ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

小路幸也/「スタンド・バイ・ミー 東京バンドワゴン」/集英社刊

小路幸也さんの「スタンド・バイ・ミー 東京バンドワゴン」。

東京下町の老舗古本屋兼カフェ『東京バンドワゴン』を営む大家族・堀田家。三代目店主の勘一、
伝説のロッカー我南人、我南人の三人の子供である藍子、紺、青・・・四世代が一つ屋根の下で
にぎやかに暮らしている。ある日、青の嫁・すずみが、古本屋の貴重本棚の中の三冊の本が不自然に
並び替えられていることに気付く。家族の中では誰も心当たりがないという。更に、ある客が持ち
込んで来た本の裏表紙に < ほったこん ひとごろし > というクレヨンの文字が書かれているのを
発見する。不穏なこの文字の意味するものとは?下町を舞台に繰り広げられる大家族堀田家の四季
を綴った、待望のシリーズ第三弾。


バンドワゴンシリーズ第三弾。今回もLOVE満載で心が温まる家族の物語でした。ある意味
ファンタジックに思える位、全てが大団円。「こんなに全てが上手く行く訳ないだろ!」と
リアリティの面で首をかしげるところもないとは言いませんが、このシリーズはこれこそが
真骨頂な訳で、それが嫌な人は読まない方がいいかもしれない。相変わらず日常の謎と云えるか
どうかも怪しいくらいミステリとしてゆるいし、それぞれの話の展開も先が読めてしまう。でも、
その予定調和がこのシリーズの持ち味だし、大団円で安心して読ませてくれるところが最大の
魅力だと思います。
どんな問題も、堀田家にかかれば温かく優しい結末で読み終えられる。堀田家の面々はみんな
ほんとに素敵です。こんな優しい人たちに囲まれて生活すれば、どんなことだって乗り越え
られるだろうな。家族っていいなぁ、優しさや思いやりって大事だなぁとしみじみ思わせて
くれるシリーズなのです。下町のにぎやかな感じも堀田家の雰囲気と合っていていい。いや、
下町にあるからこそ、堀田家みたいな家族になると言った方がいいのかもしれないな。

ただ、第一話の本の並び替えの謎はすぐにわかってしまいました。このシリーズはあまり
ミステリだと思って読んでないとはいえ、もうちょっとひねりが欲しいような気も・・・^^;
もう、いっそのことミステリ部分をはずしちゃってもいいと思うんですけどねぇ。家族の
ホームドラマで充分成立してると思うし。でも、そのささやかな謎が核になっているから
ダメなのかな。

好きなのは青とすずみさんが京都の古本屋懇親会に行くシーン。すずみさんの啖呵がかっこいい!
若いのに、しっかりしてますよねぇ。なんか、出来すぎの夫婦って感じで嫉妬心も湧いて
きますけど^^;

最終話で明かされる藤島さんの行動は「やっぱりな・・・」と思いましたが、さすがにここまで
上手く行き過ぎると、ちょっと引いてしまった部分もありました。だって、いくら恩を感じて
たって、他人の為にそこまでするかーー?これこそ勘一が嫌ってる『金にものを言わせて』って
やつのように思うのですが・・・。いや、ハッピーエンドでいいんですけどね。現実はこんなに
上手くいかないよなぁと思わずにはいられなかったです。って、最初に書いたことと矛盾してる
じゃんか^^;基本的にこのシリーズにはハッピーエンドを望んでいるのは確かなのですけどね。
ちょっとやりすぎかなぁと思ってしまうひねくれべる子もいるのでした(どっちなんだい^^;)。

まぁ、でも、安心して読めるという点では文句なし。LOVE満載の一冊でした。
こんなお店と家族が身近にいたら、そりゃー、人生楽しいだろうな。羨ましいぞ、堀田家!
早くどっかの局がドラマ化しないかなぁ。4話づつで三冊出たから、丁度1クール分くらいの
量は書いたと思うんですけど。小路さんのHP見てたら、話はいろいろ来るみたいだけど
実現化にこぎつけないらしい。業界事情もいろいろあるようですねぇ。