ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

柴田よしき/「桜さがし」/集英社刊

多彩なミステリを次々世に生み出す柴田よしきさんの「桜さがし」。

中学時代からの同級生、陽介、歌義、まり恵、綾。4人は京都の山奥に住む中学時代の恩師・浅間寺竜之介のログハウスに招待される。陽介への十年ごしの恋に決着をつけたい綾、歌義の司法試験合格を願い、支えて来たまり恵。4人はそれぞれ複雑な胸の中を抱えていた。そんな中起きる様々な事件を通して、それぞれが成長してゆく様を描く青春ミステリー。

中学時代という、一番の青春時代を共に過ごした4人。多感な時期からの親友というのは何ものにも変えがたいものです。それでも、それぞれに思い描く明日に向かって、思い悩み、心が離れて行く時もあります。どんな人にも試練の時がある。それを乗り越えてこそ次に進むべき道が開かれるのでしょう。

この作品は少年少女であった過去の「青春」を振り返りつつ、それだけではいられない大人たちの心の動きがとても丁寧に描かれています。彼らを暖かく見守る恩師・浅間寺もいい味出してます。連作短編形式になっているので、それぞれの話でミステリ的要素も絡んで来て、青春小説でもあり、恋愛小説でもあり、ミステリでもありと盛りだくさん。ただ、散漫な印象はなく、綺麗にまとまっています。京都が舞台だけあり、全体的に漂う雰囲気も上品で、読後感も爽やか。

あーなんかいい話読んだなーと思える素敵な一冊です。