第2回このミス大賞受賞作「パーフェクトプラン」の作者、柳原慧さんの受賞後第1作「いかさま師」。
30年前謎の自殺を遂げた天才画家・鷲沢絖。その邸から妻の死体が発見された。絖の遺産相続人となった母の代わりに、鷲沢邸に赴いた高林紗貴。彼女はそこである絵画が紛失していることに気付く。破格の価値を持つその絵画の行方を探し始めたが、彼女の前には相続を巡るライバルの青年が現れ、様々な事件に巻き込まれて行く。フランス史上最も謎めいている天才画家、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの絵画を巡る美術ミステリ。
これを読んだ直前に、上野の国立西洋美術館で開催していたラ・トゥール展を観たばかりだったので、とても興味深く読みました。実際、ラ・トゥールは本当に謎めいている画家で、取り上げる題材としてはかなり面白いと思います。ただ、実存している真筆の絵が極端に少ないので、贋作が非常に多い画家でもあり、この作品のような事態はまずあり得ないとは思うのですが。その辺りのリアリティに問題はあるものの、最後まではらはらさせる展開はなかなか読み応えがありました。
表紙にもなっているラ・トゥールの「ダイヤのAを持ついかさま師」、実物は本当に素晴らしかったです。この素晴らしい絵があるからこそ、生まれた作品なのでしょうね。「パーフェクトプラン」とは全く違う作風なので、次はどんな作品を書かれるのか楽しみです。