ミステリ読書録

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翔田寛/「消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿」/東京創元社刊

「影踏み鬼」でデビューした翔田寛さんの「消えた山高帽子 チャールズ・ワーグマンの事件簿」。
ミステリフロンティアシリーズからの刊行。

明治6年、西洋と東洋の文化が融合した横浜居留地では奇妙な事件が多発。その謎を、英国人新聞記者チャールズ・ワーグマンが鮮やかに解決する連作短編集。

当時の横浜の西洋と東洋の混在した独特の雰囲気が作品によく現れています。謎自体も西洋の幽霊と日本の幽霊が連続して目撃されたり、白装束を着た英国紳士が切腹したり、歌舞伎役者を巻き込んで山高帽子が盗難に遭ったりと、東洋的なものと西洋的なものが混ざりあったものばかりで構成されています。探偵役が外人なので少し読み辛いかなと思って多少構えたところはあるのですが、全くそんなことはなく、謎解きもシンプルな本格でとても楽しめました。とぼけたワトソン役のウィリス医師もいい味出してます。

西欧文化を受け入れ始めた日本の混沌とした文化の様子、外国人を疎外することなく容認できるようになった当時の世相などが、非常に上手く作品に取り入れられていて、この時代背景を選んだ作者のセンスの良さを感じました。
いかにも創元推理らしい連作短編集。ここは、小品ながら、こういう粒の揃った短編集を出すことにかけてはぴか一ですね。
よくもまぁ、この手の作家を次々見つけてくるものだといつも変なところに感心しちゃいますよ。

ちなみに、探偵役のチャールズ・ワーグマン氏は実在の人物だそうで。記者後は、日本で画家として幕末から明治維新の風景を描いて活躍したとか。へぇ~~(byトリビア)。