ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

太田忠司/「誰が疑問符を付けたか?」/幻冬舎刊

太田忠司さんの「誰が疑問符を付けたか?」。

女優もかくやというほどの美女だが、『愛知県警捜査一課の鉄女』と県警内でその名を轟かせて
いる京堂景子警部補。一たび彼女に睨まれた人物は身が縮む恐怖に竦みあがるのだ。切れ者
優秀な彼女は数々の難事件を解決に導くが、実はその鋭い推理の多くは彼女の夫でイラストレータ
の京堂新太郎が導き出したものなのだ。愛する夫の前ではたちまち鉄の仮面がはがれ、可愛い女性と
変貌するのだが、その姿を知るものは夫以外にはいない――ベタ甘カップルがあざやかに解決する
8つの事件を収録。


個人的に太田作品の中でも特に気に入っている「ミステリなふたり」の続編です。これ、続編
出ないかなぁと内心秘かに心待ちにしてたので、久しぶりにこのベタ甘カップルに会えて嬉しい。
相変わらず景子さんの公私のギャップには笑ってしまうし、新太郎の主夫っぷりはあっぱれ。
こんな夫がいる景子さんが羨ましいです。新太郎君、できすぎです。ハンサムで優しくて
家事を完璧にこなし、話を聞いただけで難事件を解決までしちゃう!理想どころか妄想でしか
お目にかかれない夫像って感じですよねぇ。全く、景子さんは幸せ者です。でも、景子さんが
これまた素敵な女性なので嫉妬の気持ちも芽生えないのです。県警の人々の前ではひたすら
クールで厳しく、誰もが畏れる鉄女。年齢性別関係なく、みんなが彼女に一目置いている。
そんな鉄面皮の彼女が新太郎の前でだけは素の自分に戻れるのです。新太郎を前にした時の
デレデレした甘え方はこっちが気恥ずかしくなる位『女の子』。このギャップを読んでいるのが
とても楽しい。普通だったら二人のいちゃいちゃムードにムカつきそうなんだけど、この二人
だとなぜか許せてしまうから不思議。景子さんって、間違いなく元祖ツンデレだと思うな。

基本的には景子さんの元に持ち込まれる事件の謎を新太郎が解き明かす安楽椅子形式。
一応殺人事件を扱っている割に、そこに絡んでいる要素がヌイグルミだったり捌かれたハマチ
だったりするので、体裁はユーモアミステリ。推理ものとしてはさほど感心するものがある
訳ではないけれど、キャラやテンポの良さで楽しく読めました。やっぱり好きだなー、この
シリーズ。

個人的に好きだったのはラスト二編の「熊犬はだれを見たか?」「京堂警部補に知らせ
ますか?」
「熊犬~」は、ノアと少年の触れ合いにジーンとしたし、景子の本質を見抜く少年の鋭さにも
感心。少年が心配したノアのその後にもほっとしました。読後が爽やかで良かったです。
「京堂~」は新太郎が初めて安楽椅子探偵ではなく、自らの見聞きしたことで事件を解決する
作品。景子の同僚二人とのニアミスににやり。ここに景子がいたら彼女はどう反応してたのか
な~なんて思うとちょっと可笑しい。鉄の仮面ははがれたのか。それとも『公』の部分を貫き
通して、新太郎の前でも鉄女のままでいたのか。でも、彼女の二面性はまだまだ他の人には
知られないままでいて欲しいなーという気がするので、彼女が会議に呼び出されて良かった、
良かった。

景子の同僚二人の脇役キャラもなかなかいい味出してます。景子の前でいつも萎縮しちゃう
生田刑事はちょっと気の毒になるけれど^^;でも、景子はきちんと仕事をした人間のことは
ちゃんと見ていて、たまに優しい言葉をかけたりもするので、実はいい上司なんですよね。

楽しいシリーズなのでまた是非続編を出して欲しいです。
それにしても新太郎の料理は美味しそうだ。いいなぁ、こんな旦那・・・。