ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

成田名璃子「東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて」/吉田修一「ウォーターゲーム」

こんばんは。なんか一気に秋ですね。今日は一日雨だし部屋にいても寒かった(><)。
また台風来るみたいですしねぇ。体調管理が難しいですね。
みなさまも体調崩されませぬように。


今日も二冊です。


成田名璃子「東京すみっこごはん 親子丼に愛を込めて」(光文社文庫
先日二巻を読んだばかりなのですが、すぐに三巻が回って来たので間を空けずに
読めてよかった。前作では街の再開発騒動に巻き込まれて存続危機を迎えた
すみっこごはんでしたが、取り敢えず危機は乗り越えたもようで、ストーリーも
通常モードに(?)戻りました(笑)。今回は、結婚願望のないOL、片想いに
悩む男子高校生、義理の娘との関係に悩むキャリアウーマンなどが新メンバー
としてすみっこごはんを訪れます。そして、既存メンバーでは若かりし頃の
柿本さんのお話が入っています。楓ちゃんのお母さんとの出会いは、柿本さんに
とってかけがえのないものだったことがわかりました。そして多分、このお話を
読んだことで、柿本さんが楓ちゃんをとても大切に思っていることもわかると
思います。読めてよかったです。
他のお話では、片想いに悩む高校生のお話が印象的。相手がまさかの人物で。
これは完全に騙されてましたね~。梨音の楓への嫌がらせが地味だけど陰湿で、
イヤな気持ちになりました。でも、それに負けずに立ち向かった楓は偉い。
本当に良い子に育ちましたね。一話の結婚願望のないOLのお話は、今後の展開が
とても気になります。良い方に進みそうな感じなので、今後も出て来て欲しい
なぁ。最後のキャリアウーマンのお話は、主人公が早く家に帰れる度に親子丼を
作るところがちょっと自己満足に思えました。義理の娘が食べてもらえるまで同じ
料理を作り続けるとか、ちょっとした嫌がらせにも見えるような^^;まぁ、最終的
には思いが伝わってよかったですけども。
すみっこごはんに来てみんなでご飯を食べていると、なぜかその人が抱えている悩みや
憂いが取り払われて行く。そんなにプライベートで親しくない人たちだからこそ、
なんでも言い合えることもある。こういう場所が私も欲しいなぁと思いました。
四巻は発売されたばかりみたいで、まだ図書館入荷してくれてないんですよねぇ。
早く入らないかなー。


吉田修一「ウォーターゲーム」(幻冬舎
『太陽は動かない』『森は知っている』に続く、産業スパイの鷹野シリーズ
第三弾。このシリーズにそんなに思い入れある訳じゃないんだけど、なぜか
気がつくと追いかけているという。今回も、最初の数ページ読んでちょっと苦手な
題材だなぁと思って挫折しかけたのだけど、なんとなく読む時間があって読み進めて
行ったら、どんどん面白くなっていって、最後はほぼ一気読みでした。今までで
一番面白く読めたかも。
題材が海外のダム爆破とかなので、つい最近起きたラオスのダム事故が思い浮かび
ました。あの事故よりずっと前に書かれていたのだから、因果関係があるわけじゃ
ないのだけど。こっちは故意で、あっちは事故だしね(まぁ、一部で某企業が起こした
人災とも言われているけれど)。
AN通信の産業スパイ、鷹野のキャラがいいですねー。世界中を飛び回って、いろんな
交渉したり工作したり。大物との騙し騙され合いも緊迫感があってハラハラさせられました
謎の美女アヤコや、デイビット・キムといったシリーズキャラも再登場(まぁ、ほぼ
忘れていましたが^^;)。リー・ヨンソンというキーパーソンも登場します。いやー、
この人の正体にはびっくりした。まさかの展開でしたね。でも、前作の『森は知っている』
を読んでいる人には、嬉しい展開だったんじゃないかな。私は話自体忘れていたので、図書館
で本を見つけてさらっと再確認しておいてよかったと思いました(笑)。鷹野も嬉しかった
んじゃないのかな。
終盤のビジネスジェットでのシーンは最後までドキドキしました。まぁ、なんとか危機を
乗り越えるだろうとは楽観視していたのだけど。真司の活躍が良かったですね。最初
真司はアパートの隣の女の子、すみれとずっと逃避行を続けるのかと思ったのですが
(だから、誘拐騒ぎになって二重に警察に追われるのかと)、結構あっさり自分が出た
児童養護施設に預けちゃったので拍子抜け。まぁ、彼女にとってはそっちの方が安全だし
幸せだとは思いますけど。ただ、勝手に施設で保護して、親が乗り込んで来たりしなかった
のかなーとそこはちょっと気になりましたけど。
真司自身の今後も心配になったのだけど、そこは良い落とし所になっていましたね。
彼にとっては、その日暮らしの日雇い仕事よりも向いているんじゃないかな。雇い主も
しっかりしてるしね。ところで、持ち逃げしたお金はどうなったんだろ??
冒頭で真司と行方をくらました安達のその後も有耶無耶なままですね。まぁ、推して
知るべし、なんでしょうね。
組織ぐるみで、多くの犠牲者が出るのにダム爆破を計画するとか、かなり荒唐無稽で
空恐ろしいものを感じました。そこに日本の政治家も絡んでいるのだから、余計ぞっと
しました。こんなやつが政治家になるなよ・・・。
ちょこちょこツッコミたいところもあったけど、スピード感あって各国を股にかける
壮大なスケールで読み応えありました。映画化に向いてそう。制作費がばかにならないと
思うけど(笑)。
いよいよ鷹野は35歳を迎えます。AN通信では、35歳が定年と言われているから、
その日が来たら、どうするんだろう。彼の今後の人生が気になりますね。