ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加納朋子/「てるてるあした」/幻冬舎刊

ほのぼのとした癒し系ミステリの女王、加納朋子さんの「てるてるあした」。

「ささらさや」とは主人公が違いますが、同じ佐々良を舞台にした姉妹編。
主人公・雨宮照代は、親の夜逃げせいで高校進学を諦め、遠い親戚である鈴木久代の家を訪ねる
為、佐々良という街を訪ねる。都会生活に慣れた照代にとって、厳しい久代との田舎暮らしは
苦痛を感じるばかりであった。しかし、優しい佐々良の人々と触れ合うことで、少しづつ照代の
頑なな心はほどけて行く。次第に厳しい久代の本当の気持ちもわかり始める。照代が落ち込んだ
時に届く不思議なメールと、度々現れる女の子の幽霊の正体とは?不思議な街・佐々良を舞台に
繰り広げられる、爽やかな感動ミステリー。

現在ドラマにもなっているので、知っている方も多いのではないかと思います。原作とは設定が
大分違う部分も多いのですが、配役はわりと合っているのではと思いながら観ています。加納さん
らしい爽やかな感動が味わえる作品。女の子の謎については、ちょっとした叙述トリックもあり、
上手いなぁと思いましたが、メールの謎に関しては、多少納得できない部分が残りました。
加納作品には珍しいことなのですが。主人公はかなり悲惨な境遇にある少女なのですが、性格が
性格だけに、あまり可哀想と感じることはなく、したたかだなぁという印象。サヤさんとは
正反対のキャラクターですね。でも、雑草魂っぽくて私はこっちの方が好きかも。久代さんとの
エピソードはとても感動的でした。ラストはせつないですが。
優しい気持ちになれる、人と人との触れ合いの物語。