ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

名取佐和子「金曜日の本屋さん 秋とポタージュ」/秋川滝美「幸腹な百貨店 催事場で蕎麦屋呑み」

こんばんは。もう8月も終わりですね。今年も残り4ヶ月!早いですねぇ・・・。
8月は本当に猛暑と台風の月でしたね。またしても21号という超巨大台風が
日本列島接近中だそうですし。なんだか直撃されそうで、恐ろしいです。
被害が少ないといいのですが・・・。


今回も二冊ご紹介。


名取佐和子「金曜日の本屋さん 秋とポタージュ」(ハルキ文庫)
シリーズ第三弾。地方の小さな駅ナカ書店<金曜堂>を舞台にした心温まる物語。
金曜堂は表向きは小さな書店ですが、地下には地下鉄の駅を改装した広大な書庫があり、
『読みたい本が見つかる本屋』と呼ばれています。更に、地下にはオーナーのヤスさん
の祖父が建てた別荘まであるという、驚きの書店。店舗内には美味しい料理が食べられる
カフェまで併設せれているし、まさに『理想の書店』という感じ。本好きにとって、
これほど魅力的な書店ってなかなかないんじゃないだろうか。もう、こんな本屋が
あったら、私だって働きたいよ!主人公の倉井くんが羨ましくて仕方がない。
倉井くんは全国展開している大規模書店の御曹司ではあるけど、全然そんな感じが
しないし、この駅ナカ書店にいる方が似合ってますね。本人も、大学卒業後は
できれば金曜堂で働きたいと希望しているみたいだし。槇乃店長の側にいたいって
のが大きいとはいえ、ね。まぁ、家の方の問題があるから、どうなるかはわかりませんが・・・。
一話目は、倉井くんと同じ大学の排球同好会の女子学生二人が、学園祭で
ブックカフェをやることになり、修行がてら金曜堂で一日アルバイトをするお話。
太宰治『女生徒』は、ビブリア古書堂にも出て来ましたね。未だに読んでないや。
一度読んでみた方がいいかな・・・^^;
二話目は、東京の大規模な本の展示会に、槇乃店長と倉井くんが遠征するお話。
倉井くんの父親の<知海書房>の名物女性店員さんも出て来ます。出て来る本は、
春樹のノルウェイの森ですね。ええ、もちろん、読んでませんとも(えばるな^^;)。
初版本は、今だったらすごいプレミアがついてたりするんですかねぇ。今何版
くらいなんでしょうね。
三話目は、ラノベしか買わない男性客が、槇乃店長を気に入り、金曜堂に日参
するようになる話。出て来る本は、茨木のり子さんの二冊の詩集。恥ずかしながら、
茨木のり子さんを知りませんでした。詩集ってほとんど読まないからなぁ。
友人に詩人デビューした人はいるんですけどね。彼女、詩人活動してるのかなー。
四話目は、離婚して離れて暮らす娘と金曜堂で待ち合わせして会う男性のお話。
出て来る本は、藤野恵実さんの『ハルさん』。今回、お話のキーポイントになる
本の中で、唯一既読の本でした。そして、私も大好きなお話。父親と娘の、
心温まるハートウォーミングストーリーですね。これ読んで、再読したくなっちゃい
ました。
もちろん、今回も喫茶担当の栖川さんのお料理はどれも美味しそうだった~。
カリフラワーのポタージュとか食べてみたいー。一話目で出て来た文豪セットの
饅頭茶漬けはちょっと遠慮したいですけど・・・^^;
前作で槇乃さんが精神的にかなり参ってしまったので気がかりだったのですが、
大分復活してきてほっとしました。倉井くんの影響もあるのかな。なんとなく、
槇乃店長も倉井くんのことを意識しだしてる雰囲気ありますしね。これからの
二人の関係がどうなるかも気になるところです。続きも楽しみ。


秋川滝美「幸腹な百貨店 催事場で蕎麦屋呑み」(講談社
こちらもシリーズ第三弾。業績の悪い百貨店の立て直しを図る事業部長、高橋伝治
が主人公。五十歳を超えたおっさんが主人公という、なかなか斬新なシリーズ。
毎回いろんな問題が噴出してくる堀内百貨店。今回は、催事場の売上減少をなんとか
しようと奔走するお話です。起死回生で出した案は、蕎麦屋呑み。蕎麦を食べながら
お酒(日本酒)を嗜む。これは、かなり通な感じがしますねー。私はお酒飲めない
体質なんで、あんまりピンと来ないですけど。蕎麦屋呑みって、上級者って感じが
しました。お蕎麦にはお茶って感じですけどね、私は(苦笑)。飲ん兵衛さんには
向いているのかも。
奈々ちゃんを巡る三角形が、あわや四角形に!?って感じになりかけてひやひや
しましたが、ラストであっさり収まるところに収まったので拍子抜け。そんなに
上手く行くものか!?とツッコミたくなりましたけど・・・。でも、個人的に
神田くんと奈々ちゃんって、合いそうもないな、と思ってたので、良かったのかも。
奈々ちゃんって、恋愛になると思い込み激しくて結構怖いタイプな感じがしたから、
変にこじれて里美ちゃんに恨みが向いたりしなくてよかったです。神田くんと里美
ちゃんはいいパートナーになれそうだけど、どうなのかな。里美ちゃんは今後
異動しちゃうしなぁ。接点なくなっちゃうのかしらん。ちょっと勿体ない気が
しますね。
最後は毎度ながら上手く行き過ぎな感じもしましたが、まぁ、大団円で良かった
です。ふるみなと祭りのお神輿の件も伝治のアドバイスでいい方向に進んだし。
伝治は、自分は周りの手本となるような上司じゃない、カリスマ店員の瑠衣や同期の
高島はさすがだって、ことあるごとに自虐してるけど、伝治と仕事をした人はみんな、
彼に一目置いてるし、尊敬してるし、信頼してるんじゃないかな。部下に対して、
とても節度を保った接し方をしているので、毎回、いい上司だなぁと感心しちゃいます。
世の中の上司が、みんな伝治や瑠衣みたいだったらいいんですけどねぇ・・・(ため息)。
仕事を辞めたがっている里美の為に、あそこまで親身になってくれるんだから。
普通だったら、辞めたければ辞めればって、突き放されるだけだと思うけどね。
里美にとっては、これ以上ないくらいいい職場だと思います。辞めないで続けて
欲しいな。
今回も、堀内百貨店のピンチが回避されてよかったです。