ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

加納朋子「1(ONE)」(東京創元社)

加納さん最新作。出る情報全く知らなかったので、図書館の新着図書コーナーで

見かけて即予約。わーい、加納さんだー、と喜んでいたところに、内容紹介で

駒子シリーズの文字が・・・!!!えぇぇっ、あの駒子シリーズ!?今になって!?

とびっくりしました。めちゃくちゃ大好きなシリーズだったので、そりゃもう、

読むのを楽しみにしていましたよ。とはいえ、読んだのは昔過ぎて、細かいことは

当然ながら全然覚えていなかったのですが・・・^^;;

んで、読み始めて、加納さんからのまえがきを読んで、『同じ世界の話ではある

けれど、ストレートな続きではない』とのこと。んん、微妙な書き方・・・と

思いつつ、読み始めると、確かに、主人公は人付き合いが苦手で、他人と上手く

向き合えない大学生の玲奈ちゃん。この子が一体どう駒子たちとつながって行く

のか、一話目の『ゼロ』を読んだ時点では(なんとなく「こうかな?」と想像

するところはあったけど)、全然わかりませんでした。レイちゃんこと玲奈ちゃん

の物語は、彼女のわんこ『ゼロ』との出会いと、彼女が遭遇したストーカー事件を、

いかにして家族総出で解決したのか、その顛末が描かれます。その時点で、駒子や

瀬尾さんの名前は一切出て来ません。ただ、レイちゃんの家族が、いかに彼女

のことを大事に思っているかは(多少・・・というか、かなり過保護気味ですがw)、

伺えて、素敵な家族だなぁと思わされましたけれどね。

玲奈ちゃんと駒子シリーズの接点が明らかになるのは、その次から始まる1(ONE)

の物語で。なるほど、こういうことだったのね~!って感じです。まぁ、最初の

予想がほぼ当たっていたのですけれどね。1(ONE)は、前編・中編・後編の

三部作。前編のラスト一行で、主人公の名前が明かされ、おおー!と思いました。

スピンオフ的に出版された、童話の『ななつのこものがたり』を読んでいれば、

この名前にピンと来る人は多いはず。私自身、この名前にはとても思い入れが

あるので、よく覚えていました。

そして、中編のラスト一行でも、シリーズファンには嬉しい文言が。この一言から

最後の後編部分は、もう純粋な駒子シリーズの続編と言っても差し支えないのでは?

とはいえ、前の作品の内容をもはや全く覚えていないので、もう一度読み返したく

なりましたけどね。実家に本があるから、今度引き取って来ようかな(『ななつのこ

と『魔法飛行』)。

レイちゃんのわんこ『ゼロ』はちょっとおバカっぽいけど愛らしいし、その前に

家族で飼っていた『1(ONE)』はスマートで賢くて、とてもかっこいい。全編

に亘って、わんこへの愛に溢れた内容になっていて、加納さんは犬がお好きなんだ

ろうな~と思いましたね。それだけに、1(ONE)の最期のシーンは辛かったな

ぁ・・・。

ミステリ色がほぼなかったのはちょっと残念でしたが、わんこ愛と家族愛に溢れた

作品で、加納さんらしい優しい物語でした。

次はもっとレイちゃんのナイト・ゼロが活躍する物語が読みたいですね。

大好きなシリーズなので、更なる続編を期待したいです。

 

 

伊坂幸太郎「777 トリプルセブン」(角川書店)

伊坂さん最新刊・・・とはもう、言えないかな^^;昨年の9月に出た作品なので。

予約に乗り遅れてしまって、結構待たされました。久しぶりの殺し屋シリーズ!

読むのを楽しみにしていました。前作では新幹線から降りられなかった不運な

殺し屋・七尾(天道虫)でしたが、今回はホテルから出られなくなってしまうお話。

相変わらずテンポが良くて、ぐいぐい引き込まれてしまいました。面白かったー。

今回、七尾に持ち込まれたのは、高級ホテルに宿泊している<客>に、娘からの

プレゼントを届ける<だけ>の超・簡単で安全な仕事・・・のはずだった。しかし、

七尾が訪れたのと時を同じくして、同ホテルの別の部屋に、見たものをすべて記憶

出来る能力を持つ、紙野結花が滞在していたことが、七尾の悲劇の始まりだった

――。

同時期に、これだけ七尾と同じ仕事の同業者がやって来る、というのは正直

非現実的過ぎないか、と思わなくもないけれども、そこがこのシリーズの面白い

ところであって、それをツッコむのは野暮というものですよね。七尾って、

嫌だ嫌だと思っていることが、その通り自分の身に降り掛かって来るタイプで、

ちょっと気の毒になってしまいます(苦笑)。ただまぁ、こういう世界で周りの

同業者たちがばんばん殺されてしまう中、しぶとく生き残っていけるのだから、

相当な強運の持ち主でもあるんだろうなぁとは思いますね。本人はひたすら運が

悪いと嘆いているようですが(苦笑)。そして、なんだかんだで、お人好し。

七尾には、紙野結花を助ける義理なんか全くないし、本人もそんなことに手を

出さずに、自分の任務を遂行してさっさと帰りたいと思っているにも関わらず、

結局最後には手を差し伸べてしまう。まぁ、状況的に、そうせずにはいられなくなっ

ちゃうってのもあるんだけども。でも、そこを割り切って見捨てることも出来る訳で。

それができないところが、七尾の七尾たる所以かな、と思って微笑ましくなっちゃう。

紙野結花がトラブルに巻き込まれた諸悪の根源・乾に関しては、最後まで悪人なのか

そうでないのか判断できず、ハラハラさせられましたね。噂通りだったら、人間を

解剖して喜ぶサイコパスな訳ですから。伊坂さんなら、平気でそういうキャラを

登場させかねないですからね(苦笑)。ただ、紙野さんの記憶にいる乾は、あまり

そんなことをしそうなタイプに見えなかったので、混乱したところはありましたね。

今回、『マリアビートル』の時の王子ほどではないにしても、やっぱりとんでもない

嫌悪感満載のキャラたちが登場しました。乾のことはまぁ、置いておいて、

明らかに七尾たちの敵である、六人組に関しては、もう、どのキャラクターも

おぞましい人物造形でしたね。ただ、六人もいるし、つけられた名前(コード

ネーム?)がそれぞれに日本の時代の名前なので、誰が誰だか全然理解出来な

かったです^^;しかも、この時代の名前も、カタカナ表記だったので、最初全然

気づいてなかったんですよ(アホ)。勝手に、違う漢字をイメージしちゃってたり

して(センゴク→千石とか、アスカ→明日香とか。ヘイアンに関しては、外人の

名前をイメージしてたり。名前っていう先入観のせいでしょうね^^;これが

最初から漢字表記だったら、さすがに一発でわかったと思いますけどね)。

こいつらの倫理観、一体どうなってるんだ、と出て来る度に悍ましい気持ちに

なりました。伊坂さんって、ほんと、生理的嫌悪を覚えさせるキャラ作るの

上手いよなぁ・・・本人、あんなに虫も殺せないようなタイプの怖がりさんなのに

ねw)。

でも、一番のサイコパスはやっぱり、あの政治家でしょうね。見た目と中身の

ギャップは、王子と張るかもね・・・。

マクラとモウフの二人に関しても、途中までどういう立ち位置のキャラなのか

わからなかったですが、最終的にはこの二人の活躍で救われたところが大きかった

ですね。いいコンビですよね。物騒な職業なのは間違いないんですけどね^^;

そして、やっぱり言及しておくべきなのはココさんのことでしょうね。紙野結花を

助ける為にあれだけ尽くしてくれたのに・・・あの展開はショックでした。でも、

終盤で意外な事実が判明して、驚かされました。伊坂さんも人が悪いなぁ、もう。

命がけの攻防戦で、終始緊迫した空気感ではあるのですが、それぞれのキャラクター

のおかげでか、コミカルに読める部分もあって、スピード感溢れる筆致もあって、

ぐいぐい引き付けられました。伏線回収の妙もさすがでしたね。

最後は、777がばっちり決まったって感じの爽快感で読み終えられました。

不運でしかない理不尽な人生を送って来た結花ちゃんが、あの人物と幸せになった

なら良かったよ。

七尾は、お疲れさま(笑)。

 

 

 

 

東野圭吾「あなたが誰かを殺した」(講談社)

東野さん新刊・・・というには、大分出てから経っちゃいましたけど^^;東野

作品は、当日予約でも待たされるのに、今回は大分経ってからの予約になって

しまったからなぁ。回って来るまで結構かかりましたね~。

『~殺した』シリーズ(勝手に命名)久しぶりだなぁと思っていたら、加賀シリーズ

でもあり、嬉しい誤算でした。加賀シリーズって、タイトルに一貫性が全く

ないから、読むまで大抵シリーズものって気づかないで読み始めるんだよね^^;

今回は、休暇中の加賀さんが事件に巻き込まれるパターン。一ヶ月も休みが取れる

とは、一体今までどれだけ休んでなかったんだ、とツッコミたくなりましたけど

(苦笑)。それでも、やっぱり事件に遭ってしまって、探偵役を担わされるあたり、

もう宿命としか思えませんが^^;『加賀さんに嘘は通用しない』というのが

痛感出来る作品でしたね。相変わらず、些細な違和感を見逃さない慧眼っぷりは

素晴らしい。

今回は、閑静な別荘地で起きた、戦慄の連続殺人事件の犯人を加賀さんが推理

して行くお話。事件が起きた直後に犯人は捕まっているが、関係者の中に共犯者が

いると見做され、その人物を検証で炙り出して行く、という流れ。

今回加賀さんは刑事というよりは探偵って感じでしたね。最初は傍観者でしか

なかったのに、あれよあれよという間に探偵役に祀り上げられ、その通り探偵役を

全うしてしまうという。相変わらずクレバーな人だなぁ。

登場人物が結構多いので、なかなか整理しきれなかった感じ。ファミリー単位で

事件に遭うから、どの人がどのファミリーだっけ、みたいな状態になってしまった。

こういう作品こそ、映像が向いてるのかもしれないですけどね。それぞれの

キャラ造形が、ちょっと古くさい印象は否めなかったなぁ。時代設定はいつ頃

なんだろう。途中、感染症がどうとかいう描写があるから、それがコロナのこと

だったら現在の話なんだろうけど・・・。加賀さんの役職が警部だから、やっぱり

そんなに昔じゃないとは思うけど。

犯人は、意外といえば、意外だった。けど、個人的に、こういう人物が犯人って

あんまり好きな真相じゃないんですよね~・・・。ただ、動機に関しては、

こういう背景があるなら、殺意が芽生えても不思議はないかな、と思いました。

巷では、もっとどうでもいい理由で人を殺す犯罪者が後を絶たないですからね。

被害者はみんな、殺されても仕方ないかなぁと思える人ばかりだったので、

どの人物にしてもあまり同情は出来なかったですね。

そして、最後の最後にも思わぬ黒いオチが待っていました。加賀さんは、きっと

それもすべてお見通しだったのでしょうね・・・。だって、加賀さんに嘘は

通用しないのですから。

『~殺した』シリーズにしては、きっちり謎が解決されていて、もやもやも

なかったですね(今までのやつは、真相が全然わからないまま終わったり

してましたもんね。真相が袋とじになってる作品とかもありましたしね)。

見取り図なんかも出て来て、ど直球の本格ミステリーよりの加賀シリーズ

でしたね。最近は人間ドラマよりの作品が多かったと思うのですが、個人的

にはこっちよりの方がミステリの醍醐味が味わえて好きですね。

面白かったです。

 

 

 

名取佐和子「文庫旅館で待つ本は」(筑摩書房)

創業九十年を超える海辺の小さな老舗旅館『凧屋旅館』。そこは、様々な古書

を揃えた文庫が名物で、別名『文庫旅館』と呼ばれていた。

本は好きだが、アレルギーがあるため読むことが出来ないという特殊な体質を

持つ若女将は、宿泊客に、その人と同じにおいを持つ本をお薦めする代わりに、

本を読んで内容や感想を聞かせて欲しいと言うのだが――。

『金曜日の本屋さん』シリーズの名取さんらしい、本にまつわる物語集。今回は

取り上げられているのはすべて古書ですが。

小さいけれども落ち着いた凧屋旅館の雰囲気がとても素敵でしたね。そこを

切り盛りする若女将の円さんの凛とした佇まいも素敵でした。若女将として

客の前に立った時は、とても二十代とは思えない貫禄があるように感じました。

でも、最終話の円さん視点では、年相応の言動もちらほら見えて、少しほっと

したところもありました。若くして旅館を背負って立たなければいけなくなった

気負いのようなものから、普段、客の前では気を張っているのかもしれません。

祖父や伯母の前では、口調も行動も、普段の年相応の円さんに戻るところが、

ちょっと意外に思いつつ、人間らしさが伺えて微笑ましかったです(お客さんの

前に出た時は、人形みたいな無機質な印象があったので)。

凧屋旅館の文庫は、文豪たちの本ばかりなので、純文学をそれほど読んでいない

私には、読んだことがないものばかりでした。唯一読んでいたのは、漱石

『こころ』くらい。芥川の『藪の中』は、他の作品で紹介された時にすごく

気になったものの、未だに読んでないままだしね。でも、作中で紹介された本は、

どれもそれぞれに興味を惹かれました。

三話目の、見えないものが見える少年と母親のお話が一番好きだったかな。

四話目の、塾講師と塾生のお話は、着地点の思わぬ黒さに驚かされました。そこから

最終話の予想外の重さに繋がるのでしょうが・・・。一話目に出て来た葉介が

元気そうなのは良かったのですが・・・円の曾祖父のとんでもない黒歴史

明らかになり、暗澹たる気持ちになりました。円が本を読めない体質が、あんな

ところから来ているとは。それに、凧屋旅館名物の文庫に、あんな因縁があった

というのもショックでした。それでも、認知症になってしまった三千子さんが、

ほんの一瞬、昔のことを思い出せたシーンに心を打たれました。悲しい過去は

変えられないけれど、これから兄妹の交流が始まればいいな、と思いました。

私も、こんな旅館に泊まってみたいなぁと思いました。円さんに本をお薦め

してもらってみたいな。私と同じにおいの本は何になるのかなぁ。

ほしおさなえ「紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所」(角川文庫)

この間読んだ月光荘シリーズに続き、こちらの紙屋ふじさき記念館シリーズ

これで最終巻。好きなシリーズがどんどん終わっちゃってさみしいなぁ。でも、

こちらのシリーズも最終的には川越にあたらしい記念館が出来るので、サブタイトル

通り、新しいスタートを切ってひとまず大団円、という感じでした。月光荘

新しい形で受け継がれて行くことになったし、ほしおさんは、伝統的なものを

違う形で次の世代へ受け継いで行くことの大事さを、いつも行間から訴えている

ように感じますね。特に、川越の街にそういうものを集約させて行ってる感じ。

紙屋ふじさき記念館も、もともと日本橋にあったものが、建物の取り壊しにより

他に移ることになり、最終的には川越の蔵造りの建物をリノベーションして新

記念館として再利用することになりましたしね。昔の建物は基本の造りがしっかり

しているから、再利用出来るものが多いのでしょうね。月光荘シリーズの主人公、

守人が新記念館にやってきたら、建物の声を聞くことも出来そうです。どんな

ことを語ってくれるのかな~。本編の中でも、ちらっと月光荘の管理人のことが

話題に上っているので、そのうちニアミスしそうだなぁと思いました。もともと

日月堂の弓子さんとふじさき記念館はつきあいがありますし。いろんなシリーズ

のキャラがあちらこちらに顔を出すところも、ほしおワールドの良いところですよね。

前作で藤崎産業に就職が決まった百花は、川越の新記念館の立ち上げメンバーとして、

記念館準備室に配属されることに。館長の藤崎さんと共に新たに加わった同期の

三人と共に、準備に奔走する。そんな中、作家だった亡き父の『東京散歩』が

復刊されることに――。

コロナで大変な思いをしながら、少しづつ日常が戻って来て、最終的には新記念館

のオープンにこぎつけることに。百花は、学生の時に比べて格段に成長したように

感じました。これも藤崎さんを始めとした、周りの人に支えられて来たからで

しょうね。もちろん、本人のやる気や才能もありますし、何より、何をやるに

しても真摯に取り組む真面目さがある。藤崎産業は良い新入社員を採用したと

思いますね。まぁ、藤崎さんの推薦も大きかったのかもしれないですけど(藤崎

さんの祖母・薫子さんも口添えしたかも?)。

唯一の懸念事項だった、藤崎さんの従兄弟の浩介さんとの因縁も、最後に解消

出来てほっとしました。同じ企業内で親戚同士がいがみ合っていても良いこと

ないですからね(まぁ、ままあることだとは思いますが・・・)。

良い形で記念館が再スタート出来て良かったです。相変わらず、百花の商品開発

センスは素晴らしかったですね。アイデアが次から次へと浮かぶのがすごい。

今後はもっとヒット商品を生み出してくれそう。みんなが彼女に一目置くのが

わかります。同期からも褒められてましたからね。

あと、百花父親のエッセイに、彼女の名前の由来が出て来たのですが、それが

とても素敵だなぁと思いました。花のように愛でられる人になるよりも、花を

愛でられる人になって欲しい、という願いを込めてつけられたと。誰かに愛で

られるのではなく、自分自身で歩いて、愛でるものを探せる人になってほしい、

という父の想い。本当に、愛情深い、素敵なお父さんだったんだろうなぁと

エッセイを読んで胸がいっぱいになりました。もっと長生きして、今の立派に

なった百花の姿を見せてあげたかったなぁ・・・。

それにしても、これだけ長い間一緒に仕事をしているのに、藤崎さんと百花の間には

全く恋愛めいた感情は芽生えていないのかなぁ。ついつい、最終巻だし、少しは

そういう要素も出て来るのでは?と若干期待して読んでいたのですが・・・最後

までなかったですね^^;でも、これからもよろしくって言ってたし、今後

どうなるかはまだわからない・・・かな?お似合いだと思うんだけどなぁ。

あの紙オタクを理解してあげられるのは、もはや百花しかいないんじゃないかと思う

んだけどなー。そこだけは、ちょっと残念だった。

ま、他のシリーズでもしかしたら進展がうかがえるかもしれないし、希望は捨てずに

いようっと。

 

貫井徳郎「龍の墓」(双葉社)

貫井さん最新ミステリー。VRゲームと現実の殺人事件がリンクする長編ミステリー。

発端は、東京の町田市で身元不明の焼死体が発見されたことから始まります。事件

を担当する所轄刑事の安田真萩は、警視庁からやって来た捜査一課の南条をコンビ

を組むことに。被害者のデンタルチャートから身元が判明したが、犯人の目星は

つかないままだった。そんな中、荒川区の東尾久で三十代女性の刺殺体が発見

された。その殺害方法から、ネット上では町田の事件と関連付けた、ある噂が飛び

交っていた。それは、人気のVRゲーム『ドラゴンズ・グレイブ』の中で起きる

連続殺人事件と類似しているというものだった。真萩は、この手のゲームに詳しそう

な、かつての同僚・瀧川に意見を聞くため連絡を試みるのだが――。

時代設定は、メガネ型のVRが発達し、誰もがスマホよりVRを持つ、今より少し先の

未来のようです。スマホ機能がメガネ型のVRにすべて入っているって感じで、

電話やネット通信など、すべてがVRで行えるっていう。ただし、ヒロインの真萩は、

アナログ人間なため、VRではなくスマホを使っています。いつの時代にも、進化に

乗り遅れたアナログ人間というのはいるものですね(私もそっちに近い^^;)。

このVRを使ったゲーム『ドラゴンズ・グレイブ』が巷では大流行していて、その

中で起きる連続殺人事件と、現実の事件がリンクしていく、というのがざっくり

したあらすじ。

帯に錚々たる作家さんたちがコメントを寄せていて、これは貫井さんの新境地に

なるのでは、と期待を込めて読み進めて行った訳なのですが・・・う、ううむ。

なんだろう、この中途半端感。確かに、今までの貫井さんの作風とは大きく

違った雰囲気なのは間違いない。半分はゲームの中の描写だし。バーチャルと

リアルが交互に出て来て、ゲーム内はゲーム内で楽しめる内容にはなっているの

だけど・・・ゲーム内の殺人事件も、現実の殺人事件も、さほどの驚きはなく。

どちからというと、真相自体は、本格ミステリの原点に帰るような、シンプルな

謎解きって感じ。なるほど、とは思ったものの、あまり目新しさはなかったですね。

あと、瀧川が警察を辞める原因となった速水に関しても、もう少し裏でなにか

あるのでは、と勘ぐっていて、後から何かのフォローがあるのではと期待して

いたのだけど、そのまま何もなくて拍子抜け。あんな、不確かな情報だけで一人の

警官を冤罪で辞めさせて、その後何のお咎めもなし、って。引きこもった弟が

その後どうなったのかもわからないままだし。

あと、真萩とコンビを組んだ南条のキャラにもイライラさせられました。無能だと

思わせておいて実は優秀、みたいな人物なのではと真萩も期待していたけれど、

結局大事なことはすべて真萩に丸投げで、最後、手柄だけは自分のものにする(

真萩がそうして欲しいと言ったとはいえ)、最低の人間性じゃないかと思いました。

まぁ、唯一、彼の◯◯には驚かされましたけども。定年までの期間を知って、

唖然としました。

ヒロインの真萩のキャラも、なんだか芯の強さみたいなものが感じられなくて、

あまり好きなタイプじゃなかったです。出て来る登場人物がみんな、薄っぺらい

印象を受けてしまって、好感持てる人物がほとんどいなかった。探偵役の瀧川は、

推理の勘は冴えているのかもしれませんが、警察辞めて人間不信になって、

引きこもりのゲームオタクだしね・・・。

バーチャルと現実の二本立てみたいな構成や近未来という設定は、貫井さんには

今までなかったものなので、新境地と言われればそれは間違いではないのかも

しれませんが、正直、そういう作品は他にもいくらでも先行作がある訳で。

そこにもっと本格ミステリーとしての読み応えがあれば良かったのだけど、

そこもちょっと肩透かしだったし。なんか、いろいろと書き足りない感じがして、

食い足りなさがありました。貫井さんも新しい作風を模索しているのかも

しれないけれど、やっぱり私は、貫井さんには、薬丸さんや横山秀夫さんみたいな、

重厚な社会派ミステリーを書いて欲しいなぁと思ってしまいますね。

期待しただけに、ちょっと残念な作品だったかな。

よしながふみ「仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ」(フィルムアート社)

漫画家・よしながふみさん初のインタビュー本、だそうです。実は私は、よしなが

さんの長年のファンという訳ではありません。でも、ドラマ化もされて(現在も

続編が放映中ですね)大ヒットした『きのう何食べた?』は大好きで、今現在も

新刊を追いかけています(が、ドラマは前作を観ていない為、今も観ていない)。

いや、昔から気になる漫画家さんではあったのですけどね。なんとなく、読み逃して

いて(『大奥』も読んでません)。今回、今まで刊行されたすべての作品に関して、

インタビューが載っているので、もっと読んでおけば楽しめたのに~~~と忸怩たる

思いで読んでました。

フラワー・オブ・ライフ』とか『西洋骨董洋菓子店(ドラマは観た)』とか、

出た当時読みたいとは思ってたんですけどね。初期のBL作品とかからインタビュー

されているので、往年からのファンはたまらない本じゃないかなぁ。よしながさん、

同人誌活動もされていた方なのですね。それは知らなかった。しかも、今でも

されているとか。コミケ行ったらよしながさんに会えるのかなぁ・・・。しかし、

よしながさん、ベルばらの同人誌を作られていたそうで・・・そこまでベルばらが

お好きだったとは。その後『銀河英雄伝説』に手を出されたとか。『銀英伝

人気ありましたもんねぇ(私は読んだことないですが)。

過去作品についてのインタビューは、本当に赤裸々に細かく語って下さっているので、

全部の作品読んでもう一度本書を読み直したいっ!と切に思いました。元ネタ

知らないと、語られているエピソードにも全然ピンと来ないんですもの。勿体ない。

だから、『昨日なに食べた?』のインタビューだけは、めっちゃ楽しんで読め

ました(苦笑)。リアルタイムで時が流れていることによって、シロさんやケンジ

にのしかかってくる問題も、年相応にならざるを得ないのがよくわかりました。

それだけに、終わりを考えずに、出版社サイドから終了を言われない限り、

ずっと描き続けられるっていうところがファンとしては嬉しいですね(だって、

これだけ人気の作品をそう簡単に出版社だって終わりとは言わないでしょう)。

よしながさんもそのおつもりみたいですし。まだまだ長く続けて頂きたいなぁ。

自作に関するインタビュー部分は大部分が『?』って感じだったのですが、前半の

ご自身の漫画遍歴に関するインタビューは、ものすごく読んでいて共感出来る

ところが多かったです。私自身も子供の頃から漫画ばかり読んで育って来た人間

なので。クラスのヒエラルキーで一番下とは言わないまでも、限りなく底の方に

近いような位置にいた人間だったので、学校がそれほど楽しいってタイプでは

ありませんでした。両親は共働きで忙しかったので、ほとんどかまってもらえ

なかったですし。そんな私の心の支えになってくれていたのが漫画でした。どれだけ

たくさんの漫画に励まされて来たことか。中学に入って読みやすい少女小説

主にコバルト文庫)なんかにもはまりましたが、高校卒業まではやっぱり漫画

中心で読んでましたね。大学に入ってミステリ小説に目覚めてからは、少し漫画から

離れた時期もあったのですが、結婚してまた漫画熱が再燃。今も月に40~50冊

ペースでは読んでるんじゃないかな~(所蔵場所もないし、お金も続かないので

ゲ◯でのレンタルですが^^;)。作中でよしながさんが紹介されている

昔の漫画は、かなり知っている確率高かったですね。もちろん、知らない作品、

知ってても読んでない作品もたくさん出て来ましたけれど。懐かしいなぁと思い

ながらニヤニヤしながら読んでました。全編に亘って、よしながさんの漫画に

対する愛が溢れていて、わかるなぁ、と共感しまくりでした。前半部分は、

よしながさんのファンじゃなくても、いろんな漫画について熱く語ってらっしゃる

ので、漫画好きなら楽しめるんじゃないかな、と思いましたね。

とりあえず、昔の作品片っ端から読み漁りたくなりました(笑)。

 

 

追記

 

 

以下、少し作品の感想から外れてしまいます。先日起きた漫画家さんに関する

悲しい出来事に触れています。辛く、暗い内容になります。

読みたくない方はスルーしてください。

 

この記事でおわかりかと思いますが、私は漫画が大好きです。それだけに、

先日起きた芦原妃名子先生のニュースに、とてもとても、ショックを受けています。

芦原先生の作品は『bread and Butter』が大好きで、その流れで件の『セクシー

田中さん』も読んでいて、大好きな漫画でした。映像化されると知って嬉しかった

し、ドラマも楽しく観ていました。それだけに、その背景にあんな事情があった

と知って、愕然としました。先生の訃報が飛び込んで来る少し前から騒動の記事が

ネットニュースで上がっていて、驚いていましたし、原作をリスペクトしてくれない

制作側に憤りを感じてもいました。そしてあの訃報。夕方のニュースで知って、

目の前が真っ暗になるくらい、ショックを受けました。それからずっと、先生の

無念を思うと胸が苦しく、痛いままです。先生の、ことの経緯を綴った文章を読む

限り、先生には何の落ち度もないと思いました。どういう経緯でそうなったのか、

テレビ局側も出版社側も何も語らないままなので、真相がわからず、怒りと悲しみ

の矛先をどこに向けたらいいのかわかりません。訃報のニュースから、今もずっと

関連のニュースを読む度に、どうにか出来なかったのかと悔しい気持ちでいっぱい

です。真相が明らかにされないので、誰かを責めるのは間違っていると思うし、

先生も望んでいないとは思いますが・・・(でも、誰かを責めずにいられない

気持ちになっています)。

私がひとつだけ願うことは、漫画や小説を映像化する制作側の人には、絶対に

原作をリスペクトして臨んで頂きたいということです。無から有を生み出せる稀有な

才能を軽んじることは絶対にあってはならない。原作者が、どれだけ血を吐くような

大変な思いをして作品を生み出しているのか、そのことを絶対に忘れないで

欲しいです。作品は、苦労して生み出した自分の子供と同じなんです。

芦原先生の無念を思うと、もう、胸が潰されそうです。きっともっと漫画を

描きたかったはずです。憤り、悲しみ、虚しさ、やるせなさ。いろんな感情が

押し寄せて来て、やりきれません。お正月の立て続けの悲しいニュースからやっと

立ち直れてきたのに。また、気力が落ちてしまっています。

大好きだった『セクシー田中さん』、最終回まで読みたかった。素晴らしい才能が

永遠に失われてしまったことが悲しくて、寂しいです。

芦原妃名子先生のご冥福をお祈りいたします。