ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

西式豊「処刑館殺人事件」(早川書房)

初めましての作家さん。いかにも本格!って感じの内容っぽかったので、予約

してみました。もしかしたらYouTubeの読書チャンネルで紹介されていたからかも。

うん、同じような動機でちょっと前に読んだ『未館成の殺人』よりはずっと面白く

読めたかな。途中まで同じような感想だった気もするけど(笑)。やっぱり、登場

人物には全然好感持てる人がいなかったですしね。

こってこてのクローズドサークルミステリーです。設定自体は、もう完全に金田一

少年の世界。目撃者がいる中で、塔の上で黒マントを被った『処刑人』が仲間の

一人を殺すっていう。読みながら、頭の中で、あの金田一少年の絵で再現されて

た(笑)。

あらすじは、ミステリ作家養成講座で同期だった六人の作家が、恩師の宇宿部

に招かれて、彼が持つ山奥の別荘『岨景館』にやって来て、そこで閉じ込められて

一人づつ殺されて行くっていう、本格テイストてんこ盛りのマーダーミステリー。

六人が館に揃っても、なぜか招いた筈の宇宿部は現れず、生徒の六人はそれぞれ

ミステリ談義に花を咲かせる。すると、突然館内放送が流れ、『処刑人』と

名乗るその声が告げたのは、第一の公開処刑を行うという冷酷非道な宣言だった。

その後、実際彼らの目の前で第一の殺人が実行される。残った5人は、一つの部屋

に集まり、バリケードで扉を封鎖して対抗するが、一人、また一人と処刑されて

行く――しかもそれぞれに自作に出てくる殺人方法で――。一体処刑人とは何者

なのか。その動機とは?

前半なかなかノレなかったりもしたのですが、後半に行くに連れて面白くなって

行きましたね。読みやすかったですし。ただ、基本の設定が金田一少年なもの

だから、なんかリアリティがなくてね。漫画の原作読んでる気分で読み進めて

いた気がするな。

 

以下、若干ネタバレ気味感想です。

未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

終盤の謎解き部分は、どんでん返しに次ぐどんでん返しみたいな感じで、良く

出来ているとは思うけど、ちょっとくどかったかなぁ。◯え◯多すぎ(笑)。

どんだけ多くのソレ使ってんのよ。言葉の説明だけだと、ちょっと混乱しちゃった

なぁ。真相読むと、冒頭からいろいろ騙されてたことがわかるんだけどね。

動機に関して、最初はそんな理由で・・・みたいな解釈ばかりで信憑性がなかった

のだけど、最後の最後に明かされる本当の動機は、意外と普通というか、そりゃ

そうだよね、っていうものだったので、納得出来ました。真犯人に関しては、

最後に思わぬ伏兵が出て来た感じを演出したかったのかもしれませんが、

個人的には結構怪しいな、この人って思ってた人物だったので、そこまで意外

ではなかったですね。

ちょこちょこ挿入される、幕間のある人物のエピソードにかなり翻弄されたの

ですが、最後、予想外の結末で驚かされました。まぁ、肩透かしとも云えるけど、

この部分に関しては唯一ほっこり出来る要素が含まれていて、ほっとしたな。

かなり複雑なからくりになっているので、謎解き部分全部を理解したかと言われる

と、全然出来てない気がする(おい!)。

まぁ、伏線もちゃんと説明されるとちゃんと張られているのがわかるので、良く

出来ていると思います。◯え◯に次ぐ◯え◯で、頭がパニック状態でしたけど^^;

世間の評判もなかなか良いみたいですね。しかし、作家六人のキャラ造形はもう

少しなんとかならなかったのかなぁと思わなくもないな。キャラ的には、やっぱり

金田一少年と同等って感じだったかも。

本格ミステリとしてはなかなかの出来だったんじゃないでしょうか。

 

 

 

小路幸也「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド 東京バンドワゴン」

シリーズ最新作。第21弾だそうです。しゃばけシリーズと併せて、一年に一度の

お祭りみたいなシリーズですよね。

そうなってくると、当然中心となる堀田家に関わる人々はどんどん雪だるま式に

増えて行きまして。毎回、冒頭に人物相関図が挿入されているのですが・・・もう、

何が何やらしっちゃかめっちゃか。登場人物が増えに増えて、誰が誰だか状態で。

これ、ちゃんと把握して読んでる人っているのかなぁ・・・。堀田家で朝食食べる

メンバーも、毎回ちょっとづつ変わっているんですよね。その人のライフワークに

合わせて、増えたり、減ったり。まぁ、家族ってそういうものですけどね。

子どもが大きくなれば独立して家を出て行くものだし。そうかと思えば、出戻り

で帰って来たりね。結婚して子どもが増える人もいるし。堀田家に関しても、

それは同じで。花陽と彼氏の麟太郎さんが結婚したし、研人と芽莉依ちゃんも

結婚したし。てか、花陽も芽莉依ちゃんも学生なのに、焦って結婚しすぎじゃない?

ってついつい思っちゃったけどね。

それ以外でも、脇役キャラもどんどん増えまくっていて、さすがにちょっとやりすぎ

じゃないかなぁって思ってしまった。人物紹介だけでどんだけページ数使うのよ、

っていうね。もう、その紹介部分だけでお腹いっぱいになっちゃう。

ロンドン警視庁のジュンさんとかさ。誰だっけ状態だったよ^^;確かにイギリス

で事件に巻き込まれた話あった覚えはあるけどさ。しかも、ジュンさん夫妻が

来日したのと同じタイミングで、研人がCMソングで共演した小松稚奈さんの実家

の古本やら古美術品やらの査定の依頼が来て、その中にジュンさんたちが担当

している有名な紛失絵画が見つかるとか、いくら何でもご都合主義過ぎるだろー

と、思ってしまいましたね。今回は、いつも以上にそういうシーンが多かった

気がするなぁ。全部を丸く収めて幸せHappyで終わりたいっていう作者の意図は

わかるんだけどもね。さすがに、ついて行けなくなって来ているかも・・・。

語り手のサチさんの存在に関しても、今まで話が出来るのは青が短時間だけだった

のに、どんどん視える人が増えていて、しかも普通に会話まで出来る人が出て

来てしまって。もう、幽霊って概念が根底から覆っているような気がする^^;;

わざわざイギリスまで行って、ジュンさん夫妻に、来日の際は堀田家に泊まるように

説得しに行っちゃうしね。何でもアリ過ぎだろー・・・。

LOVEいっぱいなのはわかるんですけどね。みんながみんないい人すぎてね。

そこがいいと思って読んで来たのも間違いないのだけど、さすがにやりすぎ感が

強くなって来て、合わなくなって来ているのかなぁ。

年取って、自分の感覚がひねくれて来ているのかも・・・ずーん。

年一冊だから、これからも読み続けたいとは思うけど、うーん。もしかしたら、

次は脱落しているかもしれない・・・。

とかいいながら、新作が出たらついつい予約しちゃうと思うんだけどね(苦笑)。

 

芦沢央「あなたが正しくいられたとき」(文藝春秋)

芦沢さん最新作。その人が思う『正しさ』が、他の人にとってはそうではない

場合もあるという、正しさって何だろう、と考えさせられるような作品集。

下村敦史さんにもこういう作品集ありましたよね。正義が必ずしも正義にならない

場合もあるってやつ。SNSで正義感にかられてコメントする人とかもそうですね。

正論を突きつけて、誰かを傷つける。正しいことって何なんだろうね。

 

では、各作品の感想を。

 

『あなたが正しくいられたとき』

消防士の窪田は、同窓会で元カノの黒川と再会する。黒川は未亡人で娘を一人

連れて来ていた。河原でのバーベキュー中、突然黒川の娘が川に落ちた。窪田は

とっさに川に飛び込み、娘を助け、彼女は無事だった。しかし、窪田は黒川が

娘を川に突き落とす瞬間を見てしまっていた。黒川は娘を虐待している――?

消防士で、危険を顧みず他人の窮地に身を投げ出すことが出来る『正義の人』窪田。

でも、彼の正しさは、両刃の剣であることが次第にわかって行きます。黒川さんが

なぜ娘を突き落としたのか。その理由を知って、彼女の娘に対する愛の深さを知り

ました。

 

『代償』

作家になって二十年、たった今書き終えた新作は、間違いなく自分の代表作になる、

と自信を持てる出来だと確信した大輔。意気揚々と妻に第一稿を見せたが、彼女

から出た言葉は、意外なものだった。この作品と全く同じ設定の小説を読んだことが

ある気がするというだ――まさか、自分は無意識のうちに誰かの作品を模倣して

しまったのか?疑心暗鬼にかられる大輔は、担当編集者に相談するのだが。

盗作問題の真相は、大抵の人が予想出来ると思います。ただ、その人物がそれを

やった理由まではわからなかったです。やったことは間違いなく悪いことです。

でも、そうするしか方法がなかったのでしょうね・・・やりきれない気持ちになり

ました。

 

『薄着の女』

アイドルから女優に転校し、着実にスターの階段を上って来た朝比奈ユリ。しかし、

元彼に付き合っていた時の写真をネタに強請られるようになり、ついに今日彼を

殺してしまった。ユリは、とっさに、この部屋を密室にすることで事故に見せかけ

られるのではないかと思いつくのだが――。

十時警部と琴子の警察コンビがなかなかいい味出してますね。十時警部のキャラは

何か覚えがあるなぁと思っていたら、この後に出て来る『立体パズル』をアンソロジー

で読んでいたからだったみたい(多分)。倒叙ミステリとしてなかなか読ませる一作。

犯人が前日に着ていた特殊素材の上着を翌日に着ていなかったことから(つまり

薄着になった)、ある事実が明らかになるくだりとか、上手いなーと思いましたね。

 

『立体パズル』

雄一郎より一つ上の三十三歳の男が、五歳の男の子を包丁で刺す事件が起きた。

犯行理由は、子どもの声がうるさい、というものだった。男は子ども時代から

優秀で、優秀な大学まで行き順風満帆な人生を送っていたが、社会に出てパワハラ

で退職。その後自宅で引きこもりになっていたが、両親の勧めで一人暮らしをして

いたという。その後、雄一郎は妻から驚きの噂話を聞いた。犯人の男が五年前まで

住んでいた家が、息子の保育園の友達の自宅と同じで、最近犯人がその家を覗きに

来ていたというのだ――しかし、この噂には裏があった――。

先述したように、アンソロジーで既読だったので、なんとなく覚えていました。オチ

は忘れちゃってたけど。もし、自分がたっちゃんママを同じ立場だったら、やっぱり

嫌な気持ちはするでしょうね。引っ越すかどうかはともかく。運が悪かったとしか

言いようがないですけど。うーん、子どもがいるなら、引っ越しも考えるかも。

 

『待てば無料』

母が亡くなってから、定期的に祖父の家にやってきて介護してやらなければならなく

なった健一。しかし、口だけは達者だがわがままで横暴な言葉の多い祖父に付き合う

のには辟易していた。ある日、祖父にオムツ交換を要求され、濡れタオルを手に

取った瞬間、スマホの漫画アプリのアラームが鳴った。健一は、アプリが気になって、

オムツ交換を後回しにし、トイレに立った。無料で読んでいる漫画の続きがアップ

されていた為、続きを読み始めた。結局トイレを出たのは15分も経ってからだった。

すると、祖父の顔に濡れタオルがかかっていて、すでに息をしていなかった――。

これも十時警部シリーズ。祖父の介護より漫画の続き。でもその結果が、取り返し

のつかないものになってしまった。でも、なんか健一を責める気にもなれなかったな。

それまでは、ちゃんと文句言いながらも祖父の介護をやってあげていたのだろう

からね・・・ろくに感謝の言葉もない祖父の為にね。介護系の話は、やっぱり

胸にずーんと重いものが残りますね。

 

『投了図』

自分の街で、師匠の国芳と弟子の生田の師弟戦という世紀の対局戦が行われる

ことになり、話題になっていた。そんな中、この棋将戦が行われる旅館に、

対局を中止しろという嫌がらせの張り紙をされたという報道があった。テレビで

それを見ていた美代子が夫にその話をすると、将棋が大好きな筈の夫の反応が

薄く、違和感を覚えた。それ以降、度々夫の言動に疑問を覚えた美代子は、

張り紙の主は夫なのではないかと疑い始めるのだが――。

コロナの時期ならではの悲劇というか。あの時期は、大なり小なり、こんな風に

コロナが原因で悲しい思いをした人がたくさんいたんですよね・・・。私だって、

東京に住んでいること自体に引け目を覚えた記憶がありますから。入院患者に

簡単に会えない時期でもありました。主人公の夫の気持ちを思うと・・・。もちろん、

やったことは許しがたいことです。でも、動機を知ると、なんともいえない苦い

気持ちになりました。主人公夫妻がやっている古本屋(閉店しちゃうけど)に、

将棋好きの少年がやって来て、棋譜をもらえたことが救いに思えました。彼が

将来、有力な棋士に成長するといいな、と思いました。

 

 

 

三浦しをん「夜の恩寵」(集英社)

しをんさんの最新作。珍しくダークよりの作品集になってます。テーマは『カリスマ』

だそうですが、どっちかというと『予知夢』の方が相応しいように感じましたね。

5作収録されていますが、二種類のシリーズに分けられるというか。なんとなく

全体が繋がっているとも云えるし。なんとなく不快感が漂う作品が多い。ちょっと

宗教がらみっぽいところもあるしね。そういうのが好きな人にはたまらないかも

しれませんが、私はどっちかというと陰より陽のしをん作品が好きなので、ちょっと

食い足りなさはありましたね。ぐいぐい読ませる力はさすがですし、四作目の

『金の糸』の雰囲気はめっちゃ好みでしたけどね。主役の男子二人の、音楽を

通じた友情がとても良かった。

 

では、各作品の感想を。

『神馬に乗る女』

東京の広告代理店に勤める輝久は、福井に住む父親から帰省を促す電話を受ける。

父親曰く、母親の様子がおかしいという。三年ぶりに帰省すると、母親は相変わらず

美しく元気そうだった。しかし、父が言うには、母には『ヌチガミ様が憑く』

らしい。一体母に何が起きているのか――。

いきなり母親があんなわけのわからないモノに変わっていたら怖すぎですよね。

一緒に暮らす父親なら余計に。まぁ、病気や不調を治してもらったとしたら、

そりゃ信じちゃう人が続出するのも仕方ないでしょうけど・・・。ラストで明らかに

なる、輝久の母親に対する不穏な感情にハッとさせられました。そうだったのか。

 

『胡蝶』

中国の故事『胡蝶の夢』そのままって感じの話。祖母から受け継いだ夢見の能力

を持つ未千は、ある時から、なぜか子供が出来ない体質の夫との子供が授かる夢を

見るようになる。毎晩の夢の中で未千は妊娠・出産し、子供は日々大きくなって

行くのだが――。

夢の中で妊娠・出産・子育てを経験出来るっていうのも、なかなかすごい体験

ですよね。私も出産経験してないから、ちょっと経験してみたい気持ちにはなり

ましたけどね。ラストは、まさに夢か現か、みたいな状況になって、ぞっとさせ

られました。その夢の中の子供が見るのが、世界が破滅する夢ってのも怖かった

ですけどもね。

 

『夢見る家族』

うちの母親は、なぜか毎日俺と兄の見る夢の話を聞いて記録を取っている。兄の

千夜太は素直に母親の言う通りに夢を語っているが、弟の俺はだんだんその

日課が苦痛になって来て、適当な話を語るようになった。しかし、本当は、千夜太

が語る夢の話は、俺が見ている夢なのだ――。

ひとつ前の『胡蝶』の続編。いきなり弟が出て来て面くらいましたけど。年子って

設定なのに、『胡蝶』の夢の中には出て来てなかったから。なんか、家族全員

夢に囚われてる感じが怖かったですね。いい子に育っていると思っていた千夜太

の本性にも、ぞっとしたな。でも、一番驚いたのは、千夜太の出生の秘密の部分。

この作品の世界が、未千の見ている夢の中の世界じゃないことが、これでわかって、

溜飲が下がりました・・・が、読後感は最悪でしたね。

 

『金の糸』

ロックバンド『STINGRAY FIN(通称エイヒレ)』のボーカル兼ギターのアヤセと

ベースの俺は、高校の同級生だ(一年ダブったアヤセは年齢は一つ上だが)。

素行不良だったアイツと出会ったのが運の尽き、それから俺は奴に振り回されっ

ぱなしだ。俺は奴との出会いを振り返っていた――。

先述したように、これは好みドンピシャでした。ゴンゾーとムツミのキャラと

関係がとても良かったですね。この設定で長編書いて欲しいくらい。ゴンゾーの

唯我独尊な言動に振り回される六実はちょっと可哀想でしたが。でも、音楽と

出会わせてくれたのもゴンゾーだしね。ラスト、ゴンゾーの予言が当たるか

ハラハラしたのだけど、外れてくれてほっとしました。ネットの著者インタビュー

を読んだら、この話の『カリスマ』はゴンゾーではなく六実の方だと書いて

あって、ちょっとびっくりしました。でも、最終話読んで六実の身の上がわかると、

なるほど、と思えるんですけどね。

 

『夢の子ども』

輝久は、母親から父親の危篤を知らされて一度帰って来て欲しいと言われ、

帰省することに。母親は弟も連れて来て欲しそうだったが、輝久は敢えて連れて

行かない選択をした。年の離れた高校生のこの弟は、生まれてから父とも母とも

数回しか会っておらず、ほとんど輝久が育てたようなものだった。それには、

ある理由があった――。

これを読んで、一話目との繋がりがわかりました(あと四話目ね)。夢の中の

子どもってところは、二話目三話目とも繋がるし。輝久の母親と未千はすごく

似てるところがありますね。夢見の能力だけではなく、女性として性質というか、

本性という部分においてというか。全然、好感は持てないですけどね。カリスマ性

はあるのでしょうね・・・誰もが魅入られてしまう恐ろしさがあるというかね。

最近のしをんさんには珍しく、全体的にひんやりした、ゾクッとさせられる

ような読み心地の作品集でしたね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

法月綸太郎「法月綸太郎の不覚」(講談社)

綸太郎シリーズ最新作。久しぶりののりりん。これの前に出たやつとか、読んでる

のか全然覚えてない^^;法月さんはこの綸太郎シリーズだけはなんとなく追い

かけているつもりなのだけど、ちゃんと追えているのかは謎。間読んでないのも

結構あるような気がしている・・・そもそも、読んだそばから、すぐに内容

忘れちゃうのよね。なんか、トリック等の説明がいつもわかりにくくって。

結局どんな話だったかすぐ忘れちゃう^^;今回も、交換殺人ものが四作中

三作も入っていて、立て続けに読んでたら、どれがどれだかわからなくなっちゃった

(アホ過ぎるw)。最近ほんとに記憶力が怪しくなって来ていて、複雑なトリック

の作品とか登場人物が多い作品とか、ほんと覚えていられなくなってるのよね。

ミステリ読みとしては致命的ですよね・・・でもミステリ卒業はしませんけどね!?

ゆきあやさんじゃないけど、私も法月シリーズの方を卒業するようかなぁ・・・(涙)。

 

一応、各作品の感想を(あらすじ大分端折っててすみませんw)。

 

『心理的瑕疵あり』

事故物件の話(ざっくりすぎるw)。これはアンソロジーで既読だったはずだけど、

あんま覚えてなかったな。ただ、犯人がエアコンフィルターを持ち去ったことが

重要なポイントだったってことはなんとなく覚えてた。そこの部分の解説には

なるほど、と思いましたね。

 

『被疑者死亡により』

養父殺害の容疑をかけられた男が、自分の容疑を晴らして欲しいと綸太郎に依頼

して来る話。

交換殺人を行った二人のうちの一人は意外でしたねぇ。でも、なんか動機に納得が

いかなかったなぁ。こんな人間のために?っていう。もやもやしました。

 

『次はあんたの番だよ』

不動産業で財をなしたひとり暮らしの女性が殺された。犯人候補に甥が浮上

したが、死亡推定時刻にはアリバイがあった――。

夢の話と現実がごっちゃになって、全然話が頭に入って来なかった^^;

ただでさえ、交換殺人ものって殺人事件が二つ出て来て混乱するのに。

ラストはちょっとホラーっぽかったな。

昨今のコンプラの影響で、法月警視と綸太郎の会話を録音しなきゃいけなくなった

ところに、時代を感じましたね。読者とかからクレーム来たのかな。

あとがきで作者が触れられていたのですが、タイトルは日テレ系ドラマの『あなた

の番です』から取られているとか。それが一番意外だったかも(笑)。

 

『平行線は交わらない』

三鷹市の和菓子店の店主が殺された。ちょうど一年前の同じ日にも都内で不審死

で経営コンサルタントが亡くなっていた。被害者同士に直接の関係はないが、

動機の面で二件の死亡事件関わっていると目された人物が二人、需要参考人

として浮かび上がっていた――。

老舗和菓子店の醜い兄弟争いって感じでしたね。そこに解雇された元職人も

関わって来て、なかなか複雑な人間関係でした。出て来る登場人物みんな自分

のことしか考えてなくて、好感持てる人物が一人もいなかったです。こんな奴らが

作ったお菓子は食べたくないなぁ。でも、真犯人は意外でした。綸太郎が、動画

配信者と動画に出ることになるとは・・・時代は変わったねぇ。メイサの

ビジュアルは、黒木メイサしか思い浮かばなかったです・・・(苦笑)。

前作で出て来た、法月親子の会話の録音がなんだかんだ理由つけて緩和されて

いたのが面白かったです。面倒になったのかな(笑)。

 

 

 

 

「裏切りの捜査線 警察小説アンソロジー」(文春文庫)

警察小説ばかりを集めたアンソロジー。米澤さんと芦沢さん目当てで予約しました。

予約本次々来ちゃってたから、そのお二人のだけ読んで返しちゃうかとも思った

のですが、どれも読み安かったので、結局全部読んじゃいました(笑)。同じ

アンソロジーのシリーズで、「偽りの捜査線」というのもあるみたい。そっちも、

警察小説が代表作の作家さんがいっぱい寄稿してますね。誉田さん、今野さん、

堂場さん、長岡さんetc。そっちはそっちで面白そうです。

 

では、各作品の感想を。

 

米澤穂信『お見通し』

歌って踊れる人気チェリストがSNS上で脅迫を受けた。コンサートの日、警察は

近くの公園で、二年前に脅迫で逮捕された男を発見、近くでナイフも見つかった

ことから連行し、コンサートは無事催行された。公園内で見つかったナイフは

意外な場所にあった。一体なぜそんな場所から見つかったのか?

『可燃物』の葛警部シリーズ。同期との会話だけで真相を導き出す炯眼には、

相変わらず驚かされます。脅迫容疑で逮捕された男の本当の目的も意外でしたね。

 

方丈貴恵『メゾン・イニシェの怪』

心霊ルポライターが、十五年前に殺人事件が起きたマンションのエレベーターを

使って、異界に行く方法を試したところ、エレベーターが開いた先のエレベーター

ホールに、血まみれの女性の死体があった。女性のジーンズのポケットには、

遺書らしきものが入っていたのだが――。

これもシリーズものみたいです。心霊ルポライターと警察官の二足のわらじ生活

をする生駒のキャラクターが面白い。こんな困った人が同僚にいたら、確かに

いろいろ苦労しそうですが。このシリーズは毎回心霊絡みのお話なのかな?

ちょっと八雲シリーズみたいですね。

 

荒木あかね『プライドの隙間』

警察署内部のトイレで若い警察官が拳銃自殺を図った。しかし、現場からなぜか

拳銃が持ち去られていた。拳銃の吊紐が切られていたことから、外部の人間が

犯人だと見做された。警察職員ならば、誰でも吊紐の取り外し手順を知っていて、

切断する必要がないからだ。即座に署内を封鎖し、持ち去った犯人と拳銃の捜索が

始まったのだが、拳銃はどこからも見つからない。一体、誰がどこに持ち去ったのか。

真相は割とオーソドックスでしたね。あからさまな伏線が出て来るので、まさか

そのままじゃないだろうとは思ったのですが。警察だろうが、一般の会社だろうが、

どこにでもパワハラで悩む人がいるんですね・・・暗澹たる気持ちになりました。

 

松嶋智左『家につく猫』

隣県での所用の帰り、山の麓のコンビニに寄った弓木主任と茂森の刑事コンビは、

コンビニで不自然な買い物をする老人と出会う。コンビニを出た後、警察車両

で帰ろうとしたところ、タイヤがパンクしてしまう。すると先程の老人が軽トラ

で通りがかった為、ジャッキを貸してもらいたい旨を要請し、渋られたものの、

自宅に伺うことになった。しかし、老人の自宅の様子はどこかがおかしい――。

弓木の老人や家族に対する要求がいちいち図々しいものばかりだったので、かなり

イラッとさせられていたのだけど、理由を知ってなるほど、と思わされました。

ただ、この手の題材は過去にたくさん読んだことがあるからなぁ。あんまり新鮮味

はなかったですね。猫全然出て来ないじゃん、と思ってたら、最後にタイトルの

理由がわかりました。そういう意味だったのか。

 

芦沢央『コールバック』

吉良探偵事務所の正式な調査員となった正太郎の元に、息子のいじめで悩む夫婦が

相談にやってきた。息子のいじめ調査に乗り出した正太郎だったが、妻と夫と

では息子のいじめに対する温度差があるようで――。

いじめも最低だけど、子どもが行方不明になって憔悴しきっている親の元に、

面白半分であんな電話をかけることにも、本当に腹が立ちました。どうしてそんな

発想が出て来るのか。その電話を受けたことで、母親がどれだけ心を傷つけられる

のか、少しは想像力働かせろよ、と言いたくなりました。結果、最悪の結末を

迎えることになってしまった。ただ、ラスト、息子を亡くした父親が取った行動に、

少しだけ救われる気持ちになりました(息子のいじめで調査依頼した父親とは別

の人です)。本人はやきりれなかったでしょうけどね・・・。さすが、読み応えの

ある一編でしたね。

 

 

 

 

辻村深月「ファイア・ドーム 上下」(小学館)

辻村さんの最新作。上下巻併せて800ページ超えのなかなかの長編。世間でも

かなり話題になっているようですね。

いや~・・・すごい作品だった。リーダビリティに関しては圧巻だったな。もう、

話が動き出した上巻の中盤くらいから、先が気になって読む手が止められなかった。

ここまでのめり込んで読めた作品は久しぶりかも。さすがでしたね。

ほぼ発売日に順番予約しておいたので、上下巻ほぼ日を開けずに回って来て、

一気読み出来て良かったです。上巻のあのラストの引きのところで、下巻回って

来るのに時間かかったら、半殺し状態だよ~^^;;

いろんな要素が詰まった作品です。出て来る登場人物もそれなりに多いのですが、

全く混乱することなく読めました。お見事。普通だったら、現在と過去、いくつか

の事件が出て来て複雑に絡み合っていたら、もっと登場人物とか人間関係とか

混乱すると思うんですが、全くそういうこともなく。事件の真相をすんなり理解

出来ました。かといって、単純な事件という訳でもなく。まぁ、いくつかの

事件とはいえ、真の悪人は一人ですからね。あ、いや、もう一人いるか。でも、

そっちは殺人まではいかないしね。でも、本当の悪人は、こういう事件が起きた時に、

SNS等で悪意もなく(むしろ正義感にかられての人が多いかもしれない)、好き

勝手な噂を撒き散らす私たちすべてなのかもしれません。まぁ、私はSNS等で

書き込むことはほとんどないけど、ついついYahooニュースのコメント欄とか

読んじゃうもの。そして、そこで誰かが言った言葉を、世間話のノリで深く

考えもせず、他人に話したりすることもある。多分、誰もがやってることだと

思います。でも、今回、そういう悪意のない誰かの噂話が、被害者遺族を苦しめる

ことになってしまいます。読んでいて、被害者側の気持ちになるともう、読み

進めるのが怖いし、苦しいし、辛かったです。SNS時代の怖さを痛いほど思い

知らされる作品でしたね・・・。

事件の発端は、1994年の7月のある日、L県の一郷屋百貨店で起きた受付嬢の

誘拐事件から始まります。犯人からの電話で、身代金を要求されたデパート側は

六千万円を用意し、犯人の指示に従っていくつかの場所に移動させられたが、

結局最終的に身代金が受け渡されることはなく、人質となった新沼紗英は無惨に

殺されてしまった。この事件の少し前、L県では小学四年生の男の子の失踪事件も

起きていた。少年が通っていた小学校の近くの山道には交通事故の痕跡があり、

ひき逃げに遭って、犯人によって連れ去られたとみなされた。少年が事故に遭った

のは、一郷屋百貨店の誘拐殺人事件が起きる前日だった。そのことから、世間では

二つの事件を興味本位で結びつける人々が後をたたず、SNS上で炎上した。男子

児童を轢いたのは、一郷屋百貨店の事件の被害者である新沼紗英か、あるいは

その父親なのではないかと――この根拠のない噂話は、火の粉のように被害者遺族に

降り注いだ。誘拐事件の犯人はとっくに逮捕されていたというのに――。

そしてその出来事から25年が経ち、一郷屋百貨店の事件の被害者新沼紗英の

妹の息子、つまり甥の光汰朗が突然失踪する事件が起きた。紗英の父親であり

光汰朗の祖父である新沼忠治は、25年前の悪夢が再び再燃することに恐怖と

戦慄を覚え、何があっても光汰朗を探し出そうと捜索隊に加わるのだが――。

取り上げたい要素がたくさんあるのですが・・・何を述べても陳腐になっちゃいそう。

とにかく、読んでみてとしか言えないなぁ。事件を追う地元新聞の記者、光汰朗

の担任教師と図工の専任教師、光汰朗の同級生の友人、25年前の誘拐事件の

犯人の息子たち・・・とにかく、いろんな人が絡み合って、事件が語られて行く。

いろんな感情が胸に迫っては消えて、また違う感情が浮かんで来て。なんか、

ジェットコースターみたいに、感情の起伏が激しかったな。ぐっと来たシーンも

たくさんあります。特に、上巻最後の、いなくなった光汰朗を、少年二人(速斗

と一樹)が探しに行く辺りの、友情物語パートは良かったなぁ。速斗も一樹も

ほんとにいい子。孤独だった光汰朗の近くに、こういう子がいてくれて良かった

よ・・・!(涙)しかし、上巻の最後でまさかああいう展開になるとは思わなかった。

ここでもうクライマックスみたいになってますけど?って思っちゃったよ。

でも、下巻はさらに面白さが加速して、読ませるスピードが上がって行きましたね。

新聞記者の透真が、25年前の事件の犯人・久我に会いに行って、証言を引き出そう

とするところなんかも緊迫感あって読ませられたし。久我という人物の矮小さには

うんざりしましたね。こんな奴の子どもが、なぜあんなに真っ当に育ったので

しょうね。反面教師にしたからなのかな。

新沼忠治氏の、「みんなで背負っていく」という言葉が、とても胸にずしんと

来ました。その繋がりがあれば、これからも生きて行けるのかもしれない。とても

重苦しい枷になってしまうだろうけども。その言葉で、久我の息子たちも少し

救われたところはあるんじゃないのかな・・・。

ラスト、例の証拠品がちゃんと見つかって良かった。上巻で、確かにそのモノに

関しても言及していて、伏線が張ってあるんですよね。

久我の手紙に関しては、あんな衝撃の事実が書かれていて、なんで見過ごされて

たの?とすごく疑問だったのだけど、ちゃんとそれに関しても理由があるので、

溜飲が下がりました。他にもいくつか腑に落ちないところがあったのだけど、さすが

辻村さん、抜かりなく、そうした疑問の部分にもフォローがあって、ほぼすべてが

すっきりしましたね。証拠品に関しての証言の部分や実際に捜索する過程などは、

さすがにちょっと出来すぎでは、と思わなくもなかったけど、まぁ、フィクション

だしね。それがないと話にならないんで。

途中であんな別れ方をしてしまった美冬と透真が、ラストにどうなるかが気がかり

だったけど、そこにもちゃんとフォローがあったので良かったです。元通りには

ならないのかもしれないけど、少しづつ歩み寄って行けたらいいなと思う。

タイトルに関して、他の方のレビュー読んでたら作品と合わないって意見も見かけた

けど、私は上手いつけ方だと思いましたね。スノードームならぬファイアードーム。

噂の火の粉が、被害者遺族や事件の関係者たちに降り注ぎ、そこからまた火種が

どんどん飛び火していく。悪意なく広めた噂で、傷つく人がいる。公共の場での

発言には、ちゃんと自分で責任持たなきゃいけない。人の話を鵜呑みにしない。

他人事ではなく、自分の事件でもあると戒められた気持ちがしました。

上下巻800ページ超えでも全然長いと思わなかったですね。

読ませる力は圧巻だった。やっぱり辻村さんはすごい作家さんだね。