ミステリ読書録

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三浦しをん「ののはな通信」/本多孝好「dele 2」

こんばんは。またまた台風が来ていますね。しかもダブル台風。なんか、今年
やたらと台風多くないですか?次から次へと日本列島に襲来しているような。
またしても記録的な豪雨に見舞われる地域があるかもしれないとか。できるだけ
被害がないことを祈るしかありませんね。皆様もどうかお気をつけて。


今回も二冊ご紹介。


三浦しをん「ののはな通信」(角川書店
しをんさん最新作。出るって情報を知らなかったので、図書館新着案内見て
すぐ予約したものの、大分乗り遅れてしまった。
タイトル通り、ののとはな、女性二人の通信記録を綴った長編。通信の手段は、
時代によって様々。出だしは、高校生からスタートするので、主に手紙や授業中の
メモ回しなどが主流。たまに葉書があったり。年賀状や暑中見舞いなんかもありましたね。
なんだか、自分の学生時代を思い出してとっても懐かしい気持ちになりました。
後半は二人とも年を取ってパソコンのメールでのやり取りに変わります。
二人が直接会うことはなくなるけれども、遠く離れていてもやり取りは続きます。
メールになると、直筆の手紙よりは内容も濃く長くなって行く。やっぱり、パソコン
で打つ方が手軽で早いから、長文になりやすいですよね。
ののは野々原茜、はなは牧田はな(後半は結婚して磯崎はな)で、ののとはな。
二人は聖フランチェスカというお嬢様女子校の同級生で親友同士。始めは友達同士の
なんてことはないたわいもない書簡のやり取りから始まるんですが、途中から
二人の関係にある変化が訪れます。女子校ならではの展開に、しをんさんらしいなぁ
と苦笑。でも、始めから二人の間に温度差を感じてはいたので、その後の展開は
ある意味予定調和って感じでした。ただ、破局の理由が、ああいうものだとは
思いませんでしたが・・・。ののが教師の与田を相手にしたことは、正直私も
嫌悪しか覚えなかったです。なんでそういう方向に行くのかなぁと理解不能
はなが拒絶したのも仕方がないと思いました。お嬢様学校に通う生粋のお嬢様
ですしね、はなは(ののとはその辺りの育ちの差が出てしまったのかも?)。
高校を卒業してから二人の距離はどんどん離れてしまいますが、お互いにやっぱり
忘れられない存在なのは間違いなく、その後も書簡やメールによるやり取りで
お互いの近況や心境を伝え合う。二人の微妙な相手への思いが行間から伝わって
来て、なんだかとてもリアルだなぁと思いました。近況を伝え合うことができる
相手がいるって、幸せなことじゃないかな。身近にいる人にも伝えられない愚痴や
悩みを伝えることもできるし。なまじ直接会う人じゃないだけに、素直な気持ちを
伝えられる気がする。もちろん、大事なことを隠して表面だけ伝えることもできる
けれど。
でも、高校から40代に至るまで、ののとはなの相手に対する想いには、ずっと
最後まで温度差があったように思うな。ののはのので、はなとは違う相手を好きに
なって生活を共にしたりもしていたけど、やっぱり、ののの中にはずっとはなが
いたんだと思う。はなにとってもののはもちろん、一番大事な友達ではあるの
だろうけど、ののほどの執着はなさそうな感じがしていました。その証拠に、
あっさり結婚して旦那さんにくっついて海外とか行っちゃうしね。なんか、
ある意味あっさりした性格なんだろうなーと思いましたね。
はなが結婚して外交官の旦那さんにくっついてゾンダという国に行ってからは、
だんだんとはなのメールでの近況の内容がが不穏になって行きます。遠く離れた日本に
いるののには、はなの無事を祈ることしか出来ず、心配ばかりが募って行く。
メールが2010年になってからは、最終的にはあの出来事が起きるところで
終わるんだろうな、と予想してました。そこで終わりではなかったけれど。ののが
取材と慰安を兼ねてしょっ中松島に行っていたから、巻き込まれてしまう伏線
なのかも思って心配していたんですが、ののよりはなの方が問題でしたね。
はながああいう決断をするとは思わなかったです。女子校時代はふわふわとした
女の子って感じだったから、あんなに強い女性に成長するとは思わなかったです。
いろんな経験を経て、ひとは強くなって行くんでしょうね。ののとはな、二人の
人生は全く違うものになったけど、深いところでふたりの絆はずっと繋がって
いるんだろうな、と思えました。はながどうなったのかがとても気がかりですが
・・・もう一度、ののとはなの通信が繋がるといいな、と思いました。
書簡やメールのみで構成されているので読みやすいとはいえ、二人の文章しか
出てこないので、若干途中で飽きて来た感じはありましたね^^;ちょっと
長すぎたかなぁ。二人の関係の微妙な変化なんかは、作中でこれだけの時間を
経ないと表現出来なかったのかもしれないですけれど。
授業中の友達とのメモ回しなんかは中学時代によくやってたし、交換日記とかも
やってたし、小学校の時転校した友達と大学くらいまで手紙のやり取りしたりも
していたので、なんだかののとはなの書簡のやり取りがとても懐かしかったです。
なんだか私も手紙が書きたくなりました。


本多孝好「dele 2」(角川文庫)
現在テレビ朝日系でドラマ化されている『dele』の原作。ドラマ化に合わせて
二巻が出たんでしょうね。なぜか2巻は文庫で出ましたが(確か一巻は単行本だったはず)。
1がとても面白かったので、続編が読めて嬉しかったです。まさかドラマ化されるとは
思っていなかったので驚いたのですが、ネットでドラマ化の詳細が書かれたページを読んで
いたら、もともとドラマ化の企画が先にあった上で、原作が書かれたらしいです。しかも、
企画発案者は金城一紀氏らしい。
ドラマのあのスタイリッシュで映画みたいな撮り方は、金城さんが関わっているなら
納得です。出演者も無駄に豪華だし(笑)。視聴率イマイチみたいだけど、勿体ない
なー。原作と全然話も被ってないから、ドラマはドラマ、原作は原作で楽しめる
ところもいいですね。
さて、2は三作が収録されています。依頼人が死んだ時に、秘密のデータを削除する
仕事を請け負うdele.lifeの所長・圭司と雇われ人の祐太郎。二人の元に持ち込まれた
3つのケースが描かれます。
一話目二話目はいつもの展開でしたが、三話目は祐太郎の過去とともに、圭司の隠された
身の上のことも描かれます。二人がなぜ出会ったのかも。いろんな意味で、驚かされた
お話です。今までにいろいろ伏線は忍ばされて来ていたのでしょうけど・・・まさか、
こういう展開になるとは。二人の関係が変わってしまったのが悲しかった。せっかく、
友人同士になれたと思っていたのに。
シリーズ化って言ってたのに、二巻で終わりなのかなぁ・・・。でも、圭司の『また
連絡する』って言葉があるから、きっと二人の関係はこれで終わりじゃないはず。
きっとまた、違った形で二人が再会できることを期待していたいと思います。
ドラマはまだ何回かあるので、そちらの終わり方も気になりますね。原作とは
全然違った展開になるのかなぁ。1回目見逃したから、二人の出会いがどんな
だったかわからないのが残念。本の方では、その出会いが本書のラスト一話の
結構重要なポイントになっているところもあったので。ドラマ観てるから、本書の
圭司と祐太郎のビジュアルは、完全に山田孝之菅田将暉でした(笑)。そういえば、
ドラマでは遥那も猫のタマさんも出て来てないんですよね。ちょっとさみしい。
これから出て来ることもなさそうだしなぁ。今回、タマさんは散々な目に遭って
可哀想でした。いつか圭司と会わせることができるといいなぁ。