ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

近藤史恵/「賢者はベンチで思索する」/文藝春秋刊

第4回鮎川哲也賞受賞の「凍える島」でデビューした近藤史恵さんの「賢者はベンチで思索する」。
21歳のフリーター・久里子がバイトをしているファミレスには、常連客の国枝という老人がいる。ある日、母親が保健所からもらって来た犬を散歩させていた久里子は、公園で国枝と出会う。いつもと違う雰囲気の国枝にとまどいつつも、二人は次第に打ち解けあい、友人となってゆく。そんな中二人が会話を交わす公園では、雑種犬の変死が相次いで起きていた。公園の賢者・国枝が鋭い推理で謎を解く連作短編集。

犬と老人と女の子の物語。こういうシチュエーション好きなんですよねー。国枝さんが渋くてとても素敵。久里子の境遇は決して幸せな状態とはいえないけれど、国枝さんと出会って、少しづつ何かが変わって行く。久里子の成長の物語ともいえます。
いわゆる日常の謎系ミステリなので、全体的にはのほほんとして、とても読みやすいです。ただし、扱っている事件は人の悪意が引き起こすものばかりなので、人間の嫌な所が見え隠れする部分もあります。
ラストの話では国枝老人の謎も解き明かされるので、物語としては一応これ一冊で完結してるといえますが、もう少し彼らの物語を読んでみたい感じもするので、続き書いて欲しいなぁ。

近藤さんの代表作といえば、歌舞伎ミステリの今泉シリーズですが、もっとほのぼの路線が読みたい方には「天使はモップを持って」「モップの精は深夜に現れる」(実業之日本社刊)のキリコちゃんシリーズがお薦めです。オフィスビルのスーパー清掃員キリコちゃんが大活躍するミステリ。とにかくほのぼのしてて、可愛くて楽しい作品なのです。