ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

長岡弘樹「にらみ」/我孫子武丸「怪盗不思議紳士」

どうもこんばんは。巷ではGW突入ですね。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
私はほぼ暦通り(一部臨時出勤がありますが)なので、最大4連休。とはいえ、
特にどこか遠出する予定もなく、近場の温浴施設に行くくらいですけれど。
私が住んでいる街には大きな神社がありまして、GW後半は毎年そこで大きなお祭りが
あるんで、駅前方面はすごい人になって盛り上がるんですけどね。今年は特に
そちらに行く予定もないので、自宅でひっそり過ごす感じになりそうです(苦笑)。

 

今回は二冊ご紹介。


長岡弘樹「にらみ」(光文社)
長岡さんの最新短編集。ノンシリーズの短編集で、特に今回はテーマ等も共通の
ものは特になく。ただ、一編ごとにひとひねりあるものばかりなので、どれも
水準以上の面白さはあったと思います。ただ、どうしても、何度読んでもオチに
ピンと来ないものが一作ありまして。いや、オチ自体はわかってるんだけど、
そこにどうやって至ればいいのか、どうしてもわからなくって。ネタバレサイト
ないかめちゃくちゃ探したんだけど、一番知りたい部分に触れているサイトは
結局見つけられず・・・。んで、この記事を上げるに当たって、もう一度しっかり
読み返してチャレンジしてみた結果・・・やっと、自分なりに、答えを見つけました。
・・・合ってるかな?^^;



では、一作づつ感想を

 

『餞別』
はい、問題の一作がコレです。オチを読者に考えさせる形で終わっているのですが、
それがどうしてもよくわからなくって。長岡さんには珍しく図が挿入されてまして、
文章に従ってその図にちょっと手を加えるとある言葉が浮かび上がって来る、という
オチだと思うんですが。その言葉がどうしても読み取れなかったんです。でも、別紙に
ひとつひとつの文章通りに当てはめて、やーーーっと、主人公がやりたかったことが
見えて来ました。のちほど、後述します。
しかし、こんな面倒なメッセージ、よくとっさに考えられたなぁ。なかなかに、無理が
あるような・・・^^;ミステリ的には面白かったですけれど。若干、バカミス入って
いる気も(ソブケンみたいw)。

 

『遺品の迷い』
遺品整理を請け負う会社の男の話。のっけから、読んでいて気持ち悪くなる描写が
続くので、うげーと思いました^^;60歳の新人の正体は、途中で予想がついて
しまいました。主人公が漏らした『倒産』の言葉を相手が聞き違えたであろうことも。
主人公が曰く付きの千円を最後でああいう風に使い切ったのは、心の整理がつけたかった
からなのかな、と思いました。

 

『実況中継』
少年二人の爽やかな友情ものかと思いきや、ラストは非情に皮肉な結末。主人公恭平が自分の
名字をもっと早く司の父親に告げていたら、こんな結末にはならなかったかもしれない、
と思うと、やりきれなかったです。

 

『白秋の道標』
アフリカツメガエルを〇〇判定に使うという発想にビックリ。若い女性がよくそんなこと
やろうと考えつくなぁ。私だったらその性質を知っていたとしても、絶対嫌だけど。注射器使う
とかも嫌だし・・・。しかし、これを試すと、○○していた場合カエルも○○するとは・・・(絶句)。
生命の神秘すぎる。そして、ラストが衝撃的過ぎ。いやいや、無理がありすぎだろーーーー!と
ツッコミたくなりましたが、海外とかだと結構多いケースなのかも・・・。

 

『雑草』
これは現実でもあり得そうな作品。高校生の間で、コレの問題が結構取りざたされたり
したことも過去にありましたし。それにしても、高校の敷地の中に、なぜこんなものが
生えていたんでしょうか。そっちの方が問題のような。主人公を公園のトイレで襲った
犯人の手口が悪質過ぎて、嫌悪感しか覚えなかったです。高校生の若い少年に、一生
残るであろうあんな火傷を負わせて。主人公は最後、犯行に気付いて本人を糾弾すべき
だったと思う。ラストはちょっと生ぬるくて腑に落ちなかった。

 

『にらみ』
刑事が公判を傍聴する『にらみ』という役割は、本当にあるらしい。確かに、取り調べを
した刑事が目の前にいたら、下手なことは言えなそうなので、効果ありそう。
これは、ミステリ的には一番オーソドックスな騙しの手法ですが、完全に騙されてました^^;
そんなところに『にらみ』がいたとは。

 

『百万に一つの崖』
百万人に一人のボンベイ型という特殊な血液を持つ人間が、同じ会社に二人もいる確率は、
一体どれくらいなんでしょうか・・・。
特殊な血液だからこそ、もっと献血してあげればいいのになぁと思うけど、実際そういう
血液だったら、主人公みたいに考えるのかも。
そんな特殊な血液の人間だからこそ、命は大事にして欲しかった。ああいう終わり方は
してほしくなかったです。

 

※以下、『餞別』のネタバレあります。未読の方はご注意ください!














主人公は、ホテルの窓で表された『クスリ』の文字を『777』に変えたんですよね?
スロットの大当たりである『スリーセブン』をある人物に連想させるように。
図に書くところまでしなきゃわからなかった私って一体・・・。















我孫子武丸「怪盗不思議紳士」(角川書店
我孫子さん最新作。なんだか、ずいぶんと作風が違うなぁと思っていたら、あとがきで
その理由が説明されていて、納得。もともと、人気声優の関智一氏が率いていた劇団の
演目の一つで、それを元ネタに脚本を書き下ろし、それをさらに小説にしたものが本書
なのだそう。これを舞台化したとは、なかなか場面転換とか大変そうですけど。
どちらかというと、私は少年探偵団みたいな児童書体裁のミステリって印象を受けました。
ちょっと長いミステリーランドみたいな。正直、この内容だったらもうちょっと短く
まとめて欲しかったかも。途中結構中だるみした印象があったんで・・・。
しかも、せっかく出て来た名探偵の九条響太郎が、最初の方で死んでしまうので
かなり面食らわされましたし。響太郎と助手の少年瑞樹が、義賊の怪盗紳士とガチンコ
対決、みたいな、それこそ明智探偵と小林少年の活躍みたいなのを期待して読んで
いたので・・・結構最初の方で出鼻をくじかれてしまった感じがしました。心の片隅
では、瑞樹同様、最後の最後に替え玉の山田大作が実は響太郎だった、とかそういうオチを
期待してたりもしたんですが。
ただ、終盤のある人物二人の正体にはビックリ。そういうからくりがあったのか~!
と思わされました。義賊だった怪盗紳士の変貌に腑に落ちない気持ちでいたので、
そこはすっきりしたかな。
残念だったのは、最初に出て来た瑞樹の悪仲間、サクマと軍曹がその後全く出て
来なくなってしまったこと。瑞樹が響太郎にスカウトされて探偵助手になったのだから
仕方がないとはいえ、それまでずっと一緒に過ごしてきた仲間だった訳だし。たまには
彼らのもとに戻って、美味しいものでも食べさせてあげたらいいのに。でも、それは
それで嫉妬や妬みから諍いのもとになってしまいそうだし、会わない方がいいのかも
しれないけどさ・・・。
大作のキャラには最初嫌悪感しか覚えなかったのですが、響太郎のフリをして瑞樹や
蝶子と一緒に過ごすうちに、だんだん彼の言動への嫌悪感が薄れて行きました。
意外と責任感あるしね。
瑞樹は最初頼りなかったけど、事件を通して少しづつ成長して、最後は大分しっかりして
いたように思います。これくらいの年の少年は、経験による成長が著しいね。
事件が一段落した後、今後大作はどうなるのかな、と心配になったのですが、瑞樹と
蝶子が良い決断をしてくれてほっとしました。続編ありそうな終わり方だったけど、
どうなのかな。怪盗紳士一味との再対決もそのうちありそうです。