ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

井上先斗「イッツ・ダ・ボム」(文藝春秋)

はじめましての作家さん。職場で観ていたブランチの本コーナーで紹介されていて、

興味を惹かれて借りてみました。第31回松本清張賞受賞作だそうな。帯見たら、

森見さんや米澤さんが絶賛されているので、俄然期待が高まりました。

・・・が。う、うーむ。ストリートアートに興味があるかないかで、評価が分かれる

作品って感じだなぁと思いました。私自身はというと・・・まーったく、興味が

ございません。むしろ、公共のものに落書きをするって行為自体、正直に云って、

個人的には受け入れがたいものを感じている方の人間でして。バンクシーとか、

ああいうところまで行ったら、そりゃアートって思えるけどもさ。飾り文字どどーん、

みたいなやつとか、全然いいとは思わないので。若者ならではの感性って感じの

ものってイメージもあるし。頭の固い昭和のおばちゃんには理解不能なんだよ・・・。

あらすじをご紹介。謎のグラフィティライター『ブラック・ロータス』は、公共物を

破壊することなく、世間にメッセージを届けるスマートな手法が称賛されて、

最近世間から注目されていた。しかし、衆議院選挙前日、選挙ポスターに細工し、

『VOTE ME』のメッセージを描いた作品が物議を醸した。候補者全員の顔の一部が

ちょび髭の形に切り取られていたのだ。話題性は抜群だったが、明らかに今までの

ブラック・ロータスのやり方とは違う表現の仕方に、世間の評価は賛否両論が

巻き起こった。ウェブライターの大須賀は、この出来事は本にできると目論み、

ブラック・ロータスについて調べ始めることに。本人の所在はわからない為、

手始めに、グラフィティアートに関係する様々な人物に取材を申し込むのだが――。

一応、松本清張賞ってことで、多少はミステリ的な要素も入ってます。でも、

そこがメインって感じじゃなく、どちらかというと青春小説要素が強いのかな。

二部構成になっているのだけど、一部は謎のグラフィティライター『ブラック・

ロータス』はなぜ、選挙ポスターを切り刻むような手法を使ったのか、をウェブ

ライターが追う話、二部は、ベテランのグラフィティライターTEELと、新進気鋭の

ブラック・ロータス、正反対の手法と主義を持つ二人の対決が描かれます。TEEL

が橋桁や電車に落書きするシーンは、単なる犯罪にしか思えず、彼なりの主張が

あるのだろうけど、嫌悪感しか覚えなかったです。だから、どちらかというと、

ブラックロータスのやり方の方に共感できたかな。TEELを慕って近づいて来た

HEDの正体、多分、だいたいの人は気がつくのでは。

全体的に淡々と物語が進んで行くので、あまり読んでいて楽しいって感じもなく。

もっと痛快に書こうと思えば書けるネタな気はするんだけどな。

ストリートアート蘊蓄が散りばめられているので、興味のない人には退屈な

だけの作品かもしれない(←私ですw)。オチもなんだかなーって感じの終わり方

だったしな。まぁ、好きな人にはたまらない作品なのかも。私にはあんまり理解

できなかった。ゴメンナサイ。