ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

今野敏「任侠浴場」/皆川博子「皆川博子の辺境薔薇館」

どうもこんばんはー。今日も暑かったですね^^;しかし現在外は雷雨がすごいです。
ピカピカひっきりなしに光ってます。こわっ。
そのうちどっかに落っこちそうだなぁ。停電しなきゃいいけど・・・。


読了本は二冊ですー。


今野敏「任侠浴場」(中央公論新社
大好きな任侠シリーズ最新作!やー、待ってましたー。今回も面白くってあっという間に
読み終わっちゃった。我らが阿岐本組が今回救済するのは、経営危機に瀕した赤坂の銭湯。
なんとか寂れた銭湯に再び客を呼び戻そうと奮闘します。
地方の方は意外に思われるかもしれないですが、東京にも結構銭湯は残ってます。
しかも、都心の方が温泉だったりするんですよねー。私も、相方と車で40分くらいの
場所にある銭湯にたまに行ったりします。そこは、珍しくサウナも無料で入れるんですよ!
(残念ながら温泉ではないですが)銭湯って、基本サウナは別料金のところがほとんど
なんですけどね。
そういえばかなり昔、麻布十番の銭湯に行ったことがあるのだけど、今もあるのかなぁ、あそこ。
茶色っぽい温泉でしたっけ。
銭湯みたいな場所って、地元の人が集まるところだし、やっぱりなくなると寂しい。
今はスーパー銭湯があちこちにあって、なかなか昔ながらの銭湯が経営して行くのは
大変だと思いますけどね。阿岐本組長が、なんとか赤坂の銭湯を残したいと思う気持ちは、
とても共感出来ました。まぁ、その思いつきのおかげで、今回も代貸の日村さんは気苦労
の連続になってしまう訳ですけれど(苦笑)。
銭湯再建の勉強にと、なぜか阿岐本組のメンバー全員で道後温泉に行くところには、
ほっこりしちゃいました。日村さんも、最初は組を空けることに不安ばかり感じて、温泉を
楽しむどころじゃなかったですけど、阿岐本組長の粋な計らいで休みをもらえて、
のんびり温泉旅行を楽しめるようになってよかったです。しかし、私も一番不安だった
のは、日村さん同様、温泉に入れ墨の人間が入れるのか?ってところだったんですけど、
しっかり入れ墨OKのところを選んでいるところがさすがだなーと思いました。公共の
温泉だと入れ墨OKのところが多いものなのかな??地元の銭湯に行くと、入れ墨入れた人が
よく入ってることが多いらしいですけど(相方談)。
後半の、銭湯再建に向けて掃除からスタートする辺りは、阿岐本組らしいなーとくすり。
やっぱり、不潔な場所に人は集まらないですからね。うんうん、大事、大事。
あと、銭湯の絵はやっぱり私も富士山がいいと思う。銭湯絵師って、ほんとに三人くらい
しか現存していないのかな。後継者がいなくなると、ますます銭湯が廃れてしまいそう・・・。
銭湯経営者が、国からかなり優遇措置を受けている話は、職場の人から聞いたことが
ありました。助成金等で、そこらの会社員より年収も高いらしい。それでも、どんどん
廃業しているってことは、後継者がいないんでしょうね、結局。今回の檜湯のように、
子供が銭湯経営に興味を示してくれる例ってなかなかないんでしょうね。今どき、銭湯
を継ごうと思う若い子なんて少なそうですもん。私だったら継ぎたいけど(お風呂大好き!w)。
最初は阿岐本たちに不信感しか抱いてなかった檜湯(佐田)の奥さんも、だんだんと阿岐本
たちのやり方や人柄を認めて懐柔されて行くところが嬉しかったです。阿岐本のおやっさん
本当に真っ直ぐで人情味溢れる人柄で、魅力的ですよね。日村さんの、心配性で苦労性の
ところも大好きなんですけどね(笑)。
ところで、近所の女子高生の香苗ちゃんの存在を全く忘れていました。どの作品から
出て来た子なのかなぁ。この間図書館で任侠学園を軽く読み返してみたけど、出てなかった
っぽかったような(読み逃しただけかもしれないですが)。
今回もとっても痛快でした。面白かったです。もっと続編出してほしい~。


皆川博子皆川博子の辺境薔薇館」(河出書房新社
ロングインタビューやエッセイや、豪華執筆陣による皆川博子評などを集めた皆川博子集。
beckさんが絶賛してらしたので、私もつられて借りてみました。相変わらず、装丁からして、
ため息が出るくらい素敵。皆川さんの作品は、私自身は数えるくらいしか読めていないの
だけれど、図書館の書架に並んでいると、必ずその背表紙の美しさとタイトルの壮麗さに
目がいって手に取りたくなってしまう。未だに読めていない『薔薇密室』や『聖餐城』
『双頭のバビロン』なんかはそのいい例。一体、何度この手に取ったことか。でも、
その分厚さと海外が舞台という(自分にとっての)とっつきにくさで、結局そっと書架に
戻しちゃうんですよね^^;読めばどっぷりはまりそうな気もするんですけれど(『死の泉』
がそうだった)。
冒頭に、過去に発表されたいくつかの掌編が収録されています。どれもすごい。なんで、
こんな発想が出て来るんだろう?と驚かされます。もちろん、突飛過ぎてピンと来ない
作品もあるんですけど、それは多分、私の読解力不足の問題だと思われ。あと、他の方が
おっしゃってたように、書き出しからして秀逸。ぐっと引き込まれる言葉の羅列に、くらくら
来ちゃいます。錚々たる作家の方々が、ファンになるのも頷けるってものです。

 

『庭は、寝返りをうって、背をむけた。』

 

冒頭の掌編『風』の書き出しです。なんか、すごくないですか。庭が、寝返りうつんですよ!?
どういう状況!?って引き込まれちゃうじゃないですか。もう、そこで作者の術中に
はまってる。これが、文章の力なんだなぁ、としみじみ。


数多くの作家や編集者の方々が皆川さんへのコメントを寄せているのですが、そのすべてに
共通しているのが、皆川さんとその作品への熱い想いの強さ。もう、はっきりいって、ほとんどの
人が皆川さんに向けてファンレター書いてるような感じ。それだけ、多くの作家や編集者に
影響を与えて愛されているすごい作家さんなんだなーとしみじみ思わされました。その愛らしい
人柄への賛辞も多かったし。齢八十歳を遥かに超えて、これだけ精力的に執筆活動を続けて
らっしゃるだけでもすごいと思うのに、取材旅行先での好奇心旺盛な振る舞いにも
驚かされます。さすがに、最近は海外に行くことは出来なくなってしまわれたようですが。
皆川さんと知り合った人はみんな、その人柄にノックアウトされちゃうみたいですしね。
大作家とは思えない、謙虚で慎み深い言動には頭が下がるばかりです。
一番私が驚かされたのは、著者のロングインタビューの中の、『ご自分の好きな世界を
書くときに障害になるのは何でしょう』という問いかけに対する『知識が浅いということ』
というお答えの部分。戦争のおかげで女学校三年生の途中までしか授業が受けられなかったそうで、
基礎の知識が抜けているのだそう。そのせいで、後からいろんな知識を習得しようと
しても、深いところまで手が届かず浅いところで終わってしまうとのこと。皆川さんの知識が
浅かったら、私を含めた一般人はどうすればいいのでしょう・・・。どれだけ自己評価が
低いんですが、皆川先生。このロングインタビューは、生い立ちやらご自身のお好きなものやら、
自作についてやら、皆川さんの素敵なところがいっぱい詰まっていて、とても読み応えが
ありました。好きな漫画の話とかも面白かったなぁ。少女のように漫画のお話をされている
お姿がもう、可愛らしくって。『BANANA FISH』の話が嬉しかったー。
嬉しい次回作の情報も入っていましたし。『アルモニカ・ディアボリカ』の続編だそう
じゃないですか!もう、楽しみ過ぎて。殺人事件が起きなくて困ってるそうですが(笑)。
早く一冊にまとまってほしいなぁ。来年辺り出るのかな?その次の作品も決まっているそうで、
相変わらず精力的に書かれていらっしゃって、嬉しくなりました。
ただ、先日入院されたようなこともあったようなので、とにかくお体だけは気をつけて、
まだまだご健勝で、末永く書き続けて頂きたいと願うばかりです。
皆川ファンなら必読の一冊じゃないでしょうか。
やっぱり、辺境図書館(先日出たエッセイ)の方も読みたいなぁ。