宮木あや子さんの「セレモニー黒真珠」。
マンドラゴラみたいないかつい顔の社長、20代なのに落ち着いた所作と老け顔で実年齢に
見られた試しがない笹島、喪服が異様に似合う葬儀フェチのメガネ男子木崎、理由ありのデキる
新人妹尾。死者を前に、葬儀屋は何を思い、何が出来るのか――。個性的なメンバーたちが揃う
町の中小葬儀屋『セレモニー黒真珠』を舞台に繰り広げられる、切なく心温まる珠玉の連作短編集。
完全なるジャケ読みです^^;とはいえ、作者の宮木あや子さんは巷で最近かなり話題になって
いる新人さん(?)のようで、あちこちで評判を聞いてかねてから読んでみたいなぁと思っていた
作家さん。書店で本書が平積みになっていた時、装丁が印象的で気になっていたところ、図書館
の開架で発見。ぺらぺらめくってみると舞台は葬儀屋。中表紙のイラストもとってもかっこいい
ので(手がけているのはイラストレーターのワカマツカオリさんという方だそう。人気あるらしい
・・・知らなかった^^;)、手に取ってみました。
内容は、葬儀屋に働く三人の男女を巡る悲喜こもごもを描いた連作短編集。タイトルの『セレモニー
黒真珠』は、彼(女)らが働く葬儀屋の名前です。文章も内容ももっとお堅い雰囲気なのかと
思いきや全く正反対。人の死をテーマにしながらも非常にライトな作風で、とても読み
やすかったです。ただ、読みやす過ぎて、一部ラノベ調の文章がちらほら見られたのが気に
なりました。キャラ造形もラノベっぽい。有川作品を初めて読んだ時の印象に似てるかも。
ムフフ~なラブテイストもちょっぴり入ってるし(笑)。
ただ、キャラも文章もラノベテイストが入ることによって、格段に質を下げているような印象に
なってしまって、なんだか勿体ないと思いました。特に木崎のキャラはとても気に入ったのだけど、
彼視点の話(『木崎の秘密』)での言葉遣いの汚さに少々引いてしまいました。ビジュアルと
性格がどうもちぐはぐというか。人物像が一致しない印象がありました。黙ってれば最高に
かっこいいメガネ男子なのになぁ・・・。墓巡りが趣味なのも、霊が視えちゃうのもマイナス
ポイントじゃないんだけどなぁ。黒い喪服がこの上もなく似合うメガネ男子。この設定だけでも
ツボなんだけどなぁ。上司の笹島に何気なくプロポーズしながらテレてるとこも可愛かった
のになぁ・・・ああ、書いてるうちに言葉遣いなんてどうでもよくなってきた・・・これぞ
木崎マジック!?負けたよ、木崎・・・(意味不明)。
三人三様、自分の中の悩みや葛藤と戦いながら葬儀屋の仕事と向かい合う。その姿勢がかっこいい
です。葬儀屋の仕事内容なんてあんまり興味なかったし良く知らなかったけど、いろいろと
大変そうですねぇ。29歳とは思えない熟達したあっぱれな仕事っぷりの笹島が素敵。着物(ってか
喪服だけど^^;)が似合って、所作が綺麗で姿勢が良いってだけで、十二分にいい女に見えます
もんねぇ。顔は美人じゃなくても、内面からにじみでる美しさがある女性っていいですよね。
憧れちゃうな(年下なんだけど・・・^^;)。でも、29歳なのに42歳に見えるって、
どんだけ老け顔なんだよ・・・。新人の妹尾の21歳なのに35歳に見えるってのもどうかと
思うけど^^;
葬儀屋なだけに、みんな実年齢よりも落ち着いていて老けて見えるという設定は面白かったですね。
あんまり若さ爆発の葬儀屋に身内の葬儀とかやってもらいたくないもんなぁ・・・^^;
それぞれの抱えるものは軽めの人物像に反してかなり重い。女性二人の過去なんか特に。
『セレモニー白真珠』での笹島の元カレの言動には腹が立って仕方なかったです。なんで、
こんないい女がこんなクズみたいな男を好きだったのか全くもって理解不能。男の、身勝手で
無責任な、ある出来事に対する笹島への理不尽すぎる責任転嫁に、木崎じゃなくても殴ってやり
たくなりました。こんな男には天誅が下ってしまえ!(怒)・・・あ、失礼しました^^;
でも、抱えるものは重くても、どれも最後には心がじんわり温まり、読後感は爽やかでした。
思ったよりも随分軽い作風で驚いたのですが、どうやらこの作品は宮木さんの中でも異色の
作品のようです。他はもっと耽美でどろどろしてる人間の情念が描かれたものが多いらしい。
初宮木作品として良かったのか悪かったのか・・・。文章的にはそれほど良さがわからなかった
(というか、ラノベ調文章に戸惑った)のですが、他のしっとりした作品も読んでみたいです。
そっちの方が私好みのような気がひしひしとするんですが。今後要注目の作家になりそう。
ライトに読めるけど、心に沁みるハートウォーミングストーリーでした。『おくりびと』が
オスカー獲ってブームになったので、これから第二の葬儀屋ブームが来るのかも!?
映像化したら面白そうです。