ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

宮部みゆき/「誰か」/実業之日本社刊

ベストセラー作家にして、現代女流文壇界をひっぱる超売れっ子・宮部みゆきさんの「誰か」。

杉村三郎は、大財閥『今多コンツェルン』の会長の娘を妻に持ち、会長室直属のグループ広報室
で編集者兼記者として働いている。ある日、義父の今多嘉親から、奇妙な依頼を受ける。その依頼
とは、嘉親の個人運転手である梶田信夫が、自転車のひき逃げ事件に遭い命を落としたのだが、
残された二人の娘が父親の自伝を書きたがっている為、相談に乗ってやって欲しいというものだ。
依頼を受け、姉妹に会った三郎だったが、姉妹それぞれの自伝出版に関する意見は食い違い、
それぞれの言い分を主張していた。

宮部さんらしく、ぐいぐい読ませる文章力はさすがとしか言い様がありません。この人は本当に
文章が上手いですね。宮部さんの作品は徹底的にほのぼのしたものと、徹底的にシリアスで重い
もの分かれると思うのですが、この作品は後者。人間の嫌な所を存分に見せつけたという感じ。
好感の持てる登場人物がほとんど出て来ない上、姉妹の徹底した人間性の醜さには驚きました。
特にラストの二人の言動は最悪ですね。自転車の死亡事故という、非常に身近でいて、誰でもが
起こす可能性のある題材を取り上げた所に宮部さんの上手さを感じました。ただ、作品的には
私はあまり好きではないです。ラストもなんだか救いがないし。後味が悪かった。

宮部さんの作品はやっぱり、ほのぼのした初期作品の方が好きだったなぁ。ちなみに私の宮部作品
ベスト1は「魔術がささやく」。ストーリー、キャラクター、結末、全て好き。守少年がいいん
ですよー。こういう作品をまた書いて欲しいものです。