ミステリ読書録

ヤフーブログから引っ越して来ました。ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

竹内真「図書室のバシラドール」(双葉社)

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直原高校の図書室で雇われ司書として働く高良詩織の活躍を描いたシリーズ三作目。

運良く二年目も事務職扱いとして図書室で働けることになったものの、一年契約

の身ではいつ契約を切られるかわからない。詩織は、将来を見据えて司書の資格を

取るべく大学の通信教育を受けることに。通信教育とはいえ、実際大学に赴いて

スクーリングの授業も受けなければならない。土日の休みを利用して、意気揚々と

授業を受け始めた詩織は、同じ授業を取っているノノちゃんこと乃平果乃と

知り合う。ノノちゃんは、フリーターから司書を目指す二十代の明るい女の子

だった。ノノちゃんと切磋琢磨しながら資格習得を目指す詩織だったが、ある日

いつものように学校の事務室に出勤すると、図書室常連の男子生徒が家出を

したかもしれないと生徒の父親が面会に来て――。

始めは成り行きで始めた図書室の仕事だったのに、詩織は、かなり図書室の仕事に

愛着が芽生えて来ているようですね。資格もちゃんと取りましたし。ただ、資格が

あったからといって、長く続けられるとは限らないのが司書という仕事の困った

ところでしょうか。そりゃ、ないよりはあった方がいいのでしょうけど・・・

そもそも正職として司書の仕事に就ける人ってのが本当に一握りの世界ですから。

詩織は一年契約だから、焦る気持ちもよくわかります。それでも、少しでも

将来のことに備えて取れる資格を取ろうと奮闘する姿には、応援してあげたくなり

ました。

図書室常連の大隈君がいなくなり、その行方をみんながそれぞれに推理するくだりは、図書のレファレンスの過程と重なるものがあって面白かったのですが、さすがに

父親が目的地に先回りするところはご都合主義的なものを感じてしまいました。

目的地を推理するところまでは納得出来るものの、実際その場で会える確率って

天文学的数字に近い気がするんですが・・・。まぁフィクションなんだから

あまりツッコむところでもないのかもしれませんけど^^;

ちなみに、バシラドールというのは、目的地を定めずに、旅そのものを楽しむ為に

旅をするような人のことを指すスタインベックの造語だそう。元はバシランド

というスペイン語から派生しているそうです。なんだかいい旅の仕方ですよね。

後半はビブリオバトルがテーマ。高校のビブリオバトルものといえば、先日読んだ

山本弘さんの作品という先行作品がありますが、こちらはこちらで興味深かった

です。みんなそれぞれに個性的な本を紹介していて、自分がその場にいたら

チャンプ本選ぶの難しそうだなぁと思いました。ただ、不思議だったのは、普通に

現代小説を紹介する人間がほとんどいなかったところ。私、たまに新聞なんかで

各地で行われたビブリオバトルの結果の記事を読むことがあるのだけど、普通に

エンタメとかファンタジーとか、小説を紹介する人の方が大多数だったと思うん

ですが。直原高校で行われるビブリオバトルでは、みんな奇をてらうのか、小説

以外のジャンルを選ぶ人ばかり。本好きが集まっている割に、これってどうなん

だろう、とちょっと首を傾げてしまった。いや、いろんな本をオススメする方が

面白いバトルになるとは思うんですけどね。漫画やエッセイならまだしも、

国語辞典とか紹介されても・・・。なんか、もうちょっと普通の小説が出て来る

バトルなんかも読んでみたかったなーと思ってしまった。唯一純粋に小説って

云えるのがソフィーの世界だけど、これも哲学がテーマとも云える作品

らしいしね。でも、生徒の紹介読んでて、すごく面白そうだと思いました。

私がその回のチャンプ本を選ぶとしたら、『ソフィーの世界』を選んだかも。

ただ、分厚そうなので、実際読んでみるにはかなり気力が要りそうな感じは

しますが・・・^^;

終盤に出て来た、ネットリテラシーの問題に関しては、いろいろと考えさせられる

ところもありましたね。ただ、表面上の言葉を信じるだけじゃなくて、ちゃんと

自分で考えて判断することが大事なんだろうなと思わされました。

そういえば、途中でさらっと本の残留思念が読める詩織の能力が出て来ましたが、

そんな設定すっかり忘れてました。この設定がこのシリーズに必要かどうかは

かなり微妙な気がするんですが・・・。でも、そのシーンに出て来た氷室冴子

『なぎさボーイ』『多恵子ガール』クララ白書』『アグネス白書といった

タイトルに、涙が出そうなくらい懐かしい気持ちになりました。『なぎさボーイ』

大大大っすきだったんですよねぇ。なぎさ君が可愛らしくてねぇ。氷室先生を

はじめとするコバルト文庫の作品は、今で言うライトノベルの先駆け的な存在

だったと思うんですよね。この作品で久々にタイトル見て、読み返したくなっ

ちゃったな。

残念だったのは、詩織と市立図書館の司書である山村さんとの仲があんまり進展

していないこと。お互い憎からず思っているはずなのに、付き合うところまで

行かないのはなぜなんだ・・・。詩織と大隈君が一緒にいるところを見て山村

さんが嫉妬するような場面も出て来たし、それが原因でケンカしたりもしたのに。

しばらくは付かず離れずの距離感で行くんでしょうかね。まぁ、詩織自身が今は

恋愛よりも司書の仕事の方に比重を置いているから、仕方がないのかな。次巻では

もう少し進展があって欲しいものです。

 

 

窪美澄「たおやかに輪をえがいて」(中央公論新社)

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窪さん最新作。結婚20年の平凡なパート主婦、絵里子が主人公。結婚生活は

順風満帆とは言えないものの、そこそこ平穏に上手くやってきたつもりだった。

しかし、ある日夫のクローゼットの中で、風俗店のスタンプカードを見つけ、

そこから夫への不信感が芽生え始める。その上、大学生の娘が道ならぬ恋に落ちて

いることも知ってしまう。自分の知らない夫や娘の一面を知って、今まで築いて

来た家族というものに自信を失くした絵里子は、一時的に家族から離れる決意を

するが――。

テーマは家族の再生でしょうか。真面目だと思っていた夫が風俗に通っていたと

知って悩む主人公の絵里子。妻に内緒で夜のお店に通う夫って、結構世間にも

多いんじゃないのかなぁ。確かに知ったら知ったでショックなのかもしれないけど、

絵里子がはっきり夫に問い詰めもしないでぐじぐじと悩んでいるところに、

ちょっとイラッとしました。でも、実際自分が絵里子の立場だったら、やっぱり

問い詰めたり出来ないものなのかも。波風立てたくない気持ちが先に立ってしまって。

信じていたからこそ、裏切られた気持ちが強いんでしょうね。夫にも娘にも言いたい

ことが言えなかった絵里子が、家族と離れて暮らし、旅をしたり仕事をしたり、いろんな経験をすることで強くなって行き、一人の人間として成長して行くところは爽やか

でした。年齢を重ねても、自分を磨くことって大事だと思うし、一人の女性として

強く生きて行けるようになった絵里子は、うだうだと悩むパート主婦の時よりも

ずっと輝いていると思いました。ただ、高級下着店を営む友達から住む所も提供

してもらえて、店長としての仕事も任されるとか、さすがに上手く行き過ぎかな、

とちょっと白ける感じも。普通は家族から逃げても行き場がなくて途方に暮れる

ものだし、仕事だって、何の資格もないようなホームセンターのレジ打ちパート

主婦の絵里子がすぐに次の職が見つかるとは思えない。その辺りはもう少し

リアリティが欲しかったかなぁ。女友達がレズビアンで、彼女と一緒に住む駆け出し

のカメラマンの女の子が、あっさり写真の賞を獲ったり個展を開けたりするところも

ご都合主義的だしね。

好きだったのは、家族から離れて旅に出た絵里子が、旅先で乳がんに罹った

老女と行動を共にするところ。老女の生き方はいろんなものを振り切っていて、

かっこいいな、と思いました。この世からいなくなる時に機嫌よく死にたい、

という彼女の言葉が心に残りました。旅から帰ったら乳がんの辛い治療が待って

いるのに、やりたいことをやって、生きたいように生きようと断言出来る彼女の

強さが眩しかったです。

やりたいことを見つけた絵里子が、夫との関係にどう決着をつけるのか、そこが

最後まで気がかりでしたが、収まる所に収まったって感じですかね。最後もやっぱり

都合良すぎでは?とも思いましたけど、こういう終わり方でほっとしている自分も

いました。結局、夫が風俗に走った理由はよくわからないままだったので、そこは

ちょっと腑に落ちないものがありましたけど。娘の恋愛も、もう一波乱あっても

良かったかも。なんか、内容の割にページ数が多すぎて、中だるみした感じは

否めなかったな。もっとコンパクトにまとめた方が読みやすかったのでは。

書きたいことが分散しちゃった感じ?窪さんの筆致は好きなので、これで見限る

とかは全然ないんだけど、もう一歩テーマに踏み込んだ作品が読みたいかな。

タイトルの意味は、最後の最後でわかります。このラストはいいですね。これから

の二人を暗示しているようで。夫婦はこんな風にいられるのが一番いいんじゃ

ないかな。

 

早坂吝「殺人犯対殺人鬼」(光文社)

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早坂さん新作。ソフトカバーの単行本だからか、珍しく早々に図書館入荷してくれ

ました。途中まで、割とオーソドックスな孤島のクローズド・サークルものだなと

思って読んでいたのですけども・・・早坂さんがそんな普通のミステリ書く訳

なかったのですよねぇ。終盤の展開は唖然の連続。いやー、騙された。もーう、

きれいに完全に。作者の仕掛けがわかった後で、もう一度前に戻ると、そうか、

そういう意味だったのか・・・!と腑に落ちるシーンがたくさんありました。

ミステリとしては成功だと思うのですけども・・・あまりの救いのなさに読み終えて

どよどよーーーん。タイトルの殺人犯と殺人鬼、誰が殺人犯で、誰が殺人鬼なのかが、

この作品のキモでしょう。私は完全に両者を取り違えていました。剛竜寺を殺した

殺人犯が、主人公網走にとっての『殺人鬼』だと思っていたのですが・・・。ここ

にも、作者が仕掛けた巧妙な騙しの手法が隠されていました。

途中で殺人鬼Xの半生が細切れに出て来ますが、この半生もとことん救いがない。

自分の○○(漢字二字)だけじゃなく、△△(漢字二字)までをも殺してしまう。

その出事が孤島の殺人へと繋がって行くのですが・・・なんじゃい、この動機は。

なんでここだけバカミス風?まぁ、そのトンデモっぷりが早坂さんらしいとも

云えるのですけどもね。それにしても、こんな理由で殺された日には、殺された方も

浮かばれないよ・・・。まぁ、剛竜寺を始め、殺されても仕方がない素行の奴が

多かったけどさ。中には理不尽に殺された子もいる訳だから。

私はてっきり、主人公の網走が、いじめられっ子の五味さんの自殺の原因となった

いじめっ子たちを殺して行く復讐譚だと思って読んでたんですけどね・・・はぁ。

いろいろと、人間不信になりそうですよ。ホントにねぇ、もう。五味さんの名前の

正確な読み方を知った時の網走のショックな様子に、心を痛めたりもしていたの

になぁ・・・っと、これ以上書くとネタバレになりそうなんで、この辺で。まぁ、

ひとつ云えるのは、なんだかんだでやっぱり早坂さんってすごい作家だな、

ということでしょうか。我孫子さん辺りが書きそうな作品って感じもしましたけど。

賛否両論出そうな作品ではありますが、騙されたという意味では白旗上げるしか

ないな。どこを読んでも不快極まりない作品でしたけど、ミステリ好きとしては

楽しめましたからね。

長岡弘樹「緋色の残響」(双葉社)

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長岡さん新刊。『傍聞き』に出て来た女刑事・羽角啓子とその娘・菜月が活躍する

連作短編集。シリーズとしては三作目(『傍聞き』はノンシリーズの短編集に

収録されていましたが)に当たりますかね。『傍聞き』では小学生だった菜月ちゃん

も、今作では中学生になっています。母親が刑事だからか、まぁしっかりした子に

育って。将来は新聞記者になりたいそうで、その夢に向けて着々と努力しているし。

こういう子は確実に夢を実現させるのだろうなぁ。

それにしても、母親が刑事だから事件を引き寄せる体質なのか、菜月ちゃんの周りで

事件起きすぎ!いくら何でも、中学生の周りでこんなに殺人事件が起きるって

おかしいでしょ。金田一少年かコナン君かっつぅの。っていうツッコミをついつい

したくなってしまった(苦笑)。

まぁ、面白かったからいいのですけどね。些細なことが伏線になっていて、思わぬ

ところに物語が着地して行くところはさすが。長岡さんって、着眼点が面白い

ですよね。ただ、ところどころツッコミ所はありますけどね(苦笑)。

では、各作品の感想を。

 

『黒い遺品』

絵が下手くそな菜月ちゃんが、得意なアレを使って似顔絵を描くと上手く描けた

というのは興味深かった。ただ、道具を変えても普通は画力自体は変わらない

もののような気もしますけど・・・^^;記憶力がいいのかな。

啓子さんにも春が来たかと思いきや・・・皮肉な結末でした。

 

『翳った水槽』

自分の家に家庭訪問に来た直後に、担任教師が何者かによって殺されたとしたら、

普通の子供だったらかなりのトラウマになりそうですよね。

このお話に関しては、メダカを飼っている身として、とても興味深く読んだの

だけれど、犯人逮捕のきっかけとなったメダカの性質に関しては、かなり

ツッコミ所満載だった。確かにそういう性質はあると思うけど、あんな短時間で

そうなるとは思えないんですが。しかも、犯人がいた時間ってほんとにわずかの

時間ですよね。これはさすがに現実的ではないなと思いました。

 

『緋色の残響』

出来心とはいえ、あんな理由で殺人を犯すってのはちょっと信じがたいものが

あるなぁ。ピアノの天才少女を殺した犯人はそのまんまの人物でしたが、犯人

を追い詰める為に菜月がやったことを知って驚かされました。この年にして

この慧眼はすごい。啓子が嫉妬するのも無理ないかな。将来はいい新聞記者に

なるでしょうね。

 

『暗い聖域』

菜月に、アロエ料理の方法を聞いた男子生徒の真の思惑を知って、ぞっとしました。

中学生でよくこんな酷いことを思いつくな。そもそも、大して料理もしたことが

ない人間が、食材にアロエを選ぶって時点で変だな、とは思いましたけど。鋭い

菜月ちゃんならおかしいなと気づきそうな気もするけどね。啓子のおかげで大事な

命が守られて良かったです。

 

『無色のサファイア

菜月が、事件の容疑者の無実を証明するホワイトサファイアを探し当てた方法には

びっくり。しかも二年間も。まぁ、現実的ではないと思うけど、菜月たちの執念

に恐れ入りました。菜月は記者もいいけど、刑事も向いているんじゃないかなぁ。

なんせ、啓子の娘なのだし。現場百遍とか、得意そう。でも、真実を報道する

記者として、今の道を突き進んで行って欲しい気もしますね。どんな職業を

選ぶにせよ、彼女なら結果を残すだろうな。このまま真っ直ぐ育って欲しいですね。

 

 

 

東野圭吾「クスノキの番人」(実業之日本社)

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東野さん最新刊。図書館再開前に予約の本の受け取り期間を設けてもらえたので、

早めに取りに行くことが出来ました。現在は一部のサービスを覗いて開館して

くれていますが。やっと予約も出来るようになったので、予約受付開始日には、

閉館中に出来なかった新刊予約をまとめてやりました。ネットから出来るのはいいの

だけど、9時の開館と同時にアクセスしたら、アクセスが集中してなかなか

画面が先に進まなかったです^^;人気の伊坂さんや湊さんの新刊はあっという間に

予約数が増えてました・・・。これから返却された本はすべて数日間そのまま

置いておくらしく、予約が回って来るのもかなり時間がかかるようになりそうです。

いろいろと厄介だなぁ。まぁ、開館してもらえるだけでありがたいのですけれども。

本書はちょうど閉館中に予約が回って来ていたから早めに読めて良かったです。

東野さんの新作なんか、これから回って来るのにどれだけかかるのやら。

さて、本書ですが。ミステリー要素は控えめな、感動系の東野作品。主人公の

直井玲斗は、勤めていた会社を理不尽な理由で解雇させられ、給料も未払い分が

残っていた為、腹いせに会社に忍び込んで窃盗を働こうと画策する。しかし

あえなく失敗、警察に捕まってしまう。起訴を待つ身で途方に暮れていたところ、

なぜか弁護士が現れ、依頼人が指定する条件を飲むならば釈放してもらえるという。

依頼人は、表向きは祖母ということになっていたが、実は違うらしい。玲斗に

心当たりはなく不審に思ったものの、刑務所行きを免れれたいが為、条件を飲む

ことに。釈放され依頼人の元へと連れられて行った玲斗は、そこで柳澤千舟と

名乗る年配の女性と会う。驚くことに、彼女は玲斗の伯母だという。千舟は、

長らく疎遠になっていた母の異母姉だったのだ。玲斗が警察に捕まったと知り

動揺した祖母が連絡したらしい。驚く玲斗に、千舟が突きつけた釈放の交換条件は、

クスノキの番人』になってもらいたいというものだった――。

クスノキの番人』がどういう役割なのか、終盤まで引っ張った割には、割と

思ったそのまんまだったなぁとちょっと拍子抜け。千舟が頑として玲斗に

その役割を教えようとしなかったから、もっと何かあると思ったのですけど。

神社っていうのは神秘的なパワーのある場所なので、こういうファンタジックな

設定があってもそんなに違和感はないんですけど、実際こういうクスノキ

存在したとしたら、今のSNS全盛の世の中だったら、あっという間に情報が

伝わって、人が押し寄せちゃう気がするなぁ。他言無用と言ったって、大場

のような若者が来る場合もある訳で。こんな今どきの子は、どんなに人に

話すなと諭しても、SNSとかで情報発信しちゃうんじゃないのかな。一人そういう

のがいたら、あっという間に日本全国に情報は拡散してしまうわけで。こんな

ひっそりと伝統が受け継がれるってのはなかなか難しいのでは。まぁ、大場の

場合は結局クスノキのパワーを感じることが出来なかったから発信しなかった

とも云えるし、クスノキのパワーを感じることが出来た人は、その力に感動して

口を噤むのかもしれませんけど・・・と、変なところに引っかかってしまった。

馘首になった会社に逆恨みで窃盗に入るようなどうしようもない人間だった玲斗が、

クスノキの番人になったことで、少しづつ成長していくところは良かったと

思います。何より、玲斗と千舟の関係が良かったですね。千舟の玲斗への態度も、

少しづつ軟化して行ったのがわかりましたし。お互いに信頼関係が結ばれて行く

過程が丁寧に描かれていたように思います。

ただ、引っかかったのは、ヒロインの優美の人物像。どうしても彼女の言動が好きに

なれなかった。入っちゃいけない神木のクスノキに勝手に近づいたり、父親の

行動を知る為とはいえ、盗聴器を仕掛けたり。若い割にやることがえげつない。

しかも、止める玲斗を無理矢理仲間に引き入れて、協力させるし。玲斗も玲斗で、

好意を持っているからといって、それに乗っちゃうし。神聖な儀式の場所の筈

なのに、あまりにも二人の行動が不謹慎なので腹が立ちましたし、玲斗はもっと

クスノキの番人としての自分の立ち位置を弁えるべきなのに、と呆れました。

結局恋愛にまでは発展しなかったしね。今後連絡を取り合ってそうなる可能性も

なくはないと思うけど・・・どうかな。そのまま関係も自然消滅のような気がする。

クスノキ見に来るって言っても、半年とか一年に一回とかのレベルだろうしね。

ラスト、千舟さんの思惑を玲斗が止めてくれてほっとしました。きっと、玲斗に

とっても、千舟さんの存在がとても大切になっているのでしょうね。クスノキ

番人として、これからもずっと彼女を支えて行ってあげて欲しいな、と思いました。

 

 

 

 

若林正恭「完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込」(角川文庫)

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ずっと読みたかった若林さんのエッセイ集。どれだけ待っても図書館入荷して

くれないままなので、コロナの図書館閉館を機に購入。新刊図書買ったの一体

いつぶりだろう・・・もしかしたら、ちょっと前に記事にした喜国さんの作品

以来かもしれない^^;漫画はちょこちょこ買ってるんですけどね。

これ、文庫化に当たって単行本未収録が100ページ以上加筆されてるらしい。

文庫で読んで良かったかも。そして、奥付見てたらすごい文字を発見。この本、

なんと32刷目!!32回重版かかってるってことですよね。す、すごー。

純文学とか漫画とかならよくあるのかもしれないですけど、よっぽど人気のある

作家じゃないとこれだけの重版かからないんじゃないのかなぁ。それだけ、若林

さんが人気あるってことなんだろうな。なんだかんだで、オードリーって若林

も春日もテレビめっちゃ出てますもんね。テレビだけじゃなくてラジオも冠番組

持ってるし。若手の頃から今まで消えずにコンスタントに活躍し続けるお笑い芸人

ってやっぱり一握りだと思うから、才能あるんだろうなと思う。

さて、これの後に出たエッセイはだいたい読んでいるから、本書の若林さんは

一番尖って人見知りだった頃のエッセイが収録されていると思われます。本書の

最後の方で人見知り卒業見込みにまで成長していて、それ以降の作品は当然

ながら人見知りは(多分ほぼ)卒業している訳ですから。まぁ、その後の作品でも

面倒くさい性格はあんまり変わっていないようでしたけれど(苦笑)。私も基本

人見知りで小心者なので、出て来るエピソードはなんか共感できるなぁって

思えるものも多かったです。美容院に行って髪型指定出来ないとか(いつも

美容師さんにおまかせ)、スタバでトールとかグランデと言うのが恥ずかしい

とか。まぁ、スイーツは普通に使うけど。今風の横文字使うのはちょっと気恥ずかしい

ものはありますね。若林さん同様、私も自意識過剰なのかも。

趣味に関しては全然合わないものばかりでしたけど。アメフトやらプロレスやら、

格闘技がとても好きらしい。唯一共感できる趣味は本くらいだけど、読む作家も

私は読んだことない方ばかりでした。

若林さんって、すごくひねくれているようでいて、素直な人なんだなぁっていうのが

よくわかる。表面的にはあんまり感情的になるようなイメージがないんだけど、

内面ではちょっとしたことで悩んだり落ち込んだり。特に前半は人とのコミュニ

ケーションが上手く出来ず、一人もんもんと考え込んでしまうことが多い。あーでも

ないこーでもない、とぐるぐるいろんなことを考え過ぎてしまう。基本ネガティブ。

でも、読み進めて行くうちに仕事も定期的に入り初めて、いろんな経験を通して

いろんな人や物と出会ううちに、少しづつ考え方が変わって成長して行くのが

わかりました。そのきっかけは本を通してだったり、先輩の言葉だったり、岡本

太郎の太陽の塔だったりといろいろですが。そういうものを素直に吸収する力が

あるんだろうなと思いました。

あんまり先輩風吹かせるようなイメージがないのだけど、意外だったのは、

オードリーのラジオのハガキ職人から放送作家を目指すT君との関係。絶望的

なまでに人間関係が不得意な彼の才能を認め、なんとか彼が花開くように

気にかけてあげる面倒見の良さに驚きました。どこまでもネガティブな彼の思考を

なんとか上向きにしようと説得するところとか。他人に対して、そこまで踏み込む

ようなことをする人だとは思わなかったので。他人は他人、自分は自分と線引き

するようなタイプかと。よっぽどT君の才能を買っていたのでしょうけど。そこまで

気にかけていたT君の結末はちょっと残念でしたね。今は何をやってらっしゃるのか。

今でも、オードリーのラジオにハガキを投稿しているのかな。

それぞれのエピソードに若林さんらしさがあって、どれも面白く読みました。私は

やっぱり若林さんが好きだな。人嫌いで(今は大分違うけど)恋愛下手で(今は

結婚されたけどw)、面倒くさいところ(これは多分今も)も含めて人間くさくて。

ほとんど出て来ないけど(敢えて書かないようにしていたらしい)、相方春日さん

への想いもちょこちょこ伺えて、微笑ましかったです。なんだかんだで、仲いい

コンビなんだろうな。

文章は、正直前半部分なんかはかなり酷いけど、それも含めて若林さんらしいって

思いました。句読点の付け方がめちゃくちゃだったり。途中から大分改善されて

来た感じでしたけどね。編集者も、再販の時も敢えて直さないんだろうな。そこも

本人の成長の過程が伺えるところだと思うから。

人間、社会に出て仕事をするって大事なことなんだなっていうのがよくわかる。

自分には向いてないからとか出来ないからと端から決めてかかるんじゃなくて、

とりあえず何でもやってみることは大事だし、嫌なこととも向き合うことが必要だし、

それを受け入れて、いかに続けて行くかはもっと大事。

社会に迎合することは決して悪いことじゃないと思う。若林さんは、そうやって

今の芸能界で自分の位置を確立していったんだろうなと思いました。

我が家の薔薇 2020春

一年ぶりの薔薇記事です。昨年の秋は、どの株も天候不良か根詰まりが原因で

元気がなく、記事をあげられるようなお花を咲かせられませんでした。

今年は冬にほぼすべての株の植え替えをして剪定したところ、ぐいぐいと

成長を遂げ、今現在、たくさんのお花を咲かせてくれています。だいたいの

お花が一通り咲いたので、記事アップと相成りました。ぱちぱち。

コロナ禍で鬱屈とした中、お庭の薔薇の美しさで本当に癒やされています。

ただ、悲しいことに、今年ダメになった株が三つほど。原因は不明ですが、

家の壁際に置いてあったので、風通しが悪かったせいで病気になってしまった

のではと思っています。悲しい・・・。

三株がダメになってしまったので、性懲りもなく新たに三株買い足しています。

開花株ひとつと、新苗ひとつと、ヤフオクで挿し木苗ひとつ。新苗と挿し木苗は

これから何年かかけてじっくり育てて行くつもりです。がんばるぞー。

ではでは、今年咲いた自慢の薔薇さんたちをご紹介~~。

 

エルガー・ローズ(サー・エドワード・エルガー

f:id:belarbre820:20200609220356j:plain今年一番最初に咲いたのがこれ。

知人から譲り受けた大事な株。今年はたくさんのお花を咲かせてくれています。

鮮やかな赤紫が美しいですねぇ。うっとり。

 

ジャルダン・ドゥ・フランス

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姉から譲り受けた株。今年植え替えたら一気に元気に。ちょっと花びらが

傷み気味なのが残念ですが。明るいピンクの房咲きで愛らしい薔薇さん。

 

グラハム・トーマス

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黄色のイングリッシュローズ代表。目を瞠るような黄色が鮮やかです。

 

ダブル・デイライト(手前の赤い縁取りのやつ)

f:id:belarbre820:20200609221456j:plain一輪でも本当に存在感のある薔薇。

香りが素晴らしく、花持ちも良いので一輪挿しに挿しておくと見栄えします。

 

エブリン

f:id:belarbre820:20200609221542j:plainついに咲いた我が家のエブリン様。

挿し木苗から育てて早三年。植え替えして風通しと日当たりの良い場所に

置いたら、一気に蕾がつきました。花が咲くのは初めてなので、まだ香りは

それほど出てませんが、今後は花が咲く度その素晴らしい香りで楽しませて

くれる筈です。

 

プリンセス・ドゥ・モナコ

f:id:belarbre820:20200609221626j:plainモナコ皇妃の名がついた気品ある

薔薇。とにかく花が大きいので、見栄えは最高。今年は花つきもよく、次々と

美しいお花を咲かせてくれています。

 

ボレロ

f:id:belarbre820:20200609221714j:plainこちらも香りが最高。スリップス

(小さい害虫)にやられて花びらが傷みやすいのが玉に瑕。この写真はきれいに

咲いています。

 

ピエール・ドゥ・ロンサール

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一番人気があるんじゃないかってくらいの人気の薔薇。今年は爆発しまして、

毎日たくさんの花を咲かせてくれています。ここまで見事に咲いたのは

初めて。房咲きでもあるので、一房摘み取って生けるとブーケのように

なります。

 

薫乃

f:id:belarbre820:20200609221914j:plain去年まではあまりいい花が咲いて

なかったのですが、今年は素晴らしいお花が咲いています。強香種の底力を

ついに発揮。めっちゃいい香り~!花びらの美しさにもうっとり。

 

ノヴァーリス

f:id:belarbre820:20200609221946j:plain薔薇の育苗家がお勧めする青薔薇代表

(らしい)。が、うちではまだその威力を発揮しておらず。まだまだ育成中。

香りも良い筈なのですが、あんまりしないです。これからの子です。

 

ジュード・ジ・オブスキュア

f:id:belarbre820:20200609222026j:plain実は三度目の正直で今年買った子。

前二回は残念ながら花が咲く前に枯らしてしまいました。今年地元のホームセンター

に売っていた時は運命だと思いました。とても人気のある株で、すぐに売れちゃう

んですよね^^;蕾のついた開花株を買ったので、初めて自宅でお花が咲いたのを

見ることが出来ました。ころんとしたお花がなんとも可愛らしい。フルーツの香り

の、かなりの強香種らしいのですが、まだそこまでじゃないですね。

株が成長するにつれて威力を発揮してくれるでしょう。見た目は咲き初めの

グラハムと似てますが、こちらの方は優しいアイボリー色。

 

残念ながらお亡くなりになってしまったのは、バタークリームのような花弁が

優美で大好きだったマリーアントワネット。去年買い足した新苗のモナリザ

そして、ヤフオクで接ぎ木苗を買って三年目のブレダン。どの株も一時は

元気だったのに、今年に入って急激に元気がなくなり、枯れてしまいました。

悲しい・・・。薔薇栽培はやっぱり難しい。でもきれいな花が咲くのを見ると、

やめられない・・・。

ちなみに、もう一株元気がなく、花が咲いていないのがパパメイアン。

殿堂入りの素晴らしい薔薇なのですが・・・今は養生中です。なんとか

持ちこたえさせて、秋には咲かせたいな。