ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵「震える教室」/住野よる「青くて痛くて脆い」

こんばんは。昨日は母の日でしたね。私は、実母・義母共に自分の庭で摘んだ
薔薇を花束にしてあげました。え、お金かかってないじゃないか、セコいぞ?^^;
だって、母に欲しいもの聞いても何もないと言われるし、義母の方にはもちろん、
それだけではなく、和菓子の詰め合わせ(お母さんありがとうの熨斗付き)も
つけましたとも。オーストラリア土産のプロポリスもつけたしさ。
でも、二人とも共通して、自前の花束が一番喜んでくれました。
っていうか、予想以上に喜ばれて、こっちの方が戸惑ったくらい。自分が
育てた花が人の心を喜ばせたと思うと、私も嬉しかったです。義母は、カーネーション
よりよっぽどこっちの方が嬉しい、と言ってくれていたようです(相方曰く)。今年は
薔薇がいっぱい咲いてくれたので良かったよ。来年もあげられると良いけれど。
みなさまは、お母様に何かしてあげましたか~?


読了本は二冊ご紹介。


近藤史恵「震える教室」(角川書店
近藤さんの最新作。受験に失敗して、音楽とバレエ教育で有名な私立の女子高、
凰西学園高等部の普通科に通うことになってしまった秋月真矢。歴史ある学校に
何の取り柄もない自分が通うことになってしまったことに不安を覚えていた。
新学期が始まった初日、クラスに向かう途中で突然制服の袖を掴まれた。不審に思って
振り返ると、小柄な女の子が真矢の袖を掴んでいた。理由を聞いても答えず、結局そのまま
クラスへ向かうことに。彼女は同じクラスの相原花音だった。彼女は極端な怖がり症で、
この学園にいる『何か』が怖くて、真矢の腕を掴んでいたらしい。花音によると、この学園
には『出る』らしい。花音は、小説家の母親から頼まれて、この学園の怪異について
調べるよう言われていた。花音と仲良くなった真矢は、仕方なく花音と共に調査に付き合う
羽目になるのだが――。
近藤さんらしい学園ホラー。ただ、学園の雰囲気は明治から建てられているだけ
あって歴史あるゴシック風なんですが、その割に校風はそんなに閉鎖的って
感じもなく、生徒は割合のんびりた感じ。バレエや音楽をやっていて中等部
から上がって来る子はもっと普通科の子に冷たい感じなのかと思いきや、そうでもなく。
でも、そこで起きる怪異の数々は、真矢たちの年で経験するとしたら、相当怖い。
私だったら登校拒否になりそうです・・・。真矢が、幽霊や怪談の類を怖いと思う
タイプではないのが幸いしたというか。真矢と手を繋ぐと怪異が視えてしまう花音は、
基本怖がりなんですが、母親から学園の怪異を調べてこいというミッションがある為、
敢えて怖いものに近寄ろうとする。母親の為に頑張るところは、きっと根本が良い子
だからなのでしょうね。普通だったら絶対嫌だと拒否すると思うけどな。
ひとつひとつの事件は、学園ものにしては深刻で根が深いものが多く、
後味も悪い。二話目のバレエ教師の悪意と末路にしても、五話目の養護教諭
の末路にしても。どれも真相を知って、ぞーっとするものばかりでした。
でも、個人的に一番怖かったのは、三話目の『捨てないで』かなぁ。
こんな地雷のようなぬいぐるみを一生大切にし続けなきゃいけないって、
相当怖いよ・・・。いつか処分しようって気持ちにならないとも限らないし。
知らぬが仏とはこのことだとも思うけど、知らないだけに、常に死と隣合わせ
って考えると、恐ろしいな、と思いました。
いくつかもやもやしたまま終わるタイプの話もあって、敢えて全部を
語らないことで、怖さを増長させているのかな、とも思いました。
エピローグでの意味深な不穏さに、花音の今後が心配になりました。
続編を想定しているのか、読者の不安を誘うことで余韻を残そうとしたのか。
花音が良い子なだけに、何もないことを祈るのみです。


住野よる「青くて痛くて脆い」(角川書店
『君の膵臓が食べたい』が大ヒットした住野さんの最新作。一応この方の作品は
追いかけ続けているけれど、正直、キミスイ以降の作品で比較的好意的な感想を
述べたのって、二作目の『また、同じ夢を見ていた』くらいな気がします。
どうも、文章やキャラ造形自体に作者自身が酔っているようなところがあって、
斜に構えて読んでしまう。今回もやっぱり、おんなじような感想でした。
端的に言って、タイトル通りのお話なのだけれど。主人公もヒロインも、
青くて痛くて脆い、そのまんまのキャラ。青くて痛い人間同士が触れ合うと、
こういう痛い関係になってしまうんだろうか。主人公の楓が、大学に入学して
痛い理想論をぶつけて来るヒロイン、秋好と出会うところから物語は始まり
ます。空気を読まずに授業で自分の痛い理想論をぶちまける秋好に、周りは
敬遠気味。そんな中、他人を拒絶出来ない日和見主義の楓に目をつけた
秋好は、楓を引き入れて世界平和や理想論を掲げたサークル『モアイ』を
立ち上げる。二人でスタートした『モアイ』だったが、次第に人が増え、
当初のサークルの目的がずれて行き、楓の居場所がなくなってしまう。
そして、楓の世界から秋好が消えてしまった。時は流れ、四年生になった
楓は、就職先も決まりバイトに勤しんでいた。すると、かつて所属していた
『モアイ』の良からぬ噂を耳にする。秋好と作った『モアイ』を取り戻す
ことを決意した楓は、まずは今の『モアイ』をぶっ壊す計画を立てるのだが――。

 

現在の『モアイ』のトップ、ヒロに関しては、秋好に関する描写等で割合早い
段階で気付いてしまいました。ヒロの名前のローマ字表記でもあれ、と思ったし。
最初は、『キミスイ』の二番煎じみたいな話なのかな?と思って読んでいたの
だけれど。なんか、最後まで読んでも、結局作者が書きたかったことがいまいち
読み取れなかったんですよね。痛い人間同士の罵り合いで終わっちゃった
感じで。楓は、終盤自分のしたことを激しく後悔するのだけれど、そもそも
『モアイ』がやっていた学生名簿の企業への横流しは犯罪行為で、遅かれ
早かれ誰かが罪を暴いていただろうし、楓がやったことで情報漏えいが
ストップしたことも事実な訳で。ああいうやり方が正しかったとも思わない
けど、彼が暴いたことは結果として正義でもあると思う。それを棚に上げて、
逆ギレしたヒロには、嫌悪しか覚えなかったです。しかも、楓の気持ちを
誤解して『気持ち悪い』って。なんかいろいろ、残念な人間だなーと思い
ました。
楓の気持ちも最後までよくわからなかったんですけどね。秋好に対する感情の中に、
ほんの少しでも恋愛要素があったのかどうなのか。本人は断固として友情だと
言い張っていたけれど、秋好と脇坂の関係に嫉妬したりするところは、やっぱり
少なからずそういう想いも入っていたのではないのかなぁ。ま、友達に対してだって
嫉妬心ってのは芽生えるものではあるけれども。
楓自身のキャラに関しては、最初は好意的に見れたのだけれど、途中からどうにも
その言動に独りよがりな印象が強くなってしまって、なんだか痛いだけの青年って印象で
終わってしまったな。楓にしても、秋好にしても、キャラがブレブレなのが、なんともね。
しかし、楓が出会った頃の秋好みたいな子も、私だったら絶対近づかないですね。
こんな面倒な性格な子、一緒にいたら疲れるだけだと思うし。楓の、人を
不快にさせないような距離で関係を保つ、という姿勢には共感出来ました
けど。距離が近づき過ぎると、結局いろいろな齟齬が生じて、他人も自分も
傷つく可能性があるから。でも、秋好の登場で、その主義が壊れてしまった。
結局、秋好との距離が近づき過ぎたせいで、自分も彼女も傷つける結果に
なってしまったということなんでしょう。
ラストは正直、蛇足に感じました。確かに、希望の持てる終わり方では
あるのでしょうけど、あそこまで酷い別れ方して、元のように友情が戻る
とは思えないし。あそこで再会させるくらいなら、『モアイ解散』の
説明会の日にもっと違う別れ方をさせるべきだったと思うけどね。
あと、気になったのは、エピローグで楓と付き合っている彼女。就職先で
出会った女性でしょうかね。彼女が出来たのに、あのラストはどうなんだろう。
それと、菫介とは結局その後友達付き合いをやめてしまったのかな。『モアイ』の件で
決別した後さっぱり出て来なくなってしまったのが残念だった。菫介が楓を止めてくれた
時点でやめていれば、楓のその後も変わっていたのかもしれない。
個人的には、楓のコンビニバイトの仲間の川原さんが一番まともな人に
思えました。口調はちょっとアレですけど・・・^^;
うーむ。いろいろ消化不良で、もやもやしたまま終わってしまった感じ。
タイトル通り、青くて痛い話なのは間違いなかったですけどね。
なんか、この作者とは合わない気がしてきた。
もう追いかけるのやめようかなぁ・・・。