ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

古内一絵「女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび」/葉真中顕「W県警の悲劇」

こんばんは。今日ブログを開いて驚きのニュースが飛び込んで来ました。
度々噂されてきた、ヤフーブログ終了が、ついに現実になる時が来てしまったようです。
まさかの事態。2006年から、今年で13年続けて来たのに(涙)。
一時期噂はありましたけどね。まさか、ほんとに終了するなんて思っていなかったので、
かなりショックです。
他ブログに移行することは可能みたいですが・・・今の形式で慣れてしまって
いるからな・・・。完全終了は12月みたいなので、今後どうするかこれから
ゆっくり考えたいと思います。お仲間さんはどうするのかな・・・。
ショックなのは、例え他ブログに移行して記事は残っても、その記事に頂いていたTBや
コメントは移行できないというところ。みなさんとの交流の記録が・・・ヤフー自体の
ログは一定期間で消えてしまうらしいし。悲しい。勘弁してよ、ヤフーさん・・・。



読了本は二冊です。


古内一絵「女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび」(中央公論新社
少し前に読んだ一作目がとても良かったので、続けて借りてみました。三、四作目も
予約中ですが、そちらは少し回って来るのに時間がかかりそう。
今回も、とても良かった。前作の終わりで夜食カフェ、マカン・マランの店主、
シャールさんの今後が心配されていましたが、見事に復活!まぁ、続編があるのだから
当然予想はしていたのですけれど、実際元気な姿を見せてくれた時は嬉しかったですね。
自分をつまらない人間だと思っているOL、実家の旅館を継いだ優秀な兄にコンプレックスを
感じている漫画家志望の青年、自分の子供が発達障害ではないかと疑い、しつけに悩む
母親、典型的な文系だった高校二年の娘が突然理系への転身を希望し始め、理解に
苦しむシャールの同級生、柳田。それぞれに抱える鬱屈を、シャールの料理と言葉が
救って行く――。
どのお話も良かったなぁ。出て来るお料理も最高に美味しそうだったし。三話の
トルコライスは買って来たお惣菜のトンカツを利用したところがちょっとシャールさんらしく
なくて意外だったけど、上にかけるソースが手作りってところに驚かされました。ソースも
自分で手作りすると美味しいんですね。マヨネーズを手作りするのは結構やる人いると思う
けど。やってみようかな。シャールさんのお料理は基本マクロビ料理で身体に優しいもの
ばかりだけど、たまにはこういうこってりしたお肉料理が食べたくなる気持ちもわかります。
特に、シャールさんのように長く病に罹っていた人なら尚更美味しく感じたでしょうね・・・。
プライドの高いタワマン族のセレブママたちの言動には腹がたったな。完全にいいがかりだし。
でも、商店街側に住む母親たちが味方についてやり込めてくれて、胸がすっとしました。
ラストの話は切なかった。シャールさんが父親と最後まで和解できないままだったのが
悲しかった。でも、柳田の言葉にすごく救われたんじゃないかな。普段憎まれ口をたたいて
いても、やっぱり親友同士なんだな、と微笑ましい気持ちになりました。
今回も、温かい気持ちで読み終えられました。


葉真中顕「W県警の悲劇」(徳間書店
葉真中さんの最新短編集。地方のW県警で働く女警官ばかりを主役に据えた短編集。
W県警内では、旧態依然とした男尊女卑の考えが蔓延っている。そんな中で、
女性警官で初めて警視にまで上り詰めた松永菜穂子。近々その活躍から、警視正
なるだろうと期待されていた。その菜穂子は、密かに特殊任務を請け負っていた。
その任務の最中で、『警察官の鑑』と周りから慕われていた優秀な警部が行方不明になり、
数日後に山の中で死体となって発見された。菜穂子は、同じW県警にいる警部の娘に事情を
聞きに行くのだが――。
六作の短編が収録されていますが、どれも最後にあっと言わせるドンデン返しが用意
されていて、完成度が高かったです。特に、一作目とラストの作品の合わせ技での結末には
度肝を抜かされましたね。ここに至るまでが伏線になっていたような感じ。お見事!の一言。
あまりの結末の黒さにも辟易しましたけれど。
葉真中さんの作品は食指が動くものしか読んでいないのだけれど(挫折したやつもあるし)、
これはミステリ好きの人にはぜひお薦めしたい。基本黒い結末が多いけれど、ほっこりする
オチのものもありますし、とにかく各作品のミスリードのさせ方が絶妙。個人的には、
一作だけオチの見当がついてしまったものもあるけれど、作品としては巧いと思いましたし、
どれも読み応えがありました。

 

では、軽く一作づつ感想を。

 

『洞の奥』
最後まで読んで、冒頭に戻りたくなりました。オチのあまりの黒さにぞぞーっとしました。
いろんな意味で、一番衝撃的な作品だったかも。警察に、こんな人間がいたら怖すぎ。
人間の二面性の恐ろしさにぞくぞくしました。しかし、とんでもない親子だなぁ・・・。

 

『交換日記』
これは構成の勝利ですね。完全にミスリードさせられていました。読み返すと、違いは
明らかなのに・・・くぅぅ~やられた・・・!
犯人に関しては、ただただ、気持ち悪いとしか。動機も理解不能。絶妙にミスリードさせる
文章が秀逸ですねぇ。伏線は至るところに張ってあった筈なのになー。
ラスト、上原と凛子の結末にほっこりしました。年の差なんて関係ないのよね。

 

『ガサ入れの朝』
語り手としては、この作品の千春が一番好き。これは、読んだほとんどの人が好感持てる
主人公じゃないかなぁ。特に○好きの人にはたまらない作品だと思う。まぁ、微妙に
アンフェなな部分もあるような気がするけど、そこはご愛嬌かな。野尻さんと千春の間の
ぎこちない関係の真相がああいうものだとは。二人の関係好きだなー。すべてがわかった上で
本文を読み返すと、なるほど、と思える描写があちこちに。一話目の主人公・清が千春に
だけは秘密を打ち明けていた理由にも納得が行きました。巧いですね。

 

『私の戦い』
痴漢の冤罪事件や、ユーチューバーの問題動画投稿など、現代社会の問題を上手く作品に
取り入れているな、という感じ。痴漢事件の真相にはムカムカするところもありましたが、
卑劣な痴漢野郎が粛清されたことは良かったのかな。主人公千紗のようなやり方で戦う
方法もあるのだな、と思わされました。

 

『破戒』
これは唯一オチの予想がついてしまった。認知症の父をカトリックの神父が殺してしまった
事件の真相。容疑者三人のアリバイが成立してしまった後で、主人公の純江が事件の真相の
可能性を三つに絞るシーンがあるのですが、その時点で私が考える真相の選択肢が入って
いないのは変だな、と思いました。状況から、まず、一番最初に考えるべき可能性のように
思うのだけれど。この作品だけ予想が覆されず、ちょっと残念だった(他の出来が良いだけに)。

 

『消えた少女』
今までの作品で度々登場した、W県警の女性警官みんなから憧れられる、菜穂子が主人公。
ついに、菜穂子が警視から警視正に昇進することになります。でも、そこには恐るべき
落とし穴が・・・。
実は、冒頭から嫌な予感はちょっとしてたんですよね。菜穂子が車を買い換えようと
している辺りも何らかの伏線が伺えたし。しかし、まさかああいう展開になるとは。
菜穂子の案内役にあてがわれた巡査の正体には驚かされました。こういう風に繋がるのか!
と感心させられました。しかし、ほんとに、どこまでも救いのない黒さだな。
ミステリとしては秀逸な出来ですが、読後感は最悪でした(苦笑)。