ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

森見登美彦リクエスト!「美女と竹林のアンソロジー」/倉知淳「作家の人たち」

こんばんは。先日、令和初日に購入したメダカたちはみんな元気です。購入してすぐに
紅帝のメスが卵を生んだので採取したところ、本日稚魚が何匹か孵化しました。
でも、今度は小さい水槽の方のメダカたちが体調を崩し気味で。二匹ほど隔離して
塩浴&薬浴で様子を見ていますが、やせ細って来ていて、可哀想になります。
メダカ飼育は本当に難しい・・・。夢のスイレン鉢生活ができるくらい数を
増やせる日は来るんだろうか・・・。


本日も二冊です。


森見登美彦リクエスト!「美女と竹林のアンソロジー」(光文社)
モリミーが『美女と竹林』をテーマに各作家さんに寄稿してもらった
アンソロジー。寄稿陣がとても豪華。なんでこのメンツ?と思ったのだけれど、
その答えは、あとがきに書いてありました。端的に言うと、モリミーが心惹かれる
作家さんたちにリクエストしたのだそうです。知らない方もいらっしゃった
のだけど、ほぼ私が大好きな作家さんたちばかりだったので嬉しかったです。
ちなみに、寄稿作家は以下。
阿川せんり、飴村行、有栖川有栖伊坂幸太郎恩田陸北野勇作
京極夏彦佐藤哲也森見登美彦矢部嵩(敬称略)。
竹林と美女でこれだけバラエティに富んだ作品が集まるのかーと
いろいろと興味深かったです。よくわからない作品も正直ありましたけど、
やっぱり好みの作家さんの作品は面白いのが多かったな。印象に残ったのは、
伊坂さんと恩田さんと京極さん辺りかなぁ。伊坂さんの、七夕まつりの竹に
かぐや姫が混入してしまった、という設定はかなりシュールで面白かった。
ラストの彼女の活躍が微笑ましかったですし。恩田さんのは、エッセイ風
小説で、どこまで実話なのかわからなかったけど、ラストの展開はとにかく
怖かった。これが実体験だとしたら、ほんとにトラウマになるレベルだと
思うんだけど、なんでこのテーマで書くことになるまで忘れていられたのか(驚)。
京極さんのは、なんかもう、氏の作風にぴったりって感じの作品。無一文に
なってどうしようもなくなった主人公が古くからの友人にお金の無心をする話かと
思いきや、本当に単に友人を心配して会いに行っているところが良かった。
意外だったのは、飴村さんの作品。もっとおどろおどろしい感じの作品
書くかと思ったけど、猫学を学ぶ猫大学の学長の話。一体どこに竹林と美女が?
って思っていたら、最後にちゃんと出てほっとしました(笑)。
読んでいてとにかく辛かったのは、佐藤哲也さんの作品。同じような描写が
何度もリフレインして出て来て、しかも改行が全くないので読みにくいこと
この上もなく。一体何が書きたかったのか、さっぱり理解できなかったです。
こういう作風の方なのかもしれないけど、正直小説として破綻してるとしか
私には思えなかったなぁ。この破綻っぷりを楽しむ作品なのかもしれない
ですけど・・・。収録順が京極さんの後だったから、余計に読みにくく
感じたのかもしれませんが。これが逆の収録順だったら、京極さんの
文章の読みやすさに感動したかもしれない。
読みにくいといえば、北野勇作さんの作品もちょっと読みにくかったかな。
ただ、ところどころに表現のおかしみみたいなものはあって、愛嬌のある
作品ではあったけれど。その辺りは、冒頭の阿川さんの作品にも共通
しているかも。阿川さんの作品は、独特の文章リズムがあって、主人公の
キャラも独特でしたね。ちょっとイラっとさせられる感じもありました
けどね。冒頭からLGBTものだったからちょっと面食らわされてしまった。
有栖川さんのは一番テーマに沿った王道の物語って感じがしたな。
モリミーの作品読んでから、私も竹林って聞くと、なんとなくわくわく
させられるような気がするようになりました。鎌倉の竹林のあるお寺に
行った時とか、めっちゃ興奮したもんなー。
なかなか面白い趣向のアンソロジーだと思いました。


倉知淳「作家の人たち」(幻冬舎
倉知さん最新作。ご自身の自虐ネタもたっぷり盛り込んだ、作家あるある
短編集。倉知さんがこういう作品書くと思わなかったなぁ。自虐ネタがちょっと
笑える範囲を超えてるような作品もありましたけど・・・^^;ブラックユーモア
も度を過ぎると笑えないんだなぁと思いました。実存作家をモデルにしたらしき
人物もちょこちょこ登場するので、ファンとしてはニヤリとできるところもありましたが。
一作目の『押し売り作家』に出て来る「倉ナントカ」作家はまんま、倉知さん
御本人が反映されてるんでしょうか。まぁ、倉知さんはこんな押し売りする程
名前が知られてないことはないでしょうが。最近はコンスタントに新作出てますしね。
しかし、押し売りする作家の名字には必ず倉がつかなきゃいけない決まりでも
あるんですかね(笑)。人気ミステリ作家椋井貫郎の名前にくすり。その椋井氏
が紹介する作家の名前にも。
続く『夢の印税生活』は、新人賞を華々しく獲ってデビューした作家が、一年ごとに
収入を減らして行き、夢の印税生活とは程遠い暮らしになっていくというもの。
編集者からあれほど念を押して仕事を辞めるなと言われたにもかかわらず、あっさり
仕事を辞めてしまう時点でその後の展開は想像ができました。具体的に売れた本の
印税や連載の原稿料なんかが提示されているのは面白かった。なるほど、売れない
作家の収入ってこんな感じなのかーと思いました。著作の発行部数が出すごとに
少しづつ減って行くところとか、リアルでしたね。
三話目の『持ち込み歓迎』は、一般からの持ち込み原稿を大々的に募集することに
なった出版社に、さまざまな原稿が持ち込まれる様子を描いた作品。いくらなんでも、
こんなクソみたいな作品ばっかり持ち込まれるってありえないだろう、と呆れました。
書いてる本人もクソみたいな人物ばっかりでしたけどね^^;てか、書いてすらいない
人もいましたし。読んでて、めっちゃイライラしました。謹談社ノベルスからデビューした
結局尚彦先生の結局堂シリーズにニヤリ。読んでみたい(笑)。
四話目の『悪魔のささやき』は、三人の作家の危機の前に本の悪魔が現れて願いを
一つだけ叶えてくれる、というお話。三人三様の作家ならではの差し迫った願いを悪魔は
叶えてくれるものの、その後の結末はどの人物も悲惨なものでした。やっぱり、
他力本願はだめってことですかね。
五話目の『らのべっ!』は、ヒットするラノベを何作も手がけて来た優秀な編集者の
手の内を明かした作品。なんかもう、何でもアリって感じでしたね。ラノベの編集者が
読んだら怒りそうだ^^;作家を豚扱いする主人公には嫌悪しか覚えなかったですね。
六話目の文学賞選考会』は、そのものずぱり、文学賞の選考風景を描いた作品。
この手の文学賞の内情を描いた作品はいくつも読んで来たけど、ここまでいい加減な
選考風景の作品を読んだのは初めてです。候補作を読んで来た選考委員の方が
驚かれるって。作品の内容よりも、そのバックにいる事務所で受賞作を決める・・・
こんな世の中になったら世も末です・・・。近年、芸人や芸能人が書く作品が
作家が書く作品よりもヒットしたりすることが増えて来ているから、こういう
話を考えついたのかなぁ。
七話目の『遺作』は、一作目に出て来た作家『倉ナントカ』の一人が再び登場。
なかなかに衝撃的な場面で始まります。いろいろ設定に無理があるような気がするけど、
なんか似たような設定の作品をついこの間読んだばかりだったので、かなり
既視感がありました。こういう場面で創作意欲が再燃するってのが何とも皮肉ですね。
何らかのちからが働いて、作品が書けるようになればよいのだけれど、無理なんだ
ろうな。最後の作家としての心の叫びに胸が痛くなりました。