ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

濱岡稔「ひまわり探偵局2」/今野敏「棲月 隠蔽捜査7」

こんばんは。もう3月も10日を過ぎました。明日で震災から7年ですね。
早いなぁ。明日はブログで貯めたTポイントでも寄付しようかな。
震災からヤフーがずっと続けている、3.11検索も必ずしようと思います(当日『3.11』
を検索すると10円の寄付になるそう。一応毎年参加しています)。もっとたくさん寄付出来る
財力があればいいのですが・・・。
羽生君のスケート靴は最終的にいくらで落札されるんだろうか・・・。


読了本は二冊ご紹介。


濱岡稔「ひまわり探偵局2」(文芸社文庫NEO」
一巻はかなり昔に読んでいたのですが(記事を検索したらなんと11年前^^;)、
当時、何の予備知識もなく図書館の開架で見かけて手にとって、すごく気に入った
覚えがあったので、2巻が出たと知って、とても嬉しかったです。ただ、いかんせん
読んだのが昔過ぎて、ストーリーもキャラクターも全く覚えていなかったのです
けれど・・・^^;;でも、前作の内容覚えてなくても、十分楽しめる作品でした。
タイトルが指し示す通り、ほのぼのとした探偵もの。ひまわり探偵局は、探偵の
陽向万象と、助手のさんきちこと三吉菊野の二人の構成員で成り立っています。
陽向探偵は、スイーツに目がないほのぼのキャラだけど、推理になると鋭い
慧眼を発揮。助手のさんきちさんは、20代のくせになぜかたびたびおやじギャグを
飛ばす、ちょっととぼけた女性。二人のボケとツッコミが入り交じる会話は
コントみたいで読んでるだけで楽しい。若干、さんきちさんのおやじギャグが
すべり気味ではありますが・・・^^;あと、二人とも漫画が大好きなので、
作中にやたらと昔の漫画が出て来る。前作の記事読み返しても同じことが
書かれているので、この辺りは一巻と変わってないようです。漫画好きとしては、
そういうところもかなりツボ。わかんない人にははぁ?って感じになると思いますけど^^;
今回は二作の中編が収録されています。どちらも、暗号解読がポイントになるお話で、
ほのぼのとした作風の割に、本格要素が取り入れられているところも好きですね。
一話目は、亡くなった土地家屋調査士の父親が、息子に宛てた手紙に書かれた不可思議な
図面を解読していくもの。茶道や不動産の知識がないと読み解けない暗号なので、
知識のない読者が独自に解読するのは不可能に近いような^^;こんな複雑な暗号、息子に
残したって解けるかよ、とツッコミたくなったのだけど、その辺りの真相も陽向探偵に
よってきちんとフォローされているので、溜飲が下がりました。依頼人の江上さんの
キャラも良かったですね。素直な性格で。コントのような会話を繰り広げて暴走する
探偵と助手を、横からニコニコと楽しそうに眺めてくれる懐の広さに感動しました(笑)
陽向探偵によって明かされた江上氏の父親の、息子への想いにもうるっとしました。
最後の方に出て来たガンダム小咄は、いまいち理解出来なかったですけど(苦笑)。
ガンダム好きなら楽しめるかも?(笑)
二話目は、さんきちさんの溺愛する中学生の姪っ子、真鳥ちゃんが依頼人。彼女の親友が
クラスで泥棒の濡れ衣を着せられてしまうのだが、その後真犯人を告発する謎めいた
告発状が見つかる。二枚の告発状の裏には、暗号文のようなものが書かれていた――。
こちらの方がまだ一般の知識で解読出来る暗号になっているかな。ただ、こちらも
やっぱり、いろんな知識がないとすべてを読み解くのは無理だと思うけど。まぁ、
この暗号文もある一人の人物に向けて作られたことは途中から明らになるので、
さほど不満には思わなかったですけどね。
さんきちさんの姪っ子の真鳥ちゃんがとにかくいい子。どうやったら、こんなまっすぐで
いい子に育つんだか。もちろん、さんきちさんのお姉さんの育て方がいいのだろう
けれど、さんきちさん自身の影響もあるのでしょうね。どんなに邪険にされてもめげない、
親友の永鈴花ちゃんに対するひたむきな友情が胸を打ちました。友達から、こんな風に
信頼してもらえるって、ほんとに幸せなことだと思う。二人の友情関係がとても
羨ましくなりました。
もちろん、さんきちさんの真鳥ちゃんへの深い愛情にも打たれましたけどね。今回は、
陽向探偵の出番は少なめで、姪っ子のためにさんきちさんがなんとか解決してあげようと
奮闘するところも良かったですね。
優しさ溢れる温かいキャラと物語で、癒されました。一作目完全に忘れちゃってるから、
これを期に読み返したいなぁ。


今野敏「棲月 隠蔽捜査7」(新潮社)
待ちに待った竜崎シリーズ最新作。人気あるから結構待たされたなー。でも、読み始めたら
あっという間。面白くって、一日で読み終えてしまった。
今回は、サイバー犯罪と殺人事件が同時に起きて、最後にふたつの事件が繋がって行く形。
正直、どちらの事件の犯人も、大抵の人が見当がついてしまうと思う。終盤、予想した通りに
話が進んで行きました。二つの犯罪が一つに繋がって行くところは良いのだけど、できれば
もう少しひねりが欲しかったかな。そういう訳で、ミステリ的にはさほど特筆すべきところは
ありません。
ただ、このシリーズ、ミステリを目的として読んだことは一度としてないので。そこ(ミステリ
の出来云々)はさほど気にしてません。それより、今回の事件と平行して進んで行く、
竜崎の異動話の方がよっぽどハラハラしました。異動の話が出てからの、竜崎の心情の部分も
読みどころのひとつ。ブレない竜崎が、大森署を去ることになって初めて、心に動揺を
抱えるところがいいですね。大森署のみんなといることが当たり前になって、自分の『居場所』
になっていたのでしょうね。
でも、権力のある人物に対しての態度は相変わらずブレないまま。相手がどれだけ上の立場の
人間であろうと、警察官としてやるべきことをやる。その一貫した信念で行動する竜崎の
姿は、本当にかっこいい。こういう上司の下で働けたら幸せだと思うな。現に、竜崎と仕事を
する人は大抵が彼のことを好きになってしまうものね。大森署のみんなもそうでしょう。
竜崎が大森署を去ることになる最後のシーンには、胸がいっぱいになりました。あの竜崎でさえ、
大森署の警察官たちの竜崎への敬意を感じて、感慨深い気持ちになっているのですから。
次回作からはあそこに異動になるのかー。意外といえば意外だったかも。本庁とかかと思って
たんで。禊が終わったとはいえ、多分周りは敵だらけでしょうね・・・。でも、どこに行っても、
竜崎ならば敵を味方にしちゃえる筈。
それにしても、今回も冴子さんは素敵だった。竜崎が唯一勝てない相手じゃないのかなー。
この間、アンソロジーで冴子さん主役のお話を読んだのだけど、あの経験があるからか、
更に竜崎に対しても強くなっているような気が・・・。竜崎が、異動話で心が揺れていることに
動揺して、『俺は大森署に来てからだめになったかもしれない』と弱気になるのに対して、
きっぱりと、『逆よ。大森署があなたを人間として成長させたの』と言い放ってしまえるところが
すごい。さすが、冴子さんは何でもわかってるなー。竜崎に、あなたがさっさと事件を解決
しちゃえとけしかけられるのも冴子さんだけだと思うしね(笑)。
あとは邦彦がポーランドに留学したいと言い出したのはびっくりしました。アニメ監督に
なりたいとは・・・せっかく二浪もして東大に入ったのに^^;
そして、今回も竜崎と伊丹の噛み合わない会話は楽しかったです。ほんと、伊丹って竜崎大好き
だよなー。竜崎にいくら邪険にされても、かまってほしくて竜崎のところに来ちゃう伊丹さんが
私は大好き(笑)。
今回、いじめられっ子が出て来るのですが、その子に対する竜崎の心情を読んでいると、
竜崎が小学生の頃伊丹から受けたいじめは未だに竜崎の心に深く傷をつけているんだなぁと
改めて感じました。いじめっ子だった伊丹の方は全くそのことを覚えていないというのが
何とも・・・。いじめた側は、そういうものなのでしょうね・・・。
今回もとっても面白かったです。大森署を去った竜崎がどうなるのか、次回作が待ち遠しい
です。