ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貫井徳郎「女が死んでいる」/森晶麿「黒猫のいない夜のディストピア」

どうもこんばんは。寒い日が続きますね。雪がちらつく日もありましたし。
来週は大分温かくなるそうですが。寒暖の差が激しい時期なので、体調管理には
気をつけたいですね。インフルも異常に流行っているようですしね。私は今年も
(今のところは)罹らず済んでいますが。インフルエンザに罹らない記録は未だに
継続中。専門家の人曰く、インフルに罹らない体質の人なんていないそうなので、いつか
罹る日が来るんでしょうか(いや、来てほしくないけどさ)。


読了本は今回は二冊です。ここのとこ、ちょっと読書は停滞気味。先週は旅行に
行ったりもしてたし(一泊二日だけど^^;)。なんだか、今年に入っていまいち
本に対して集中力が続かないのよね・・・。


貫井徳郎「女が死んでいる」(角川文庫)
以前に読んだ同タイトルの単行本(ビジュアルブックとかって体裁だったっけか)の
文庫化・・・ではなく、その作品+単行本未収録の短編をまとめた短編集。
単行本の文庫化だと思ってスルーしちゃう人がいそうだから、タイトル変えれば
良かったのに。私も、お仲間さんから情報を得てなかったら、間違いなくスルー
していたもの。表題作は改めて読んでもツッコミところ満載って感じで、イマイチ
な印象は変わらなかったですが、他の作品は初期の頃に発表されたものばかりで
ドンデン返し系のものが多かったので、結構楽しめました。
巻末の解説によると、貫井さんの短編集って本書以外では四冊しか出ていなかった
のですね。確かに、長編の印象が強い作家さんですが。でも、短編はちょこちょこ
雑誌に寄稿されているそうで、まだまだ未収録の作品が残っているのだとか。
これを機に、もっと過去の短編をまとめて出して欲しいなぁ。新作だったら、吉祥院先輩
シリーズとか、また書いて欲しいし。ミハス系(『ミハスの落日』)の外国を舞台にした
短編とかもめっちゃ読みたいです。

 

では、各短編の感想を簡単に。
『女が死んでいる』
お酒を飲んで酔った翌日、目が覚めたら自分の部屋で見知らぬ女が死んでいた、
という話。オチをすっかり忘れていて、読んでそういえばそうだった、と思い出した
んだけど、女が死んでいた理由には唖然。んなバカな。こんな女いるかい、と
ツッコミたくなりました。

 

『殺意のかたち』
途中から、なんとなく毒殺犯の正体には気がついてしまいました。それまでは上手くミスリード
されてはいましたけど。海外旅行に行っていたお隣さんの証言が全てでしたね。

 

二重露出
公園に住み着いたホームレスの匂いに悩まされる二店舗の飲食店の店主のお話。
これ、私が店主と同じ立場だったら、やっぱりホームレスに殺意を覚えると思うなぁ。
ほんとに迷惑だと思う。だからって殺していいとは思いませんが・・・。オチには
あっと言わされました。どういうからくりか全然わかってなかったんで。まさか
ホームレスが○○だったとは・・・。

 

『憎悪』
愛人契約を結んだ謎の男の正体を探ろうとする女の話。男の正体は完全に騙されて
ましたねぇ。ファッションデザイナーという派手な職業の女なら、こういう家族環境
も有り得そうですけど。主人公のラストはただただ哀れ。男に愛情を抱かなくても、
結果は同じになっていたでしょうけどね・・・。

 

『殺人は難しい』
携帯小説とコラボしたNHKのミステリドラマ『探偵Xからの挑戦状!』の為に書かれた
お話だそう。
・・・まったく推理出来なかったです^^;伏線はいろいろ張ってありますね。
後から読み返すと。正解者が830人もいたというのが驚きです・・・。

 

『病んだ水』
身代金三十万の社長の娘誘拐誘拐事件はなぜ起きたのか。その真相に気づいた男の
告白の話。誘拐事件の真相は、だいたい思った通りでした。バスで身代金が消えた
理由はわからなかったですけど。でも、警察が後からバスの乗客全員の持ち物検査を
したら気づかれちゃいそうですけどねぇ。単に同乗してたくらいだと、そこまでしないの
かな?

 

『母性という名の狂気』
児童虐待をテーマにした作品。ちょうど今、心愛ちゃん事件が毎日報道されているところ
だから、いろいろと考えさせられてしまった。虐待なんて、本当に許せないし、それに
よって子供が亡くなったとしたら、それは殺人だと私は思っているけれど。
この作品では、被害に遭ったのが子供でなかったことだけが救いだったと思う。虐待者の
狂気にぞっとしました。信じていた○親に裏切られた子供の絶望を思うと・・・やりきれない
気持ちになりました。

 

『レッツゴー』
始終恋愛に一喜一憂する姉を冷たい目で見ていた妹が、初めての恋に四苦八苦するお話。
あっけらかんとした主人公の少女の語り口が貫井さんらしくなく、なんだか西澤(保彦)
さんの作品読んでる気分になりました(苦笑)。主人公の鳩子や、ノリのいい母親の明るい
キャラクターが好きでした。鳩子の片想い相手にはビックリ・・・そっちかよ、と思いました^^;
鳩子にとっては、ほろ苦い青春の1ページだったんじゃないでしょうか。次はもっといい恋
出来ると思うよ。



森晶麿「黒猫のいない夜のディストピア」(早川書房
久しぶりの黒猫シリーズ。これが第二章スタートなんだとか。前作が第一章の終わりとか、
全然覚えてなかった^^;
冒頭から、いきなり二人の関係が一気に進んでいるからビックリした。前作の最後に、
そんなに進んだんだっけ?○○の話が出て来るとは・・・(絶句)。いきなり進み過ぎ
じゃない?と面食らわされました。
しかし、そこから黒猫は出張でいなくなっちゃって、全然出て来なくなった代わりに、今回は
新キャラの灰島が登場。なかなかにクセのあるキャラクターで、これから二人を引っかき
回してくれそうな気配ですね。エキセントリックで皮肉屋ですが、ドーナツが異様に好き
という意外な一面があるのがちょっと面白い。ドーナツって、そんなにたくさん食べるもの
じゃないと思うけど・・・。黒猫はパフェだしね。このシリーズの男性キャラは、なぜか
甘党が多いですね。
相変わらず、ポーの作品に関する美学考察の部分は、何が何やらちんぷんかんぷんで、
ほぼ読み飛ばしでした(苦笑)。付き人と灰島の美学に関する会話の部分は、禅問答
でも読んでいるかの如くでした。付き人のドッペルゲンガーに関する考察や、付き人が
受け取った暗号解読に関するやり取りなんかは楽しめましたけれど。
それでも、ラストで黒猫が明かす暗号解読の部分は、解説聞いてもいまいちピンと
来なかったですけど(アホ)。現れたメッセージ自体はとてもシンプルで、伝えたい
気持ちが伝わって来ましたけどね(母親が受け取っていたとして、彼女はすぐにこれが解読
出来たんだろうか?)。
付き人の白いドッペルゲンガーの正体に関しては、ほぼ、予想通りでした。双子はないだろう、
と思っていたからね。考えられるのは、もうそっちのセンしかないだろう、と。しかし、
普通こういう立場の人間を会わせようなんてするかしら。私がその立場だったら絶対嫌だと
思うけどな。最後だからってことなのかもしれないですけど・・・それでも、やっぱり
身内からすると、嫌だと思う。いろんな考えの人がいるもんだ。
まぁ、私は、終盤の付き人と黒猫の二人のやり取りが読めただけで満足です。このシリーズに
期待するのは、この部分しかないんで(おい)。黒猫が竹の印鑑を作っていたのが、まさか
こういう理由だったとは・・・!!!っていうか、付き人ちゃん、なぜそこでストップを
かける!?黒猫の気持ちが固まっているなら、もういいと思うんですけど!なんで~~~~!?
じれったすぎる。これで黒猫の気持ちが離れたりはしないとは思うけど。もう。
灰島の元に週一回通うことになった付き人ちゃん。また、次回作ではいろいろ問題が
起きそうですね。黒猫との関係もどうなっていくのやら。