁ・・・。ページも、一章目辺りはなかなか進まなくって、
物語に入るまでも大変だったんですよね。読み終わるのも結構時間かかりました。
こういうお話で合わないって、どんだけ心がひねくれてるんだろう、とちょっと凹むん
ですけど。心に黒べるがいる証拠なんでしょうね^^;
でも、住んでいる街に、こういう老舗の人情味溢れる百貨店があったらいいな、とは思いますね。
百貨店で買い物ってあんまりしないんですけどね。あ、でも、年初に必ずデパートの初売り
には行きますけど!(笑)あとはデパ地下と物産展も大好きです。私が住む街には一番
大きな駅の近くに伊勢丹があるのですけど、数年前から廃業の噂がずっとチラついてます。
やっぱり、街で一番大きな百貨店だから、潰れてほしくないです。なんだかんだで、
利用してますし。
ここに出て来る星野百貨店も、幾度となく廃業の噂が出ている老舗のデパートです。働く人々、
利用する人々の、なくなってほしくない、という切なる願いには、とても共感出来ました。
近い将来、結子が経営を立て直して、残して行けるといいな、と思いました。