ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

成田名璃子「東京すみっこごはん 雷親父とオムライス」/「飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語」

こんばんは。先日の超大型台風での関西の被害に愕然としていたら、今日は早朝に
北海道で大地震。一体、本当に今年の日本はどうなっているのでしょうか。
まさしく、災害列島。
関西には大事なブロ友さんがいらっしゃるし、北海道は姉の義両親が住まれています。
心配でなりません・・・。どうか、みなさんご無事で。
先日の台風から、我が家では真剣に自家発電装置でも買おうかと話し合っています。
何かあった時、やっぱりいちばん問題になるのはライフラインですから。
大雨や台風での停電は、関東だっていつ起きてもおかしくないですし(現に、この間の
雷雨で同じ市内でも停電した地区があった)。いつ何があってもおかしくない今の日本、
とにかく日頃の備えが大事だとひしひしと感じる今日この頃です。


読了本は今回も二冊ご紹介。


成田名璃子「東京すみっこごはん 雷親父とオムライス」(光文社文庫
シリーズ第二弾。一巻が面白かったので、すぐに二巻も予約しちゃいました
(現在3巻予約中)。今回もとても良かった。年齢性別関係なく、集まった
メンバーでくじを引いて当たった人が夕食を作り、それをみんなで食べる
<共同台所>、すみっこごはん。誰かの手作り料理が食べたい人々が自然と集まる
不思議な場所であり、心に悩みや鬱屈を抱えた人にとっては、心を癒やす拠り所
でもある。今回も、いろんな憂いを抱えた人たちがすみっこごはんを訪れます。
一話目は、声優志望でガールズバーに勤める専門学校生の沙也。同じ声優の
専門学校生の穂波とは親友同士だったが、穂波の実力が上がるにつれて、自分に
自信がなくなって、穂波とも上手く行かなくなってしまう。卑屈な沙也の性格には
辟易しましたが、親友の才能に嫉妬してしまう気持ちはわからなくもなかったです。
二話目は、奥さんを亡くし、一人暮らしになった頑固な老人、有村さん。奥さんが
作ってくれた筑前煮の隠し味を探して、すみっこごはんで出会った女子高生の楓と
共に特訓に励む。最初は嫌味な偏屈じじいだと思いましたが、すみっこごはんに
通ううちに態度が軟化して行って、印象が変わって行きました。奥さんの免許証を
なんであんなに探していたのかなぁと不思議だったんですけど、最後で納得。多分、
他になかったんでしょうね・・・。
三話目は、親に敷かれた人生のレールを歩むべく勉学に励む小学生の秀樹くん。
有名中学に入れ、無農薬野菜を食べろ、友達を選べ、将来は医者になれ。なんかもう、
典型的な毒親って感じでしたね。いや、息子の将来を思ってなのかもしれないけど、
子供を何だと思ってるんだろう、と呆れました。それが息子の一番の幸せだと
信じて疑わないところがもう。二話に出て来た有村さんとのやり取りがとても良かった。
秀樹にとって、有村さんと出会えたことは人生の宝になったと思う。それなのに。
この結末はあんまりだよ・・・(涙)。二話でも伏線らしきものはあったの
だけれど。老人と子供が触れ合うお話にはめっぽう弱い私。好きなだけに、こういう
結末が一番悲しい。仕方がないことだとはいえ。
四話目は、いつもすみっこごはんに行くと明るく迎え入れてくれる常連さんの
田上さんが初主人公。田上さんがすみっこごはんに来ることになったきっかけも
描かれるし、すみっこごはんが街の再開発地区の対象地区になり、解散危機を
迎える顛末についても描かれます。田上さんのにわか女探偵っぷりが微笑ましかった。
旦那さんとはほんとにいいコンビですね。素敵なご夫婦!すみっこごはんに対して
並々ならぬ愛情を注ぐ理由は、すみっこごはんのおかげで夫婦の危機を乗り越え
られたからだったんですね。
すみっこごはんを裏切っていた人に関しては、ああ、やっぱりこの人か、って
感じでしたね。それ以外の人だったら、もっとショックを受けていたと思う。
今回はとりあえず危機を逃れたけれど、これからどうなるかわからないので、
今後の展開も気になります。早く続き回って来ないかなー。


「飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語」(富士見L文庫
美味しいお料理をテーマにしたアンソロジー。この手の美味しいお話は大好き
なので、知らない作家さんが多かったのですが、手にとってみました。バラエティに
富んだ20編が収録されています。一編が短いので、ちょっと一作の完成度としては
物足りない感じのものもありました。イラストだけのものや、漫画なんかも入って
ます。イラストだけのちゃいさんのすいーとりの絵はほのぼのしてて可愛らしかった。
カラーで見てみたかったなー。
印象に残った作品の感想をいくつか。
名取佐和子『寄席わらしの晩ごはん』
寄席わらしのほんわかしたキャラが気に入りました。寄席にこんな妖怪がいたらほのぼの
しちゃいそう。シリーズ化されそうですね。出したお料理は減っていくのかな?
存在が見えなくても、料理がなくなっていけば存在の証明になりそうだけれど。
日向夏『カロリーは引いてください!~合コン事件と紫蘇ジュース~』
朝生くんと楓ちゃんの関係が面白いですね。学食で働く楓ちゃんと、朝生くんの
母親から朝生くんを痩せさせて欲しいと頼まれている楓。ミステリとしても
面白かったです。この二人が出て来る本がすでに出ているようなので、読んでみたいです。
ジョセフ武園『Mother's recipe』
かなり変化球ですが、面白い構成だな、と思いました。亡くなった母親が書き残した
レシピを父親が作って、子供が大人になって行く。母親が、子供のいろんな行事や場面を
想定してレシピを残していて、レシピごとに子供が大人になって行く様が伺えるところが
巧い。母親の愛情と、それを作る父親の愛情も感じられる良作だと思います。
芝生かや『お近づきのクリーム煮』
二作漫画が入っていますが、こちらの方が好き。ベタだけど、人見知りの子供が
美味しいお料理で懐柔されて行くところが微笑ましかったです。
ほしおさなえ『味噌汁王子』
仕事が上手く行かず、心が折れそうになっている見習い美容師が、先輩美容師の
優しさと美味しい味噌汁で心が癒やされて行くお話。美容院で味噌汁って、なかなか
ない発想だなーと思いました。時間がかからず匂いが残らない料理で味噌汁が選ばれ
たみたいなこと書いてあったけど、味噌の匂いって結構残るんじゃないのかなぁ。
奥の方で食べれば大丈夫なんだろうか。
美容院の奥に小さなキッチンがあるってところにもびっくりしたけど^^;
でも、仕事するにはまず健康、それには食、って考え方には賛成。日々の食事って、
ほんとに大事。昔ダイエットした経験があるから、すごくわかります。きちんと
栄養摂らないと、肌も体調も最悪になるもの。体温下がるしね。
美味しいものは、やっぱり人を幸せにしてくれるんだなーと思えるアンソロジーでした。