ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

千早茜「正しい女たち」/三津田信三「碆霊の如き祀るもの 」

こんばんは。今日で平成の歌姫、安室ちゃんが引退ですね。
私自身は特に大ファンって訳ではなかったのだけれど、彼女の歌はテレビやラジオ
でずっと聴いて来たし、カラオケで何度も歌って来たし、大好きです。ひとつの
時代が終わったって感じがしますね。各方面で安室ちゃん人気曲のベスト10を
やっているのを観ていると、どの曲もほんとに思い出に残っているものばかりで
感慨深い。個人的には、やっぱり小室プロデュース時代の曲が好きだなぁ。
引退したら、ゆっくり自分の道を歩んで幸せになってもらいたいな。

 

読了本は二冊。

 

千早茜「正しい女たち」(文藝春秋
千早さん新刊。6作からなる短編集。テーマはタイトル通り、『正しい女たち』
でしょうか。かといって、どの作品にも正しい女が出て来る訳ではないような。
共感できる話もありましたけど、ほとんど全く出来ない話でしたね。後味の悪い
作品が多かったですし。六編のうち、二編が明らかにリンクしたお話で、その
ほかにも微妙に登場人物がリンクしていたりするので、ちょっと作品集として
どっちつかずの印象になってしまった。個人的には、中途半端なリンクって、
なんとなく据わりが悪く感じて好きじゃない。するならする、しないならしないで、
はっきりして欲しかったなぁ。ついつい、勘繰って、これは前の話に出てきた
あの人じゃないか?と深読みして読んでしまって、全然関係ないとわかってがっかり
みたいな肩透かしが多かったんで^^;
どれも読みやすいのであっという間に読めてしまったのですけどね。
では、各作品の感想を。

 

『温室の友情』
学生時代に四人でつるんでいた友達関係が、大人になるに従って次第に崩れて行く、
というのはよくあるパターンではありますね。人生の節目のステージを迎える度に、
友情って変化していくものだと思う。学生の時は、ずっとこのまま友達関係で
いられると思っているのだけど。
しかし、友達のためだからといって、友達の不倫相手の家庭をめちゃくちゃに
するのはどうなのかと呆れました。そういうのって友情っていえるんだろうか。
私には、自己満足にしか思えなかったです。彼女のしたことは正しかったのかな。

 

『海辺の先生』
これは一番読んでいてほっとできたお話だった。なんだか殺伐とした話が多かった
から、このお話に出て来る佐倉先生の優しさが余計に心に残りました。大学に
行きたい女子高生に、無償で勉強を教えてあげる。それが『先生』と呼ばれる
ことをしてみたかっただけだったとしても、行き場のない迷子のような女子高生に
とって、どれだけ救われる行為だったことか。彼女にとっては初恋だったのかも
しれないですね。

 

『偽物のセックス』
これはちょっともう、全然理解出来ないお話でした。冒頭で、主人公が飲みの席で
話すあけすけのない話にも引いたけど。二次会とはいえ、会社の飲み会で、こんな
話するものなの?男同士、女同士だけの飲み会とかならまだわかるんですけど。
主人公の男の、同じマンションの女に対する言動にもドン引き。気持ち悪いとしか
思えなかったです。
女の言動にも引いたけど、確かに、彼女(と夫?)のやっていることは正しい
ことだと思う。それを面白おかしく噂する他の住民たちの方が品がないな、と
思いました。

 

『幸福な離婚』
これもちょっと、不思議な話でしたね。離婚すると決まった夫婦が、期限まで
今までと同じように普通の夫婦として生活する。別れる前提だからこそ、穏やかに
暮らせるっていうのはあるのかもしれないですね。二人の関係、別れてしまうのが
もったいないような感じがするくらい、自然な夫婦に思えました。でも、一緒に
暮らしていると、やっぱりいろんな不満が出て来るものなのでしょうね。夫婦って
難しいな、と思いました。夫のイツキは、一つ前の『偽物~』で出て来た女が電話
で話していたイツキ先生と同一人物なのかな。彼女の夫とどういう関係なんで
しょうか。

 

『桃のプライド』
一話目の『温室の友情』に出て来た女友達四人組のうちの一人、環が主人公。
売れない女優でお金がないのに、見栄を張ってキャリアウーマンの友達二人に
付き合って7千円のアフタヌーンティーに付き合う。若い頃は友達の中の誰より
おしゃれで勝ち組だったはずなのに――っていう。30すぎると、女はいろんな
ことで焦りを感じるんですよね。その辺りの心の機微がとてもリアルだなぁと
思いました。環が今流行りのSNS女なのが何とも痛かった。MORIとの写真は結局
SNSにアップしたんだろうか。あんな風に皮肉なことを言われたら、普通なら
アップ出来ないと思うけど。MORIって女も意地が悪くて、好きになれなかったです。

 

『描かれた若さ』
これもめちゃくちゃ後味の悪い作品。ただ、主人公の男の最低な言動を知って、
最後はいい気味、と思ってしまった。でも、確かに男が過去に言った言葉は酷いと
思うけど、だからってここまで手のこんだ復讐をするのは、ちょっとなかなかすごい。
女の執念深さにぞっとしました。



三津田信三「碆霊の如き祀るもの」(原書房
久々の如きシリーズ!いやー、待ってました。読み応えたっぷりでしたねぇ。今回も、
横溝正史ばりの本格ガジェットてんこ盛りで、読んでてわくわくしっぱなしでした。
ただ、事件が起きる前に4つもの怪談話が入っていて、さすがにちょっと前置きが
長いなぁと辟易しました。ひとつひとつの怪談はそれなりに面白いですし、それが
本編の事件と直結する怪談であることもわかるんですけども。
今回は、断崖絶壁に閉ざされた海辺の村が舞台。そこには、昔からいくつもの怪談話
が語り継がれ、『碆霊様』と呼ばれる神とも化物ともつかない存在への信仰があった。
そんな村で不可解な連続殺人事件が起きる――。
今回も、怪談話とミステリーをほどよくミックスさせて、独特のケレン味を醸し
出しているところはさすが。よくまぁ、こんな気味の悪いお話を次から次へと
考えられるものだ。
冒頭で語られる4つの怪談話になぞらえて、不可解な殺人事件が続けて起こって
行く訳ですが、一つ一つの怪談が全く性質の異なるものなので、どう殺人事件に
つながって行くのか、終盤の言耶の推理を読むまでは全くわからなかったです。
相変わらず、言耶の推理が二転三転しまくるので、頭が混乱して最終的には何が
何やら状態でした・・・。
で、真犯人なんか、一周回って意外性のないものになっちゃってたのが何とも。
ドンデン返ししすぎるのも考えものだよなぁ。最後にもう一捻りあるのかな?と
思ったら、なし崩し的に推理終了であっさりエピローグだし。で、結局真相って!?
みたいな感じになっちゃったじゃないか^^;未だにちょっと頭が混乱気味で、
真相を整理しきれてないところもあるのですが。
それぞれの密室状況での殺人事件の真相は、なるほど、と思えるものではありました
けどね。特に、竹林宮での餓死事件の真相には感心しました。ちゃんと、細かい
謎にも説明がついているし。しかし、これでほんとに4日も5日も閉じ込められた
のか、に関してはちょっと首を傾げてしまうけれども。その間に誰かが足を踏み
入れることが全くないとも言い切れないような。物見櫓の殺人もまぁまぁ納得
出来ました。ただ、絶海洞の殺人はちょっと苦しかったかな。結局、真犯人は
意外性ゼロだったしなぁ。
殺人の方法も、ちょっと成功するのか疑問が残る手法使ってるし。そもそも、
とっさに考えてソレを作成するような時間があったのだろうか。
唐食船の真相というか、村に隠された秘密の部分が一番ぞっとしたかもしれないです
閉鎖的な村にはありがちなのかもしれないですが・・・人間として、どうなんだ。
でも、昔はこうやって、栄えて来た村や部落がいくつもあったのかも・・・。
食中毒事件の動機にもぞっとしました。こんな理由で人が殺されてしまうなんて。
都会では考えられないことです。
そして、戦慄のラスト。一体、村の人は・・・(絶句)。
あと、表紙、相変わらず怖いです・・・早く返そう・・・(家に置いておきたく
ない(><))。

 

以下、ちょっとだけ疑問に思った部分。













※ 結局、竹林宮で多喜が急速に飢餓を覚えたのはなぜだったんでしょう? 
 あと、蓬莱さんの正体って、ほんとに多喜だったんでしょうか?言耶の推理は  
自分で否定していたから、蓬莱=多喜という図式も成立しなくなるのかな?
うーむ。他にもいっぱい疑問点が残ってる気がするけど、思い出せないからまぁ
いいや。








まぁ、腑に落ちない部分もたくさん残っている気がするけど、雰囲気と設定だけ
でもう、十分満足できちゃう。私はやっぱり、この手の本格ミステリが一番読んで
いて楽しい。一年に一度は刀城シリーズ読みたいなぁ。三津田さんお願いしま
す・・・。