ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「希望の糸」/長岡弘樹「119」

どうもこんばんは。ヤフーブログ終了までついに一か月を切りましたね。私も、
こちらでブログ更新するのはあとわずかになりそうです。未練たらたらで、こっちで
しつこく更新してたんですけどね。ブログ移行報告をされる方も大分多くなりましたね。
とりあえず来週お盆休みに入るので、その期間にはてなブログでの移行作業を開始
しようかな、と考えております。移行すると、こっちで更新とか出来なくなっちゃう
のかな?そのあたり、いまいちよくわかってないのですが。やってみないと
何とも言えませんけども。うまくいくのかなぁ。いろいろと不安・・・。

 

読了本は二冊です。

 

東野圭吾「希望の糸」(講談社
東野さん最新長編。全く知らずにいたのですが、加賀シリーズでした。
確か前作の時も加賀シリーズだと知らずに読み始めたんだったよなぁ。
このシリーズはタイトルにそれっぽいサブタイトルとかがついてないから、
シリーズものってわかりにくいんだよねぇ。まぁ、嬉しい誤算なんですけどね。
ただ、加賀シリーズとはいえ、今回の主人公は従兄弟の松宮。三年前に日本橋署を
異動した後で警視庁の捜査一課に再配属された加賀さんは、松宮の直属の
上司として登場。警部補になってます。今回の事件では、立場が上になった分
加賀さんが捜査をする場面はほとんどなく(一部大事な場面で出て来ますが)、
松宮たち部下の捜査を指揮する立場になっています。二人の関係性はあまり
変わっていないのだけれど、表面上はやっぱり上司と部下ということで、
職場では一定の距離を保った付き合いをしているようです(そりゃそうだ)。
事件は、人気のスイーツカフェの女性店主が殺されたことから始まります。
誰に聞いても良い噂しか聞かない女性がなぜ殺されたのか。松宮たちは
カフェの常連や、離婚した店主の元夫など、関係者に話を聞きに行く。
松宮が特に気になったのは、被害者のカフェでは珍しかった、男性の
常連客である汐見。彼は震災で二人の子供を亡くし、近年妻も病気で喪い、
思春期の一人娘と二人で暮らす男やもめであった。松宮は曰くありげな
汐見の態度を不審に思い、捜査に向かう。一方で、松宮は石川県の金沢市
で旅館を営む女性から連絡を受け、自らの出生にまつわる思いがけない
事実を聞かされる。現在、千葉の館山で友人たちと野菜を作って暮らして
いる母親に真偽を質そうとするが、はぐらかされてしまう。一体、母の
過去に何があったのか――。
松宮の生い立ちがあそこまで複雑なものだったとは、驚かされました。
加賀さんも家庭の事情はかなり複雑だったけど、それ以上のものがある
かも。加賀さん同様、最後の最後で立ち会えて良かったです。できれば、
もっと早い段階で連絡取って欲しかった気もしますけどね。
カフェの女店主殺害の犯人は意外な人物でしたが、まだ大分ページが
残っている段階で明らかになったので、もう一捻りドンデン返しが
あるのかと思って読んでいたのですが・・・そこはそのままだったので、
ちょっと拍子抜けでした。ただ、東野さんが書きたかったのは、その
背景にある家族の物語だったんですね。一本の糸で繋がった親子の
物語。それは松宮の物語とも重なるし。さすがに、その辺りの書き方は
上手いなぁと思いました。萌奈の出生に関しては、プロローグに出て来た
ヒントでなんとなく気がつきました。実際こういうケースがあったら
問題になりそうですよね・・・。病院側の対応にちょっと納得がいかない
ものはありました。重いものを背負わされてしまった萌奈が一番の
被害者じゃないでしょうか・・・。でも、終盤の父と娘の会話に
救われた気持ちになりました。やっぱり、二人は親子だし、絆は
ずっと続いて行くものだと思う。
カフェ店主殺害の犯人が、捕まった後である人物に対してついた嘘が、一番心に
突き刺さりました。こんなやるせない嘘をつかなければならない程、彼女は心に
傷を負っていたのでしょうね・・・。
被害者とのやり取りが行き違ってしまったのが悲しかったです。
加賀さん登場が少ないのがちょっと残念ではありましたが、松宮が
刑事としてとても成長しているのがわかって、頼もしい気持ちに
なりました。でも、やっぱり次は加賀さんの推理がもっと読みたいなー。

 

長岡弘樹「119」(文藝春秋
長岡さん最新作。今回は消防士の物語。和佐見消防署に勤める
消防士たちが主人公。それぞれのお話で主役が変わりますが、人間関係は
いろいろ繋がっています。途中で誰と誰が上司と部下で、誰と誰が
同期だったっけ・・・と人間関係がこんがらがって来てしまったけれど^^;
消防に纏わるあれこれなんかは、知らないことが多く、勉強になりました。
消防士も、助けられない命に傷つき、心を病むことが多いこともよく
わかりました。
相変わらず、短いながらも一作ごとのクオリティが高いですね。胸が
痛くなるようなお話も多いですが、ラストに少しだけ救いがあるところも
いつもの長岡さんらしい。
ただ、全作通して読んでみて、やたらに自殺する登場人物が多いのが
気になりました。主人公すらも自殺を考えるほど思い詰めてしまう。
消防士とは、それほど心に闇を抱えやすい職業なんでしょうか。
これ、実際の消防士さんが読んだらどう思うんでしょう。共感できるのか、
反発心を覚えるのか。リアルな声を聴いてみたくなりましたね。
被害者が出るケースが多いからですかね・・・。この間の京都アニメーション
の事件を思い出す度に、あの火災を担当した消防の方々のその後の
心痛はどれほどのものだったのだろうかと、胸が塞がる気持ちになります。
放火は本当に許しがたい犯罪だと思います。
9作ありますが、同じ消防士の話でもいろんな角度から描かれていて、
バラエティに富んでいます。消防士の役割が、消火だけではなく、
人名救助や防災など、多岐に亘ることもわかりました。時には海外に
渡って講演会なども。ただ、このコロンビアで講演する話では、
反政府ゲリラに捉えられた主人公が、監禁場所から逃げ出すのに
使った方法があまりにも痛々しくて、読むのがキツかったです。
あと、一番驚かされたのは、『命の数字』に出て来る、離れた場所
からプッシュホンを押す方法ですかね。これ、本当にこんなことが
実現可能なんですか?プッシュホンを使っていた世代なら常識、みたいな
感じで書いてありましたけど。ほんとかいな。
冒頭の一作に出て来た今垣と彼女のその後が、最後の話で知れたのは
嬉しかったです。ただ、最後の一作の内容自体は、とても重いもの
でした。逆に、一作目で名前だけ登場した吉国の息子があんな
ことになるなんて。せっかく、今垣や吉国と同じ道を進んだのに。
やっぱり、危険な仕事なんですね・・・。しかも、その原因があんな
酷いものであったなんて。皮肉過ぎます。それでも、今垣の言葉で、吉国が
ほんの少し生きる望みを持てたことは救いでしょうか。雑草占いの結果が
気になりました。