ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貫井徳郎/「悪党たちは千里を走る」/光文社刊

貫井徳郎さんの痛快誘拐ミステリ「悪党たちは千里を走る」。

真面目に働いても報われないと人生に嫌気がさした高杉は、ダメな子分園部と一攫千金とばかりに、
ペット誘拐を計画。この計画に、何故かひょんなことから知り合った美人女詐欺師・菜摘子も加わる
ことに。
しかし、ターゲットの犬の豪邸を下見に行った帰り、高杉たちはその家の息子・巧に逆に尾行され、自宅
を知られてしまう。失敗かと思われたペット誘拐計画だったが、そこで巧が高杉たちに意外な提案を持ちかけてくるのだった・・・。

テンポよく、さくさくと読み進められました。貫井さんにしては珍しいユーモア溢れる誘拐
ミステリ。主人公は悪党になりきれない詐欺師たち。変なところで人が良く、肝心なところで
失敗を繰り返す。でも、人間味溢れていて、好感が持てました。へんてこ三人組と、頭の切れる
少年巧のかけあいが良かった。巧の本性が良くわからないまま物語が進んで行ったので、最後まで
実は狡猾な少年なのではと疑っていたのですが、わりとそのままの性格だったのが良かったです。

重厚な貫井ミステリを期待している人にとっては、かなり拍子抜けするような軽妙な作品ですが、
そこは貫井さんの新境地ということで。派手などんでん返しとかもないので、ミステリファンには
少し物足りないかもしれませんが、純粋に楽しめる痛快活劇という点では評価できるのでは。
2時間ドラマか、映画なんかにしたら面白そうです。

この悪党三人組はシリーズキャラクターにしてもいいような感じですね。
今後の彼らの活躍をまた読んでみたいものです。