ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「共犯関係」/秋川滝美「居酒屋ぼったくり9」

こんばんはー。昨日から冬の寒さが戻って来たみたいに寒いですね。
あったかいのに慣れて来てたから、身体がついていかないです^^;
でも、明日からまた温かさが戻って来るみたいなんで、ちょっとほっとしてますが。
みなさまも、体調崩さないようお気をつけくださいまし。

 

読了本はとりあえず二冊ご紹介。他にも二冊あるんだけど、そっちはまた
後日。旅行記事も、まだ肝心なキュランダ鉄道編が残っているので、
早く上げなくては。薔薇もひととおり咲いたから早く記事にしたいし。
うう、時間が足りないよ(T_T)。



「共犯関係」(ハルキ文庫)
タイトル通り、『共犯関係』をテーマにしたアンソロジー。予約本ラッシュ中
だったんで、好きな作家のだけ読んだら返しちゃおうかと思ったんですが、
結局読みやすかったので全部読み切ってしまいました。短編ながら、どれも
なかなか意外性のある着地点で面白かったですし。結果、全部読んで良かったです。
好きな作家から読み始めたんで、変な順番で読むことになってしまいました^^;
読んだ順は友井さん(収録順は②)→似鳥さん③→乾さん④→秋吉さん①→芦沢さん⑤
最初は目当ての似鳥さんだけ読んで返そうかと思ってたんですが、友井さんもつい最近
スープ屋しずくシリーズ読んで面白かったから読みやすいし読んでおこうと思って、まずは
そこから読み始め、そのまま続けて似鳥さんに行って、せっかくだから乾さんも読んで
おこう→秋吉さんも読みやすいし→あと一作だから芦沢さんも読んでおこう→完読。
みたいな流れでした(笑)。

 

感想は収録順に。

 

秋吉理香子『Partners in Crime』
お嬢様育ちで家事を全くやらない専業主婦の嫁に嫌気がさした智幸は、バーで
知り合った既婚者の真奈と不倫の関係に。後腐れがない存在でいようと約束
した筈なのに、次第に真奈の要求はエスカレートして行き・・・。
ぐーたらな嫁が、大学院に通い始めたという設定が最後にああいう風に繋がって
行くとは思いませんでした。真奈の夫にも驚かされました。しかし、こういう形
で繋ぎ止める愛って幸せなのかなぁ・・・。

 

友井羊『Forever Friends』
同じクラスの旬と一花と泰伸は、仲のいい友達同士だった。夏休みに入る前、
旬は、泰伸から一花が夏休み中に転校するかもしれないと言われる。一花は、
地元のお祭りでお神楽の巫女に選ばれていた。祭り当日の午前中、たまたま
一花に会った旬は、神楽の練習ばかりで遊んでいないと愚痴をこぼす一花に、
今から遊びに行こうかと誘う。すると、一花はお勧めの秘密の場所があると
言い、二人でその場所を目指すことに――。
最初は旬と一花の短時間の秘密の逃避行を共犯関係だと言っているのかと
思ったのですが、ラストで意外な事実が明らかに。共犯って、そっちだったか。
ただ、旬の父親と泰伸の姉の関係には早い段階で予測がついてしまいました。
友井さんって、割と伏線があからさまなんだよね^^;結局転校するのは
あの人物になりそうですね・・・。

 

似鳥鶏『美しき余命』
小学五年生の時、僕の家族である父と母と妹は、交通事故に遭ってこの世を
去った。僕だけが奇跡的に助かり、親戚の秋庭家に引き取られることに
なった。秋庭家の人々からは、本当に大事にしてもらっている。しかし、僕はその
事故の際の検査で、ケストナー症候群という不治の病に冒されていることが
判明した。中学二年になった僕の余命は後三ヶ月だ。次第に身体が動かなく
なり、歩けなくなってゆく・・・しかし、突然奇跡が起きたのだ。それが
あんな皮肉な結末になってしまうなんて――。
いやー、なんとも後味の悪い作品ですね。幸太の病気の奇跡に、『ありえない
だろ~』とツッコミを入たのですが、まさかの最悪の結末に。余命僅かの時は
あんなにみんな幸太のことを大事に扱っていたのに、奇跡が起きた後の、
あの手のひらを返したような態度の変わりようには、唖然。秋庭家の人たちは
幸太の時間が限られていたからこそ、親切にしていたのでしょうね・・・本当の
家族って何だろう、と思わされる作品でした。

 

乾くるみカフカ的』
新宿にあるバーで知り合った既婚者の船村と付き合っている教師の真弥。
ある日、電車の中で、かつての同級生でネット上の親友であった玲奈と偶然
再会する。久しぶりの再会にお茶をしながら不倫相手の愚痴を話すと、玲奈
から交換殺人の計画をもちかけられて――。
いろいろとツッコミ所満載のオチ。特に動機が。それに、教え子の萌子まで
同じ感情を抱えていたとか。んなバカな。本当に相手のことをそういう風に
思っていたら、真弥をあそこまで貶めるようなことをするとは思えない
んだけど。玲奈の心情は全く理解出来なかったですね。作中に出て来なかった
けど、玲奈の双子の亜恋の名前、アナグラムになってますね。なるほど。

 

芦沢央『代償』
作家の志藤は、自分の中で会心の出来と思える長編を書きあげた。売れない
時も常に支えてくれていた妻に、まずは第一に読んでもらう為原稿の
コピーを渡したが、いつもは一晩で読み上げて意見を述べてくれる妻が
三日経っても何も言わない。おかしいと思って説い正すと、まったく同じ
ような作品を以前にネットで読んだことがあると言い出して――。
志藤の小説の題材を知った時点で、オチはほぼ読めてしまいました。
ただ、もうちょっと妻の過去の素行は悪いものを想像していましたが。
やったことは悪いことだけれど、その動機には情状の余地もあるし。
志藤は結局、この小説をどうしたんでしょうかね。世に出すのは諦めて、
新しい作品を書き始めた気がするな。手直ししたって、リスクはあるしね。




秋川滝美「居酒屋ぼったくり9」(アルファポリス
ぼったくりシリーズ第9弾。なんだか、ついこの間8巻読んだばっかり
って感じがするんですが^^;新刊出るのが早いのか、前作を読んだのが
遅いのか(予約が多くて待たされたのは事実)。
前作では、要さんの母親がいろいろとやらかしてくれて、二人の仲が
こじれて大変でしたが、収まるところに収まってほっとしたのでした。
今回はラブラブな美音さんと要さんが見られるのかと思いきや、またも
問題勃発。ぼったくりで常連客と美音さんの結婚とぼったくり存続に
ついての話をしていたところ、たまたま早く訪れた要さんがその話を
聞いてしまいます。結婚とぼったくりを天秤にかけて、ぼったくりを
取りそうな雰囲気の美音さんに、要さんが激怒。またまた二人の仲が
こじれてしまいます。まぁ、その後お互いの気持ちを確認し合って、
また二人の仲は元に戻るのですけどね。二人の立場が違い過ぎるので、
結婚となると、なかなかに大変そうですね。結婚しても、二人の時間を
取れずにすれ違いの生活になりそう。二人が納得しているならそれでも
いいのでしょうけど。一緒に旅行とか、到底ムリだろうなぁ・・・^^;
この居酒屋ぼったくりシリーズは、出て来る登場人物がみんな義理人情に
篤くていい人ばかりというのが特徴なんですが、今回珍しく悪意の強い
人物が登場します。人に文句ばかり言う悪口婆さん。その口の悪さが、
自分の首を締める出来事に繋がって行くのですが・・・。こういう悪意の
ある人物が登場するのって珍しいなぁと思っていたんですが、次の話で
きちんとそのフォローがされているところがこのシリーズらしいな、と
思いました。やっぱり、根っから悪い人は出て来ないのよね。性善説
というか。周りの人に対する嫌味には辟易しましたが、自分の嫁を心底
心配する姿は、優しい姑にしか見えませんでした。栗きんとんを作る
鮮やかな手付きは、年の功とも思いましたしね。こじれた糸が直って
良かったです。
あとは、何といっても最終話のアキとリョウの恋愛話にキュンキュン
しちゃいました。できれば、どういう経緯でああいう関係になったのか、
そこを書いて欲しかったなぁ。素直になれない二人がどんな言葉で
気持ちを伝えあったのか、とても気になりました。
次巻では美音さんと要さんの結婚話も進展があるかな?続きも楽しみ。