ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵「インフルエンス」/柴田よしき「ねこ町駅前商店街日々便り」

こんばんは。いやー、先日の雪はすごかったですね。東京の大雪パニックは異常でした・・・。
雪国の方は不思議に思われたでしょうが、普段雪が降らない地域に雪が降るとああいう
状況に陥るんですよ・・・。渋谷駅の映像は地獄絵図かと思いました。ひえぇ。
私は仕事でフルタイム勤務の日だったんですが、さすがに午前中で帰らせてもらえました。
運良く相方がお休みの日だったので、車で送り迎えもしてもらえましたし(早々にスタッドレス
替えてありました)。ラッキーでしたねぇ。あの大雪の中歩いて帰って来るのはさすがに
しんどい^^;
ただ、昨日は職場の駐車場の雪かきをさせられて、今日はめっちゃ筋肉痛。普段使わない
筋肉使うんですよねー。しばらく痛いな、これは(ToT)。


今回も二冊ご紹介。

 

近藤史恵「インフルエンス」(文藝春秋
大阪の団地で育った女三人による心理サスペンス小説。女ならではの心理描写が巧みで、
イヤーな気持ちになれること請け合い。
冒頭は、作家である私が、一人の読者から興味を引かれる話があるから聞いてもらいたい旨
が書かれた手紙を受け取ったところから始まります。始めは無視するつもりだったものの、
手紙の中のある部分が自分の境遇に重なるところがあり、結局直接会って話を聞くことに。
すると、自分と同い年だという女性がやって来て、自らを含めた三人の女の奇妙な関係性と、
数奇な運命を語り始めた。手紙の女は友梨と名乗り、同じ団地で育った他の二人は里子と
真帆というのだという。それぞれ全く違う家庭環境で育ちながら、強い絆で結ばれた三人の
物語とは――。
先が気になってあっという間に読み終えてしまいました。近藤さんの作品はいつもそう。
ただ、明るさは一切なし。終始、不穏な空気が漂っていて、読んでいて息が詰まるような
気持ちになりました。三人の女性の間に流れる空気が不穏そのものだから、友梨と真帆の
友情関係を描いた場面でさえ、好意的には受け取れなかった。裏に何かありそうで。実際、
いろんな思惑が錯綜していた訳ですし。三人の間にあるものは、決して友情なんかではない
とは思うのだけど、その半面、友情としか言えないような感情で結ばれているのも間違いはなく。
多分、彼女たち自身が、その感情を持て余していたのではないでしょうか。
負い目や嫉妬、劣等感。それぞれがそれぞれに対して複雑な感情を抱えていて、微妙な
女関係がとてもリアルに描かれています。三人の関係を考えると、もっとドロドロした
人間関係になりそうにも思えるのだけど、意外とそうならない。三人三様、相手に対して
悪意がないからかもしれない。蓋を開けてみれば、友梨も真帆も、自分の為に罪を犯した
訳ではない。誰かを庇う為に犯した罪。だからって、人を殺していいとは思わないけれど。
殺された人間は、総じてクズみたいな奴らばかりなので、自業自得としか思わなかった
ですね。警察が真実を見抜けなかったのは疑問に思いましたが・・・。
終盤に明かされる、作家の前に現れた女性の正体には驚かされました。しかし、作家自身が
友梨たち三人の同級生の誰だったのかは謎のままでしたが・・・。ほんとに、単なる
同級生ってだけだったのかなぁ。中学編のどこかに出て来ていたのだろうか。
三人のうちの誰かが膵臓がんに罹ったというのは冒頭で出て来るけれど、まさかあの
人物だったなんて。なんだか、やるせない気持ちになりました。残された二人で、
今度こそ幸せな人生を歩んで行って欲しいな、と思いました。


柴田よしき「ねこ町駅前商店街日々便り」(祥伝社
なんとなく、タイトルに惹かれて読んでみました。分厚かったんで、結構時間かかっちゃい
ました。読みやすいは読みやすいんだけど、この内容だったら、もうちょっとコンパクトに
まとめて書けたような・・・。若干、中だるみな印象は否めなかったんで。
ただ、内容は面白かったです。一匹の猫がやって来たことがきっかけで、寂れた商店街が
再生して行く感動作。
地方に旅行すると、たまにかつての観光地がシャッター街化した光景を見ることがあるの
ですが、なんとも言えない寂しい気持ちになるんですよね。そういう場所に住んでいる人
ならなおさら、もう一度活気があった頃の街を取り戻したいと思うはず。この手の再生
物語は、やっぱり読んでいて胸が熱くなりますね。現実問題、こういう状況に陥って、
再生出来ない地方の方がずっとずっと多いと思う。でも、いろんなきっかけで町おこしが
うまく行く例もない訳じゃないから、リアリティがないとは思わなかったです。ねこの町、
ってのは、現実的に人が集まりそうだし。現に、猫がたくさんいる猫島に観光客がたくさん
やって来るって話も聞いたことあるしね。地名の根古万地をもじってねこ町っていうのは、
いい目の付け所じゃんじゃないかな、と。ただ、猫の町にしたいんだったら、猫に纏わる
ものを増やすのもいいけど、やっぱりもう少し生きた猫を増やした方がいいんじゃないかな
~とは思いましたけど。駅長ののんちゃんだけだと、猫好きには物足りないんじゃないの
かなぁ。ただ、大人も子供もみんなが楽しめる文化祭って案は面白いな、と思いました。
そういうお祭りなら、参加してみたいと思うもの。一年に一回でも、わくわく出来る
イベントって大事だと思う。何もないと、ほんとに何を楽しみに生きて行けばいいのか
わからなくなっちゃうし。
商店街再生に奮闘する主人公の愛美、それをサポートし、自らも再生に乗り出す愛美の
バイト先の喫茶店店長信平、猫好きで猫の扱いに長けている駅の売店の売り子の恵子、
その恵子の甥で愛美が心を寄せるカメラマンの慎一。それぞれのキャラが良かったですね。
ただ、信平と慎一、名前が似てるので、場面によってどっちがどっちかわからなくなっちゃう
ことが結構あったんですけど・・・愛美をサポートする意味で、どちらも立ち位置が似てるので、
余計にごっちゃになってしまった。そこら辺の書き分けはもう少し欲しかったかな。名前を
全く違うものにするとかさ。
場面転換も多いし、登場人物も多いので、もう少しすっきり読ませて欲しかった気はする。
最初にも述べたように、ひとつの場面を丁寧に描こうとする余り、ちょっと中だるみする
感じは否めない。その割に、愛美の離婚問題や終盤に突然入って来る信平の恋愛事情なんかは
やたらに端折っているから、バランスが悪い。もっとそっちの事情をちゃんと知りたかったな。
信平の恋愛なんか、突然過ぎて目が点になりましたよ。そんな伏線出て来てたんだっけって
感じで。女優の佐和子とだったら納得出来たと思うんだけどね。え、誰ソレ?って感じ
だったんで・・・^^;
UFO問題も、ものすごいあっさり解決しちゃったしね。引っ張った割に、そんな真相?
とは思いました^^;
ただ、やっぱり愛美や信平の頑張りや働きかけによって、少しづつ商店街の人々の意識が
変わって、商店街再生プロジェクトに命が吹き込まれて行く様は痛快でした。
最後はうまく行き過ぎな感じもあるけれど、やっぱりこういう結末だからこそ、最後まで
読んで良かったと思えました。これからも毎年ねこ町文化祭が開催出来るといいな、と
思いました。