ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

恩田陸「傾斜のマリア」(双葉社)

恩田さん最新作。『MAZE』『クレオパトラの夢』『ブラック・ベルベット』に続く、

神原恵弥シリーズ第四弾・・・だそう(ネット調べw)。もうさ、全然前作のこと

覚えてなくてね。もちろん、恵弥のことは覚えてますけど、それ以外のキャラとか

前作からの流れとか、きれいさっぱり頭から消え失せてましてね。自分の記憶力の

なさに驚かされる日々・・・。

とはいえ、シリーズ物の新作が出る度に前の作品を読み返すことも出来ない訳で。

こればっかりはもう、仕方ないよね。

って訳で、前の内容全然覚えてない状態で新作を読んじゃって、結構頭の中は『?』

の嵐でした^^;

せめて『ブラック・ベルベット』の自分の記事くらい読み返してから読めば良かった

かもしれないけども(時すでに遅し)。でも、読み返してみたら、読んだの2015

年ですって。そりゃ、覚えてない訳だわ(笑)。

今回、恵弥は休暇で九州のN崎県にやってきた。彼の目的は、N崎出身の祖母が

遺した不思議な内容のかぞえ歌の謎を解き明かす為だった――祖母が遺した不思議な

言葉『かたむくマリア』の意味とは――?

これ、何でわざわざ長崎ってわかりきってる場所をN崎って表記するんですかね。

かえって読みにくいんですが^^;軍艦島とか長崎の他の名所とか名物とかも

そのままの実名表記なのに、県名だけイニシャル表記にする意味がよくわからない。

何かの意図があってそうしてるんだろうけど。謎過ぎるなぁ。って変なところに

引っかかってしまった^^;

恵弥自身はあくまでも休暇として長崎にやって来て、ついでに祖母のかぞえ歌の

秘密を解き明かしてやろうって感じなんだけど、なぜか周りからそう見てもらえず、

何らかの思惑があって長崎入りしたと勘ぐられてしまう。前作『ブラック・

ベルベット』の内容も出て来るので、間違いなく前作をおさらいしてから読んだ方が

楽しめると思いますね。私なんて、ブラックベルベットって何だっけ状態だった

からね^^;他国との不穏な関わりとかも忘れちゃってたしな。アキコのことも。

結構話が大きくなって来そうだなぁと思って身構えてたんだけど・・・ラストで

明らかになる事実を知って、拍子抜け。そして、一番楽しみにしていた恵弥の

祖母のかぞえ歌の謎の部分も。宝探しだと思って恵弥同様、ワクワクしてたのにぃ

~・・・。いかにも意味深なタイトルだったのにねぇ。

まぁ、恵弥が危険な目に遭ったりしなくて良かったですけどね。他国から狙われる

ような危険な仕事してたイメージだから(米国資本の大手製薬会社勤務だった)。

退職して良かったのかも。恵弥なら、次にどんな仕事しても上手く行きそうです

からね。

長崎を旅するロードノベルみたいな部分は面白かったですけどね。長崎、昔一度

だけ行ったことがあります。夜景きれいだったのと、中華が美味しかったってくらい

しか覚えてないけど(笑)。確かに、坂が多かったですね。坂の街と外国情緒溢れる

街ってイメージ。あと、当時は興味なかったから仕方なかったんだけど、本場の

長崎ちゃんぽん食べて来なかったのが未だに悔やまれる。いつか再訪して食べたい

なぁ。

中に出て来る名物のカスドースに関しては全然知らなかったです。どんな味

なのかな。食べてみたい。

恵弥は次はどんな仕事をするのかなぁ。語学も堪能だから、世界を飛び回れる

ような仕事がいいのかもね。

 

東川篤哉「夜の喜劇 東川篤哉短編集」(東京創元社)

東川さん最新作。意外なことに、ご自身初のノンシリーズの短編集なのだとか。

そう言われてみれば、出てる短編集って大抵シリーズものでしたね。一冊で

終わっちゃってるやつもありますけど。短編お得意なイメージはありますけどね。

ノンシリーズとはいえ、今回もゆるーいユーモアミステリーなのはどの作品も

変わりません。アンソロジーで既読の作品もありましたね。

 

では、各作品の感想を。

『鳥越さんは立派な被害者』

中堅商社に勤める鳥越は、大いなる下心を持って専務の一人娘・智花と交際している。

しかし、彼女の部屋で三股していることがバレて修羅場になった挙句、智花が

持ち出したナイフを巡って乱闘になり、うっかり彼女を刺してしまう。その後、

彼女の最後の反撃により意識を失った鳥越は、彼女と同居しているというミリア

という女性に起こされる。鳥越は、ミリアに自分と智花は何者かに襲われたと

偽り、被害者を装おうとするのだが――。

鳥越とミリアの噛み合わない会話が面白かったですね。あの状況で被害者を装う

とか、無理がありすぎるだろー、とツッコミたくなりましたが。ミリアは人の

ことを疑わない呑気な性格かと思いきや、ラストで思わぬ名探偵っぷりを発揮して、

驚かされました。まぁ、最初から疑ってたんでしょうけどね(苦笑)。

 

『アリバイのある容疑者たち』

接待ゴルフの帰り、ローカル電車の『どいなか線』に乗りながら居眠りをしていた

大島聡史は、突然ドスンという大きな音で起こされた。何があったのかは不明だっ

たが、ちょうど降りる駅だったため慌てて電車を降り、自宅に帰ると、自宅の鍵が

開いていて、お宝が入っている筈の金庫が開けられていた。しかし、なぜか泥棒は

その『お宝』を盗まずに立ち去っていた。もしや泥棒はまだ家の中にいるのでは――

と思った瞬間、何者かに背後から襲われ、聡史は気を失ってしまう。そして、

次に起きた時、目の前には叔父の姿があり、金庫の中のお宝は消えていた――。

四人の容疑者全員にアリバイがあり、犯人がいない状況。東川さんには珍しく、

『読者への挑戦状』が入った作品。というのも、雑誌の依頼で、犯人当て小説

を書いて欲しいと頼まれたからだそうで。問題編と解答編に分かれて掲載された

そう。犯行時間が二転三転して頭が?状態だったなぁ。探偵が最初に指摘した

犯人があっさり自白した割に、そこから推理も二転三転。いや、そんな勘違い

ある?ってツッコミたくなりましたけどね。しかし、これを当てた読者が数人

いたってのがすごい。読者の方が名探偵じゃん。スマートスピーカーのアレクサ

ならぬ荒草アザミのキャラは面白かったですね。

 

『どうか僕を占ってください』

カリスマ占い師、神保町の母の異名を持つ『アンタレス星羅』に占ってもらう為

彼女の占いの拠点『クリスタル館』にやってきた僕。順番になり、今一番気になって

いる想い人の静香さんとの週末のデートについて占ってもらうと、いくつかの

アドバイスをもらった。デートには似つかわしくないアドバイスばかりだったが、

その通りに行動したら、不思議とデートが上手く行った。しかし、数日後に

再び『クリスタル館』の前を通ると、なぜか閉鎖され、警察がいた。警察に事情

を聞くと、なんとアンタレス星羅が殺されたというのだ。しかも、彼女が殺された

のは、僕が占いをやってもらったその直後だという――。

これはオチがちょっといつもと変わっている作品でしたね。犯人を指摘したのが

一般人の僕だったことで、このラストのセリフになったとは思うんですけども。

犯人の動機がめっちゃ私利私欲すぎて引きました。自分の利益の為に、あんな

人間と手を組むのも信じられないけど。でも、一番信じられないのは、最後の

主人公のセリフでしたけどね。それより警察に突き出しなさいよー。

 

『暮林紅子の誤算』

作家の叔父の遺産を狙って、若手女優の暮林紅子は、大学の演劇部時代の仲間

である下村に協力を仰ぎ、叔父の殺害計画を立てる。当日、叔父の自宅の館の

敷地内にある倉庫で叔父を殺し、自殺に見立てる為に紅子はある方法で倉庫を

密室にするのだが――。

密室を作る為にやった(正確には、下村にやらせた)ある行動が、紅子の首を

締めることになります。なんと間抜けな犯罪なんでしょうか(苦笑)。あんなこと

させたら、そりゃー、証拠が残っちゃうんじゃないの?とツッコミたくなりました

(笑)。

 

『陽奇館(仮)の密室』

天才マジシャン、花巻天界が建築途中の『陽奇館(仮)』で殺された。現場の

出入り口には内側から掛け金がかけられ、サッシ窓にも内側からクレセント錠

がかかっていて、完全な密室状態だった。たまたま現場に居合わせた四畳半

探偵と助手の大広間は、事件を解決する為、関係者を一同に集めるのだが――。

あとがきで東川さんがおっしゃるように、確かにこのトリック、面白かった

けど、どこかで読んだことがあるような既視感がありましたねぇ。なんか、絶対

誰か書いてそうって・・・と思ったら、アンソロジーで既読でした。そりゃ

既視感あるわけだよ(笑)。めちゃくちゃ大胆だけどわかりやすくて、私はこういう

トリック大好きですけど。この館が建築途中だったというのが効いてますね。

このトリックが実現可能な要素がちゃんと伏線として出て来てますし。しかし、

このトリックだからこそ、あのラストの悲劇。何もあそこまでしなくても・・・。

シリーズ化しても良さそうな設定なのにね。トリックがわかると、タイトルで

ネタバレしてる気がしなくもないですね。

 

巻末の御本人によるあとがき解説も楽しかったですね。東川さん、最近あとがき

書いてくれるから嬉しい。今後も毎回載せて欲しいなー。

タイトルの『夜の喜劇』は東川さんっぽくはないけど(笑)、なかなか小洒落た

素敵なタイトルだなぁと思いました。

 

 

藤野千夜「団地のふたり」(双葉文庫)

以前から気になっていた作品ですが、NHKのドラマで評判になっているようなので、

原作を借りてみました(ドラマは観たことありませんw)。

団地に住む50歳の女二人のゆるーい日常を綴った連作集。めちゃくちゃ読み

やすいので、あっという間に読めてしまいました。

主人公は、団地に住む、イラストレーターの傍らフリマサイトで物品を売って

生計を立てているなっちゃんこと奈津子。同じ団地に住むノエチこと野枝は、

保育園で出会い、小中学校も一緒の幼馴染。高校から学校が変わっても

ずっと付き合いは変わらず、大人になってそれぞれの人生ステージが変わって、

お互いに紆余曲折あってからも、ずっと仲が良い親友同士だ。毎日のように

ノエチは奈津子の部屋に来て、奈津子が作るご飯を食べて帰る。ささいなことで

ケンカもするが、すぐに仲直りして元通りの関係に戻れる。団地内の困り事を

一緒に解決したり、一緒に外出したり、なんだかんだで居心地の良い関係で

いられるのは、お互いにお互いの性格を知り尽くしているから。今日も明日も、

ふたりののんびりした団地生活は続いて行く――。

面白かったです。二人の年齢がほぼ自分と同年代だからって言うのもあるけど、

ささいな団地内での日常が面白おかしく描かれていて、楽しく読めましたね。

まぁ、年齢が近いとはいえ、二人の生活も性格も全然自分と重なるところは

なかったのですが(苦笑)。奈津子にも、ノエチにも全然共感出来ない部分も

ありましたしね。この二人だからこそ、上手く行くんだろうなぁって感じ。

一緒に出かける約束してたのに、突然やめるって言い出すノエチの自己中な性格

にはムカムカしましたし。奈津子は奈津子で、ノエチに運転してもらっておいて、

酔うから停めろとか(これは最近ましになったようですが)、そっちの道じゃなくて

こっちの道で行けとかいろいろ指図するわがままなところがあるし。でも、

そういうお互いの性格も熟知してるから、今更もうそれぞれにムカムカしたり

しないんですよね。なんなら前よりよくなったとかフォロー入れたりもするくらい。

だからこの年まで親友でいられるんだろうな~と思いましたね。

団地の顔知りの知人たちが二人に困り事を押し付けて来たりしても、二人で

強力して解決してあげる親切なところもありますし。困ってる人を放っておけない

お人好しな性格なんでしょうね。この年齢になっても、子どもの頃を同じような

関係性が築けるって、なかなかないと思うんですよね。まぁ、二人ともいろいろ

あって独身団地暮らしって共通点があるのが大きいのかもしれませんけどもね

(奈津子は現在理由あって一人暮らし、ノエチは両親と同居という違いはあり

ますが)。

二人ののんびりした性格と距離感が読んでいて心地良かったです(時々イラッと

させられるんですけどねw)。奈津子が作るご飯も美味しそうだったな。

調べたところ、ドラマでは奈津子を小林聡美さん、ノエチを小泉今日子さんが

演じているそうです。この二人なら間違いなさそうですねぇ。でも、本読んでる

時は、阿佐ヶ谷姉妹で映像化されてましたけど(笑)。あの二人の実生活を

描いたドラマも面白かったですからね。年齢的にも合ってますしね。

巻末の原田ひ香さんの熱のこもった解説も良かったですね。確かに、原田さんが

好きそうな内容だよな、と思いました(笑)。

続編があるようなので、また折を見て予約しようかなと思います(今は予約

いっぱいなので、もう少し落ち着いたらね)。

 

西式豊「処刑館殺人事件」(早川書房)

初めましての作家さん。いかにも本格!って感じの内容っぽかったので、予約

してみました。もしかしたらYouTubeの読書チャンネルで紹介されていたからかも。

うん、同じような動機でちょっと前に読んだ『未館成の殺人』よりはずっと面白く

読めたかな。途中まで同じような感想だった気もするけど(笑)。やっぱり、登場

人物には全然好感持てる人がいなかったですしね。

こってこてのクローズドサークルミステリーです。設定自体は、もう完全に金田一

少年の世界。目撃者がいる中で、塔の上で黒マントを被った『処刑人』が仲間の

一人を殺すっていう。読みながら、頭の中で、あの金田一少年の絵で再現されて

た(笑)。

あらすじは、ミステリ作家養成講座で同期だった六人の作家が、恩師の宇宿部

に招かれて、彼が持つ山奥の別荘『岨景館』にやって来て、そこで閉じ込められて

一人づつ殺されて行くっていう、本格テイストてんこ盛りのマーダーミステリー。

六人が館に揃っても、なぜか招いた筈の宇宿部は現れず、生徒の六人はそれぞれ

ミステリ談義に花を咲かせる。すると、突然館内放送が流れ、『処刑人』と

名乗るその声が告げたのは、第一の公開処刑を行うという冷酷非道な宣言だった。

その後、実際彼らの目の前で第一の殺人が実行される。残った5人は、一つの部屋

に集まり、バリケードで扉を封鎖して対抗するが、一人、また一人と処刑されて

行く――しかもそれぞれに自作に出てくる殺人方法で――。一体処刑人とは何者

なのか。その動機とは?

前半なかなかノレなかったりもしたのですが、後半に行くに連れて面白くなって

行きましたね。読みやすかったですし。ただ、基本の設定が金田一少年なもの

だから、なんかリアリティがなくてね。漫画の原作読んでる気分で読み進めて

いた気がするな。

 

以下、若干ネタバレ気味感想です。

未読の方はご注意ください。

 

 

 

 

 

終盤の謎解き部分は、どんでん返しに次ぐどんでん返しみたいな感じで、良く

出来ているとは思うけど、ちょっとくどかったかなぁ。◯え◯多すぎ(笑)。

どんだけ多くのソレ使ってんのよ。言葉の説明だけだと、ちょっと混乱しちゃった

なぁ。真相読むと、冒頭からいろいろ騙されてたことがわかるんだけどね。

動機に関して、最初はそんな理由で・・・みたいな解釈ばかりで信憑性がなかった

のだけど、最後の最後に明かされる本当の動機は、意外と普通というか、そりゃ

そうだよね、っていうものだったので、納得出来ました。真犯人に関しては、

最後に思わぬ伏兵が出て来た感じを演出したかったのかもしれませんが、

個人的には結構怪しいな、この人って思ってた人物だったので、そこまで意外

ではなかったですね。

ちょこちょこ挿入される、幕間のある人物のエピソードにかなり翻弄されたの

ですが、最後、予想外の結末で驚かされました。まぁ、肩透かしとも云えるけど、

この部分に関しては唯一ほっこり出来る要素が含まれていて、ほっとしたな。

かなり複雑なからくりになっているので、謎解き部分全部を理解したかと言われる

と、全然出来てない気がする(おい!)。

まぁ、伏線もちゃんと説明されるとちゃんと張られているのがわかるので、良く

出来ていると思います。◯え◯に次ぐ◯え◯で、頭がパニック状態でしたけど^^;

世間の評判もなかなか良いみたいですね。しかし、作家六人のキャラ造形はもう

少しなんとかならなかったのかなぁと思わなくもないな。キャラ的には、やっぱり

金田一少年と同等って感じだったかも。

本格ミステリとしてはなかなかの出来だったんじゃないでしょうか。

 

 

 

小路幸也「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド 東京バンドワゴン」

シリーズ最新作。第21弾だそうです。しゃばけシリーズと併せて、一年に一度の

お祭りみたいなシリーズですよね。

そうなってくると、当然中心となる堀田家に関わる人々はどんどん雪だるま式に

増えて行きまして。毎回、冒頭に人物相関図が挿入されているのですが・・・もう、

何が何やらしっちゃかめっちゃか。登場人物が増えに増えて、誰が誰だか状態で。

これ、ちゃんと把握して読んでる人っているのかなぁ・・・。堀田家で朝食食べる

メンバーも、毎回ちょっとづつ変わっているんですよね。その人のライフワークに

合わせて、増えたり、減ったり。まぁ、家族ってそういうものですけどね。

子どもが大きくなれば独立して家を出て行くものだし。そうかと思えば、出戻り

で帰って来たりね。結婚して子どもが増える人もいるし。堀田家に関しても、

それは同じで。花陽と彼氏の麟太郎さんが結婚したし、研人と芽莉依ちゃんも

結婚したし。てか、花陽も芽莉依ちゃんも学生なのに、焦って結婚しすぎじゃない?

ってついつい思っちゃったけどね。

それ以外でも、脇役キャラもどんどん増えまくっていて、さすがにちょっとやりすぎ

じゃないかなぁって思ってしまった。人物紹介だけでどんだけページ数使うのよ、

っていうね。もう、その紹介部分だけでお腹いっぱいになっちゃう。

ロンドン警視庁のジュンさんとかさ。誰だっけ状態だったよ^^;確かにイギリス

で事件に巻き込まれた話あった覚えはあるけどさ。しかも、ジュンさん夫妻が

来日したのと同じタイミングで、研人がCMソングで共演した小松稚奈さんの実家

の古本やら古美術品やらの査定の依頼が来て、その中にジュンさんたちが担当

している有名な紛失絵画が見つかるとか、いくら何でもご都合主義過ぎるだろー

と、思ってしまいましたね。今回は、いつも以上にそういうシーンが多かった

気がするなぁ。全部を丸く収めて幸せHappyで終わりたいっていう作者の意図は

わかるんだけどもね。さすがに、ついて行けなくなって来ているかも・・・。

語り手のサチさんの存在に関しても、今まで話が出来るのは青が短時間だけだった

のに、どんどん視える人が増えていて、しかも普通に会話まで出来る人が出て

来てしまって。もう、幽霊って概念が根底から覆っているような気がする^^;;

わざわざイギリスまで行って、ジュンさん夫妻に、来日の際は堀田家に泊まるように

説得しに行っちゃうしね。何でもアリ過ぎだろー・・・。

LOVEいっぱいなのはわかるんですけどね。みんながみんないい人すぎてね。

そこがいいと思って読んで来たのも間違いないのだけど、さすがにやりすぎ感が

強くなって来て、合わなくなって来ているのかなぁ。

年取って、自分の感覚がひねくれて来ているのかも・・・ずーん。

年一冊だから、これからも読み続けたいとは思うけど、うーん。もしかしたら、

次は脱落しているかもしれない・・・。

とかいいながら、新作が出たらついつい予約しちゃうと思うんだけどね(苦笑)。

 

芦沢央「あなたが正しくいられたとき」(文藝春秋)

芦沢さん最新作。その人が思う『正しさ』が、他の人にとってはそうではない

場合もあるという、正しさって何だろう、と考えさせられるような作品集。

下村敦史さんにもこういう作品集ありましたよね。正義が必ずしも正義にならない

場合もあるってやつ。SNSで正義感にかられてコメントする人とかもそうですね。

正論を突きつけて、誰かを傷つける。正しいことって何なんだろうね。

 

では、各作品の感想を。

 

『あなたが正しくいられたとき』

消防士の窪田は、同窓会で元カノの黒川と再会する。黒川は未亡人で娘を一人

連れて来ていた。河原でのバーベキュー中、突然黒川の娘が川に落ちた。窪田は

とっさに川に飛び込み、娘を助け、彼女は無事だった。しかし、窪田は黒川が

娘を川に突き落とす瞬間を見てしまっていた。黒川は娘を虐待している――?

消防士で、危険を顧みず他人の窮地に身を投げ出すことが出来る『正義の人』窪田。

でも、彼の正しさは、両刃の剣であることが次第にわかって行きます。黒川さんが

なぜ娘を突き落としたのか。その理由を知って、彼女の娘に対する愛の深さを知り

ました。

 

『代償』

作家になって二十年、たった今書き終えた新作は、間違いなく自分の代表作になる、

と自信を持てる出来だと確信した大輔。意気揚々と妻に第一稿を見せたが、彼女

から出た言葉は、意外なものだった。この作品と全く同じ設定の小説を読んだことが

ある気がするというだ――まさか、自分は無意識のうちに誰かの作品を模倣して

しまったのか?疑心暗鬼にかられる大輔は、担当編集者に相談するのだが。

盗作問題の真相は、大抵の人が予想出来ると思います。ただ、その人物がそれを

やった理由まではわからなかったです。やったことは間違いなく悪いことです。

でも、そうするしか方法がなかったのでしょうね・・・やりきれない気持ちになり

ました。

 

『薄着の女』

アイドルから女優に転校し、着実にスターの階段を上って来た朝比奈ユリ。しかし、

元彼に付き合っていた時の写真をネタに強請られるようになり、ついに今日彼を

殺してしまった。ユリは、とっさに、この部屋を密室にすることで事故に見せかけ

られるのではないかと思いつくのだが――。

十時警部と琴子の警察コンビがなかなかいい味出してますね。十時警部のキャラは

何か覚えがあるなぁと思っていたら、この後に出て来る『立体パズル』をアンソロジー

で読んでいたからだったみたい(多分)。倒叙ミステリとしてなかなか読ませる一作。

犯人が前日に着ていた特殊素材の上着を翌日に着ていなかったことから(つまり

薄着になった)、ある事実が明らかになるくだりとか、上手いなーと思いましたね。

 

『立体パズル』

雄一郎より一つ上の三十三歳の男が、五歳の男の子を包丁で刺す事件が起きた。

犯行理由は、子どもの声がうるさい、というものだった。男は子ども時代から

優秀で、優秀な大学まで行き順風満帆な人生を送っていたが、社会に出てパワハラ

で退職。その後自宅で引きこもりになっていたが、両親の勧めで一人暮らしをして

いたという。その後、雄一郎は妻から驚きの噂話を聞いた。犯人の男が五年前まで

住んでいた家が、息子の保育園の友達の自宅と同じで、最近犯人がその家を覗きに

来ていたというのだ――しかし、この噂には裏があった――。

先述したように、アンソロジーで既読だったので、なんとなく覚えていました。オチ

は忘れちゃってたけど。もし、自分がたっちゃんママを同じ立場だったら、やっぱり

嫌な気持ちはするでしょうね。引っ越すかどうかはともかく。運が悪かったとしか

言いようがないですけど。うーん、子どもがいるなら、引っ越しも考えるかも。

 

『待てば無料』

母が亡くなってから、定期的に祖父の家にやってきて介護してやらなければならなく

なった健一。しかし、口だけは達者だがわがままで横暴な言葉の多い祖父に付き合う

のには辟易していた。ある日、祖父にオムツ交換を要求され、濡れタオルを手に

取った瞬間、スマホの漫画アプリのアラームが鳴った。健一は、アプリが気になって、

オムツ交換を後回しにし、トイレに立った。無料で読んでいる漫画の続きがアップ

されていた為、続きを読み始めた。結局トイレを出たのは15分も経ってからだった。

すると、祖父の顔に濡れタオルがかかっていて、すでに息をしていなかった――。

これも十時警部シリーズ。祖父の介護より漫画の続き。でもその結果が、取り返し

のつかないものになってしまった。でも、なんか健一を責める気にもなれなかったな。

それまでは、ちゃんと文句言いながらも祖父の介護をやってあげていたのだろう

からね・・・ろくに感謝の言葉もない祖父の為にね。介護系の話は、やっぱり

胸にずーんと重いものが残りますね。

 

『投了図』

自分の街で、師匠の国芳と弟子の生田の師弟戦という世紀の対局戦が行われる

ことになり、話題になっていた。そんな中、この棋将戦が行われる旅館に、

対局を中止しろという嫌がらせの張り紙をされたという報道があった。テレビで

それを見ていた美代子が夫にその話をすると、将棋が大好きな筈の夫の反応が

薄く、違和感を覚えた。それ以降、度々夫の言動に疑問を覚えた美代子は、

張り紙の主は夫なのではないかと疑い始めるのだが――。

コロナの時期ならではの悲劇というか。あの時期は、大なり小なり、こんな風に

コロナが原因で悲しい思いをした人がたくさんいたんですよね・・・。私だって、

東京に住んでいること自体に引け目を覚えた記憶がありますから。入院患者に

簡単に会えない時期でもありました。主人公の夫の気持ちを思うと・・・。もちろん、

やったことは許しがたいことです。でも、動機を知ると、なんともいえない苦い

気持ちになりました。主人公夫妻がやっている古本屋(閉店しちゃうけど)に、

将棋好きの少年がやって来て、棋譜をもらえたことが救いに思えました。彼が

将来、有力な棋士に成長するといいな、と思いました。

 

 

 

三浦しをん「夜の恩寵」(集英社)

しをんさんの最新作。珍しくダークよりの作品集になってます。テーマは『カリスマ』

だそうですが、どっちかというと『予知夢』の方が相応しいように感じましたね。

5作収録されていますが、二種類のシリーズに分けられるというか。なんとなく

全体が繋がっているとも云えるし。なんとなく不快感が漂う作品が多い。ちょっと

宗教がらみっぽいところもあるしね。そういうのが好きな人にはたまらないかも

しれませんが、私はどっちかというと陰より陽のしをん作品が好きなので、ちょっと

食い足りなさはありましたね。ぐいぐい読ませる力はさすがですし、四作目の

『金の糸』の雰囲気はめっちゃ好みでしたけどね。主役の男子二人の、音楽を

通じた友情がとても良かった。

 

では、各作品の感想を。

『神馬に乗る女』

東京の広告代理店に勤める輝久は、福井に住む父親から帰省を促す電話を受ける。

父親曰く、母親の様子がおかしいという。三年ぶりに帰省すると、母親は相変わらず

美しく元気そうだった。しかし、父が言うには、母には『ヌチガミ様が憑く』

らしい。一体母に何が起きているのか――。

いきなり母親があんなわけのわからないモノに変わっていたら怖すぎですよね。

一緒に暮らす父親なら余計に。まぁ、病気や不調を治してもらったとしたら、

そりゃ信じちゃう人が続出するのも仕方ないでしょうけど・・・。ラストで明らかに

なる、輝久の母親に対する不穏な感情にハッとさせられました。そうだったのか。

 

『胡蝶』

中国の故事『胡蝶の夢』そのままって感じの話。祖母から受け継いだ夢見の能力

を持つ未千は、ある時から、なぜか子供が出来ない体質の夫との子供が授かる夢を

見るようになる。毎晩の夢の中で未千は妊娠・出産し、子供は日々大きくなって

行くのだが――。

夢の中で妊娠・出産・子育てを経験出来るっていうのも、なかなかすごい体験

ですよね。私も出産経験してないから、ちょっと経験してみたい気持ちにはなり

ましたけどね。ラストは、まさに夢か現か、みたいな状況になって、ぞっとさせ

られました。その夢の中の子供が見るのが、世界が破滅する夢ってのも怖かった

ですけどもね。

 

『夢見る家族』

うちの母親は、なぜか毎日俺と兄の見る夢の話を聞いて記録を取っている。兄の

千夜太は素直に母親の言う通りに夢を語っているが、弟の俺はだんだんその

日課が苦痛になって来て、適当な話を語るようになった。しかし、本当は、千夜太

が語る夢の話は、俺が見ている夢なのだ――。

ひとつ前の『胡蝶』の続編。いきなり弟が出て来て面くらいましたけど。年子って

設定なのに、『胡蝶』の夢の中には出て来てなかったから。なんか、家族全員

夢に囚われてる感じが怖かったですね。いい子に育っていると思っていた千夜太

の本性にも、ぞっとしたな。でも、一番驚いたのは、千夜太の出生の秘密の部分。

この作品の世界が、未千の見ている夢の中の世界じゃないことが、これでわかって、

溜飲が下がりました・・・が、読後感は最悪でしたね。

 

『金の糸』

ロックバンド『STINGRAY FIN(通称エイヒレ)』のボーカル兼ギターのアヤセと

ベースの俺は、高校の同級生だ(一年ダブったアヤセは年齢は一つ上だが)。

素行不良だったアイツと出会ったのが運の尽き、それから俺は奴に振り回されっ

ぱなしだ。俺は奴との出会いを振り返っていた――。

先述したように、これは好みドンピシャでした。ゴンゾーとムツミのキャラと

関係がとても良かったですね。この設定で長編書いて欲しいくらい。ゴンゾーの

唯我独尊な言動に振り回される六実はちょっと可哀想でしたが。でも、音楽と

出会わせてくれたのもゴンゾーだしね。ラスト、ゴンゾーの予言が当たるか

ハラハラしたのだけど、外れてくれてほっとしました。ネットの著者インタビュー

を読んだら、この話の『カリスマ』はゴンゾーではなく六実の方だと書いて

あって、ちょっとびっくりしました。でも、最終話読んで六実の身の上がわかると、

なるほど、と思えるんですけどね。

 

『夢の子ども』

輝久は、母親から父親の危篤を知らされて一度帰って来て欲しいと言われ、

帰省することに。母親は弟も連れて来て欲しそうだったが、輝久は敢えて連れて

行かない選択をした。年の離れた高校生のこの弟は、生まれてから父とも母とも

数回しか会っておらず、ほとんど輝久が育てたようなものだった。それには、

ある理由があった――。

これを読んで、一話目との繋がりがわかりました(あと四話目ね)。夢の中の

子どもってところは、二話目三話目とも繋がるし。輝久の母親と未千はすごく

似てるところがありますね。夢見の能力だけではなく、女性として性質というか、

本性という部分においてというか。全然、好感は持てないですけどね。カリスマ性

はあるのでしょうね・・・誰もが魅入られてしまう恐ろしさがあるというかね。

最近のしをんさんには珍しく、全体的にひんやりした、ゾクッとさせられる

ような読み心地の作品集でしたね。