ミステリ読書録

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北山猛邦/「千年図書館」/講談社ノベルス刊

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北山猛邦さんの「千年図書館」。

 

全てはラストで覆る!
強烈な余韻があなたを襲う5つの物語
「見返り谷から呼ぶ声」――死後の世界と禁忌の谷に心を囚われた少女の物語
「千年図書館」――村で凶兆があるたび若者が捧げられる図書館の秘密
「今夜の月はしましま模様?」――地球侵略中の異星人に遭遇した大学生の奇妙な日々
「終末硝子(ストームグラス)」――大きく奇怪な墓を村のあちこちに建てる男爵の謎
「さかさま少女のためのピアノソナタ」――呪われた曲を奏でた傷心の高校生におこる不可思議
(紹介文抜粋)


久々に北山さんを読みました。以前に読んだ『私たちが星座を盗んだ理由』のような、
最後の一撃(フィニッシング・ストローク)ものばかりを集めた短編集第二弾。
確かに最後の1ページで覆される作品ばかりではありましたが、前作同様、今回も
出来にばらつきがあったような。
そして、前作同様、調べないとわからないオチのものが入っていました・・・(今回は
調べる前に相方が教えてくれてわかったんですけども^^;)。私の知識不足が
原因とはいえ、万人が一瞬でわからないオチってどうなんだろう・・・と、今回も
ちょっと愚痴りたくなってしまった(単なる負け惜しみ!)。
とはいえ、やっぱりこういう短編集は意外性があって読んでいて楽しいのも事実。
なんだかんだ言いつつ、楽しませていただきました。

 

では、各作品の感想を。

 

『見返り谷から呼ぶ声』
読書メーター見てたら、この作品の評価が一番高かったように思います。私も作品構成
やキャラ造形、オチの切なさなど、作品の完成度ではこれが一番好きだったかも。
ただ、いかんせん、オチが途中でわかってしまったのが痛かった。結構あからさまな
書き方してると思うんだけど、気づかない人の方が多いんでしょうか。似たような
作品前に何度も読んでるからわかっちゃっただけかもしれないですけど。洞窟で人が
消える理由に関しては『んなバカな』と思いつつ、説明されてなるほど、とは思い
ましたけどね。

 

『千年図書館』
ラスト1ページのオチがわからなかったのがコレ。千年図書館自体の設定は面白かった
けど、腑に落ちないこともたくさんありました。歴代の司書たちが亡くなったのは
なぜだったのかとか、なぜ災厄が起きると生贄として司書が必要なのかとか、説明が
全然なかったような。
ラストのページのアレ、一般の方はみんな知ってる知識なんですかね?ニュースとか
新聞とかでよく出て来るものなんでしょうか。学校で習った記憶ないんだけども。
理科とか地理とか好きじゃないから覚えてないだけかしらん・・・。
相方に聞いたらすぐに答えが出て来たんですけどね。しかし、ヴィサスとペルも
同じ空気を吸ったらヤバい気がするんですけど、あのあと大丈夫だったんでしょうか。

 

『今夜の月はしましま模様?』
これはいまいちノレなかったな。音楽生命体が地球を乗っ取りに来たってのも意味不明
だし、密室で見つかった二人の老人の死の真相も拍子抜けだったし。オチは確かに
覆されたといえるかもしれないけど、この手の作品も過去にいくらでもあるからなぁ。

 

『終末硝子』
これは、『塔葬』という概念そのものに意外性があって面白かったですね。まぁ、
塔葬を推奨することで、アレの予想が出来るってのは、信憑性があんまりない気も
しましたけど・・・でも、ラストで男爵が塔葬を村人たちに推奨していた理由が
わかって、胸を打たれました。あんな狂乱を演じる必要があったのか・・・信じて
もらえないと思ったから、ああいう方法を取るしかなかったのかな。やりきれない
気持ちになりました。

 

『さかさま少女のためのピアノソナタ
これは唯一救いのある結末で、物語としては好きです。でも、主人公と少女の状況
を思い描くと、おいおい、ありえねーぞ、とツッコミたくなること必至^^;
ピアノ演奏しながら立って顎で窓開けるとか、絶対無理だよね・・・。どんだけ
アクロバティックな技を身に着けてるんだ^^;しかも、一音もミスタッチなしで、ほぼ初見
の楽譜を弾き続けるとか、プロだって難しいんじゃないの、とか。主人公はピアノに何年も
ブランクがあった訳だし。なんか、ツッコミ所満載すぎ。
しかも、会話してる間、彼女はさかさま状態っていう・・・。
でも、これが最後に収録されていることで、読後感は爽やかになったように思います。
ボーイミーツガールものとしては良かったんじゃないかな。