ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

葉真中顕「政治的に正しい警察小説」/高田崇史「QED~ortus~白山の頻闇」

こんばんは。三寒四温の日々が続きますね。昨日はぽかぽか陽気で、今日は春の嵐って感じの
荒れた天気。着るものに困る~^^;
あったかくなって来たので、めだかたちも元気。昨年生まれた稚魚は、結局二匹になって
しまいましたが(卵から孵った子は20匹以上はいたのですが・・・)、生き残った子は
どちらもとても元気です。親めだかと同じくらいのサイズになるまで育って欲しいなぁ~
(うち一匹はすでに親水槽で仲良く泳いでおりますが)。
ちなみに、薔薇さんたちも新芽がいっぱい出て来ました。花が咲くのが待ち遠しいなぁ。


読了本は今回も二冊。オリンピック終わった割に、読書ペースが上がっておりません。
なぜだろう・・・。


葉真中顕「政治的に正しい警察小説」(小学館文庫)
デビュー作から追いかけて来た葉真中さんの文庫新刊。といっても、実はこれの
一つ前に出た作品は、冒頭の辺りで挫折して読みきれずに返してしまっているの
ですが^^;
今回は短編集で、なかなか小技が効いた作品が多く、読み応えがあって
楽しめました。ただ、表題作のみ、ちょっと乗り切れなかったのですけれど。
読書メーターの他の方の感想見てても、表題作だけ評価が低い傾向にあったような。
なんで、これをタイトルにしたのか謎。

 

では、一作づつ軽く感想を。

 

『秘密の海』
親から虐待されて育った人間は、自分の子供にも同じことをするのか。虐待の連鎖って、
あると思う。でも、ここに出て来る主人公は、反面教師にして、いい親になれるんじゃ
ないのかな。病魔に冒されてしまった麻衣子さんには騙されたなぁ。絶妙なミスリード
させられ方に唸らされました。

 

『神を殺した男』
最近羽生さんの国民栄誉賞受賞や、藤井君の活躍で将棋がブームになっているので、
なかなかタイムリーな題材だな、と思いました。天才棋士の紅藤は、羽生さんを
彷彿とさせるキャラですし。ライバルの黒縞が紅藤を殺した理由には驚かされました。
AI将棋が進化したが故の悲劇。現実にも起こり得そうだと思いました(まぁ、こんな
理由で人殺しまでするってのは考えにくいですが)。

 

推定無罪
警察による自白の強要っていう、浦川がやられたようなケースは、かつてはかなり多かった
のでしょうね(特高警察の頃とか?)。最近でもこういうことがまかり通っているとしたら
大問題ですが・・・。
オチは、ホラーっぽいですね。真犯人は予想の範囲内でしたが、犯人の犯行を読者に気づかせる
仄めかしの描写が非情に巧いな、と感心しました。

 

リビング・ウィル
終末治療における尊厳死に関して、いろいろと考えさせられる作品でした。自分が脳死等の
植物人間状態になった時、延命治療を望むか尊厳死を望むか事前に指示しておくリビング・ウィル
というものの存在は、今回初めて知りました。私が雄三の立場になったら、尊厳死を望む
かもしれないなぁ。息子夫婦の強欲さには辟易しましたが、最後の雄三の意志の変化には
苦笑。皮肉な結末でした。

 

『カレーの女神様』
これは今回一番の衝撃作でした。主人公が幼い頃に食べた母親のカレーの隠し味の真相にも
驚いたのだけど、こちらはまだ想像の範囲内。こういうオチの作品は結構ありがちなのでね。
それよりも、主人公が出会ったカレー屋の女店主の正体には目が点に。いやー、こういう
からくりが待っているとは思わなかった。ちょっとトラウマになりそうなくらい衝撃的な
結末だったかも。とんでもない女神様もあったもんだ。こっちを文庫のタイトルにした方が
よっぽど良かった気がするなぁ。読者層が全く違っちゃうかもしれませんけど(苦笑)。

 

政治的に正しい警察小説』
先に述べたように、これは今回唯一乗り切れない作品でした。小説から差別的な用語を
排除して行くとどうなるのかってことなんだと思うんだけど・・・うーん。ちょっと、
極端すぎないか。現代の風潮が、こういう感じなのかもしれませんけど。それを突き詰めようと
すると、つまんない小説になるだけって気がするんだけどね。主人公がそういう描写を
排除することに取り憑かれて行く様が狂気的でちょっと怖かったです。


高田崇史QED~ortus~白山の頻闇」
QEDシリーズ最新作。二編の中編集。なんか、さらっとシリーズ再開してますね。
一度完結した筈なのに^^;これからも、コンスタントに続編が出て行くのかな。
今回は、沙織ちゃんの嫁ぎ先、金沢にタタルさんと奈々ちゃんが遊びに行って事件に
巻き込まれるお話と、タタルさんたちが大学生の時のお話の二つが収録されています。
金沢は数年前に行ったけれど、白山神社は行ったことなかったなぁ。白山比咩神社も初めて
名前を知りました。タタルさんの薀蓄は相変わらずで、正直あんまり興味ある題材じゃなくて、
全然頭に入って来なかった^^;殺人事件との関わりが相変わらず強引ですよねぇ・・・。
しかし、沙織さんの旦那さんが事件関係者になってしまって、今後どうなっちゃうの?と
思いました。これからの結婚生活、大丈夫なのかな^^;しかも、ラストで沙織ちゃんに
関する意外な事実が明らかになるし。ま、これは今のところ、奈々ちゃんの想像でしかない
わけだけど。
それより、タタルさんと奈々ちゃんの進展が全くないのが悲しかった。タタルさんって、
一生このままなんでは・・・。奈々ちゃんの愛情が報われる日は来るんだろうか^^;
後半の作品は、吉原がテーマ。題材としては、こちらの方がずっと面白かった。吉原の
遊女たちについては、以前から興味があったので、タタルさんの薀蓄を読んでいるのも
楽しかったです。吉原の花魁のトップスターであった勝山が、年季明けに失踪した真相も
意外な事実が隠されていたことがわかって興味深かった。吉原には、いろんな闇が
隠されていたんだなぁ。
ただ、殺人事件の方は、いつにも増してしょぼかったですね・・・。でも、最後の
一ページに救われる気持ちになりました。タタルさんも、そのニュースを知って
友人の宏樹のことを思い出して喜んだんじゃないのかな。自分が予言した通りになった
訳だし。
しかし、大学生の筈なのに、タタルさんが全く今と変わっていないのがすごいね。
奈々ちゃんがまだ未成年でお酒を飲めないところが新鮮でした(笑)。