ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

藤野恵美「ショコラティエ」/西澤保彦「幽霊たち」

こんばんはー。メリクリです。
今日は相方が夜勤なので、クリぼっちのワタクシ。クリスマスは昨日のイブに
やりました。ケーキ買いに隣町のデパートに行ったら、激混み。イブで祝日だった
せいもあると思いますが・・・。比較的行列の少ないところでケーキを買って、
そそくさと帰りました。24日にデパートなんて行くもんじゃないな、と痛感
しました^^;


今日も二冊です。

 

藤野恵美ショコラティエ」(光文社)
『ハルさん』で人気を博した藤野さんの最新作。タイトル見て、ショコラティエ
のお話だと思ったので、チョコレート好き人間としてはわくわくしながら読みました。
ただ、内容は思っていたのとはちょっと違ってましたね。ショコラティエの話って
いうのは間違ってはいないのですが、どちらかというと、そこに至るまでの成長譚って
いう方が近いかな。主人公は二人いて、シングルマザーでクリスチャンの母親と二人で
慎ましく暮らす羽野聖太郎と、神戸の有名な製菓会社『大宮製菓』の御曹司、大宮光博。
二人が仲良くなるきっかけは、聖太郎が光博の10歳の誕生日パーティに招かれ、
参加したことだった。その誕生日パーティで、聖太郎は、デザートの一つとして
用意されていたチョコレートフォンデュに魅せられ、夢中になる。すると、その姿を
見ていた大宮製菓の創業者で光博の祖父である源二に話しかけられ、意気投合、
将来は大宮製菓に入って光博の助けになって欲しいと頼まれる。その誕生日会以来、
なんとなく光博とはお菓子の話で気が合い、親しく付き合うようになる。二人は、
光博の家でいろんなお菓子を作って楽しんでいた。しかし、ある時、ある小学生の
お菓子コンクールがきっかけで、二人の仲が疎遠になってしまう。その後中学が
分かれたこともあり、二人の付き合いはすっかり途絶えてしまう。その後は
対照的な人生を歩むが、社会人になって、二人が再会する日がやってくることに――。
小学生で仲良くなった二人が、チョコレートに魅了されて成長し、光博の
実家の大宮製菓に入って商品開発に携わる、みたいな展開を予想して
いたのですが、全然違ってました^^;光博の誕生日会をきっかけに
仲良くなった二人だったのに、ある出来事を境に、大人になるまで一切顔を
合わせなくなってしまうとは驚きでした。っていうか、これに関しては、
聖太郎の方が酷いと思いましたけど。一方的な嫉妬の感情から距離を置かれた
光博がちょっと可哀想だった。それでなくても友達いなかったのに。でも、
子供の頃の付き合いなんて、こんなものなのかも。ちょっとした感情の行き違いで
仲違いして離れてしまうっていう。大人でも一緒か。そういう意味では、とても
リアルだなぁと思いました。
それ以降は、二人の共通の知り合いである凛々花を経由して、お互いの情報が
ちらほら聞こえて来るくらいで、終盤まで接点は全くなし。離れてからは、それぞれの
成長を交互に追って行く形になってます。クリスチャンの母親のようには
信仰に熱心になれず、神という存在に疑問を覚えて思い悩む聖太郎、
何をやっても中途半端で、親に与えられたものだけを享受してきたつけが
回って、大学すらまともに通えなくなる光博。そうした中で起きる阪神大震災
震災が起きた時、遠いフランスにいて神戸の惨状を実感出来ない聖太郎と、
震災が起きたことで怠惰な自分を変える一歩を踏み出した光博。二人の人生は、
どんな時でも対照的で、混じり合うことがありませんでした。でも、最後の最後、
あるきっかけで、光博は聖太郎と再会することを決意します。そこに至るまでが
長かったなぁと思いつつ、一番いい形で二人が再会したことがとても嬉しくもありました。
結局、二人はお互いに、お互いのないものに嫉妬し、距離を置いてしまった。
そこを乗り越えた二人が、今後どういう関係になっていくのか、もっと
その先が読んでみたいです。こんないいところで終わっちゃうの!?と
残念な気持ちで読み終えました。
それぞれの内面が丁寧に描けていて、若干物語が動くまで遠回りな印象は否め
ませんが、ぐいぐい引きつけられて読ませられました。
パリのボンボンショコラが美味しそうだったなぁ。私も、フランスに行った時、
まだ日本出店していなかったメゾン・デュ・ショコラ本店のショコラを食べた時、
その美味しさに衝撃を受けましたっけ。ゴディバなんかとはまた違った繊細な
味わいで、感動しましたね。
聖太郎のショコラ、本当に美味しそう。食べてみたいー。
結局、凛々花のことをどちらも手に入れられなかったところは、
今後の二人の関係から行くと、良かったのかもしれないですね。
凛々花がどんな人生を送って行くのかも気になりますが。意外と、
世界的ピアニストのライバルの彼と結婚したりして・・・。
思っていた話とは違ってましたが、二人の人生、それぞれにドラマが
あって、面白かったです。二人がこれからどんなショコラティエ
作っていくのか、続きが読みたいなぁ。


西澤保彦「幽霊たち」
西澤さんの最新長編。いやー、これは問題作でしたねぇ。何が問題作って、
登場人物があまりにも複雑過ぎて、最後まで人物関係が整理し切れず
終わってしまった。一応冒頭に家系図は挿入されているんですけどね。それ見ても、
何が何やらだったんですもん・・・途中から、理解するのを放棄してしまった。
人物関係がよくわからなかったため、事件そのものもいまいち自分の中で整理しきれず、
途中からただ惰性でページをめくっていたような感じでした^^;事件がこれまた
複雑怪奇でねぇ。もう終始頭が大混乱状態でしたよ・・・。
まぁ、終盤の事件の真相がわかって、やっとなんとなく全体像を掴むことが
できたんですけども(遅)。
主人公にだけ視える理沙の幽霊の存在も、正直作品に必要な設定なのか疑問だったん
ですが、最後にそのからくりがわかって、そこはなるほど、と腑に落ちました。
その辺のミステリとしての面白さはさすがだな、と思ったんですが、いかんせん
そこに至るまでが長いし、回りくどい。しかも、今回も安定の百合設定が
ばばーんと。それがなければ、西澤作品をもっと純粋に楽しめると思うんだけど、
どうしてもその設定は外せないんだろうなぁ・・・。人間関係の、一番重要な
部分にソレがあるものだから、何か白けてしまうんですよね。ああ、またソレか、
みたいな。別に、性的マイノリティを批判してるんじゃないんですよ。今は
そういう人々が増えていることも理解できますし。ただ、西澤ワールドの中での
比率があまりにも高すぎて。っていうか、出て来ない作品がほぼないっていうのが。
主人公は結婚してるし(妻は他界してますが)、ノーマルではあるんですけど・・・。
とにかく、全体的に読みにくさが満載で、西澤作品では珍しく途中で挫折しかけて
しまいました。なんとか半分辺りまで読んで、あとは意地で読み切ったけど。
好感持てる人物がほとんど出て来なかったな。特にジミタには嫌悪しか覚え
なかった。岩楯家の人もみんなどこかおかしかったですしね。
久々の西澤作品だから楽しみにしてたんだけど、ちょっとガッカリだったかな。
あー、タックシリーズが読みたいなぁ。