ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮部みゆき「宮部みゆき全一冊」/大山誠一郎「アリバイ崩し承ります」

こんばんはー。昨日は職場の忘年会でした。忘年会はいつも職場の最寄り駅すぐ
近くの某焼肉屋さん。A5ランクの和牛を出す老舗で、何を食べてもとっても美味しい
んです。忘年会といっても、職場の人間誰も飲めないんで、単なる食事会で一時間半
くらいで終わるんですけど(笑)。でも、年一度のこの日をいつも楽しみに仕事
してます(笑)。特上タン塩と海鮮チヂミ美味しかったなぁ~・・・。あ、ハラミも~・・・。


今日も二冊ですー。


宮部みゆき宮部みゆき全一冊」(新潮社)
宮部さんの作家30週年を記念して刊行されたムック本。
ロングインタビュー、未収録作品、色んな人との対談、単行本未収録のエッセイ
などなど、いろんな宮部さんが詰まっております。
宮部さんとの出会いは、姉が買った文庫本。一番始めに何を読んだのかは
全然覚えていないのだけれど、パーフェクト・ブルー』『魔術はささやく』
『我らが隣人の犯罪』『レベル7』『龍は眠る』辺りは一気に読んだ覚えが
あります。それで一気に宮部ファンになって、それ以降出る作品は(時代もの
やファンタジーを覗いて)ほぼ追いかけて来たと思います。いや、初期作品は
未読もいっぱいあると思うんだけど(もう、どれを読んで、どれを読んでいない
のかとかわからない状態^^;)。どの作品も、夢中になって読みふけった
覚えがあります。それは、今でも変わらないのだけれど。宮部さんの作品は、
一度読んだらなかなか止められない麻薬のような中毒性があると思う。まぁ、
最近は作品によっては、なかなか進まないものもあったりするんだけども。
私はやっぱり、現代ミステリが一番好きなんですけどね。
初期作品だと『魔術はささやく』が一番好き。読んだの昔過ぎて、内容ははるか
彼方なんですが、とにかく主人公の少年と出て来る老人の関係が好きだったこと
だけはよく覚えてます。
とにかく、30年間も第一線の人気作家として活躍してきて、未だに出る作品すべてが
ベストセラーになるという、とんでもない化物作家。
それなのに、インタビューやエッセイを読むと、その謙虚でほんわかした人柄に
癒やされてしまう。本当に、素敵な作家さんだなぁと思います。中に収録されている
津村記久子さんとの対談が印象的。お互いにお互いをリスペクトしあっていて、
やたらに相手の作品を褒めまくっているところが、なんか微笑ましかった。
本に関する対談は、ほとんど知らない作品ばかりだったので、いまいち乗り切れ
なかったですけど。宮部さんのお好きなジャンルが、海外ものとか時代物とかが
多かったせいかも。あと、対談部分は字が小さくてちょっと読みづらかったなぁ。
ページ数を抑える為かもしれないですけど・・・。
でも、連載時の挿絵とか単行本のカバー絵が一挙揃って収録されているのは
嬉しかったです。カバー絵って、普通に一枚の絵として見ることないから、
こんな絵柄だったんだー!みたいな新鮮な驚きもありましたしね。
まぁ、とにかく、宮部さんの作家生活30年がぎっしり詰まった一冊。
ページ数は少ないですが、読み応えありました。
ファンなら必読じゃないでしょうか。
作家生活30週年、おめでとうございます。
大ファンの一人として、今後ますますのご活躍を祈っております。
新作の杉村シリーズも回って来たので、近々読む予定(引き取りは年明けに
なりそうですが)。楽しみです。


大山誠一郎「アリバイ崩し承ります」(実業之日本社
大山さんの作品は読んだり読まなかったりなんですが、これはタイトルからし
面白そうだったので借りてみました。今年度の本ミス堂々の一位作品だそうで、
イムリーに借りられて良かったです。
ただ、これが本ミスの一位っていうのは、ちょっと驚き。確かに大山さん
らしく丹精なロジックで読ませるタイプの作品ではあるけれど・・・。
重厚なバリバリの本格ミステリって感じでもなく、出勤時に読めるような
一作40ページほどの軽めの連作短編ミステリなので。タイトルのように、
すべての作品がアリバイ崩しに拘っているところは、ちょっと新鮮でしたけど。
主人公は某県の捜査一課に配属されたばかりの新米刑事の僕。ある非番の日、
僕は最寄り駅の鯉川駅の商店街を歩いていて、腕時計が止まっていることに
気づき、一軒の時計店に立ち寄った。そこで電池交換をしてもらっていると、
壁に奇妙な『アリバイ崩し承ります』という張り紙が目に止まった。若い女
の店主に不思議に思って話を聞いてみると、アリバイ崩しに最も向いている職業が
時計屋なのだと語る。訝りながらも、ちょうど現在抱えている事件のアリバイに
頭を悩ませていた僕は、ダメ元で店主にアリバイ崩しを依頼してみるのだが――。
主人公の僕が語る事件のあらましを聞いただけで、即座に犯人のアリバイを
崩してしまう時乃さんのスーパー安楽椅子探偵っぷりには脱帽でした。
アリバイ崩しの出来にはばらつきがあるものの、なるほど、と思えるものが
多かったです。時計屋がアリバイ崩しに最適な職業かどうかはともかく、
時乃さんに限っては、素晴らしい探偵能力を持っていることは間違いないと
思いました。特に気に入ったのは、唯一時乃さん自身が小学生の時に経験した
お祖父さんからのアリバイ崩しを描いた第5話の『時計屋探偵とお祖父さんの
アリバイ』かな。亡きお祖父さんとのエピソードも微笑ましかったし、
お祖父さんが作ったアリバイトリックも面白かった。しかし、それを小学生が
分度器使って暴いてしまうっていうのがすごい^^;
しかし、一話目の『時計屋探偵とストーカーのアリバイ』のトリックは、
本当に成立するのかちょっと疑問を覚えましたけど。かなりアクロバティック
というか、驚きの方法ですよねぇ。これで死亡推定時刻が三時間も誤魔化せるもの
なんでしょうか。
第4話の『時計屋探偵と失われたアリバイ』は、細かい伏線が効いていて
上手いですね。被害者の妹の夢遊病という設定もちゃんと効いていますし。
ただ、メイクだけで姉妹を取り違えるように出来るものなのかはちょっと
疑問を覚えましたが・・・そこは、顔に布かペーパータオルでも被せて施術した、
みたいにした方が説得力あったかも。
最後のダウンロードのやつも上手かったですね。確かに、盲点をつかれた、
って感じがしました。
ちょこちょこツッコミ所はありましたが、端正なロジックで一作ごとに
趣向を変え、一作のページ数は短いながらも読み応えのある短編集でした。