ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

三津田信三「白魔の塔」/京極夏彦「今昔百鬼拾遺 河童」

こんばんは。九州地方の豪雨、心配ですね。熊本なんか、地震の被害だって
大きかった場所なのに。降らない年はまったく降らなかったりするのに、
今年の梅雨は異常ですね・・・ここ数年の異常気象は一体どうなっているんでしょう。
ついつい何かの前触れではないかと思って戦々恐々としてしまう。
とにかく、被害が大きくならないことを祈るのみです。


今回も二冊です。

 

三津田信三「白魔の塔」(文藝春秋
まさかの物理波矢多シリーズ第二弾。っていうか、読んでいてどうもこの変わった
名前に覚えがあるなぁと思って調べてみたら、一作目があることに気づいたって
感じだったんですけど^^;一作目のことは漠然としか覚えてなくて、自分の
記事読み返して、そういえば炭鉱の話あったあった!と思い出したという。
しかし、一作目で炭鉱の仕事をしていたかと思えば、本作ではなぜか灯台
になっているという、不思議な展開。その間にも過酷な職場を転々としたらしい。
変わった経歴の青年ですよねぇ。しかも、灯台守の仕事も本書のみで、次はまた
違う仕事を探すらしいし。戦後の混乱した世の中では別段珍しくもないのかも
しれませんけどね。
灯台守の仕事自体は興味深かったのですが、いかんせん、波矢多が新しい
赴任先の轟ケ埼灯台に到着するまでの描写が長くて、更にその先の灯台長夫婦の
思い出話がまたやたらと長く続いて、中だるみ感がすごかった。一体いつに
なったら本題に入るのかなぁと思っていたら、最後にその二つの体験談から
一気にミステリ的な考察に入って、面食らわされました。波矢多や灯台長の
孝蔵が体験した白い怪異の体験が、波矢多によって論理的に解明されるくだり
は、素直に感心しましたし、きちんと納得がいくものでした。孝蔵の奥さんの
正体には驚かされましたね~。彼らの娘・花実の奇禍にはショックを受けましたが、
その後の彼女の身の上に関しては少しほっとできるところもありました。
ただ、今後の波矢多の身の上の方は心配になりましたが・・・^^;今で言ったら
ストーカー状態になりかねないですよね・・・大丈夫かな^^;
白もんこの正体も意外でしたね。行動は気味悪いけど、なんとなくその姿を
想像すると、愛嬌があってゆるキャラみたいでちょっと可愛らしく思えて
しまった(多分、いろいろ間違っていると思うがw)。
最後の謎解き部分が面白かったから読んで良かったと思えたけど、途中
もうちょっとテンポ良く書いてほしかったなぁ。読んでも読んでも終わらない
地獄だったよ・・・。
灯台守の仕事にあれだけ強い使命感と責任感を持って従事していた波矢多
だったので、身体的事情から仕方がないとはいえ、最後の決断は意外でした。
次はどこへ行くのかな。
どんな仕事をしても、真面目な波矢多ならやって行けると思うけれどね。



京極夏彦「今昔百鬼拾遺 河童」(角川文庫)
三ヶ月連続刊行の第二弾。第三弾の『天狗』は昨日予約してきました(今日HP
確認したら三番目でした)。今回はのっけから品のないお話で盛り上がる女子高生
の会話で始まります。お嬢様女子高生の会話に微妙についていけない美由紀ちゃんが
可笑しかった。ついていけない割に、意外とちょこちょこツッコミ入れるところも
面白いし。お嬢様たちが語るお尻ネタに若干引きつつも、馬鹿にすることなく、さらっと
会話に加わったりしてるし。育ちが違うせいか、一歩引いてるんだけど、学友たちの
噛み合ってるんだか噛み合ってないんだかわからない会話を、美由紀自身がちょっと
楽しんでる感じが伝わって来て微笑ましかった。女子高生が恥じらいながら『お尻、お尻』
連呼するところが何とも。今の女子高生なら何とも思わないけれども、昭和29年辺りの
お嬢様学校の生徒たちから発せられる訳で。なんだかシュールだなぁと思いました。
今回美由紀と敦子が関わる事件にも、お尻が大いに関わって来ます。その符牒として
冒頭の会話がある訳なんでしょうけど。本書は全編に亘って、お尻と河童がたくさん出て
来ます。冒頭に河童のイメージを美由紀が友人たちと話し合う場面があるのですが、言われて
みると、一概に河童といっても、いろんなイメージがあるものだなぁと思わされました。
私の中では美由紀とほぼ同じイメージを抱いていたけれど。河童は全身が緑色だと
思っていたし、頭がハゲてて背中に甲羅がついてるものだと思って来ました。
これって、多分、ほとんど昔の某ワンカップのお酒のCMのアニメのイメージだと思うん
ですよねぇ(年がバレるぞ^^;)。石燕とかが描いた河童はどうなってるんだろ。でも、
確かに河童には頭にお皿が載ってる、とかも聞きますよね。お皿が載ってるとしたら、
ハゲてる訳じゃないだろうし、凹みがあるってことですよね。そうなるとまた、
頭の形とか変わってくるわけで。なんか、読んでて私が思い描いていた河童の
イメージがちょっと崩れて行くような感覚を覚えました。うーん、河童って何なんだ!?
連続水死体事件の方は、登場人物が多いのでちょっと人間関係がわかりにくかったです。
水死のからくり自体は単純でしたけれど。お尻が浮き上がる理由にもなるほど、と
思いましたし。
終盤は一応あっちゃんが謎解きを担当するのだけど、最後はやっぱり美由紀ちゃんの
啖呵が全部持ってったな~って感じでしたね。女子高生なのに、この説得力たるや、
脱帽ものです。とても真っ直ぐで真っ当な性格なのがよくわかり、好感が持てる少女ですね。
各章の始まりが必ず品のない話云々の会話文で始まるところが面白かった。お尻だの
覗きだの、品のない話で終始していた作品だけれど、最後は切なくも美しい夫婦愛で
閉じたところが良かったです。
あっちゃんと美由紀のコンビ、やっぱり良いですね。ラストの天狗も楽しみだー。
そして、三部作が出終わったあとは・・・ついに例の作品に着手!・・・だといいなぁ。
やっぱり、京極堂とか榎さんとか関くんに(名前だけじゃなく)会いたいよぅ(涙)。
お願い、京極さん・・・(ToT)。