ミステリ読書録

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ヘレン・マクロイ/「幽霊の2/3」/創元推理文庫刊

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ヘレン・マクロイ「幽霊の2/3」。

人気作家・エイモス・コットルを主役にしたパーティで、余興の『幽霊の2/3』というゲームに
興じている最中、主役であるエイモスが毒物を摂取して絶命する。事故なのか、自殺なのか、
それとも殺人なのか。招待客の中の一人だった精神科医のベイジル・ウィリング博士が現場に
いた関係者に事情を聞いて行くと、エイモスに関する意外な事実が次々と浮かび上がって来た。
彼の死の裏には何かが隠されている――長らく絶版の憂き目にあった幻の名作が新訳で復刊。


はい。というわけで、三月の翻訳図書はコレでした。あれ?意外じゃない?自分が一番意外
なんですけど^^;で、何でコレになったかっていう言い訳・・・じゃなくて経緯はですね、
そろそろ三月の海外ものを入手しておこうと隣町の図書館に行った際、私の海外作品の指南役
であるゆきあや師匠様からお薦めして頂いていた作品がことごとく開架で見つからず、
どうしたものかと途方にくれていたところにぽんと飛び込んで来たのがこの作品のタイトル
だったのです。確か、みなさんが一時期一言メッセージでやりとりして話題になっていたよなぁ、
と作者の知識もないくせに、タイトルが面白いので結構印象に残っていたのですよね。で、
手に取って裏表紙のあらすじを見たらなかなか面白そうだしページ数もそれほど多くないし、
ならば私もここで話題に乗っかってみようじゃないか~と借りてみた次第。ネットで調べると、
長らく絶版扱いで、読みたくても読めない幻の作品として、復刊を待ち望まれていたのだとか。
そうだったのか!だからあんなにみんな話題にしてたんだね~、と読んだ後で知ったという(無知)。

前置きが長くてすみません^^;
で、まぁ、読み始めた訳ですが。新訳ということで、多分以前に出版されたものより遥かに
読みやすくなっているのでしょうが、海外モノが苦手な私にはやっぱりとっつきにくい所が
多々ありました。なんといっても、私の場合、鬼門は登場人物の名前なんですが。今回も基本的な
登場人物名と人間関係を把握するのにちょっと手間取りまして、なかなか乗れないところが
ありました。ただ、中心となる人気作家エイモスを囲んだパーティの辺りから大分面白く
読めるようになりまして、そこからはなかなかに意外な展開の連続で引き込まれました。
と言っても、私が期待していた展開とは大幅にずれて行ったのでしたが。私はてっきり
『幽霊の2/3』というゲームの最中に起きた毒殺事件の犯人とその犯行を推理して行く話だと
思っていたのですが、はっきり云ってその部分はどうでもいいような扱いになりまして、
物語はエイモス・コットルという作家の過去を追って行き、彼と彼を取り巻く出版業界の
関係者たちとの意外な関係が明るみになって行くうちに、彼自身の隠された過去の秘密が少しづつ
浮き彫りにされて行くという、一人の作家を巡る物語になって行くのです。途中で何度も
おいおい、毒殺事件はどうなったんだい?とツッコミたくはなりましたが、終盤で明かされる
エイモス・コットルという人気作家の隠された秘密には驚かされました。ここまで読むまで、
タイトルにはかなり疑問を覚えていたのですが(『幽霊の2/3』というゲーム自体はタイトルに
なる程重要性のある扱いではなかったので)、最後まで読んでやっと納得出来ました。でも、
ベイジルと友人のアレックが提示する『11の奇妙な点』から真相を推理するのは絶対無理
だと思いました・・・。

興味深かったのは、アメリカの出版業界の内情がちょこちょこと伺い知れたところでしょうか。
印税の取り分の相場とか。今は随分変わっているのでしょうけれど。批評家と作家、出版社と
作家、エージェントと作家、なんかの人間関係も興味深かったです。やっぱり、出版業界ってのは
陰謀と策略とは切り離して考えられないところなのかもしれないですね。人気作家ともなると
大国なだけに印税の額も半端じゃないでしょうしねぇ。金の卵を生む雌鳥を巡って錯綜する出版
業界における人間関係の機微も読みどころのひとつではないでしょうか。

男性キャラに比べて、女性キャラにどうも魅力が感じられないところは残念でした。エイモスの
妻・ヴィーラだけは強烈なキャラでしたが、それ以外は誰が誰だかいまいち区別がつかなかったし。
誰と誰が愛人関係、とかそういうのもわかりにくかった。ヴィーラのキャラは一番嫌悪感が
強かったですけれど。短絡思考な分、無邪気なんだろうけど、どこまで行っても自己中な考え方
しかしない所にうんざりしました。まぁ、最後はやっぱり・・・な展開になりましたけど^^;;

毒殺事件の真相はつけたしのようにあっさりと解決されてちょっと拍子抜け。毒の仕込み方法も
既存のミステリでいくらでも書かれているようなものでしたし。犯人も全く意外性なかったしなー。
でも、この作品の読みどころはやっぱり人気作家の秘密の部分なのだろうから、その辺は仕方
ないのかな。

それなりに全体的には面白かったのですが、やっぱり翻訳ものの苦手意識を払拭してくれる
ところまではいかなかったですね。改行も少ないし、ちょこちょこと脇道へそれるような回り
くどいところもあって、300ページくらいでそんなに分厚くもないのに、結構時間はかかり
ました。でも、みなさんの話題の作品を読めたってだけで満足かな。海外ものの記事はいつも
ほとんど遠巻きに眺めるだけしか出来ないので・・・^^;実は海外もの全般、挫折しないで読了
できるだけで個人的には満足だったりするんですよね(苦笑)。
来月ももちろん挑戦するつもりです。
(今日、実家からアレ取ってきたよ、ゆきあやさん^^v←ほんとにそれになるかはまだわからない
けど^^;突如また全然関係ない作品になるかも・・・^^;)